学年一の不良が図書館で勉強してた。

山法師

文字の大きさ
104 / 134

104 ご褒美の内容

しおりを挟む
「っていう、相談です……」

 コーヒーチェーンにて。数日経っても不安定な涼のことと、その涼への『ご褒美』が上手く思い浮かばない私は、桜ちゃんとマリアちゃんに、SOSを出した。

「いやもうさ、バレンタインの時も言ったけどさ、なんでも嬉しく思ってくれると思うし、もう、これだけ真剣に考えてくれてるだけで、橋本ちゃんにはご褒美じゃない?」

 そう言ってくれた桜ちゃんは、カフェオレを飲む。

「……私も……逆のような立場だが……こういうのでも、なんでも、嬉しく感じると思うぞ」

 頬を少し染めたマリアちゃんは、左腕を上げて、そこに付けている瀟洒なブレスレットを見せて、言う。
 それは、ウェルナーさんからのプレゼントだ。9月が誕生月のマリアちゃんに、誕生石のクンツァイトが使われているブレスレットを、『テスト頑張って』と、贈ったのだそうな。

「うー……なんか、考え過ぎかなぁ……涼、ずっと不安そうだし……なんとかしたいって気持ちが、先走ってるのかな……」
「そうかもねぇ……二人でどっかにデートとか、そういうのは、ダメなん?」

 桜ちゃんが言ってくれるけど。

「良い場所が思い浮かびません……」

 情けない返事をしてしまう。

「……みつみんさ、橋本ちゃんの不安に、侵食されちゃってない?」

 へ?

「そうだな。そう見える。橋本を心配するあまり、視野が狭くなってしまってないか?」

 二人に言われて、そういや、私もすごく不安になってるな、と気付いた。

「な、なる、ほど……。今、それ、とっても腑に落ちた……」

 教える側が不安がってちゃ、教わる側の不安なんて、払拭できないもんね。

「えーと、まず、私は、いつも通りにしてるのが一番、なのかな。それプラス、ご褒美?」
「うんうん。そんな方向性で、良いんじゃない?」
「そっか……」

 ホッとして、口をつけられてなかったミルクティーを、一口飲んで。

「じゃあ、その、改めて。ご褒美の相談、乗ってくれる?」
「良いともさ」
「協力する」

 二人が頼もしい……。
 そして、相談した結果の『ご褒美』その他を、ラインで送ろうとして。二人から直接伝えるべき、と言われたので、涼に確認を取ってから、涼の家へ。

「で、どした? 伝えたいことって?」

 玄関に入れてもらって、日向子さんに挨拶してから、涼の部屋で。

「あのですね、まず、抱きしめても良いですか?」
「は? いい、つーか、嬉しいけど……?」

 私は立ったまま、涼を抱きしめた。

「涼。涼は、絶対、留年しません。一緒に3年になれます。涼と一緒に、3年になりたいです。だから、勉強、一緒に、頑張りましょう」

 ぎゅう、と抱きしめて、言う。

「……もしかして、これ、ご褒美?」

 涼が、放心したような声を出す。

「これは違います。あと、これは、これから毎朝、やります」
「は?!」

 桜ちゃんとマリアちゃんと相談して、まずは、涼の不安をなるべく取り除こう、という話になった。そのために、こうすることに決めた。

「ご褒美は、別です」

 顔を上げれば、赤い顔で困惑してる涼と、目が合った。

「べ、別……?」

 顔も声も、狼狽えてる。……嫌って言われたら、また、違うのを考えれば良い。

「一緒にプールに行きたいです」

 言ったら、涼が完全に、固まった。

「ご褒美、自分に置き換えて考えたんです。夏、プールとか、お祭りとか、花火……は後夜祭で見れましたけど。そういうの、出来てないじゃないですか。だから、そういうのが、したいです。ピアス付けてても入れるプール、もう見つけてあります。どうですか?」
「……ど、……おま、おまえぇ……!」

