学年一の不良が図書館で勉強してた。

山法師

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130 損得勘定と純粋な思い

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「お前やっぱ才能あるよ。先輩たちが悔しがってたし」
「いや、その先輩たちとかお前らに色々教えてもらってあそこまで出来たんだって」

 男バスの試合が終わり、1年でわいわいと青のテントに向かいながら、伊緒奈は友人に答える。

「お前が勉学の特待生なのは分かってるけどさ、男バス入らん?」

 男バスの部員に言われ、

「いやムリムリ。短期間だから両立できたけど、部活しながらの特待生維持はやっぱ無理あるって」

 伊緒奈は苦笑いを顔に浮かべながら、受け流す。
 そのままわいわいと青テントの、1年が集まっている場所に足を運ぶと、

「お、伊緒奈。戻ってきたか。お前バスケ、すげぇ大活躍だったじゃん!」
「おお、練習した甲斐があったわ」

 後ろに座っていた友人が声をかけてきて、

「まあ座れ座れ。みんなもお疲れ。今、青、1位だぜ」

 別の友人の言葉に、掲示板を見れば、青、緑、赤、という順位だった。

「お前、勉学の特待生なのに運動系もバッチリよな。一緒に試合してた高峰さんみてぇ」

 伊緒奈は空いている席に座りながら、

「あー、あの人な。すげぇよな」

 と、練習の時や、試合での高峰を思い出しながら、友人の言葉を肯定する。

「このあと走り幅跳びあるだろ? そんで、あの橋本って先輩、出るんだろ? 前にも言ったけどさ、去年の見学の時、橋本先輩、陸上部とかじゃないのに、すげぇ記録出したんだよ。他の競技もだったけど、今年もすげぇ気がするからこのまま見ねぇ?」

 3年の教室に一緒に行ってくれた友人の提案に、

「あー、俺、ちょっと行きたいとこあんだよね。どうしよっかな」

 そう言いながら、伊緒奈はどのタイミングで光海の所へ向かおうかと考えつつ、スマホを取り出し、

「……」

 涼からのそれに、眉をひそめた。

『バスケ観てたぞ。お前は光海だけ見てたかもしんないけど。ライバル云々うんぬんは置いといて、しっかり活躍してたお前をすげぇと思うよ。そんでな、光海関連で会わせてみたい奴が居るんだわ。俺とお前の同類みたいな奴だよ。ちょっと考えてみてくれ』

 すげぇのコメントはともかく、わざわざ日本語で送ってきたこと、会わせたい同類というのはなんなのか。
 伊緒奈は真意を読み取ろうと少し考え込み、

「どうした? 誰かからなんか来たのか?」
「ん、ああ、件の先輩」

 伊緒奈はスマホを閉じながら、

「涼先輩がさ、ま、高峰先輩を観に来たんだろうけど、俺のことも褒めてくれた。そういう内容のライン」
「3年の先輩たちと仲良いよな、お前。コミュニケーションスキル?」
「そういうんかな、あれ。先輩たちが優しいんじゃね?」

 この雰囲気の中、それらしい理由をつけて輪から外れるのは悪印象かな、と考えた伊緒奈は、ラインのことも気になるし、と、

「やっぱ涼先輩の走り幅跳び、見てみるわ。半分伝説なんだろ?」

 スマホを仕舞いながら、同じクラスの陸上部員が言っていたそれを口にする。
 そうなんだよ伝説なんだよ、と雑談していると、走り幅跳びが始まった。
 周りの3年と何やら話しながら、涼は順番を待っている。
 涼が何番目かまでは知らない伊緒奈は、いつ順番来るのかな、と思いながら、周りと会話を続ける。

「あっ、また緑が1位になった」
「点数近いもんなぁ」
「けどさ、まだ競技あるし。まだまだ青も諦めませんぜ」

 そうこうしているうちに、涼がスタートラインに立った。そして合図がされ、スタートする。

「……すっげ」

 友人の呟きに、

「何m飛んだ? マジで伝説じゃね?」
「周りがざわめいているし」
「同じクラスな筈の青の3年の人たちも、なんか驚いてね?」

 他の友人たちも、驚き混じりにコメントする。

「涼先輩すっげー」

 伊緒奈は少し笑いながら言って、スマホを取り出し、

『走り幅跳び、何mでした? あと、同類ってなんです?』

 涼に、あえて日本語でそう送る。
 返信が来たのは、走り幅跳びの撤収直後。

『走り幅跳び、8m58だったよ。同類の意味は、そのまんまだな。光海に惚れてるダチだよ。色々通じるところがあると思うんだよな』
『やべぇ数字じゃないですか。世界記録に迫ってるし。光海先輩、モテモテですね。恋敵とダチってなんなんです? 逆に興味湧いた』

 そう送って、スマホを閉じた。

 ◇

「お疲れ様です、涼」

 笑顔の光海と、

「お疲れ様、橋本。すごい跳んだね。成川さんから聞いたけど、8m58だって?」
「橋本ちゃん、お疲れ。伊緒奈くんの襲来はなかったぜ。平穏だったぜ」

 もう、当たり前に接してくれる高峰と、信頼を置けるとまで言えそうな百合根に、

「おう、色々お疲れ。しっかり気合い入れたらそんな記録になったわ。てか、伊緒奈、来てなかったのか」

 涼は、空けてくれてた席に座りながら、答えつつ、聞く。

「来ませんでしたね。友達と楽しんでたんじゃないですか?」
「走り幅跳び、観てたって来たから、光海たちと一緒に観てたのかと思ってわ」
「ほう? 観てたんだ? 橋本ちゃんのお手並み拝見ってか?」
「そうかもな」

 涼は言って、キャラメルを一粒口に入れると、一応とスマホを取り出し、確認する。
 伊緒奈からの文章を読み、

『興味あるなら会うか。高峰も一緒に。そのほうが色々スムーズだし。二人に話通しとくわ』

 伊緒奈にそう送ってから、高峰に、

『伊緒奈と五十嵐をさ、ちょっとご対面させてぇんだけど。お前も一緒なら万が一とかないと思うし、付き合ってくれねぇか?』

 と送り、

『近くて暇な日、教えてくれ。お前と話が合いそうな奴を紹介したい』

 五十嵐には、そう送る。
 スマホを仕舞いながら、掲示板をちらりと見て、

「おお、青がまた1位に戻ってんじゃん」
「そうなんですよ。シーソーゲームでハラハラします。緑は緑でマリアちゃんが居ますし」
「このまんま青がトップなら、金のトロフィー受け取るの、高峰っちだよね?」
「このままなら、そうだね。3位まで全員受け取るから、なんにしても壇上に上がるのは確定しちゃってるけど」
「高峰が壇上に上がったら、どれだけざわつくんかな」

 涼の軽い口調に、

「ざわつくの確定なの?」

 高峰は困ったような声で言い、

「ざわつくだろうねぇ」
「ざわつくでしょうねぇ」

 百合根と光海は、さも当然、というように述べる。
 なんだかんだありつつ、平和だな、と涼は思う。
 そう思えるのは、やっぱり光海のおかげだろうと、隣の存在を愛しく感じながら。


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