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第46話:悪役令嬢、最後の啖呵
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絶体絶命。
私の、一世一代の潜入劇は、最悪の形で、幕を閉じようとしていた。
ロシュフォール宰相は、すべてを、お見通しだったのだ。
「いやはや、見事な、潜入劇でしたぞ、イザベラ嬢」
宰相は、まるで、芝居の感想でも、述べるかのように、悠然と、拍手をしてみせた。
「あなたの、その、度胸と、演技力。敵ながら、あっぱれ、と、言っておきましょう」
「…それは、光栄ですわね、宰相閣下」
私は、内心の動揺を、必死に、押し殺し、優雅に、微笑んでみせた。
マジックバッグに、入れた、証拠の書類が、ずしりと、重い。
これを、守り抜かなければ。
「して、いつから、お気づきで?」
「ふむ。そうですねぇ…あなたが、私の城に、足を踏み入れた、その瞬間から、ですかな」
「…!」
最初から、すべて、バレていたというのか。
私の、必死の演技も、陽動作戦も、すべて、彼の、手のひらの上で、踊らされていたに過ぎなかった。
「あなたの首にかかっている、その、シルヴァーグ公爵の、監視用のネックレス。あれは、確かに、厄介な代物ですが、この王宮は、私の、庭。その程度の、魔力の流れを、探知することなど、造作もないことです」
彼は、すべてを知った上で、あえて、私を、泳がせていたのだ。
私が、何を探り、どこまで、たどり着くのかを、試すために。
――イザベラ! 今すぐ、そこから、離れろ! 俺が、行く!――
頭の中に、ゼノン様の、切羽詰まった声が、響く。
ダメだ。彼が、ここへ、来たところで、宰相の、罠にかかるだけ。
『いいえ、ゼノン様。あなたは、来ては、なりません』
私は、心の中で、彼に、語りかける。
『これは、わたくしの、舞台ですもの。フィナーレは、わたくし自身で、飾らせていただきますわ』
私は、すっと、立ち上がった。
そして、絶望的な状況にもかかわらず、不敵に、胸を張る。
「あら、すべて、お見通しでしたの。それは、残念。わたくしの、演技も、まだまだ、だったようですわね」
「いいや、なかなかの、ものでしたよ。特に、私に、媚びを売る、あの、哀れな姿。実に、真に迫っておりました」
「光栄ですわ。ですが、宰相閣下。わたくしの舞台は、まだ、カーテンコールには、早すぎますのよ?」
私は、扇子を、ぱちん、と開いた。
「だって、これからが、本当の、見せ場なのですから」
「…ほう? この状況で、まだ、何かできると?」
「ええ、もちろんですわ」
私は、宰相の、隣で、得意げな顔をしている、リリアナに、視線を移した。
「例えば、そちらの、偽りの聖女様の、正体を、白日の下に、晒す、とか」
「なっ…!」
リリアナの顔色が変わる。
「あなたが、本当は、平民の、パン屋の娘などではなく、宰相閣下の、ご落胤(らくいん)であること。そして、長年、この日のために、洗脳教育を、施されてきた、哀れな、操り人形である、ということを、ね」
「な、何を、馬鹿なことを…!」
「あら、図星かしら? あなたの、その、動揺っぷり、実に、わかりやすいですわよ?」
挑発する。
時間を、稼ぐために。
ゼノン様たちが、次の手を、打つまでの、ほんの、わずかな時間を。
「宰相閣下。わたくしと、取引を、なさいませんこと?」
「取引、だと?」
「ええ。わたくしが、手に入れた、これらの、“お宝”と、引き換えに、わたくしの、命を、見逃してくださる、という、取引ですわ」
私は、マジックバッグを、ポン、と叩いてみせた。
「どうです? 悪い、お話では、ないでしょう?」
悪役令嬢、起死回生のための、最後の、啖呵。
それは、あまりにも、無謀で、脆い、時間稼ぎ。
しかし、今の私に、できることは、これしか、なかった。