 涼が顔をしかめたと思ったら、

「んむっ?!」

 上下の唇を挟むように抓まれた。

「お前、光海、この、おっまえこの……!」
「むう、えぅぅ……」

 け、刑に処された……。

「は、はめれひはは駄目でしたか?」
「ちっげぇわ。めちゃくちゃ嬉しいんだよこの、可愛い、この、光海お前ぇぇ……!」

 唇から手が離れて、思いっきり抱きしめられた。

「(お前は俺をどうしたいんだよこれ以上お前の虜にさせてどうするつもりだよ可愛い可愛い可愛い可愛いおっまえ光海可愛すぎるんだよ)」

 ……えーと。

「プール、良いってことですか?」
「行きたい。頑張る。てか何? それ言うために来たのか?」
「そうですけど……?」
「…………あーーーーくそ。離したくない帰したくないずっとこうしてたい」
「……あの、涼、」
「分かってるよ。声に出して落ち着かせてるだけだから」
「いえ、その、試験勉強、してたんですよね? なら、このまま、一緒にしませんか?」

 ローテーブルに、教材が広げてあるし。

「……光海の予定は?」
「家に帰って、勉強する予定でした。なので、問題ありません。時間はあまり取れませんが、それでも良いなら、ですけど」
「良いに決まってんだろ嫌って言う訳ねぇだろが」

 涼はまた、抱きしめる腕に力を込めてから、

「今から光海と一緒に居れんだろ? それだけで捗るわ。捗りまくるんだよ」

 私を少し離して、赤い顔で睨みつけるようにして、言われた。

 ◇

 なんか、朝の励ましとご褒美の効果は絶大だったらしく、それからの涼は、時々不安そうにはするけど、試験対策に集中出来るようになったようだった。そして私もまた、そのおかげで自分の勉強に集中し直せて、年度末試験対策を、順調に進めることが出来ている。
 対策期間の途中、別件で、マリアちゃんから、

『ウェルナーさんにお返しをしようとしたら、呼び捨てにして欲しいって言われたんだが。これ、釣り合わなくないか?』

 という相談を桜ちゃんと共に受けたけど、私たちは二人して、なら、それと合わせてお返しを贈れば良いんじゃない? と言ったりした。そしてマリアちゃんは、ウェルナーさんを呼び捨てにすることと、モノのお返し、をしようとして、逆にデートに誘われて、それがお返しになるなら、と、試験が終わったらデートすることになったそうな。
 ウェルナーさん、フルスロットル。

 そんなこんなで、年度末試験の日が、やって来た。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが

akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。 毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。 そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。 数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。 平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、 幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。 笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。 気づけば心を奪われる―― 幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

家から出ない女優の幼馴染を連れ出したら、いつの間にか伝説になっていた件。

Memu(メム)
恋愛
学校に行かない引きこもりの国民的女優――水宮小鞠。 女の子に間違われる地味男子――白雲凪。 俺に与えられた役目はひとつ。 彼女を、学校へ連れて行くこと。 騒動になれば退学。 体育祭までに通わせられなくても退学。 成功率ほぼゼロの無理ゲーだ。 距離は近い。 でも、心は遠い。 甘えてくるくせに、本音は隠す幼馴染。 それでも―― 俺は彼女の手を引く。 退学リミット付き登校ミッションから始まる、 国民的スター幼馴染とのドタバタ青春ラブコメ、ここに開幕。

俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。

甘酢ニノ
恋愛
彼女いない歴=年齢の高校生・相沢蓮。 平凡な日々を送る彼の前に立ちはだかるのは── 学園一の美少女・黒瀬葵。 なぜか彼女は、俺にだけやたらとツンツンしてくる。 冷たくて、意地っ張りで、でも時々見せるその“素”が、どうしようもなく気になる。 最初はただの勘違いだったはずの関係。 けれど、小さな出来事の積み重ねが、少しずつ2人の距離を変えていく。 ツンデレな彼女と、不器用な俺がすれ違いながら少しずつ近づく、 焦れったくて甘酸っぱい、青春ラブコメディ。

処理中です...