学年一の不良が図書館で勉強してた。

山法師

文字の大きさ
77 / 134

77 二学期末試験

しおりを挟む
 映画の撮影を見学し、どうだった? と、監督に聞かれて、

「すごいですね。演じている時の役の入り込みと、その切り替えに驚きました」

 マリアはあえて、思ったことをそのまま述べた。
 監督は笑い、良い視点持ってるね、と言い、

「やっぱり君に、出て欲しいな。企画書、見てみるだけでもいいから、貰ってくれない?」
「分かりました。ありがとうございます」

 差し出されたそれを、マリアは受け取った。

「……ミエラ・笠原」

 家に帰り、部屋で企画書を読み始め、マリアはその映画の原作・脚本を担当する人の名を、口にした。
 それは、光海がファンだと言っている、小説家の名前。

「なんとも、面白い縁だな」

 そのまま、企画書を読み進めていく。出られるとしても、自分は端役だろうが、この映画に関われるかもしれない。そう思っていたら、マリアは自分が、少なからず、高揚していることに気付く。

「……決まりだな」

 出たい、と、連絡をしよう。
 そう思い、スマホを手に取って、通知に気付く。
 ウェルナーからだった。

「……」

 開けば、

『今日は論文の資料集めをしてたんだ、マリアは?』

 という、メッセージ。
 ウェルナーは、3、4日に一度、簡素なメッセージを送ってくる。以前のような、こちらへ深く突っ込んでくるようなメッセージは送ってこない。

『お疲れ様です。仕事関連で、ある現場の見学をしていました』

 そう送る。
 それに対してウェルナーは、どんな反応をするか。以前のように突っ込んでくるか、最近のように軽く触れるだけなのか。

「……ある意味、難しいな」

 マリアへ気を遣い、自分の想いを仕舞おうとしているウェルナーの、けれどはみ出すそれに気付く度、複雑な気分になる。
 まるで自分が翻弄されているようだ。マリアは思い、その考えを打ち消した。

  ◇

「みつみんや、シャルルくんは元気かね」
「すくすく成長しているよ」

 12月に入り、二学期の期末試験対策期間となった。
 私は涼と、桜ちゃんとマリアちゃんと、高峰さんとも一緒に、放課後の学校の図書室で勉強しているところ。
 桜ちゃんが言ったシャルルくんとは、アデルさんとラファエルさんの赤ちゃんの名前だ。
 子育ての様子は、定期的に送られてくる。送ってもらっている。その度にコメントをしている。
 出産祝いは、産休明けに、直接渡すつもりだ。……最終的に、赤ちゃんの肌にも優しいというタオルを選んだけども。

「なら良かった。そのうち私も会えるかな」
「会えるんじゃない?」

 私は言って、隣に座る涼の手元と顔を見て、つっかえている部分の解説をする。対策範囲への理解を進めてもらっていく。
 そのまた隣で黙々と、高峰さんが試験範囲の勉強をしている。チラッとノートを見てしまったけど、丁寧かつシンプルな書き方をしていた。これがこの人のやり方か、と思った。
 時間になり、下校して、駅から家までの帰り道で。

「涼、ジョン・ドゥさんは、生配信とかする予定、あります?」
「は? 急になんだ?」
「いえ、大樹が。ジョン・ドゥさんにハマったらしくて。暇さえあれば観てるんですよ、動画を」

 私は家族にもジョン・ドゥさんを勧め、大樹がどハマリした。勧誘成功である。

「マジか」
「マジです。で、生配信とかしないのかなぁこの人、と、言ってました」
「……そっか。調べてみるわ」

 涼の、柔らかい口調に。

「ありがとうございます」

 友達思いだなぁ、と思いながら、お礼を言った。

  ◇

 朝の勉強と、授業と、休み時間の課題と放課後と勉強会での試験対策と。前回もしたんだからと、涼に、潰れない程度の手加減で、ある意味容赦なく教えていく。
 だからこそ、分かる。涼は日に日に、範囲への理解を深めていると。
 期末試験は、言ってしまえば学期の復習テストだ。一緒に課題を解いたり、勉強したりしていたおかげでか、涼もだいぶ、試験対策へのコツを掴んだらしい。
 私はまた安心して、自分の試験対策へも、きちんと意識を向けていられるし、自分自身も身に付いていると、改めて実感する。
 そして、二学期の期末試験の日程。これも一学期同様、3日間行われる。

