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75 新人さん×2
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さあ、仕事開始だ。それと、今日は、フルタイムだ。
三人で、分担して仕事をしていく。アデルさんはもう、いつ産気づいてもおかしくないから、それにも気を付けつつ。
カラン、と、今日初のお客さん。常連さんのクリスさんとアリエッタさんだ。
「(やあ光海、エイプリル。調子はどうだい?)」
「(いらっしゃいませ、クリスさん、アリエッタさん。私はいつも通りです)」
私が言って、
「いらっしゃいませ。フランス語はまだ勉強中なので、日本語で失礼します」
エイプリルさんが言った。
「ああ、そうだったね。なら、このままで。エイプリルに案内してもらおうかな」
クリスさんがフランス語から日本語に切り替え、言う。
二人で「かしこまりました」と言い、私は引っ込んだ。隅に寄り、エイプリルさんをそれとなく見てみる。
うん。仕事、出来てる。間違えても、即座に切り替えて、言い直したりとかしてる。大丈夫そう、に見える。今のところは。
まあ、私より、年上だし。そう思っていたところで、カラン。
「(いらっしゃいませ。ヴァルターさん)」
「(やあ、光海)」
いつもの対応をして、ルーティンをこなし、水を置く。
「(それで、新人さんは、あの人かな?)」
ヴァルターさんが、ちらりと、エイプリルさんを見る。
「(はい、そうです。来てもらいますか?)」
「(いや、大丈夫。注文、良いかな)」
ヴァルターさんは、牡蠣のグラタンとコーヒーをご注文。ルーティンで厨房へ。コーヒーを用意し、ヴァルターさんへ持って行く。確認して、引っ込む。
まだ開店したばっかりだしな、とドアや店内へ気を配りつつ、そんなことを考える。
と、エイプリルさんが横に来た。待機だ。
「……日本語と英語、どちらが良いですか?」
エイプリルさんに聞かれる。
「(どちらでも構いません)」
英語で答えた。
「(分かりました。光海さん、幾つか質問しても良いですか?)」
「(答えられることなら)」
「(ではまず、私は何語を覚えればいいと思いますか? ここには、様々な言語のお客様がいらっしゃると聞いているので)」
熱心だなぁ……。何語、か。
「(そうですね。無理に、とは言いませんが、覚えて損はないのは、フランス語ですかね。エイプリルさんもご存知の通り、ここはフランスの料理店ですし、フランス語を話す常連さんが顔を出して下さいます。エイプリルさんもフランス語を勉強していると、先ほど仰ってましたから、その方向はどうですか?)」
「(分かりました。そうします。……私は語学留学で日本に来ていますが、光海さんは、日本の高校生なんですよね?)」
「(そうです。高校の2年生です。17歳になります。エイプリルさんは20歳だそうですね)」
「(日本の人からすると、見た目の年齢はどのくらいに見えます?)」
「(難しい質問ですね。先に年齢を聞いていたので、最初から20歳というふうに見てしまっていました。私は何歳に見えますか?)」
「(失礼かも知れませんが、小学生くらいに)」
「(そうなんですね。私、ここで働き始めた頃も、皆さんから歳を聞かれました。日本人ってやっぱり、幼く見えるんですかね)」
「(幼く、というより、年齢が測りにくいです。実年齢より高く見える人もいますから)」
そこに、ラファエルさんから声がかかる。クリスさんたちのとヴァルターさんのが出来たということなので、二人でそれぞれ持って行く。そして引っ込む。
そのあとも、待機時間に二人で色々話した。
エイプリルさんは、上に姉が三人。私は5人きょうだいの一番上だと言った。
エイプリルさんはやはり黒が好きだそうで、私は好きな色を聞かれて、青だと答えた。
ここで働く理由も、お互いに話した。エイプリルさんは、語学留学の夜間学校に通っていて、昼間は仕事をしていたけど、肌が合わないと感じていたところにこの話が来て、それを受けたんだそうだ。
昼に向かってぽつぽつ来てくださるお客様の対応をしながら、そんな話をする。
