断罪される未来を知る悪役令嬢ですが、冷徹なはずの婚約者に勘違いされて溺愛ルートに入りました

六角

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第55話:最後の希望、聖女の祈り

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パリン…!

ついに、ゼノン様が、展開していた、光の結界が、ガラスのように、砕け散った。
私たちを、守るものは、もう、何もない。
邪神ゾハールが、作り出した、巨大な、闇の塊が、目前まで、迫っている。

『ああ…ここまで、なのね…』

走馬灯のように、これまでの、出来事が、頭を、駆け巡る。
断罪の未来に怯えていた、私。
ゼノン様の、不器用な、溺愛。
アラン殿下との、出会い。
そして、共に、戦ってきた、仲間たちとの、時間。
短い間だったけれど、悪役令嬢イザベラとしての、人生も、悪くは、なかった。

私が、そっと、目を閉じた、その時だった。

「――まだ、です…」

か細い、しかし、凛とした、声が、聞こえた。
ハッとして、目を開けると、私の目の前に、半透明の、光の、人影が、立っていた。

「リリアナ…!?」

消えたはずの、彼女の魂。
なぜ、ここに?

「お父様が、最後の力で、わたくしの魂だけを、守ってくださいました…」

リリアナの魂は、涙を、流しているように、見えた。

「お願いです、イザベラ様。わたくしに、最後の、チャンスを、ください。すべてを、償うための、チャンスを」

「償う…?」

「はい。この、邪神を、倒す、唯一の、方法が、あります」

彼女は、絶望の闇の中に、一条の光を、灯すように、言った。

「邪神ゾハールの、力の源は、負の感情。憎しみ、怒り、絶望…それらを、喰らって、力に、変えています。だから、普通の、攻撃は、通用しません」

「では、どうすれば…」

「奴を、倒せるのは、ただ、一つ。純粋な、聖なる力だけです」

聖なる力。
それは、つまり、聖女の力ということか。

「わたくしには、聖女の、血が、流れています。ですが、その力は、あまりにも、微弱…。それに、邪神に、長年、身体を、乗っ取られていたせいで、ほとんど、残っておりません」

彼女は、悲しそうに、首を振った。

「ですが」と、彼女は続けた。
その瞳は、私を、まっすぐに、見つめている。

「あなたとなら、奇跡を、起こせるかもしれない」

「わたくしと…?」

「はい。イザベラ様。あなたの中に眠る、特別な力と、わたくしの、この、わずかな、聖女の力を、合わせれば…あるいは…」

特別な力?
私の中に、そんなものが?

「わたくしには、魔力なんて、ほとんど、ありませんわよ?」

「いいえ、魔力では、ありません。もっと、根源的な、世界の、理に、干渉する力です」

彼女は、言った。

「あなたは、この世界の、住人では、ありません。異世界からの、魂を持つ、特別な、存在。その、特異な、魂は、この世界の、因果律から、わずかに、外れている。だからこそ、あなたは、この世界の、“シナリオ”を、変えることが、できるのです」

私が、乙女ゲームの、悪役令嬢として、転生したこと。
それは、ただの、偶然では、なかった。
この、邪神を、倒すために、この世界が、呼び寄せた、イレギュラー。
それが、私だったというのか。

「あなたの、その、世界の理を、書き換える力で、わたくしの、この、聖女の力を、増幅させてください! そうすれば、邪神を、滅する、一撃を、放てるはずです!」

リリアナの、魂が、懇願する。
それは、あまりにも、突拍子のない、話だった。
私に、そんな、チートのような、能力が、あるなんて。

でも。
もう、これしか、道は、ない。

「…わかりましたわ」

私は、頷いた。

「わたくしに、何ができるか、わからない。でも、やってみます」

「ありがとうございます…!」

リリアナの魂が、光り輝き、私の、身体の中へと、吸い込まれていく。
温かい、光が、私を、包み込む。

目の前には、巨大な、闇の塊が、迫っている。
後ろでは、ゼノン様と、アラン殿下が、私を、守ろうと、必死に、なっている。

すべての、想いを、背負って。
私は、邪神へと、向き直った。
悪役令嬢の、最後の、そして、最大の、見せ場の、始まりだ。
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