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第1話:思い出された絶望の未来
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「イザベラ・フォン・ヴァレンシュタイン! 貴様との婚約は、今この時をもって破棄させてもらう!」
目の前で、氷のように冷たい美貌を持つ婚約者――ゼノン・フォン・シルヴァーグ公爵が、そう高らかに宣言する。
豪華絢爛なシャンデリアが輝く、王立学園の卒業記念パーティー会場。
集まった大勢の貴族たちの前で、私は糾弾されていた。
「君が、平民出の聖女リリアナを虐げ、数々の嫌がらせを行ってきたことは調査済みだ!」
ゼノンの隣には、庇われるようにして立つ可憐な少女。
桜色の髪を揺らし、潤んだ瞳でこちらを見つめる彼女こそ、この物語のヒロイン、リリアナ・スチュアート。
そうだ。
これは、ゲームだ。
前世で私が夢中になってプレイした乙女ゲーム、『聖女と騎士たちのラプソディ』の断罪イベント。
そして私は、ヒロインをいじめる悪役令嬢、イザベラ。
――ああ、思い出した。
ガシャン、と手に持っていたグラスが滑り落ち、甲高い音を立てて床で砕け散った。
その音で、私は悪夢のような未来のビジョンから、現実へと引き戻される。
「…様? イザベラ様?」
心配そうな侍女の声。
目の前には、豪華な装飾が施された自室の鏡。
そこに映っているのは、まだ幼さの残る、しかし間違いなくあの悪役令嬢イザベラの顔だった。
燃えるような赤い髪に、吊り上がった気の強そうな翠色の瞳。
恵まれた容姿ではあるけれど、この顔が悪役令嬢としてヒロインを罵る未来を知ってしまった今、ただただ呪わしく思える。
『どうして…今になってこんなことを…』
頭を抱えて、その場に蹲りたくなるのを必死にこらえる。
まだ、断罪イベントまでは時間がある。
今の私は16歳。ゲームの舞台である王立学園に入学したばかりだ。
卒業パーティーは、2年後。
つまり、まだやり直せる…?
いや、でもどうやって?
あのゲームのシナリオは、恐ろしいほどに強力な強制力を持っていた。
どんな選択肢を選んでも、悪役令嬢イザベラは最終的に断罪され、良くて国外追放、バッドエンドでは処刑される運命だった。
『処刑…』
ぞくり、と背筋に冷たいものが走る。
死ぬのは嫌だ。
あんな惨めな最期を迎えるなんて、絶対に。
ならば、どうすればいい?
未来を知っている私に、何ができる?
「そうだ…」
ひとすじの光が、絶望の闇に差し込んだ。
婚約破棄だ。
すべての元凶は、私の婚約者であるゼノン・シルヴァーグ公爵。
彼がヒロインであるリリアナに惹かれ、私を断罪するから、破滅するのだ。
ならば、彼がリリアナに出会う前に、彼との婚約を解消してしまえばいい。
彼と関わらなければ、嫉妬に狂ってヒロインをいじめることもない。
断罪される理由そのものを、なくしてしまえばいいのだ。
『そうよ、それしかないわ!』
私は、鏡の中の自分を睨みつけた。
まだ絶望するには早い。
「私は、イザベラ・フォン・ヴァレンシュタイン。ヴァレンシュタイン公爵家の長女よ」
プライドだけは、誰にも負けない。
こんなゲームのシナリオごときに、私の人生をめちゃくちゃにされてたまるものか。
「まずは、あの冷徹公爵様に、婚約破棄を叩きつけてやらないとね」
幸い、というか、ゲームのシナリオ通りなら、彼も私に愛情なんて欠片も持っていないはずだ。
むしろ、政略で決められた婚約者を疎ましく思っているに違いない。
婚約破棄を申し出れば、きっと喜んで受け入れてくれるだろう。
そう、うまくいくはず。
うまくいくに、決まってる。
私は震える手で、侍女に命じた。
「お父様に、ゼノン様とのお茶会のセッティングをお願いしてちょうだい。…ええ、なるべく、急いで」
未来を変えるための第一歩。
それは、破滅への引き金を引く男との、直接対決だった。
『待ってなさいよ、ゼノン・シルヴァーグ。あなたの思い通りには、絶対にならないんだから!』
