断罪される未来を知る悪役令嬢ですが、冷徹なはずの婚約者に勘違いされて溺愛ルートに入りました

六角

文字の大きさ
56 / 60

第56話:聖女になった、悪役令嬢

しおりを挟む
「――イザベラ様、わたくしの、最後の力を、あなたに…」

リリアナの、儚い魂が、光の粒子となって、私の身体へと、溶け込んでいく。
次の瞬間、私の全身を、今まで、感じたことのないような、清らかで、そして、強大な、力が、駆け巡った。

「ぐっ…!」

身体の内側から、白銀の、神々しい光が、溢れ出す。
それは、リリアナが、持っていた、聖女の力。
そして、その力を、私の魂が、増幅させている。
悪役令嬢でありながら、聖女の力を、その身に宿すという、矛盾した、奇跡の存在が、今、ここに、誕生したのだ。

「なっ…!? なんだ、その光は…!?」

目の前の、邪神ゾハールが、初めて、狼狽の声を上げた。
彼の、邪悪な、闇のオーラが、私の放つ、聖なる光に、圧されている。

「イザベラ…!?」
「すごい力だ…! これが、イザベラ嬢、なのか…!?」

後ろで、ゼノン様と、アラン殿下が、驚愕の声を上げているのが、聞こえる。
私自身も、この、身体に満ちる、未知の力に、戸惑っていた。

『これが、聖女の力…そして、わたくしの、本当の力…?』

「面白い…! 実に、面白いぞ、人の娘!」

邪神は、狼狽から一転、歓喜の表情を、浮かべた。

「聖と、俗! 光と、闇! 二つの、相反する魂を、一つの器に、宿すか! 素晴らしい! その身体、もはや、神の器と、言っても、過言ではあるまい!」

彼は、恍惚とした表情で、言った。

「気に入った! シルヴァーグ公爵の、魔力を、吸収した後、その身体、我が、新たな、器として、貰い受けてやろう!」

邪神は、そう言うと、再び、巨大な、闇の塊を、私に、向かって、放ってきた。

『…!』

まずい、と、思うより先に、私の身体は、勝手に、動いていた。
右手を、前に、かざす。
すると、私の手から、白銀の光が、放たれ、巨大な、光の、障壁が、展開された。

ドォォォン!

闇の塊は、光の障壁に、激突し、凄まじい、轟音と、共に、霧散した。
ゼノン様が、あれほど、苦戦していた、攻撃を、いとも、簡単に。

「ほう…! やるではないか!」

邪神は、楽しそうに、次々と、闇の、攻撃を、繰り出してくる。
私は、それを、無我夢中で、防ぎ続ける。

「ですが、それだけですわ!」
「いつまで、持つかな、その光も!」

防戦一方。
確かに、力は、強大になっている。
しかし、このままでは、ジリ貧だ。
それに、この力を、どうやって、攻撃に、転じればいいのか、私には、まだ、わからない。

『くっ…力が、足りない…! もっと、この力を、完全に、制御できれば…!』

私が、歯を食いしばった、その時だった。
背中に、温かい、感触が、伝わった。
振り返ると、そこには、ゼノン様が、立っていた。
彼は、私の背中に、そっと、両手を、当てていた。

「ゼノン様…!?」

「一人で、背負うな、イザベラ」

彼は、静かに、しかし、力強く、言った。

「お前が、一人で、戦っているわけではない。俺も、共に、戦う」

「ですが、あなたの魔力は、邪神の、贄に…!」

「構わん」

彼は、きっぱりと、言った。

「お前と、お前の信じる、未来のためならば、この身が、どうなろうと、構わん。それに…」

彼は、優しく、微笑んだ。

「俺の、愛する女が、世界を救う、聖女になるというのなら、その、一番、近くで、見ていたいだろう?」

彼の、覚悟。
そして、揺るぎない、愛。
その想いが、彼の、青い魔力となって、私の身体へと、流れ込んでくる。

不思議な、ことが、起きた。
彼の、魔力は、本来、邪神の、好物のはず。
しかし、私の、身体を、通した、彼の魔力は、邪悪な、気を、浄化され、清らかな、聖なる力へと、変換されていったのだ。

聖女となった、悪役令嬢。
その、奇跡の力は、愛する人の、想いを受け止め、さらなる、輝きを、放ち始める。
私たちの、最後の、戦いが、今、本当の意味で、幕を開けた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

地味顔令嬢の私を「嘘の告白」で笑いものにするつもりですか? 結構です、なら本気で惚れさせてから逆にこっちが盛大に振ってあげます!

日々埋没。
恋愛
「お前が好きだ。この俺と付き合ってくれないか?」    学園のアイドル、マルスからの突然の告白。  憧れの人からの言葉に喜んだのも束の間、伯爵令嬢リーンベイルは偶然知ってしまう。それが退屈しのぎの「嘘の告白(ウソコク)」だったことを。 「あの地味顔令嬢が俺に釣り合うわけないだろ。ドッキリのプラカードでも用意しとくわ」  親友のミネルバと共に怒りに震える彼女は、復讐を決意する。まずは父の言いつけで隠していた「絶世の美貌」を解禁! 嘘の恋を「真実の恋(マジコク)」に変えさせ、最高のタイミングで彼を地獄へ突き落とす――。 「……今さら本気になった? 冗談はやめてください、これドッキリですよ?」

【完】婚約してから十年、私に興味が無さそうなので婚約の解消を申し出たら殿下に泣かれてしまいました

さこの
恋愛
 婚約者の侯爵令嬢セリーナが好きすぎて話しかけることができなくさらに近くに寄れないジェフェリー。  そんなジェフェリーに嫌われていると思って婚約をなかった事にして、自由にしてあげたいセリーナ。  それをまた勘違いして何故か自分が選ばれると思っている平民ジュリアナ。  あくまで架空のゆる設定です。 ホットランキング入りしました。ありがとうございます!! 2021/08/29 *全三十話です。執筆済みです

転生先は推しの婚約者のご令嬢でした

真咲
恋愛
馬に蹴られた私エイミー・シュタットフェルトは前世の記憶を取り戻し、大好きな乙女ゲームの最推し第二王子のリチャード様の婚約者に転生したことに気が付いた。 ライバルキャラではあるけれど悪役令嬢ではない。 ざまぁもないし、行きつく先は円満な婚約解消。 推しが尊い。だからこそ幸せになってほしい。 ヒロインと恋をして幸せになるならその時は身を引く覚悟はできている。 けれども婚約解消のその時までは、推しの隣にいる事をどうか許してほしいのです。 ※「小説家になろう」にも掲載中です

当て馬令嬢は自由を謳歌したい〜冷酷王子への愛をゴミ箱に捨てて隣国へ脱走したら、なぜか奈落の底まで追いかけられそうです〜

平山和人
恋愛
公爵令嬢エルナは、熱烈に追いかけていた第一王子シオンに冷たくあしらわれ、挙句の果てに「婚約者候補の中で、お前が一番あり得ない」と吐き捨てられた衝撃で前世の記憶を取り戻す。 そこは乙女ゲームの世界で、エルナは婚約者選別会でヒロインに嫌がらせをした末に処刑される悪役令嬢だった。 「死ぬのも王子も、もう真っ平ご免です!」 エルナは即座に婚約者候補を辞退。目立たぬよう、地味な領地でひっそり暮らす準備を始める。しかし、今までエルナを蔑んでいたはずのシオンが、なぜか彼女を執拗に追い回し始め……? 「逃げられると思うなよ。お前を俺の隣以外に置くつもりはない」 「いや、記憶にあるキャラ変が激しすぎませんか!?」

恋愛戦線からあぶれた公爵令嬢ですので、私は官僚になります~就業内容は無茶振り皇子の我儘に付き合うことでしょうか?~

めもぐあい
恋愛
 公爵令嬢として皆に慕われ、平穏な学生生活を送っていたモニカ。ところが最終学年になってすぐ、親友と思っていた伯爵令嬢に裏切られ、いつの間にか悪役公爵令嬢にされ苛めに遭うようになる。  そのせいで、貴族社会で慣例となっている『女性が学園を卒業するのに合わせて男性が婚約の申し入れをする』からもあぶれてしまった。  家にも迷惑を掛けずに一人で生きていくためトップであり続けた成績を活かし官僚となって働き始めたが、仕事内容は第二皇子の無茶振りに付き合う事。社会人になりたてのモニカは日々奮闘するが――

時間を戻した元悪女は、私を捨てた王太子と、なぜか私に夢中の騎士団長から逃げられません

腐ったバナナ
恋愛
王太子アルベルトの婚約者であったユミリアは、前世で悪女の汚名を着せられ、騎士団長ギルバートによって処刑された。 しかし、目を覚ますと、処刑直前の自分に時間が戻っていた。 ユミリアは、静かに追放されることを目標に、悪女の振る舞いをやめ、王太子から距離を置く。 しかし、なぜか冷酷非情なはずの騎士団長ギルバートが、「貴殿は私の光だ」と異常な執着を見せ、彼女を絶対的に独占し始める。

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

私の欲する愛を独占している双子に嫉妬して入れ替わったら、妹への恨み辛みを一身に受けましたが、欲しかったものは手にできました

珠宮さくら
恋愛
双子の姉妹として生まれた2人は、成長するにつれてお互いにないものねだりをしていた事に気づかないまま、片方は嫉妬し、片方は殺意を持って、お互いが入れ替わることになる。 そんな2人に振り回されたと怒り狂う人が現れたり、それこそ双子のことを振り回した人たちも大勢いたが、謝罪されても伝わることのない未来が訪れるとは思いもしなかった。 それでも、頑張っていた分の願いは叶ったのだが……。

処理中です...