ざまぁにはざまぁでお返し致します ~ラスボス王子はヒロインたちと悪役令嬢にざまぁしたいと思います~

陸奥 霧風

文字の大きさ
8 / 148

第8話 ファンクラブへの提案

しおりを挟む
謝罪をするルナール嬢を止めるべく、

「誤解しないでくれ。君を責めるために呼んだ訳じゃないんだ。とにかく頭を上げてくれ」

僕の一言でルナール嬢は安堵の表情になった。

「では、どういった要件だったのでしょうか?」

「そのことなんだけど…… 実はファンクラブについての相談なんだが」

「相談……?」

「ああ、僕からの提案なのだが良いだろうか?」

「提案ですか?」

「ああ、そうだ。こんな僕でも、君たちファンクラブの活動に役に立てないだろうかと考えてね。ファンの集いとかのイベントをしても良いかと思っている。日々の君たちへの感謝の気持ちを受け取って欲しいのだが」

「ああ、アレク様から…… なんて恐れ多い…… 勿体なきお言葉……」

ルナール嬢は歓喜に溢れ、泣きそうになっている。


――ファンクラブには感謝している部分もある。嫌だけど…… それは、マリア嬢の暴走行為の抑制である。ファンクラブが無ければもっと面倒なことになっていただろう。


「ただし、条件がある」

「条件?」

「そうだ。ファンクラブの中から10名を選出したい。僕も体が一つしかないからね。大勢だとゆっくりと話せないしね」

「10名ですか……?」

「そう10名」

ルナール嬢は僕の提案は理解しているが人数の少なさに唖然としていた。

「それは…… 選ばれなかった者どうなりますか? 私を含めてですが、選ばれなかった者を考えると……」

ルナールは選ばれなかった者に対して、どうするか考えているのだろう。困った表情をしていた。


――あれ!? この悪役令嬢は意外に人間が出来ているのでは?


「そこは安心して欲しい。選出はこちらで決めさせていただく」

「アレク様がですか? そんなお手を煩わせるような真似を……」

ルナール嬢は僕の言葉に驚いていた。

「選出は参加者から抽選で行おうと考えている。自分の名前を書いた紙を箱の中に入れて、僕がその箱の中から名前を書いた紙を10人分取り出すんだ。そのやり方の方が、貴族、平民忖度なしに公平で平等に出来るのではないかと考えている。そして、参加者全員が紙を箱に入れる時に一人ひとりに僕が握手しようと思う」

「ア、アレク様が一人ひとりに握手ですか?」

「そう、参加者全員と握手会も兼ねているんだよ」

ルナールは僕と握手と聞いて、顔を赤くさせ驚いていた。

「そ、そんな滅相もございません。尊き王族に触れるなどあってはなりません!」

ルナールは我に返り、王族とその家臣との礼儀を重んじているのか、両手を僕に突きだし、首と同時に左右を振った。

「いや、握手くらいなら大丈夫だ。言っておくけどこれはファンサービスだと思ってくれ」

「ファンサービスですか?」

「そうファンサービスだ。だから気にしなくても良いよ。あと、イベントの内容は君達に任せる。決まったらルブランに伝えてくれ。詳しい打ち合わせもルブラン達と決めてくれたら良い。僕からは以上だ」

「アレク様、ありがとうございます。これで今までのみんなの頑張りが報われます!」

ルナール嬢は立ち上がり、深々と頭を下げ、お礼を言っていた。

「ああ…… これもファンサービスの一環だからね。ファンクラブのみんなにも早く伝えた方が良いよ。君達の考えたイベント楽しみにしているよ」

僕は震える手を握り締めながら、冷静さを保ちルナール嬢に言った。

「ハイ! 早速みんなに伝えてきます。アレク様、ありがとうございます!」

ルナール嬢は頭を下げ、早足で教室へと戻って行った。僕は黙ってルナール嬢の後ろ姿を見ていることしか出来なかった。


――ファンクラブの全員の頑張りかぁ…… そんなにみんなで隠密じみたストーカー行為を頑張っていたんだなぁ…… そう考えると恐怖のあまり身体中がプルプルと震えていた。





ルブラン達から婚約者殿の許可をもらい、ファンクラブのヤツらからの提案を吟味し、ファンクラブ主催イベントの開催当日を迎えた。

今回のイベント内容は『アレク様と愉快な仲間たち ~アレク様とお茶会をしようぜ!~』になった。名前は長いが単なるお茶会だ。


会場である王宮の庭園には『アレク様と愉快な仲間たち ~アレク様とお茶会をしようぜ!~』と大きく書かれた横断幕が掲げられ、あくまでもこれはファンクラブ主催のイベントであり、僕達の悪意にまみれたものではないとハッキリと示したものだった。

