死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?

六角

文字の大きさ
18 / 52

第十八話:聖女のメッキが剥がれる時

しおりを挟む
ダンスの後、私は陛下の隣で優雅にシャンパンを嗜んでいた。
気分は最高だ。
周りの貴族たちは遠巻きに私たちを眺めているだけで、誰も近づいてこようとしない。
それがまた心地よかった。

そんな私にわざわざ話しかけてくる命知らずがいた。
もちろんセレスティアだ。

「スカーレット様、先ほどのダンス、素晴らしかったですわ。まるで陛下に操られているお人形のようでした」

(……はぁ?)

こいつ、喧嘩を売る度胸だけは一人前ね。
人形ですって?
面白いことを言うじゃない。

「ありがとう、セレスティアさん。あなたも早く誰かと踊れるといいわね。……あら、もしかして誰も誘ってくださらないのかしら?」

にっこりと微笑んでやると彼女の顔がわずかに引きつった。
図星だったようだ。

彼女はぐっと唇を噛むと次の攻撃を仕掛けてきた。
今度は周りにも聞こえるような大きな声で。

「それにしてもスカーレット様は変わられましたわね!昔はもっと慎み深い方だと思っておりましたのに……。帝国の力とはそれほどまでに人を変えてしまうものなのでしょうか」

わざとらしい悲劇のヒロインのような口調。
私が権力に目がくらんで変わってしまったと言いたいのだ。
そして自分はそれに心を痛める清らかな聖女だとアピールしている。

周りの貴族たちがざわざわと囁き始める。
「確かに少し傲慢になられたのでは……」
「皇帝陛下の寵愛も考えものだな」

セレスティアの狙い通り、空気は少しずつ彼女に味方し始めていた。

(なるほど、そう来るのね)

面白い。
その安い芝居、私が打ち砕いてあげる。

私はわざと悲しそうな顔をして瞳を潤ませた。

「……ひどいわセレスティアさん。わたくしがどれほど辛い思いをしてきたか、ご存知ないの?」

「え……?」

予想外の反撃にセレスティアが戸惑っている。

「わたくしはあなたとアルフォンス殿下に身に覚えのない罪を着せられ、婚約者としての立場も名誉も全てを奪われましたのよ!」

私の声は悲痛な響きを帯びて会場に響き渡る。

「毎日部屋に閉じ込められ絶望の淵にいたわたくしを救ってくださったのは、ゼノン陛下ただお一人……。そのご恩に報いるため必死に努力しているわたくしを、あなたは権力に溺れたと仰るのね……!」

ぽろり、と一筋の涙を流してみせる。
もちろん女優の涙だ。

さっきまでセレスティアに同情的だった貴族たちが、今度は私に同情の目を向け始めた。
「そういえばそんな噂があったな……」
「なんて可哀想な……」
「聖女様も少し言い方がきつかったのでは?」

形勢は一気に逆転した。

「そ、そんな……わたくしはただ、スカーレット様のためを思って……」

焦ったセレスティアが慌てて言い訳をしようとする。
だがもう遅い。

その時、ずっと黙って成り行きを見守っていたゼノン陛下が静かに口を開いた。

「私の鳥を、あまり鳴かせるな」

その声は静かでありながら絶対的な威圧感を伴っていた。
会場が水を打ったように静まり返る。

「こいつが誰の庇護の元にあるか、忘れたわけではあるまい。聖女」

陛下はセレスティアを冷たく見据える。
その視線はまるで蛇に睨まれた蛙のようだ。

「次に私の鳥を侮辱するようなことがあれば、その舌、引き抜いてやろう」

「ひっ……!」

セレスティアが小さな悲鳴を上げた。
彼女の顔は真っ青になっている。
いつも自信に満ち溢れていた聖女のメッキが、音を立てて剥がれていくのが分かった。

ざまあみなさいセレスティア。
これが本物の権力というものよ。
あなたの小賢しい策略など陛下の前では赤子の遊びにすぎないの。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました

22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。 華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。 そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!? 「……なぜ私なんですか?」 「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」 ーーそんなこと言われても困ります! 目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。 しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!? 「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」 逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?

乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!

ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。 相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。 結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。 現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう… その時に前世の記憶を取り戻すのだった… 「悪役令嬢の兄の婚約者って…」 なんとも微妙なポジション。 しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。

公爵令息様を治療したらいつの間にか溺愛されていました

Karamimi
恋愛
マーケッヒ王国は魔法大国。そんなマーケッヒ王国の伯爵令嬢セリーナは、14歳という若さで、治癒師として働いている。それもこれも莫大な借金を返済し、幼い弟妹に十分な教育を受けさせるためだ。 そんなセリーナの元を訪ねて来たのはなんと、貴族界でも3本の指に入る程の大貴族、ファーレソン公爵だ。話を聞けば、15歳になる息子、ルークがずっと難病に苦しんでおり、どんなに優秀な治癒師に診てもらっても、一向に良くならないらしい。 それどころか、どんどん悪化していくとの事。そんな中、セリーナの評判を聞きつけ、藁をもすがる思いでセリーナの元にやって来たとの事。 必死に頼み込む公爵を見て、出来る事はやってみよう、そう思ったセリーナは、早速公爵家で治療を始めるのだが… 正義感が強く努力家のセリーナと、病気のせいで心が歪んでしまった公爵令息ルークの恋のお話です。

悪役令嬢のはずですが、年上王子が幼い頃から私を甘やかす気でいました

ria_alphapolis
恋愛
私は、悪役令嬢なのかもしれない。 王子の婚約者としては少し我儘で、周囲からは気が強いと思われている―― そんな自分に気づいた日から、私は“断罪される未来”を恐れるようになった。 婚約者である年上の王子は、今日も変わらず優しい。 けれどその優しさが、義務なのか、同情なのか、私にはわからない。 距離を取ろうとする私と、何も言わずに見守る王子。 両思いなのに、想いはすれ違っていく。 けれど彼は知っている。 五歳下の婚約者が「我儘だ」と言われていた幼い頃から、 そのすべてが可愛くて仕方なかったことを。 ――我儘でいい。 そう決めたのは、ずっと昔のことだった。 悪役令嬢だと勘違いしている少女と、 溺愛を隠し続ける年上王子の、すれ違い恋愛ファンタジー。 ※溺愛保証/王子視点あり/幼少期エピソードあり

【完結】転生白豚令嬢☆前世を思い出したので、ブラコンではいられません!

白雨 音
恋愛
エリザ=デュランド伯爵令嬢は、学院入学時に転倒し、頭を打った事で前世を思い出し、 《ここ》が嘗て好きだった小説の世界と似ている事に気付いた。 しかも自分は、義兄への恋を拗らせ、ヒロインを貶める為に悪役令嬢に加担した挙句、 義兄と無理心中バッドエンドを迎えるモブ令嬢だった! バッドエンドを回避する為、義兄への恋心は捨て去る事にし、 前世の推しである悪役令嬢の弟エミリアンに狙いを定めるも、義兄は気に入らない様で…??  異世界転生:恋愛 ※魔法無し  《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

逆行した悪女は婚約破棄を待ち望む~他の令嬢に夢中だったはずの婚約者の距離感がおかしいのですか!?

魚谷
恋愛
目が覚めると公爵令嬢オリヴィエは学生時代に逆行していた。 彼女は婚約者である王太子カリストに近づく伯爵令嬢ミリエルを妬み、毒殺を図るも失敗。 国外追放の系に処された。 そこで老商人に拾われ、世界中を見て回り、いかにそれまで自分の世界が狭かったのかを痛感する。 新しい人生がこのまま謳歌しようと思いきや、偶然滞在していた某国の動乱に巻き込まれて命を落としてしまう。 しかし次の瞬間、まるで夢から目覚めるように、オリヴィエは5年前──ミリエルの毒殺を図った学生時代まで時を遡っていた。 夢ではないことを確信したオリヴィエはやり直しを決意する。 ミリエルはもちろん、王太子カリストとも距離を取り、静かに生きる。 そして学校を卒業したら大陸中を巡る! そう胸に誓ったのも束の間、次々と押し寄せる問題に回帰前に習得した知識で対応していたら、 鬼のように恐ろしかったはずの王妃に気に入られ、回帰前はオリヴィエを疎ましく思っていたはずのカリストが少しずつ距離をつめてきて……? 「君を愛している」 一体なにがどうなってるの!?

処理中です...