死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?

六角

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第十七話:宣戦布告のダンス、火花散る舞踏会

王宮の舞踏会場はきらびやかな光と人で溢れかえっていた。
主役であるはずのアルフォンス殿下はどこか元気のない様子で壁際に立っている。
例の夜襲事件以来すっかり自信をなくしてしまったようだ。

私とゼノン陛下が腕を組んで会場に姿を現した瞬間。
全ての視線が私たちに突き刺さった。

「皇帝陛下と……ヴァーミリオン公爵令嬢……!」
「なんと美しい……まるで夜の王と女王のようだ」

貴族たちの囁き声が波のように広がる。
その中には嫉妬と畏怖、そして好奇の色が混じっていた。

気分がいい。
これこそ私が望んだ光景だ。

すると私たちの前に一人の女性が進み出た。
セレスティアだ。
純白のドレスに身を包み頭には小さなティアラを乗せている。
まるで自分が今日の主役だとでも言いたげな装いだ。

「ごきげんよう、皇帝陛下、スカーレット様。本日はお越しいただきありがとうございます」

彼女は完璧な淑女の笑みを浮かべてカーテシーをする。
その瞳の奥に計算高い光が宿っているのを私は見逃さない。

「スカーレット様、そのネックレス、とてもお似合いですわ。まるで燃えるような恋心のようで……」

嫌味な言い方。
この『首輪』が陛下の所有物である証だと知っていて、わざと言っているのだ。

「ええ、ありがとう。陛下がお選びになったの。素敵でしょう?」

私も満面の笑みで返してやる。
私たちの間にバチバチと見えない火花が散った。

その時、ワルツの曲が流れ始めた。
セレスティアが待ってましたとばかりに口を開く。

「まあ、最初の曲ですわ。アルフォンス様、わたくしと踊っていただけますか?」

彼女はアルフォンス殿下にそう声をかけると、ちらりと私を見た。
『あなたの元婚約者は私と踊るのよ』と、その目が語っている。

だが彼女の思い通りにはさせない。

「陛下」

私は隣に立つ皇帝を見上げた。

「わたくしも踊りたいですわ」

その言葉に陛下は満足そうに口の端を吊り上げた。

「お前の望みなら」

陛下は私の腰に手を回すと、流れるような動きでダンスの輪の中へと導いた。
セレスティアが「えっ」と固まっているのが視界の端に見える。

陛下のリードは完璧だった。
まるで私たちは最初から一つの体だったかのように息の合ったステップで舞う。
彼の胸に抱かれその黒曜石の瞳に見つめられていると、周りの景色が全て色褪せていくようだった。

「……楽しいか?」

耳元で彼の低い声が囁く。

「はい、とても」

「そうか」

彼はそれだけ言うと私の体をぐっと引き寄せた。
密着した体から彼の熱が伝わってくる。
心臓がまたうるさく鳴り始めた。

私たちのダンスは会場中の注目を集めていた。
誰もがその圧倒的な美しさと存在感に息を呑んでいる。
アルフォンス殿下とセレスティアなど、もはや誰も見ていない。

曲が終わり私たちが優雅にお辞儀をすると、割れんばかりの拍手が巻き起こった。
セレスティアがハンカチを握りしめ、悔しそうに唇を噛んでいる。

(ふふっ、ざまあみなさい)

あなたの計画通りには絶対にならないわよ。
これは宣戦布告。
悪役令嬢の華麗なる逆襲の始まりだ。
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