 試験当日、その初日。
 私は、朝は涼と一緒にその日のテストの範囲の復習をして、試験に臨み、休み時間も、充てられるだけ次のテスト範囲の復習に充てた。試験が終わり、お昼を食べてからは、次の日のテストへの対策。
 3日目のお昼過ぎ。全てのテストを終え、ふう、と息を吐いた。解答用紙が集められて、回収されて。

「涼」

 解散の声がかけられ、私は涼の席へと向かった。

「光海」

 一学期の時より、少し、余裕があるように見える。

「手応え、どうでした?」
「……あった。俺なりには」
「なら、良かったです。帰ります? 自己採点していきます?」

 涼は少し、黙って。

「(……俺の家でしてもいいか)」

 フランス語で言ってきた。……涼、あのね。

「(それは構いませんが、涼。フランス語を話せる生徒だって、普通に居るんですよ?)」

 少し笑いそうになりながら言えば、涼はむくれたような顔になって、

「(分かってる。けど、全員じゃねぇだろ)」
「(まあ、それはそうですね)」
「(なら、まだマシ)」

 涼。あなたがそれで良いなら、私もそれで良い。
 そして、涼の家にお邪魔して、いつものように仏壇にお線香を上げて。
 涼の作ってくれたサンドイッチを食べてから、自己採点を始める。

「……」

 うん。合ってる。ほぼ満点だと思う。ケアレスミスが無かったら、きっと、満点だった。ちょっと悔しい。
 涼のほうを見れば。

「……? ? ??」

 意外そうな顔をしていた。

「涼、どうでした?」
「俺の、採点だと、前回より、良いんだが……自信無い。見てくれ」

 渡された問題用紙を見る。採点していく。

「……そうですね、赤点回避どころか、平均点くらいいけるのでは? 涼の実力ですよ」
「マジか……」

 涼は、後ろに手をつき、天井を見上げ、現実味のなさそうな声で言った。

「マジですよ。涼、テストが返ってくるまで、息抜きしましょう。打ち上げをしても良いですけど……まだ、お店は産休中ですし、どうします?」
「一旦、息抜きっていうか、癒やしが欲しい」

 涼はそう言うと、私へ顔を向け、そのまま緩く抱きしめてきた。

「……なら、私も癒やされたいです」

 言って、涼の背中に手を回す。

「……光海」
「はい」
「光海」
「うん」
「…………お前のおかげで、今、すっごい癒やされてる」
「それなら、良かったです」
「俺には、光海を癒やす効果、あるか?」
「あるので、こうしてます」
「なら、良かった」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが

akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。 毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。 そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。 数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。 平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、 幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。 笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。 気づけば心を奪われる―― 幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

家から出ない女優の幼馴染を連れ出したら、いつの間にか伝説になっていた件。

Memu(メム)
恋愛
学校に行かない引きこもりの国民的女優――水宮小鞠。 女の子に間違われる地味男子――白雲凪。 俺に与えられた役目はひとつ。 彼女を、学校へ連れて行くこと。 騒動になれば退学。 体育祭までに通わせられなくても退学。 成功率ほぼゼロの無理ゲーだ。 距離は近い。 でも、心は遠い。 甘えてくるくせに、本音は隠す幼馴染。 それでも―― 俺は彼女の手を引く。 退学リミット付き登校ミッションから始まる、 国民的スター幼馴染とのドタバタ青春ラブコメ、ここに開幕。

俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。

甘酢ニノ
恋愛
彼女いない歴=年齢の高校生・相沢蓮。 平凡な日々を送る彼の前に立ちはだかるのは── 学園一の美少女・黒瀬葵。 なぜか彼女は、俺にだけやたらとツンツンしてくる。 冷たくて、意地っ張りで、でも時々見せるその“素”が、どうしようもなく気になる。 最初はただの勘違いだったはずの関係。 けれど、小さな出来事の積み重ねが、少しずつ2人の距離を変えていく。 ツンデレな彼女と、不器用な俺がすれ違いながら少しずつ近づく、 焦れったくて甘酸っぱい、青春ラブコメディ。

処理中です...