エイプリルさんが真面目で礼儀正しいのは、そこまでの時間で理解できた。
先に、エイプリルさんが昼休憩に入る。私とアデルさんの二人で回す。ベッティーナさんたちが来て、案内、ルーティン。アデルさんもお昼へ。
戻ってきたエイプリルさんと、報連相。エイプリルさんと入れ替わりでお昼休憩。賄いを食べ、身だしなみをチェック。よし。
ホールへ戻る。簡単に報連相。問題は起きてなさそう。
いやはやしかし、エイプリルさんは冷静に対応するなぁ。バイトを始めた頃の私とは大違いだ。これが社会人ってやつなのか。
そのまま仕事を続け、夕方過ぎ。
「(ちょっと、ごめんなさい)」
アデルさんは少し苦しそうにそう言って、奥へ引っ込んだ。
ら、私とエイプリルさん、二人ともがラファエルさんに呼ばれ、厨房へ。
アデルさんが産気づいた。
まず、そう伝えられて、ラファエルさんから、これからの動きの指示を受ける。
ラファエルさんは病院へ連絡。私たちはお客様たちへ軽く事情を説明し、慌てず騒がず冷静に、けれど急いで会計を済ませ、食器を運ぶだけの片付けをして、帰りの支度をして、店から出る。
車にアデルさんを乗せ、予め用意していた荷物も乗せ、ラファエルさんは病院へ向かった。
「(……なんと言いますか、手慣れていますね、光海さん)」
車を見送ったあと、ちょっと呆気に取られていたらしいエイプリルさんが、そう言った。
「(そうですか? そう見えたなら、少しは役に立てたということですかね)」
「(光海さんは、長女だからですかね。私は末子なので)」
「(エイプリルさんだって、ラファエルさんの指示を間違えずにこなしていたじゃないですか。私がすごいなら、エイプリルさんもすごいですよ)」
「(……ありがとうございます)」
そこで、スマホに通知。エイプリルさんに断りを入れようとして、エイプリルさんにも来ているのだと知る。
ラファエルさんからだった。無事、病院には着いたという、連絡だった。
「(良かったです。途中で事故とかに合わずに。あとは無事に、母子ともに健康で赤ちゃんが産まれると良いですね)」
「(そうですね。そう願います。では、私はこれで)」
「(はい。お疲れ様でした)」
エイプリルさんと別れ、帰ろうとして。
同じ方向に進んでいるな、と、思う。
「(こちらが帰り道ですか?)」
エイプリルさんに聞かれる。
「(はい。この先の駅まで。エイプリルさんもですか?)」
「(いえ、私は、近くのCDショップに)」
「(そうなんですね。どんなのを聴くんですか?)」
エイプリルさんが口にしたのは、ガシャクロのドラマのエンディングだった。しかも、ガシャクロを観て、そのアーティストさんにハマったらしい。
「(私の友達も、ガシャクロが好きですよ。そのおかげで、私も少し、ガシャクロの知識があります)」
「(そうなんですか。ちゃんと、本当に人気なんですね、ガシャクロ。……周りには、同じ趣味の人は居なかったので)」
エイプリルさんが、少し寂しそうに言う。
「(……あの、その友達もなんですが。私の友人たちで、クリスマスパーティーをすること、ラファエルさんから聞いてますか?)」
「(ええ。日程などをさらっと)」
「(このまま、何もなければ、ですが。クリスマスパーティーがそのまま行えそうなら、ガシャクロのファンの友達、紹介してもいいですか?)」
エイプリルさんが、バッと振り向いた。
「(いいんですか)」
「(ええ。友達も、語れる仲間が増えて、嬉しいと思います)」
「(ありがとうございます。その時はお願いします)」
そんな話をして、道の途中で別れて、駅に向かった。
……無事に産まれますように。
◇
男の子の赤ちゃんが産まれた。
そう、連絡を受けたのは、寝る前。
『(おめでとうございます! アデルさんは大丈夫ですか?)』
『(ありがとう。アデルも健康だそうだ。明日から産休に入るよ。伝えていたけど、産休期間は一応、1ヶ月だ。よろしく頼む)』
『(大丈夫です、皆さんの健康が一番です!)』
『(おめでとうゴざいます。スペルなどが間違っテいたら、すみませン)』
エイプリルさんも入ってきた。
『(ありがとう。大丈夫。伝わっているよ。来てくれたばかりで悪いが、これから1ヶ月、産休に入る。その後また、仕事をお願いしたい。二人ともに)』
