断罪される未来を知る悪役令嬢ですが、冷徹なはずの婚約者に勘違いされて溺愛ルートに入りました

六角

文字の大きさ
43 / 60

第43話:悪役令嬢の、誠意の証

しおりを挟む
リリアナとの、不毛な、心理戦を、繰り返すこと、数日。
宰相は、相変わらず、私に、何も、命じてこなかった。
焦れてきたのは、私の方だった。
このままでは、時間だけが、過ぎていってしまう。

『何か、動き出さないと…!』

そう、考えていた、矢先のことだった。
その日、宰相が、初めて、私を、彼の執務室へと、呼び出したのだ。

「よく、来たな、イザベラ嬢」

彼は、椅子に、深く、腰掛けたまま、私を、見据えている。
その瞳は、値踏みするように、冷たい。

「はい、閣下。して、本日は、どのような、ご用件で、ございましょうか」

「うむ。君が、我々の、仲間になってから、数日が経った。そろそろ、君の、**“誠意”**とやらを、見せてもらおうかと、思ってな」

来た。
ついに、彼が、動き出す。

「誠意、ですな」

「そうだ。君が、本当に、ゼノン・シルヴァーグを、憎んでいるというのなら、我々に、協力できることが、あるはずだ」

彼は、地図を、広げた。

「君には、ゼノンと、アラン王子が、潜んでいる、隠れ家の場所を、突き止めてもらいたい」

それは、最悪の、試練だった。
仲間を、売れ、というのか。

『…もちろん、これも、想定内よ』

ゼノン様たちとは、あらかじめ、打ち合わせをしてある。
もし、こう聞かれたら、伝えるべき、偽の情報を。

私は、一瞬、ためらう、フリをした。
そして、苦悩の表情を、浮かべてみせる。

「…わかり、ましたわ」

「ほう、やるかね?」

「ええ。あの男たちへの、復讐のためならば…」

私は、地図の、一点を、指差した。
王都の、東の外れにある、古い、教会の跡地だ。

「おそらく、彼らは、ここに、潜んでいるかと、存じます」

「…ほう? なぜ、そう思う?」

「以前、アラン殿下が、お忍びで、慈善活動を、行っていた場所ですわ。彼が、信頼する、神父が、管理しており、いざという時の、隠れ家として、使っている、と、聞いたことが、あります」

もっともらしい、嘘を、並べる。
もちろん、そんな事実は、ない。
そこは、ただの、廃墟だ。

宰相は、私の言葉を、じっと、聞いていた。
その表情からは、信じているのか、疑っているのか、読み取ることが、できない。

「…わかった」

しばらくの、沈黙の後、彼は、言った。

「君の、情報を、信じるとしよう。すぐに、兵を、向かわせる」

「は、はい…!」

「もし、この情報が、真実であれば、君を、我々の、正式な、一員として、認めよう。だが」

彼の声が、低くなる。

「もし、これが、嘘であった場合は…わかるな?」

「……はい。その時は、この命、潔く、差し出しますわ」

「よろしい」

彼は、満足げに、頷いた。

私は、執務室を、後にしながら、内心、安堵の息を、漏らした。
第一段階は、成功だ。
宰相は、私の、偽の情報に、食いついた。

今頃、ゼノン様と、アラン殿下は、この陽動作戦を、利用して、別の、行動を、起こしているはずだ。
私が、宰相の、注意を、引きつけている、この間に。

問題は、ここから。
宰相が、兵を、動かし、この城の、警備が、手薄になる、今夜。
私にとって、最大の、そして、唯一の、チャンスが、訪れる。

宰相の、執務室への、潜入。

失敗は、許されない、一世一代の、大勝負。
私は、高鳴る、心臓を、抑えながら、夜が、来るのを、静かに、待った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

地味顔令嬢の私を「嘘の告白」で笑いものにするつもりですか? 結構です、なら本気で惚れさせてから逆にこっちが盛大に振ってあげます!