せっかく、王宮まで来てもらって抽選で外れたからといって、『はい、お帰り下さい』ではあまりに非道だと感じ、救済措置として会場近くでお茶会を開いてもらうことにした。やはり、鬼にはなりきれない自分が、何だか可愛いヤツだなぁと思ってしまう自分がいる。

「ファンクラブの皆様、抽選を開始しますのでこちらにお名前を書いてもらい、ドール殿の所に一列でお並び下さい」

ルブランが片手を上げ、ファンクラブのヤツらに呼び掛けた。

サンペータが旅行ツアーなどで、よく使われている三角の小さな旗を持って誘導していた。何かあっては自分達の経歴にキズがついてしまう、との一念からルブラン達は自己保身にまみれて、良く動いてくれた。

僕はくじ引き用の箱の横に立ち、ファンクラブの会員との握手をする為に準備をするのだった。

準備と言っても手汗で手がベタベタして、キモッと思われないようハンカチで念入りに手を拭くだけだが、これは仕方がないことなのだ。

僕は前世と合わせて女性と手を握った記憶が皆無だ。唯一、中学時代に混合フォークダンスで女子生徒と手を握った事しか記憶にない。

そのせいか緊張しまくりで、短時間に手汗でベトベトになってしまった。そして、またフキフキである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?

ラララキヲ
ファンタジー
 わたくしは出来損ない。  誰もが5属性の魔力を持って生まれてくるこの世界で、水の魔力だけしか持っていなかった欠陥品。  それでも、そんなわたくしでも侯爵家の血と伯爵家の血を引いている『血だけは価値のある女』。  水の魔力しかないわたくしは皆から無能と呼ばれた。平民さえもわたくしの事を馬鹿にする。  そんなわたくしでも期待されている事がある。  それは『子を生むこと』。  血は良いのだから次はまともな者が生まれてくるだろう、と期待されている。わたくしにはそれしか価値がないから……  政略結婚で決められた婚約者。  そんな婚約者と親しくする御令嬢。二人が愛し合っているのならわたくしはむしろ邪魔だと思い、わたくしは父に相談した。  婚約者の為にもわたくしが身を引くべきではないかと……  しかし……──  そんなわたくしはある日突然……本当に突然、前世の記憶を思い出した。  前世の記憶、前世の知識……  わたくしの頭は霧が晴れたかのように世界が突然広がった……  水魔法しか使えない出来損ない……  でも水は使える……  水……水分……液体…………  あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?  そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──   【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】 【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】 【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるよ! ◇なろうにも上げてます。

【完結】立場を弁えぬモブ令嬢Aは、ヒロインをぶっ潰し、ついでに恋も叶えちゃいます!

MEIKO
ファンタジー
最近まで死の病に冒されていたランドン伯爵家令嬢のアリシア。十六歳になったのを機に、胸をときめかせながら帝都学園にやって来た。「病も克服したし、今日からドキドキワクワクの学園生活が始まるんだわ!」そう思いながら一歩踏み入れた瞬間浮かれ過ぎてコケた。その時、突然奇妙な記憶が呼び醒まされる。見たこともない子爵家の令嬢ルーシーが、学園に通う見目麗しい男性達との恋模様を繰り広げる乙女ゲームの場面が、次から次へと思い浮かぶ。この記憶って、もしかして前世?かつての自分は、日本人の女子高生だったことを思い出す。そして目の前で転んでしまった私を心配そうに見つめる美しい令嬢キャロラインは、断罪される側の人間なのだと気付く…。「こんな見た目も心も綺麗な方が、そんな目に遭っていいいわけ!?」おまけに婚約者までもがヒロインに懸想していて、自分に見向きもしない。そう愕然としたアリシアは、自らキャロライン嬢の取り巻きAとなり、断罪を阻止し婚約者の目を覚まさせようと暗躍することを決める。ヒロインのヤロウ…赦すまじ!  笑って泣けるコメディです。この作品のアイデアが浮かんだ時、男女の恋愛以外には考えられず、BLじゃない物語は初挑戦です。貴族的表現を取り入れていますが、あくまで違う世界です。おかしいところもあるかと思いますが、ご了承下さいね。

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

処理中です...