英語に切り替えたラファエルさんに、
『(もちろんです。そう言っていただいて、ありがとうございます)』
と、私。
『(ありがとうございます。頑張ります)』
と、エイプリルさんが返した。
「おめでたい。おめでたいなぁ」
今日が、その子の誕生日だ。記念日だ。
『(産休中に何かあったら連絡して下さい。私では心許無いと思いますが、母や祖母にアドバイスを貰ったりなどは出来ますし、下の子三人は、私も面倒を見ていましたから)』
少しして、エイプリルさんからも。
『(私にも、何か出来ることがあれば言って下さい。力になります)』
『(ありがとう、二人とも。何かあったら頼らせてもらうよ。アデルもそう言ってる。本当にありがとう)』
◇
「うぉ、うま、て、てぁ、誕生、したのか」
朝の登校時、涼にそのことを話したら、驚きながらもそう言ってくれた。
「はい。予定日より早かったですが、赤ちゃんもアデルさんも健康だそうで、ひとまず安心です」
「そりゃ、良かった」
「赤ちゃんの写真を送って貰いましたけど、見ます?」
「俺が見ていいのか?」
「良いも悪いも何もないですよ」
私はスマホを取り出し、画像を見せる。
「この子です」
そこに写っていたのは、金茶の薄毛が生えていて、白いベビーウェアを着ている赤子。
「……まじで赤いんだな。話には聞いたことあるけど」
「そうです。産まれたてはもっと赤くて、くしゃくしゃなんです。ドラマとかの出産シーンの赤ちゃんは、生後数ヶ月以上の子に出てもらうことが多いらしいですよ」
「へえ……」
「それで」
私はスマホを仕舞い、
「これから1ヶ月はバイトが無いので、どうします? 何か予定、入れます?」
「入れていいんか?」
「どちらでも。勉強でも、デートでも、あまり、詰め詰めは……まあ、良いですけども。涼となら」
「おっまえは朝から可愛いこと言いやがって」
握っていた手に力が込められ、前後に大きく振られた。
「おっ、おぅ……」
そのまま、振り子のように振られる。
「友達との時間も大切だろ。三木や百合根とも話し合え」
「なら、お昼に相談ですね」
「ああ、そうなるか」
そのまま腕を振られながら、学校へ向かった。
三人で、分担して仕事をしていく。アデルさんはもう、いつ産気づいてもおかしくないから、それにも気を付けつつ。
カラン、と、今日初のお客さん。常連さんのクリスさんとアリエッタさんだ。
「(やあ光海、エイプリル。調子はどうだい?)」
「(いらっしゃいませ、クリスさん、アリエッタさん。私はいつも通りです)」
私が言って、
「いらっしゃいませ。フランス語はまだ勉強中なので、日本語で失礼します」
エイプリルさんが言った。
「ああ、そうだったね。なら、このままで。エイプリルに案内してもらおうかな」
クリスさんがフランス語から日本語に切り替え、言う。
二人で「かしこまりました」と言い、私は引っ込んだ。隅に寄り、エイプリルさんをそれとなく見てみる。
うん。仕事、出来てる。間違えても、即座に切り替えて、言い直したりとかしてる。大丈夫そう、に見える。今のところは。
まあ、私より、年上だし。そう思っていたところで、カラン。
「(いらっしゃいませ。ヴァルターさん)」
「(やあ、光海)」
いつもの対応をして、ルーティンをこなし、水を置く。
「(それで、新人さんは、あの人かな?)」
ヴァルターさんが、ちらりと、エイプリルさんを見る。
「(はい、そうです。来てもらいますか?)」
「(いや、大丈夫。注文、良いかな)」
ヴァルターさんは、牡蠣のグラタンとコーヒーをご注文。ルーティンで厨房へ。コーヒーを用意し、ヴァルターさんへ持って行く。確認して、引っ込む。
まだ開店したばっかりだしな、とドアや店内へ気を配りつつ、そんなことを考える。
と、エイプリルさんが横に来た。待機だ。
「……日本語と英語、どちらが良いですか?」
エイプリルさんに聞かれる。
「(どちらでも構いません)」
英語で答えた。
「(分かりました。光海さん、幾つか質問しても良いですか?)」
「(答えられることなら)」
「(ではまず、私は何語を覚えればいいと思いますか? ここには、様々な言語のお客様がいらっしゃると聞いているので)」
