131 / 134
131 体育祭、閉幕
しおりを挟む
全ての競技が終わりました。順位も決まりました。
その、順位が。
青と緑、同率1位。という結果に。
最終結果にどよめきが起こったけど、3色の代表が壇上に上がると、どよめきはざわめきに。
はい。涼が言った通りに、高峰さんが注目されまくってます。あれが噂の高峰先輩? などと聞こえてきます。高峰さんの苦労が窺い知れる。
金のトロフィーを青と緑で受け取って、赤は銀と銅のトロフィーを片手持ちにして。
グラッとよろめきかけた赤の代表の女子を高峰さんが支える、という瞬間があり、またどよめきが起こったり黄色いのかなんなのか悲鳴が上がったりしたけど。
高峰さん、マジ苦労してそうだな、とか思ったけど。
そんな感じで表彰式は終わり、校長がたのお言葉が終わり、校歌が流れ。
体育祭は閉幕。
教室に戻って、お菓子を取って、やって来たカメラマンさんに写真を撮ってもらって。
着替えて、打ち上げです。
「まさかの同率1位という結果。トロフィーを受け取った時の気持ちを、どうぞ」
クラスメイトの一人が、高峰さんにマイク代わりのお手拭きを向ける。
「それ、教室でもやったよね。受け取った時の気持ちっていうか、用意する側の慌ただしさのほうが記憶に残ってるね」
涼の左隣に座る高峰さんは苦笑しながら、それでもちゃんと答えている。
「次から伊緒奈くんだけじゃなくて、高峰っち目当ての子も教室に来そうだね」
私の右側に座っている、桜ちゃんのそれに、
「あー、なりそう」
答えながら、ナムルを食べる。
「来るだろうな。去年と一昨年は知らねぇけど、中学の時は3年間ずっと、高峰目当ての女子が休み時間毎に顔見に来てたし」
私の左に座ってる涼のそれに、
「高峰、すげぇな」
「モテる奴は違うな」
「苦労もしてそうだけど」
「今お前、フリーだもんな。橋本は成川さんがいるけど」
などなど、周りが口々に言う。
「橋本。橋本はさ、ホントに今は成川さんがいるから良いけど。中学の時、橋本目当ての人もいたんだよ? まだ分かってない?」
ほぉう?
「なんとなく分かったからやめてくれ。俺は光海一筋なんだよ」
ちょい、涼。
「言うようになったな、橋本」
「去年の今頃が懐かしい」
「それ、直に見てはいないけど、分かりやすいほどに成川さんにくっついてたって話?」
そんな話は知らないよ? 思い返せば、涼の態度は分かりやすかったけど。
「俺、そんな分かりやすかったか?」
唐揚げを飲み込んだ涼が、私に顔を向ける。
「えーと……思い返せば分かりやすかったかな、と。ですけど、その時は私も分かってませんでしたし」
「めっちゃ分かりやすかったぜ、二人ともが」
桜ちゃん?
「僕の耳にも噂程度に届いてたしね。もしかして、みたいな」
高峰さん?
「そんなだったか。分かりやすいだろうなとは思ってたけど」
涼? なんでそんなサラッと受け流せるの? そしてそのまま何事もなかったように食事を再開するのはなんなの?
「光海? 食べねぇの?」
「……食べますよ。ええ、食べます」
ふんだ。涼がそういうふうにするなら、私だって食事に集中するもん。
◇
「なあ、光海」
拗ねた光海が可愛かった打ち上げを終え、受験生だからと短めだった二次会も終え、その帰路で。
「なんですか?」
当たり前のように手を繋ぎ、共に夜道を帰ってくれる、その大切な存在が、また、当たり前のように返事をくれる。
涼は、前を向きながら、
「俺さ、やっぱり、何があっても光海と離れたくないし、繋がってたいよ。大学もさ、光海のことだから行けると思うし、応援もしてる。けど、遠距離恋愛の難しさってのも、怖く思ってんだ、俺」
握る手に、力を込めてしまう。心細くて、気温が高くなってきた季節だというのに、その温もりを感じていたくて。
「……涼、ちょっとこっち向いて下さい」
光海が立ち止まり、涼も立ち止まる。言われた通りに顔を向ける。
光海は、真剣な顔で、自分を見上げていて。
まだ青いままの光海の瞳に、夜の街の灯りが映りこむ。幻想的だな、と涼は思う。
幻のように、美しい。どんな姿の彼女も好きだけれど、だからこそ、どんな時でも心を奪われる。
まっすぐに見つめてくれる、ただそれだけで、安心する。そして、より深く、囚われていく。
「遠距離恋愛の難しさ、私も少しは調べましたよ」
「マジか」
その言葉でもう、満足してしまいそうになる。
