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第44話:真夜中の潜入劇
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夜。
城全体が、静寂に、包まれる頃。
私は、黒い、夜会服――潜入のために、あらかじめ、用意していた――に、身を包み、自室のベッドを、抜け出した。
扉の前の、見張りは、二人。
宰相の、主力部隊が、陽動作戦で、出払っているためか、いつもより、警備の数は、少ない。
それでも、正面突破は、不可能だ。
『ゼノン様、聞こえますか?』
私は、胸元の、ネックレスに、意識を、集中させる。
これは、ただの、監視用具ではない。
ゼノン様との、双方向の、通信機能も、備わっているのだ。
――ああ、聞こえている。状況は、どうだ――
頭の中に、彼の、低く、落ち着いた声が、響く。
それだけで、不思議と、心が、安らいだ。
『見張りは、二人。どう、切り抜けますか?』
――俺が、軽い、幻覚魔法を、かける。奴らが、気を取られた、一瞬の隙を、ついて、通り抜けろ――
『了解ですわ』
彼の、合図を、待つ。
すると、廊下の、向こう側から、「なんだ、今の音は!?」という、見張りの声が、聞こえた。
二人が、音のした方へ、注意を向けた、その、一瞬。
私は、猫のように、音を、立てずに、廊下へと、滑り出した。
そして、闇に、紛れながら、目的の場所――宰相の執務室へと、向かう。
――順調だ、イザベラ。その調子で、進め――
ゼノン様の、声に、励まされながら、私は、複雑な、城の廊下を、進んでいく。
時折、巡回の、兵士と、すれ違いそうになるが、その度に、ゼノン様が、的確な、指示を、与えてくれた。
「角を曲がった先に、二人、来るぞ。右手の、物陰に、隠れろ」
「今だ、行け!」
まるで、彼と、二人で、このミッションを、遂行しているかのようだった。
そして、ついに、たどり着いた。
宰相の執務室の、重厚な、扉の前に。
『着きましたわ』
――ああ。ここからが、本番だ。扉には、三重の、魔法防御が、かかっている。いいか、俺の言う通りに、魔力を、流し込むんだ――
私は、扉に、そっと、手を触れた。
そして、ゼノン様の、指示に従い、自分の、微弱な魔力を、特定の、パターンで、流し込んでいく。
「第一の、術式…解錠」
「第二の、結界…解除」
「第三の、防壁…無効化」
一つ、また一つと、複雑な、魔法の鍵が、開いていく。
そして、ついに、カチリ、と、小さな音がして、扉の、ロックが、外れた。
『やりましたわ!』
――よくやった、イザベ-ラ。だが、油断するな。中にも、罠が、仕掛けられている、可能性がある――
私は、息を殺して、扉を、開けた。
中は、真っ暗で、静まり返っている。
月明かりだけが、部屋の中を、ぼんやりと、照らし出していた。
私は、音を立てずに、中へと、忍び込む。
目的は、一つ。
宰相の、罪の証拠が、隠されているであろう、隠し金庫だ。
『どこに、あるのかしら…』
部屋の中を、慎重に、見回す。
大きな、執務机。
壁一面の、本棚。
怪しい場所は、いくつもある。
――本棚だ、イザベラ。右から、三番目の、一番下の段。そこに、偽装された、スイッチがあるはずだ――
ゼノン様の、指示通り、本棚を、探る。
すると、一冊の本だけが、固定されていて、動かない。
それを、強く、押し込むと、ゴゴゴ…と、低い音を立てて、本棚の、一部が、横に、スライドした。
現れたのは、重厚な、鋼鉄製の、金庫だった。
『見つけましたわ!』
――よし! だが、問題は、ここからだ。その金庫には、物理的な、鍵穴がない。おそらく、術者の、魔力そのものを、鍵とする、特殊な、タイプだ――
「では、開けられない、ということですの…?」
――いや、手はある。だが、お前一人では、不可能だ。俺の、協力が、必要になる――
どうやら、最大の、難関は、この、金庫のようだ。
私が、金庫の、複雑な、魔法陣の、文様を、ゼノン様に、伝えようとした、その時だった。
『ゼノン様!』
私の胸元の、ネックレスが、**カッ!**と、強く、熱を、発した。
これは、警告だ。
誰かが、この部屋に、近づいてきている…!
――しまっ…! イザベラ、隠れろ! 誰か、来たぞ!――
ゼノン様の、切羽詰まった声と、同時に、執務室の扉が、ゆっくりと、開かれた。
隠れる場所は、もう、ない。
万事休すか…!
私は、とっさに、机の影に、身を、潜めた。
どうか、気づかれませんように、と。
入ってきたのは、リリアナだった。
彼女は、何か、忘れ物でもしたのか、机の上を、探している。
そして、すぐに、部屋を、出て行った。
「…ふぅ」
心臓が、飛び出しそうだった。
なんとか、やり過ごせたようだ。
『…大丈夫ですわ、ゼノン様。行ってしまいました』
――ああ、助かった…。だが、時間は、ない。急ぐぞ、イザベラ――
私たちは、再び、金庫と、向き合う。
この、鉄の塊を、こじ開け、すべての、真実を、手に入れるために。
夜明けは、もう、すぐそこまで、迫っていた。
城全体が、静寂に、包まれる頃。
私は、黒い、夜会服――潜入のために、あらかじめ、用意していた――に、身を包み、自室のベッドを、抜け出した。
扉の前の、見張りは、二人。
宰相の、主力部隊が、陽動作戦で、出払っているためか、いつもより、警備の数は、少ない。
それでも、正面突破は、不可能だ。
『ゼノン様、聞こえますか?』
私は、胸元の、ネックレスに、意識を、集中させる。
これは、ただの、監視用具ではない。
ゼノン様との、双方向の、通信機能も、備わっているのだ。
――ああ、聞こえている。状況は、どうだ――
頭の中に、彼の、低く、落ち着いた声が、響く。
それだけで、不思議と、心が、安らいだ。
『見張りは、二人。どう、切り抜けますか?』
――俺が、軽い、幻覚魔法を、かける。奴らが、気を取られた、一瞬の隙を、ついて、通り抜けろ――
『了解ですわ』
彼の、合図を、待つ。
すると、廊下の、向こう側から、「なんだ、今の音は!?」という、見張りの声が、聞こえた。
二人が、音のした方へ、注意を向けた、その、一瞬。
私は、猫のように、音を、立てずに、廊下へと、滑り出した。
そして、闇に、紛れながら、目的の場所――宰相の執務室へと、向かう。
――順調だ、イザベラ。その調子で、進め――
ゼノン様の、声に、励まされながら、私は、複雑な、城の廊下を、進んでいく。
時折、巡回の、兵士と、すれ違いそうになるが、その度に、ゼノン様が、的確な、指示を、与えてくれた。
「角を曲がった先に、二人、来るぞ。右手の、物陰に、隠れろ」
「今だ、行け!」
まるで、彼と、二人で、このミッションを、遂行しているかのようだった。
そして、ついに、たどり着いた。
宰相の執務室の、重厚な、扉の前に。
『着きましたわ』
――ああ。ここからが、本番だ。扉には、三重の、魔法防御が、かかっている。いいか、俺の言う通りに、魔力を、流し込むんだ――
私は、扉に、そっと、手を触れた。
そして、ゼノン様の、指示に従い、自分の、微弱な魔力を、特定の、パターンで、流し込んでいく。
「第一の、術式…解錠」
「第二の、結界…解除」
「第三の、防壁…無効化」
一つ、また一つと、複雑な、魔法の鍵が、開いていく。
そして、ついに、カチリ、と、小さな音がして、扉の、ロックが、外れた。
『やりましたわ!』
――よくやった、イザベ-ラ。だが、油断するな。中にも、罠が、仕掛けられている、可能性がある――
私は、息を殺して、扉を、開けた。
中は、真っ暗で、静まり返っている。
月明かりだけが、部屋の中を、ぼんやりと、照らし出していた。
私は、音を立てずに、中へと、忍び込む。
目的は、一つ。
宰相の、罪の証拠が、隠されているであろう、隠し金庫だ。
『どこに、あるのかしら…』
部屋の中を、慎重に、見回す。
大きな、執務机。
壁一面の、本棚。
怪しい場所は、いくつもある。
――本棚だ、イザベラ。右から、三番目の、一番下の段。そこに、偽装された、スイッチがあるはずだ――
ゼノン様の、指示通り、本棚を、探る。
すると、一冊の本だけが、固定されていて、動かない。
それを、強く、押し込むと、ゴゴゴ…と、低い音を立てて、本棚の、一部が、横に、スライドした。
現れたのは、重厚な、鋼鉄製の、金庫だった。
『見つけましたわ!』
――よし! だが、問題は、ここからだ。その金庫には、物理的な、鍵穴がない。おそらく、術者の、魔力そのものを、鍵とする、特殊な、タイプだ――
「では、開けられない、ということですの…?」
――いや、手はある。だが、お前一人では、不可能だ。俺の、協力が、必要になる――
どうやら、最大の、難関は、この、金庫のようだ。
私が、金庫の、複雑な、魔法陣の、文様を、ゼノン様に、伝えようとした、その時だった。
『ゼノン様!』
私の胸元の、ネックレスが、**カッ!**と、強く、熱を、発した。
これは、警告だ。
誰かが、この部屋に、近づいてきている…!
――しまっ…! イザベラ、隠れろ! 誰か、来たぞ!――
ゼノン様の、切羽詰まった声と、同時に、執務室の扉が、ゆっくりと、開かれた。
隠れる場所は、もう、ない。
万事休すか…!
私は、とっさに、机の影に、身を、潜めた。
どうか、気づかれませんように、と。
入ってきたのは、リリアナだった。
彼女は、何か、忘れ物でもしたのか、机の上を、探している。
そして、すぐに、部屋を、出て行った。
「…ふぅ」
心臓が、飛び出しそうだった。
なんとか、やり過ごせたようだ。
『…大丈夫ですわ、ゼノン様。行ってしまいました』
――ああ、助かった…。だが、時間は、ない。急ぐぞ、イザベラ――
私たちは、再び、金庫と、向き合う。
この、鉄の塊を、こじ開け、すべての、真実を、手に入れるために。
夜明けは、もう、すぐそこまで、迫っていた。
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