21 / 29
8-4
しおりを挟む
『好きあってんのに馬鹿どものせいですれ違いを起こされて、すれ違ってても尚、好きあってんだ』
筋金入りに惚れ込んだ同士の行く末を、悲惨なものにさせないのは当然、幸せなものへと直す。
『それくらいできなきゃ、『偏屈魔女』の名が廃る』
「っていうことで、魔法薬を飲んでいただきました。これでだいたい説明終わったんで」
図解説明係は休憩をいただきます。
ジュリアンは魔法で構築した全てを消し、肩を回した。
「すれ違ってたお二方は見事、お互いの想いを確かめあっての両思いすよ。第一段階突破。セオドア様、特別給与とかくれません?」
「……特別給与の件を含め、色々考えさせられる部分があるが……」
シャーロットのハンカチも借りて涙を拭い終えたセオドアが、ジュリアンを軽く睨む。
「他のやり方はなかったのか? 荒療治が過ぎるだろう」
「そっそうそうそうだよ! そうです! 流石にやり過ぎ! その、セオ様があたしを、す、好き、だって、分かったのは、嬉しい、けど……」
本当に嬉しくて、恥ずかしいくらいだ。
恥ずかしいと言うのも恥ずかしいので、シャーロットは顔を赤くしてもぞもぞ動いてしまう。
自分の膝の上で頬を染めながら「セオ様」と呼んで恥ずかしそうに「好き」の言葉を言い淀み、「嬉しい」と言ってくれて、さらに頬を赤くし恥じらうように体を揺らすシャーロット。
彼女の言動はセオドアが「もし彼女が自分を好きになってくれたら」と夢見たそれの少なくとも数億倍は愛らしくて、セオドアは額に手を当て、
「……シャル……」
呻くように名前を呼んだ。
君は可愛すぎやしないかと続けたが、ちゃんとした言葉にならずに呻き声のような何かになる。
「え? あっ! ずっと座りっぱなしでした! すみません! キツイですよね、降りま──」
セオドアを見て、慌てて膝の上から退こうとしたシャーロットは。
「キツくない。君さえ良ければこのままで居たい。シャル、頼む、今だけで良いから」
さらに引き寄せられ腰に腕を回し直され、それだけでも心臓に悪いのに。
至近距離のセオドアから、真剣な表情で言われ。
自分、心臓、破裂する。
思いながらも、シャーロットはどうにか頷いた。
「セオ、様、が、その、大、丈夫、なら、はい、……あたしは、嬉しい、ので」
本心からの言葉をまっすぐ伝えられるなんて、本当に、夢みたい。
シャーロットは思いながら、なんとか頷いた。
頬を朱に染め、ぎこちなく頷くだけでなく。
何があろうとこれだけは忘れないと記憶に刻みつけた『初めての贈り物をした時に見せてくれた微笑み』が色鮮やかに更新される微笑みで「嬉しい」と言われ、
「──、」
セオドアの意識がまた飛びかけ、
「っ!」
意識を飛ばしている場合か目の前のシャルを記憶に刻めと、飛びかけた意識を戻した。
「今のようなやり取りができるくらいまで一足飛びに誤解を解いて距離を縮めていただくための『荒療治』です」
これまで──主に魔法薬関連で──使用した茶器などを魔法で洗浄し、作った菓子類を並べながら淡々と言ったアメリアは、
「時に、セオドア様」
主人であるシャーロットではなく、セオドアへ目を向ける。
「お尋ねしますが」
無表情な顔と、淡々とした口調のまま、
「我らがシャーロット様とあなた様がすれ違いの憂き目に遭った発端を、ご存知でしょうか?」
どこか咎めるような空気をまとって、それでも淡々と問いかけた。
筋金入りに惚れ込んだ同士の行く末を、悲惨なものにさせないのは当然、幸せなものへと直す。
『それくらいできなきゃ、『偏屈魔女』の名が廃る』
「っていうことで、魔法薬を飲んでいただきました。これでだいたい説明終わったんで」
図解説明係は休憩をいただきます。
ジュリアンは魔法で構築した全てを消し、肩を回した。
「すれ違ってたお二方は見事、お互いの想いを確かめあっての両思いすよ。第一段階突破。セオドア様、特別給与とかくれません?」
「……特別給与の件を含め、色々考えさせられる部分があるが……」
シャーロットのハンカチも借りて涙を拭い終えたセオドアが、ジュリアンを軽く睨む。
「他のやり方はなかったのか? 荒療治が過ぎるだろう」
「そっそうそうそうだよ! そうです! 流石にやり過ぎ! その、セオ様があたしを、す、好き、だって、分かったのは、嬉しい、けど……」
本当に嬉しくて、恥ずかしいくらいだ。
恥ずかしいと言うのも恥ずかしいので、シャーロットは顔を赤くしてもぞもぞ動いてしまう。
自分の膝の上で頬を染めながら「セオ様」と呼んで恥ずかしそうに「好き」の言葉を言い淀み、「嬉しい」と言ってくれて、さらに頬を赤くし恥じらうように体を揺らすシャーロット。
彼女の言動はセオドアが「もし彼女が自分を好きになってくれたら」と夢見たそれの少なくとも数億倍は愛らしくて、セオドアは額に手を当て、
「……シャル……」
呻くように名前を呼んだ。
君は可愛すぎやしないかと続けたが、ちゃんとした言葉にならずに呻き声のような何かになる。
「え? あっ! ずっと座りっぱなしでした! すみません! キツイですよね、降りま──」
セオドアを見て、慌てて膝の上から退こうとしたシャーロットは。
「キツくない。君さえ良ければこのままで居たい。シャル、頼む、今だけで良いから」
さらに引き寄せられ腰に腕を回し直され、それだけでも心臓に悪いのに。
至近距離のセオドアから、真剣な表情で言われ。
自分、心臓、破裂する。
思いながらも、シャーロットはどうにか頷いた。
「セオ、様、が、その、大、丈夫、なら、はい、……あたしは、嬉しい、ので」
本心からの言葉をまっすぐ伝えられるなんて、本当に、夢みたい。
シャーロットは思いながら、なんとか頷いた。
頬を朱に染め、ぎこちなく頷くだけでなく。