「マジですよ。特にフランスと日本だと、時差とかありますし。でも、これからどうやってその不安を解消していくか、一緒に考えていけます。そもそも、フランスの大学、合否判定も4月より後のことが多いですし、入学も9月からなので、河南を卒業しても、すぐに日本から離れる訳じゃないですし」
それ、調べたから知ってんだよな。
涼は言いかけて、でも、一生懸命さに甘えていたくて、「そっか」と言った。
「そうなんです。行けるって言ってくれるの、とても嬉しいです。不安を教えてくれるのも、嬉しいです。それに、えぇと、その」
光海が頬を染め、少しだけ目を彷徨わせる。自分の手を握り直してくれて、顔だけでなく体をこちらに向けてくれる。
「ん」
涼も、向き合うように姿勢を変えた。
「その、」
頬を赤くしたまま、視線がまた、自分に向く。
「涼との将来のことも、ちゃんと考えてるんですよ? だから、不安、ちゃんと共有して、一緒に考えていき、いこう。涼」
言い直すの、ホントに可愛すぎるんだよ。
「……ありがとうな、光海。ちょっと抱きしめて良いか?」
「え、あ、はい。どうぞ」
解かれそうになった手を繋ぎ直して、片手で光海を引き寄せ、抱きしめる。
片腕だけなのに、胸の中に収まってくれる光海を、愛しいと思う。手を握り返してくれて、背中に腕を回してくれることを、嬉しく思う。
「ありがとな、光海。大好きだよ」
「私も、好き、あ、大好きです、だよ。涼」
「ほんっとマジお前どこまでも可愛いな」
「ど、どうも……?」
ずっとこうしていたいけど、今は外だし。
涼は、離れ難く思いながらも、「ありがとな」と、体を離す。
「帰るか」
「はい、あ、うん」
微笑みながら答えられて、言い直されて、また、抱きしめたくなったけれど。
流石にな、と、押し留めて、ゆっくり歩き出した。
その、順位が。
青と緑、同率1位。という結果に。
最終結果にどよめきが起こったけど、3色の代表が壇上に上がると、どよめきはざわめきに。
はい。涼が言った通りに、高峰さんが注目されまくってます。あれが噂の高峰先輩? などと聞こえてきます。高峰さんの苦労が窺い知れる。
金のトロフィーを青と緑で受け取って、赤は銀と銅のトロフィーを片手持ちにして。
グラッとよろめきかけた赤の代表の女子を高峰さんが支える、という瞬間があり、またどよめきが起こったり黄色いのかなんなのか悲鳴が上がったりしたけど。
高峰さん、マジ苦労してそうだな、とか思ったけど。
そんな感じで表彰式は終わり、校長がたのお言葉が終わり、校歌が流れ。
体育祭は閉幕。
教室に戻って、お菓子を取って、やって来たカメラマンさんに写真を撮ってもらって。
着替えて、打ち上げです。
「まさかの同率1位という結果。トロフィーを受け取った時の気持ちを、どうぞ」
クラスメイトの一人が、高峰さんにマイク代わりのお手拭きを向ける。
「それ、教室でもやったよね。受け取った時の気持ちっていうか、用意する側の慌ただしさのほうが記憶に残ってるね」
涼の左隣に座る高峰さんは苦笑しながら、それでもちゃんと答えている。
「次から伊緒奈くんだけじゃなくて、高峰っち目当ての子も教室に来そうだね」
私の右側に座っている、桜ちゃんのそれに、
「あー、なりそう」
答えながら、ナムルを食べる。
「来るだろうな。去年と一昨年は知らねぇけど、中学の時は3年間ずっと、高峰目当ての女子が休み時間毎に顔見に来てたし」
私の左に座ってる涼のそれに、
「高峰、すげぇな」
「モテる奴は違うな」
「苦労もしてそうだけど」
「今お前、フリーだもんな。橋本は成川さんがいるけど」
などなど、周りが口々に言う。
「橋本。橋本はさ、ホントに今は成川さんがいるから良いけど。中学の時、橋本目当ての人もいたんだよ? まだ分かってない?」
ほぉう?
「なんとなく分かったからやめてくれ。俺は光海一筋なんだよ」
ちょい、涼。
「言うようになったな、橋本」
「去年の今頃が懐かしい」
「それ、直に見てはいないけど、分かりやすいほどに成川さんにくっついてたって話?」
そんな話は知らないよ? 思い返せば、涼の態度は分かりやすかったけど。
「俺、そんな分かりやすかったか?」
唐揚げを飲み込んだ涼が、私に顔を向ける。
「えーと……思い返せば分かりやすかったかな、と。ですけど、その時は私も分かってませんでしたし」
「めっちゃ分かりやすかったぜ、二人ともが」
桜ちゃん?
「僕の耳にも噂程度に届いてたしね。もしかして、みたいな」
高峰さん?
「そんなだったか。分かりやすいだろうなとは思ってたけど」
涼? なんでそんなサラッと受け流せるの? そしてそのまま何事もなかったように食事を再開するのはなんなの?
「光海? 食べねぇの?」
「……食べますよ。ええ、食べます」
ふんだ。涼がそういうふうにするなら、私だって食事に集中するもん。
◇
「なあ、光海」
拗ねた光海が可愛かった打ち上げを終え、受験生だからと短めだった二次会も終え、その帰路で。
「なんですか?」
当たり前のように手を繋ぎ、共に夜道を帰ってくれる、その大切な存在が、また、当たり前のように返事をくれる。
涼は、前を向きながら、
「俺さ、やっぱり、何があっても光海と離れたくないし、繋がってたいよ。大学もさ、光海のことだから行けると思うし、応援もしてる。けど、遠距離恋愛の難しさってのも、怖く思ってんだ、俺」
握る手に、力を込めてしまう。心細くて、気温が高くなってきた季節だというのに、その温もりを感じていたくて。
「……涼、ちょっとこっち向いて下さい」
光海が立ち止まり、涼も立ち止まる。言われた通りに顔を向ける。
光海は、真剣な顔で、自分を見上げていて。
まだ青いままの光海の瞳に、夜の街の灯りが映りこむ。幻想的だな、と涼は思う。
幻のように、美しい。どんな姿の彼女も好きだけれど、だからこそ、どんな時でも心を奪われる。
まっすぐに見つめてくれる、ただそれだけで、安心する。そして、より深く、囚われていく。
「遠距離恋愛の難しさ、私も少しは調べましたよ」
「マジか」
その言葉でもう、満足してしまいそうになる。
「マジですよ。特にフランスと日本だと、時差とかありますし。でも、これからどうやってその不安を解消していくか、一緒に考えていけます。そもそも、フランスの大学、合否判定も4月より後のことが多いですし、入学も9月からなので、河南を卒業しても、すぐに日本から離れる訳じゃないですし」
それ、調べたから知ってんだよな。
涼は言いかけて、でも、一生懸命さに甘えていたくて、「そっか」と言った。
「そうなんです。行けるって言ってくれるの、とても嬉しいです。不安を教えてくれるのも、嬉しいです。それに、えぇと、その」
光海が頬を染め、少しだけ目を彷徨わせる。自分の手を握り直してくれて、顔だけでなく体をこちらに向けてくれる。
「ん」
涼も、向き合うように姿勢を変えた。
「その、」
頬を赤くしたまま、視線がまた、自分に向く。
「涼との将来のことも、ちゃんと考えてるんですよ? だから、不安、ちゃんと共有して、一緒に考えていき、いこう。涼」
言い直すの、ホントに可愛すぎるんだよ。
「……ありがとうな、光海。ちょっと抱きしめて良いか?」
「え、あ、はい。どうぞ」
解かれそうになった手を繋ぎ直して、片手で光海を引き寄せ、抱きしめる。
片腕だけなのに、胸の中に収まってくれる光海を、愛しいと思う。手を握り返してくれて、背中に腕を回してくれることを、嬉しく思う。
「ありがとな、光海。大好きだよ」
「私も、好き、あ、大好きです、だよ。涼」
「ほんっとマジお前どこまでも可愛いな」
「ど、どうも……?」
ずっとこうしていたいけど、今は外だし。
涼は、離れ難く思いながらも、「ありがとな」と、体を離す。
「帰るか」
「はい、あ、うん」
微笑みながら答えられて、言い直されて、また、抱きしめたくなったけれど。
流石にな、と、押し留めて、ゆっくり歩き出した。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる
歩く魚
恋愛
かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。
だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。
それは気にしてない。俺は深入りする気はない。
人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。
だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。
――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。
隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが
akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。
毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。
そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。
数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。
平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、
幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。
笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。
気づけば心を奪われる――
幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
家から出ない女優の幼馴染を連れ出したら、いつの間にか伝説になっていた件。
Memu(メム)
恋愛
学校に行かない引きこもりの国民的女優――水宮小鞠。
女の子に間違われる地味男子――白雲凪。
俺に与えられた役目はひとつ。
彼女を、学校へ連れて行くこと。
騒動になれば退学。
体育祭までに通わせられなくても退学。
成功率ほぼゼロの無理ゲーだ。
距離は近い。
でも、心は遠い。
甘えてくるくせに、本音は隠す幼馴染。
それでも――
俺は彼女の手を引く。
退学リミット付き登校ミッションから始まる、
国民的スター幼馴染とのドタバタ青春ラブコメ、ここに開幕。
俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。
甘酢ニノ
恋愛
彼女いない歴=年齢の高校生・相沢蓮。
平凡な日々を送る彼の前に立ちはだかるのは──
学園一の美少女・黒瀬葵。
なぜか彼女は、俺にだけやたらとツンツンしてくる。
冷たくて、意地っ張りで、でも時々見せるその“素”が、どうしようもなく気になる。
最初はただの勘違いだったはずの関係。
けれど、小さな出来事の積み重ねが、少しずつ2人の距離を変えていく。
ツンデレな彼女と、不器用な俺がすれ違いながら少しずつ近づく、
焦れったくて甘酸っぱい、青春ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる