断罪される未来を知る悪役令嬢ですが、冷徹なはずの婚約者に勘違いされて溺愛ルートに入りました

六角

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第47話:暴走する聖女と、父の誤算

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「証拠を、渡せば、命だけは、助けてやろう、ですって?」

宰相の、取引の申し出に、私は、思わず、噴き出してしまった。

「ふふっ…あははははっ! 冗談も、およしになって、宰相閣下。あなたの、その言葉を、わたくしが、信じるとでも、お思いで?」

「…では、どうするつもりだ? このまま、ここで、無駄死にするか?」

「ええ、それも、また、一興ですわね。ですが、その時は、もちろん、この証拠も、道連れに、させていただきますわ。このマジックバッグには、自爆機能が、ついておりますので」

もちろん、そんな機能は、ない。
ハッタリだ。

私の、その、悪びれない態度に、宰相は、眉を、ひそめた。
彼は、私が、ここまで、度胸のある女だとは、思っていなかったのだろう。

痺れを、切らしたように、声を上げたのは、リリアナだった。

「お父様! まだるっこしいですわ! この、ふてぶてしい女は、わたくしが、ここで、始末いたします!」

彼女は、そう叫ぶと、両手を、前に、突き出した。
その手に、渦巻くように、黒い、禍々しい、闇の魔力が、集まっていく。
それは、明らかに、聖女が、使うべき、光の魔法では、なかった。

「やめろ、リリアナ!」

宰相が、制止の声を上げるが、もう、遅い。

「喰らいなさい! ダークネス・ランス!」

リリアナの手から、漆黒の、魔力の槍が、放たれた。
その、あまりの、速度と、威力に、私は、避けることすら、できない。

『これまで、か…!』

死を、覚悟した、その瞬間。

私の前に、大きな、影が、立ちはだかった。
ロシュフォール宰相、その人だった。

「――ぐっ!?」

黒い槍は、私を庇った、宰相の、右腕を、深く、抉った。
鮮血が、彼の、豪華な、衣服を、赤く染めていく。

「お、お父様…!?」

リリアナが、信じられない、といった顔で、目を見開いている。
自分が、放った魔法が、父親に、当たってしまったのだ。

「…リリアナ」

宰相は、負傷した腕を、押さえながら、苦悶の表情で、娘の、名を、呼んだ。

「なぜ、だ…! なぜ、私の、言うことが、聞けんのだ!」

「だ、だって…! この女を、始末しないと…!」

「俺は、言ったはずだ! 無用な、殺生は、望んでいない、と!」

宰相の、絶叫。
それは、今まで、彼が、見せたことのない、感情的な、姿だった。

私は、目の前の、光景が、信じられなかった。
宰相が、私を、庇った…?
なぜ?

宰相は、リリアナを、睨みつけながら、続けた。

「私が、望んだのは、ただ、一つ! 腐敗した、この王政を、立て直し、真に、国を、民を、想う、王を、立てることだ!」

「……!」

「そのためには、多少の、犠牲は、やむを得んと思っていた。だが、それは、血を、流さずに、成し遂げられるはずだったのだ! なのに、お前は…!」

そこで、私は、すべてを、察した。
宰相の、真の、目的。
彼は、決して、この国を、破壊したかったわけではない。
むしろ、逆だ。
彼は、彼なりの、正義と、愛国心で、動いていたのだ。

その、やり方が、あまりにも、歪んで、独善的だっただけで。

「お父様こそ、何を、おっしゃっているのですか?」

しかし、リリアナは、そんな、父親の、想いを、嘲笑うかのように、言った。

「甘いですわ。そんな、やり方で、いつになったら、あなたの、理想の世界が、来るというのですか?」

「リリアナ…」

「力には、力で、応えるべきですわ。邪魔者は、すべて、消し去る。それこそが、最も、早く、最も、確実な、方法でしょう?」

彼女の、瞳には、狂気が、宿っていた。
もはや、父親の、言葉など、届いていない。

宰相の、誤算。
それは、娘を、自分の、理想の、駒として、育てようとした結果、自分の、想像を、遥かに、超える、怪物を、生み出してしまったことだった。
長年の、洗脳教育が、彼女の、心を、歪め、破壊的な、思想を、植え付けてしまったのだ。

父と、娘の、決裂。
それは、この、クーデター劇の、最も、悲劇的な、瞬間だったのかもしれない。
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