日々埋没。
恋愛
「お前が好きだ。この俺と付き合ってくれないか?」    学園のアイドル、マルスからの突然の告白。  憧れの人からの言葉に喜んだのも束の間、伯爵令嬢リーンベイルは偶然知ってしまう。それが退屈しのぎの「嘘の告白(ウソコク)」だったことを。 「あの地味顔令嬢が俺に釣り合うわけないだろ。ドッキリのプラカードでも用意しとくわ」  親友のミネルバと共に怒りに震える彼女は、復讐を決意する。まずは父の言いつけで隠していた「絶世の美貌」を解禁! 嘘の恋を「真実の恋(マジコク)」に変えさせ、最高のタイミングで彼を地獄へ突き落とす――。 「……今さら本気になった? 冗談はやめてください、これドッキリですよ?」

【完】婚約してから十年、私に興味が無さそうなので婚約の解消を申し出たら殿下に泣かれてしまいました

さこの
恋愛
 婚約者の侯爵令嬢セリーナが好きすぎて話しかけることができなくさらに近くに寄れないジェフェリー。  そんなジェフェリーに嫌われていると思って婚約をなかった事にして、自由にしてあげたいセリーナ。  それをまた勘違いして何故か自分が選ばれると思っている平民ジュリアナ。  あくまで架空のゆる設定です。 ホットランキング入りしました。ありがとうございます!! 2021/08/29 *全三十話です。執筆済みです

転生先は推しの婚約者のご令嬢でした

真咲
恋愛
馬に蹴られた私エイミー・シュタットフェルトは前世の記憶を取り戻し、大好きな乙女ゲームの最推し第二王子のリチャード様の婚約者に転生したことに気が付いた。 ライバルキャラではあるけれど悪役令嬢ではない。 ざまぁもないし、行きつく先は円満な婚約解消。 推しが尊い。だからこそ幸せになってほしい。 ヒロインと恋をして幸せになるならその時は身を引く覚悟はできている。 けれども婚約解消のその時までは、推しの隣にいる事をどうか許してほしいのです。 ※「小説家になろう」にも掲載中です

当て馬令嬢は自由を謳歌したい〜冷酷王子への愛をゴミ箱に捨てて隣国へ脱走したら、なぜか奈落の底まで追いかけられそうです〜

平山和人
恋愛
公爵令嬢エルナは、熱烈に追いかけていた第一王子シオンに冷たくあしらわれ、挙句の果てに「婚約者候補の中で、お前が一番あり得ない」と吐き捨てられた衝撃で前世の記憶を取り戻す。 そこは乙女ゲームの世界で、エルナは婚約者選別会でヒロインに嫌がらせをした末に処刑される悪役令嬢だった。 「死ぬのも王子も、もう真っ平ご免です!」 エルナは即座に婚約者候補を辞退。目立たぬよう、地味な領地でひっそり暮らす準備を始める。しかし、今までエルナを蔑んでいたはずのシオンが、なぜか彼女を執拗に追い回し始め……? 「逃げられると思うなよ。お前を俺の隣以外に置くつもりはない」 「いや、記憶にあるキャラ変が激しすぎませんか!?」

恋愛戦線からあぶれた公爵令嬢ですので、私は官僚になります~就業内容は無茶振り皇子の我儘に付き合うことでしょうか?~

めもぐあい
恋愛
 公爵令嬢として皆に慕われ、平穏な学生生活を送っていたモニカ。ところが最終学年になってすぐ、親友と思っていた伯爵令嬢に裏切られ、いつの間にか悪役公爵令嬢にされ苛めに遭うようになる。  そのせいで、貴族社会で慣例となっている『女性が学園を卒業するのに合わせて男性が婚約の申し入れをする』からもあぶれてしまった。  家にも迷惑を掛けずに一人で生きていくためトップであり続けた成績を活かし官僚となって働き始めたが、仕事内容は第二皇子の無茶振りに付き合う事。社会人になりたてのモニカは日々奮闘するが――

時間を戻した元悪女は、私を捨てた王太子と、なぜか私に夢中の騎士団長から逃げられません

腐ったバナナ
恋愛
王太子アルベルトの婚約者であったユミリアは、前世で悪女の汚名を着せられ、騎士団長ギルバートによって処刑された。 しかし、目を覚ますと、処刑直前の自分に時間が戻っていた。 ユミリアは、静かに追放されることを目標に、悪女の振る舞いをやめ、王太子から距離を置く。 しかし、なぜか冷酷非情なはずの騎士団長ギルバートが、「貴殿は私の光だ」と異常な執着を見せ、彼女を絶対的に独占し始める。

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

私の欲する愛を独占している双子に嫉妬して入れ替わったら、妹への恨み辛みを一身に受けましたが、欲しかったものは手にできました

珠宮さくら
恋愛
双子の姉妹として生まれた2人は、成長するにつれてお互いにないものねだりをしていた事に気づかないまま、片方は嫉妬し、片方は殺意を持って、お互いが入れ替わることになる。 そんな2人に振り回されたと怒り狂う人が現れたり、それこそ双子のことを振り回した人たちも大勢いたが、謝罪されても伝わることのない未来が訪れるとは思いもしなかった。 それでも、頑張っていた分の願いは叶ったのだが……。

処理中です...