これから始まる戦いに向けて、私は固く、固く拳を握りしめた。
この時、私のその決意が、とんでもない勘違いの始まりになることなど、知る由もなかった。
目の前で、氷のように冷たい美貌を持つ婚約者――ゼノン・フォン・シルヴァーグ公爵が、そう高らかに宣言する。
豪華絢爛なシャンデリアが輝く、王立学園の卒業記念パーティー会場。
集まった大勢の貴族たちの前で、私は糾弾されていた。
「君が、平民出の聖女リリアナを虐げ、数々の嫌がらせを行ってきたことは調査済みだ!」
ゼノンの隣には、庇われるようにして立つ可憐な少女。
桜色の髪を揺らし、潤んだ瞳でこちらを見つめる彼女こそ、この物語のヒロイン、リリアナ・スチュアート。
そうだ。
これは、ゲームだ。
前世で私が夢中になってプレイした乙女ゲーム、『聖女と騎士たちのラプソディ』の断罪イベント。
そして私は、ヒロインをいじめる悪役令嬢、イザベラ。
――ああ、思い出した。
ガシャン、と手に持っていたグラスが滑り落ち、甲高い音を立てて床で砕け散った。
その音で、私は悪夢のような未来のビジョンから、現実へと引き戻される。
「…様? イザベラ様?」
心配そうな侍女の声。
目の前には、豪華な装飾が施された自室の鏡。
そこに映っているのは、まだ幼さの残る、しかし間違いなくあの悪役令嬢イザベラの顔だった。
燃えるような赤い髪に、吊り上がった気の強そうな翠色の瞳。
恵まれた容姿ではあるけれど、この顔が悪役令嬢としてヒロインを罵る未来を知ってしまった今、ただただ呪わしく思える。
『どうして…今になってこんなことを…』
頭を抱えて、その場に蹲りたくなるのを必死にこらえる。
まだ、断罪イベントまでは時間がある。
今の私は16歳。ゲームの舞台である王立学園に入学したばかりだ。
卒業パーティーは、2年後。
つまり、まだやり直せる…?
いや、でもどうやって?
あのゲームのシナリオは、恐ろしいほどに強力な強制力を持っていた。
どんな選択肢を選んでも、悪役令嬢イザベラは最終的に断罪され、良くて国外追放、バッドエンドでは処刑される運命だった。
『処刑…』
ぞくり、と背筋に冷たいものが走る。
死ぬのは嫌だ。
あんな惨めな最期を迎えるなんて、絶対に。
ならば、どうすればいい?
未来を知っている私に、何ができる?
「そうだ…」
ひとすじの光が、絶望の闇に差し込んだ。
婚約破棄だ。
すべての元凶は、私の婚約者であるゼノン・シルヴァーグ公爵。
彼がヒロインであるリリアナに惹かれ、私を断罪するから、破滅するのだ。
ならば、彼がリリアナに出会う前に、彼との婚約を解消してしまえばいい。
彼と関わらなければ、嫉妬に狂ってヒロインをいじめることもない。
断罪される理由そのものを、なくしてしまえばいいのだ。
『そうよ、それしかないわ!』
私は、鏡の中の自分を睨みつけた。
まだ絶望するには早い。
「私は、イザベラ・フォン・ヴァレンシュタイン。ヴァレンシュタイン公爵家の長女よ」
プライドだけは、誰にも負けない。
こんなゲームのシナリオごときに、私の人生をめちゃくちゃにされてたまるものか。
「まずは、あの冷徹公爵様に、婚約破棄を叩きつけてやらないとね」
幸い、というか、ゲームのシナリオ通りなら、彼も私に愛情なんて欠片も持っていないはずだ。
むしろ、政略で決められた婚約者を疎ましく思っているに違いない。
婚約破棄を申し出れば、きっと喜んで受け入れてくれるだろう。
そう、うまくいくはず。
うまくいくに、決まってる。
私は震える手で、侍女に命じた。
「お父様に、ゼノン様とのお茶会のセッティングをお願いしてちょうだい。…ええ、なるべく、急いで」
未来を変えるための第一歩。
それは、破滅への引き金を引く男との、直接対決だった。
『待ってなさいよ、ゼノン・シルヴァーグ。あなたの思い通りには、絶対にならないんだから!』
これから始まる戦いに向けて、私は固く、固く拳を握りしめた。
この時、私のその決意が、とんでもない勘違いの始まりになることなど、知る由もなかった。
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