熱心だなぁ……。何語、か。
「(そうですね。無理に、とは言いませんが、覚えて損はないのは、フランス語ですかね。エイプリルさんもご存知の通り、ここはフランスの料理店ですし、フランス語を話す常連さんが顔を出して下さいます。エイプリルさんもフランス語を勉強していると、先ほど仰ってましたから、その方向はどうですか?)」
「(分かりました。そうします。……私は語学留学で日本に来ていますが、光海さんは、日本の高校生なんですよね?)」
「(そうです。高校の2年生です。17歳になります。エイプリルさんは20歳だそうですね)」
「(日本の人からすると、見た目の年齢はどのくらいに見えます?)」
「(難しい質問ですね。先に年齢を聞いていたので、最初から20歳というふうに見てしまっていました。私は何歳に見えますか?)」
「(失礼かも知れませんが、小学生くらいに)」
「(そうなんですね。私、ここで働き始めた頃も、皆さんから歳を聞かれました。日本人ってやっぱり、幼く見えるんですかね)」
「(幼く、というより、年齢が測りにくいです。実年齢より高く見える人もいますから)」
そこに、ラファエルさんから声がかかる。クリスさんたちのとヴァルターさんのが出来たということなので、二人でそれぞれ持って行く。そして引っ込む。
そのあとも、待機時間に二人で色々話した。
エイプリルさんは、上に姉が三人。私は5人きょうだいの一番上だと言った。
エイプリルさんはやはり黒が好きだそうで、私は好きな色を聞かれて、青だと答えた。
ここで働く理由も、お互いに話した。エイプリルさんは、語学留学の夜間学校に通っていて、昼間は仕事をしていたけど、肌が合わないと感じていたところにこの話が来て、それを受けたんだそうだ。
昼に向かってぽつぽつ来てくださるお客様の対応をしながら、そんな話をする。
エイプリルさんが真面目で礼儀正しいのは、そこまでの時間で理解できた。
先に、エイプリルさんが昼休憩に入る。私とアデルさんの二人で回す。ベッティーナさんたちが来て、案内、ルーティン。アデルさんもお昼へ。
戻ってきたエイプリルさんと、報連相。エイプリルさんと入れ替わりでお昼休憩。賄いを食べ、身だしなみをチェック。よし。
ホールへ戻る。簡単に報連相。問題は起きてなさそう。
いやはやしかし、エイプリルさんは冷静に対応するなぁ。バイトを始めた頃の私とは大違いだ。これが社会人ってやつなのか。
そのまま仕事を続け、夕方過ぎ。
「(ちょっと、ごめんなさい)」
アデルさんは少し苦しそうにそう言って、奥へ引っ込んだ。
ら、私とエイプリルさん、二人ともがラファエルさんに呼ばれ、厨房へ。
アデルさんが産気づいた。
まず、そう伝えられて、ラファエルさんから、これからの動きの指示を受ける。
ラファエルさんは病院へ連絡。私たちはお客様たちへ軽く事情を説明し、慌てず騒がず冷静に、けれど急いで会計を済ませ、食器を運ぶだけの片付けをして、帰りの支度をして、店から出る。
車にアデルさんを乗せ、予め用意していた荷物も乗せ、ラファエルさんは病院へ向かった。
「(……なんと言いますか、手慣れていますね、光海さん)」
車を見送ったあと、ちょっと呆気に取られていたらしいエイプリルさんが、そう言った。
「(そうですか? そう見えたなら、少しは役に立てたということですかね)」
「(光海さんは、長女だからですかね。私は末子なので)」
「(エイプリルさんだって、ラファエルさんの指示を間違えずにこなしていたじゃないですか。私がすごいなら、エイプリルさんもすごいですよ)」
「(……ありがとうございます)」
そこで、スマホに通知。エイプリルさんに断りを入れようとして、エイプリルさんにも来ているのだと知る。
ラファエルさんからだった。無事、病院には着いたという、連絡だった。
「(良かったです。途中で事故とかに合わずに。あとは無事に、母子ともに健康で赤ちゃんが産まれると良いですね)」
「(そうですね。そう願います。では、私はこれで)」
「(はい。お疲れ様でした)」
エイプリルさんと別れ、帰ろうとして。
同じ方向に進んでいるな、と、思う。
「(こちらが帰り道ですか?)」