この、悪魔たちの前で、決して、絶望を、見せずに、誇り高く、立ち続けることだけが、私の、最後の、戦いだった。
私の、一世一代の潜入劇は、最悪の形で、幕を閉じようとしていた。
ロシュフォール宰相は、すべてを、お見通しだったのだ。
「いやはや、見事な、潜入劇でしたぞ、イザベラ嬢」
宰相は、まるで、芝居の感想でも、述べるかのように、悠然と、拍手をしてみせた。
「あなたの、その、度胸と、演技力。敵ながら、あっぱれ、と、言っておきましょう」
「…それは、光栄ですわね、宰相閣下」
私は、内心の動揺を、必死に、押し殺し、優雅に、微笑んでみせた。
マジックバッグに、入れた、証拠の書類が、ずしりと、重い。
これを、守り抜かなければ。
「して、いつから、お気づきで?」
「ふむ。そうですねぇ…あなたが、私の城に、足を踏み入れた、その瞬間から、ですかな」
「…!」
最初から、すべて、バレていたというのか。
私の、必死の演技も、陽動作戦も、すべて、彼の、手のひらの上で、踊らされていたに過ぎなかった。
「あなたの首にかかっている、その、シルヴァーグ公爵の、監視用のネックレス。あれは、確かに、厄介な代物ですが、この王宮は、私の、庭。その程度の、魔力の流れを、探知することなど、造作もないことです」
彼は、すべてを知った上で、あえて、私を、泳がせていたのだ。
私が、何を探り、どこまで、たどり着くのかを、試すために。
――イザベラ! 今すぐ、そこから、離れろ! 俺が、行く!――
頭の中に、ゼノン様の、切羽詰まった声が、響く。
ダメだ。彼が、ここへ、来たところで、宰相の、罠にかかるだけ。
『いいえ、ゼノン様。あなたは、来ては、なりません』
私は、心の中で、彼に、語りかける。
『これは、わたくしの、舞台ですもの。フィナーレは、わたくし自身で、飾らせていただきますわ』
私は、すっと、立ち上がった。
そして、絶望的な状況にもかかわらず、不敵に、胸を張る。
「あら、すべて、お見通しでしたの。それは、残念。わたくしの、演技も、まだまだ、だったようですわね」
「いいや、なかなかの、ものでしたよ。特に、私に、媚びを売る、あの、哀れな姿。実に、真に迫っておりました」
「光栄ですわ。ですが、宰相閣下。わたくしの舞台は、まだ、カーテンコールには、早すぎますのよ?」
私は、扇子を、ぱちん、と開いた。
「だって、これからが、本当の、見せ場なのですから」
「…ほう? この状況で、まだ、何かできると?」
「ええ、もちろんですわ」
私は、宰相の、隣で、得意げな顔をしている、リリアナに、視線を移した。
「例えば、そちらの、偽りの聖女様の、正体を、白日の下に、晒す、とか」
「なっ…!」
リリアナの顔色が変わる。
「あなたが、本当は、平民の、パン屋の娘などではなく、宰相閣下の、ご落胤(らくいん)であること。そして、長年、この日のために、洗脳教育を、施されてきた、哀れな、操り人形である、ということを、ね」
「な、何を、馬鹿なことを…!」
「あら、図星かしら? あなたの、その、動揺っぷり、実に、わかりやすいですわよ?」
挑発する。
時間を、稼ぐために。
ゼノン様たちが、次の手を、打つまでの、ほんの、わずかな時間を。
「宰相閣下。わたくしと、取引を、なさいませんこと?」
「取引、だと?」
「ええ。わたくしが、手に入れた、これらの、“お宝”と、引き換えに、わたくしの、命を、見逃してくださる、という、取引ですわ」
私は、マジックバッグを、ポン、と叩いてみせた。
「どうです? 悪い、お話では、ないでしょう?」
悪役令嬢、起死回生のための、最後の、啖呵。
それは、あまりにも、無謀で、脆い、時間稼ぎ。
しかし、今の私に、できることは、これしか、なかった。
この、悪魔たちの前で、決して、絶望を、見せずに、誇り高く、立ち続けることだけが、私の、最後の、戦いだった。
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