第二王女と次期公爵の仲は冷え切っている

山法師

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『好きあってんのに馬鹿どものせいですれ違いを起こされて、すれ違ってても尚、好きあってんだ』

 筋金入りに惚れ込んだ同士の行く末を、悲惨なものにさせないのは当然、幸せなものへと直す。

『それくらいできなきゃ、『偏屈魔女』の名が廃る』

「っていうことで、魔法薬を飲んでいただきました。これでだいたい説明終わったんで」

 図解説明係は休憩をいただきます。

 ジュリアンは魔法で構築した全てを消し、肩を回した。

「すれ違ってたお二方は見事、お互いの想いを確かめあっての両思いすよ。第一段階突破。セオドア様、特別給与とかくれません?」
「……特別給与の件を含め、色々考えさせられる部分があるが……」

 シャーロットのハンカチも借りて涙を拭い終えたセオドアが、ジュリアンを軽く睨む。

「他のやり方はなかったのか? 荒療治が過ぎるだろう」
「そっそうそうそうだよ! そうです! 流石にやり過ぎ! その、セオ様があたしを、す、好き、だって、分かったのは、嬉しい、けど……」

 本当に嬉しくて、恥ずかしいくらいだ。

 恥ずかしいと言うのも恥ずかしいので、シャーロットは顔を赤くしてもぞもぞ動いてしまう。

 自分の膝の上で頬を染めながら「セオ様」と呼んで恥ずかしそうに「好き」の言葉を言い淀み、「嬉しい」と言ってくれて、さらに頬を赤くし恥じらうように体を揺らすシャーロット。

 彼女の言動はセオドアが「もし彼女が自分を好きになってくれたら」と夢見たそれの少なくとも数億倍は愛らしくて、セオドアは額に手を当て、

「……シャル……」

 呻くように名前を呼んだ。

 君は可愛すぎやしないかと続けたが、ちゃんとした言葉にならずに呻き声のような何かになる。

「え? あっ! ずっと座りっぱなしでした! すみません! キツイですよね、降りま──」

 セオドアを見て、慌てて膝の上から退こうとしたシャーロットは。

「キツくない。君さえ良ければこのままで居たい。シャル、頼む、今だけで良いから」

 さらに引き寄せられ腰に腕を回し直され、それだけでも心臓に悪いのに。
 至近距離のセオドアから、真剣な表情で言われ。

 自分、心臓、破裂する。

 思いながらも、シャーロットはどうにか頷いた。

「セオ、様、が、その、大、丈夫、なら、はい、……あたしは、嬉しい、ので」

 本心からの言葉をまっすぐ伝えられるなんて、本当に、夢みたい。

 シャーロットは思いながら、なんとか頷いた。

 頬を朱に染め、ぎこちなく頷くだけでなく。

 何があろうとこれだけは忘れないと記憶に刻みつけた『初めての贈り物をした時に見せてくれた微笑み』が色鮮やかに更新される微笑みで「嬉しい」と言われ、

「──、」

 セオドアの意識がまた飛びかけ、

「っ!」

 意識を飛ばしている場合か目の前のシャルを記憶に刻めと、飛びかけた意識を戻した。

「今のようなやり取りができるくらいまで一足飛びに誤解を解いて距離を縮めていただくための『荒療治』です」

 これまで──主に魔法薬関連で──使用した茶器などを魔法で洗浄し、作った菓子類を並べながら淡々と言ったアメリアは、

「時に、セオドア様」

 主人であるシャーロットではなく、セオドアへ目を向ける。

「お尋ねしますが」

 無表情な顔と、淡々とした口調のまま、

「我らがシャーロット様とあなた様がすれ違いの憂き目に遭った発端を、ご存知でしょうか?」

 どこか咎めるような空気をまとって、それでも淡々と問いかけた。

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