断罪される未来を知る悪役令嬢ですが、冷徹なはずの婚約者に勘違いされて溺愛ルートに入りました

六角

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第45話:掴んだ証拠と、悪魔の足音

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目の前には、最大の、難関。
術者の、魔力そのものを、鍵とする、特殊な、金庫。

『ゼノン様、どうすれば…?』

――いいか、よく聞け、イザベラ。俺が、今から、このネックレスを通して、お前に、俺の魔力を、送る。お前は、その魔力を、受け止め、金庫の、魔法陣に、流し込むんだ――

「そんなこと、できるのですか!?」

――理論上は、可能だ。このネックレスには、魔力の、増幅機能も、ある。お前が、中継点となることで、俺の魔力を、鍵として、使うことができるはずだ。だが…

彼の声が、少し、ためらう。

――お前の、身体に、かかる、負担は、計り知れない。下手をすれば、魔力に、飲み込まれて、廃人になる、可能性も、ある。…それでも、やるか?――

彼の、問い。
それは、私への、最後の、確認。

「当たり前ですわ」

私は、迷いなく、答えた。

「ここまで来て、引き返せるものですか。わたくしを、信じてください。あなたの魔力、受け止めてみせますわ」

――…わかった。お前を、信じよう――

彼の、覚悟の、決まった声。
私は、深呼吸を、一つして、金庫の、魔法陣に、両手を、かざした。

――いくぞ、イザベラ!――

次の瞬間、ネックレスから、膨大な、青い光の奔流が、私の身体へと、流れ込んできた。

「ぐっ…うううっ…!」

凄まじい、圧力。
全身の、血管が、逆流し、骨が、軋むような、感覚。
これが、彼の、魔力…!
消耗している、状態ですら、この、威力。
もし、彼が、万全の状態だったら、私は、一瞬で、吹き飛んでいただろう。

――耐えろ、イザベラ! 負けるな!――

頭の中に、彼の、必死の声が、響く。
負けるものですか。
あなたとの、約束を、果たすまでは…!

私は、歯を、食いしばり、流れ込んでくる、魔力の奔流を、必死に、制御する。
そして、その力を、両手から、金庫の、魔法陣へと、注ぎ込んだ。

青い光が、魔法陣の、文様に、沿って、流れていく。
まるで、乾いた、大地が、水を、吸い込むように。

ギギギギギ…!

金庫が、重い、音を立てて、軋み始める。
もう少しだ…!

私は、最後の一滴まで、力を、振り絞った。
そして。

カシャッ…

という、軽い音と共に、金庫の、重厚な扉が、静かに、開いた。

「…やった…!」

私は、その場に、へなへなと、座り込んでしまった。
全身から、力が、抜けていく。

――よく、やった、イザベラ! 本当に、よくやった!――

ゼノン様の、心からの、称賛の声が、疲れた、身体に、染み渡る。

私は、最後の力を、振り絞って、立ち上がると、金庫の、中を、覗き込んだ。
そこには、私たちの、予想通り、山のような、書類が、保管されていた。

ロシュフォール宰相が、諸外国と、極秘に、交わした、密約書。
王家を、転覆させ、自らが、摂政となるための、計画書。
そして、リリアナという、少女を、幼い頃から、どのように、教育し、洗脳してきたかを、記した、詳細な、記録日誌。

そのどれもが、彼の罪を、証明する、決定的な、証拠だった。

『これさえ、あれば…!』

私は、それらの、書類を、急いで、マジックバッグ――空間収納機能を持つ、魔法の鞄――に、詰め込んだ。
これで、ミッションは、完了だ。
あとは、ここから、無事に、脱出するだけ。

私が、ほっと、安堵の息を、ついた、その時だった。

「――そこで、何を、しているのかな? イザベラ嬢」

背後から、聞こえてきた、声。
冷たく、穏やかで、しかし、底知れない、怒りを、含んだ、声。
聞き間違えるはずもない。

ロシュフォール宰相の声だった。

しまった…!
いつの間に…!?

恐る恐る、振り返ると、そこには、いつもの、冷徹な、笑みを浮かべた、宰相が、立っていた。
彼の、後ろには、リリアナも、いる。

「いやはや、驚きましたぞ。まさか、本当に、ここまで、たどり着いてしまうとは。あなたのこと、少し、見くびっていたようですな、“悪役令嬢”」

彼の、その言葉。
それは、私の、潜入が、完全に、バレていたことを、意味していた。
陽動作戦も、すべて、お見通しだったというのか。

絶望的な、状況。
掴んだはずの、希望が、指の間から、こぼれ落ちていく。

悪役令嬢、最大の、ピンチ。
この、悪魔の手から、私は、もう、逃れることは、できないのだろうか。
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