エイプリルさんに聞かれる。
「(はい。この先の駅まで。エイプリルさんもですか?)」
「(いえ、私は、近くのCDショップに)」
「(そうなんですね。どんなのを聴くんですか?)」
エイプリルさんが口にしたのは、ガシャクロのドラマのエンディングだった。しかも、ガシャクロを観て、そのアーティストさんにハマったらしい。
「(私の友達も、ガシャクロが好きですよ。そのおかげで、私も少し、ガシャクロの知識があります)」
「(そうなんですか。ちゃんと、本当に人気なんですね、ガシャクロ。……周りには、同じ趣味の人は居なかったので)」
エイプリルさんが、少し寂しそうに言う。
「(……あの、その友達もなんですが。私の友人たちで、クリスマスパーティーをすること、ラファエルさんから聞いてますか?)」
「(ええ。日程などをさらっと)」
「(このまま、何もなければ、ですが。クリスマスパーティーがそのまま行えそうなら、ガシャクロのファンの友達、紹介してもいいですか?)」
エイプリルさんが、バッと振り向いた。
「(いいんですか)」
「(ええ。友達も、語れる仲間が増えて、嬉しいと思います)」
「(ありがとうございます。その時はお願いします)」
そんな話をして、道の途中で別れて、駅に向かった。
……無事に産まれますように。
◇
男の子の赤ちゃんが産まれた。
そう、連絡を受けたのは、寝る前。
『(おめでとうございます! アデルさんは大丈夫ですか?)』
『(ありがとう。アデルも健康だそうだ。明日から産休に入るよ。伝えていたけど、産休期間は一応、1ヶ月だ。よろしく頼む)』
『(大丈夫です、皆さんの健康が一番です!)』
『(おめでとうゴざいます。スペルなどが間違っテいたら、すみませン)』
エイプリルさんも入ってきた。
『(ありがとう。大丈夫。伝わっているよ。来てくれたばかりで悪いが、これから1ヶ月、産休に入る。その後また、仕事をお願いしたい。二人ともに)』
英語に切り替えたラファエルさんに、
『(もちろんです。そう言っていただいて、ありがとうございます)』
と、私。
『(ありがとうございます。頑張ります)』
と、エイプリルさんが返した。
「おめでたい。おめでたいなぁ」
今日が、その子の誕生日だ。記念日だ。
『(産休中に何かあったら連絡して下さい。私では心許無いと思いますが、母や祖母にアドバイスを貰ったりなどは出来ますし、下の子三人は、私も面倒を見ていましたから)』
少しして、エイプリルさんからも。
『(私にも、何か出来ることがあれば言って下さい。力になります)』
『(ありがとう、二人とも。何かあったら頼らせてもらうよ。アデルもそう言ってる。本当にありがとう)』
◇
「うぉ、うま、て、てぁ、誕生、したのか」
朝の登校時、涼にそのことを話したら、驚きながらもそう言ってくれた。
「はい。予定日より早かったですが、赤ちゃんもアデルさんも健康だそうで、ひとまず安心です」
「そりゃ、良かった」
「赤ちゃんの写真を送って貰いましたけど、見ます?」
「俺が見ていいのか?」
「良いも悪いも何もないですよ」
私はスマホを取り出し、画像を見せる。
「この子です」
そこに写っていたのは、金茶の薄毛が生えていて、白いベビーウェアを着ている赤子。
「……まじで赤いんだな。話には聞いたことあるけど」
「そうです。産まれたてはもっと赤くて、くしゃくしゃなんです。ドラマとかの出産シーンの赤ちゃんは、生後数ヶ月以上の子に出てもらうことが多いらしいですよ」
「へえ……」
「それで」
私はスマホを仕舞い、
「これから1ヶ月はバイトが無いので、どうします? 何か予定、入れます?」
「入れていいんか?」
「どちらでも。勉強でも、デートでも、あまり、詰め詰めは……まあ、良いですけども。涼となら」
「おっまえは朝から可愛いこと言いやがって」
握っていた手に力が込められ、前後に大きく振られた。
「おっ、おぅ……」
そのまま、振り子のように振られる。
「友達との時間も大切だろ。三木や百合根とも話し合え」
「なら、お昼に相談ですね」
「ああ、そうなるか」
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