何があろうとこれだけは忘れないと記憶に刻みつけた『初めての贈り物をした時に見せてくれた微笑み』が色鮮やかに更新される微笑みで「嬉しい」と言われ、
「──、」
セオドアの意識がまた飛びかけ、
「っ!」
意識を飛ばしている場合か目の前のシャルを記憶に刻めと、飛びかけた意識を戻した。
「今のようなやり取りができるくらいまで一足飛びに誤解を解いて距離を縮めていただくための『荒療治』です」
これまで──主に魔法薬関連で──使用した茶器などを魔法で洗浄し、作った菓子類を並べながら淡々と言ったアメリアは、
「時に、セオドア様」
主人であるシャーロットではなく、セオドアへ目を向ける。
「お尋ねしますが」
無表情な顔と、淡々とした口調のまま、
「我らがシャーロット様とあなた様がすれ違いの憂き目に遭った発端を、ご存知でしょうか?」
どこか咎めるような空気をまとって、それでも淡々と問いかけた。
21
あなたにおすすめの小説
ドレスが似合わないと言われて婚約解消したら、いつの間にか殿下に囲われていた件
ぽぽよ
恋愛
似合わないドレスばかりを送りつけてくる婚約者に嫌気がさした令嬢シンシアは、婚約を解消し、ドレスを捨てて男装の道を選んだ。
スラックス姿で生きる彼女は、以前よりも自然体で、王宮でも次第に評価を上げていく。
しかしその裏で、爽やかな笑顔を張り付けた王太子が、密かにシンシアへの執着を深めていた。
一方のシンシアは極度の鈍感で、王太子の好意をすべて「親切」「仕事」と受け取ってしまう。
「一生お仕えします」という言葉の意味を、まったく違う方向で受け取った二人。
これは、男装令嬢と爽やか策士王太子による、勘違いから始まる婚約(包囲)物語。
不愛想な婚約者のメガネをこっそりかけたら
柳葉うら
恋愛
男爵令嬢のアダリーシアは、婚約者で伯爵家の令息のエディングと上手くいっていない。ある日、エディングに会いに行ったアダリーシアは、エディングが置いていったメガネを出来心でかけてみることに。そんなアダリーシアの姿を見たエディングは――。
「か・わ・い・い~っ!!」
これまでの態度から一変して、アダリーシアのギャップにメロメロになるのだった。
出来心でメガネをかけたヒロインのギャップに、本当は溺愛しているのに不器用であるがゆえにぶっきらぼうに接してしまったヒーローがノックアウトされるお話。
私がいなくなっても構わないと言ったのは、あなたの方ですよ?
睡蓮
恋愛
セレスとクレイは婚約関係にあった。しかし、セレスよりも他の女性に目移りしてしまったクレイは、ためらうこともなくセレスの事を婚約破棄の上で追放してしまう。お前などいてもいなくても構わないと別れの言葉を告げたクレイであったものの、後に全く同じ言葉をセレスから返されることとなることを、彼は知らないままであった…。
※全6話完結です。
愚か者が自滅するのを、近くで見ていただけですから
越智屋ノマ
恋愛
宮中舞踏会の最中、侯爵令嬢ルクレツィアは王太子グレゴリオから一方的に婚約破棄を宣告される。新たな婚約者は、平民出身で才女と名高い女官ピア・スミス。
新たな時代の象徴を気取る王太子夫妻の華やかな振る舞いは、やがて国中の不満を集め、王家は静かに綻び始めていく。
一方、表舞台から退いたはずのルクレツィアは、親友である王女アリアンヌと再会する。――崩れゆく王家を前に、それぞれの役割を選び取った『親友』たちの結末は?
身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)
柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!)
辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。
結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。
正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。
さくっと読んでいただけるかと思います。
【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない
ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。
既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。
未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。
後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。
欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。
* 作り話です
* そんなに長くしない予定です
没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。
亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。
しかし皆は知らないのだ
ティファが、ロードサファルの王女だとは。
そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……
【完結】王命の代行をお引き受けいたします
ユユ
恋愛
白過ぎる結婚。
逃れられない。
隣接する仲の悪い貴族同士の婚姻は王命だった。
相手は一人息子。
姉が嫁ぐはずだったのに式の前夜に事故死。
仕方なく私が花嫁に。
* 作り話です。
* 完結しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる