断罪される未来を知る悪役令嬢ですが、冷徹なはずの婚約者に勘違いされて溺愛ルートに入りました

六角

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第54話:絶対的な力の前に

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バキィッ! ミシミシッ!

邪神ゾハールの、 relentless な攻撃に、ゼノン様が、作り出した、光の結界が、悲鳴を上げる。
黒い触手が、叩きつけられるたびに、亀裂は、深くなり、砕け散るのも、時間の問題だった。

「くそっ…! キリがない…!」

アラン殿下が、剣で、触手を、斬り払おうとするが、斬られた、そばから、再生していく。

「ゼノン! 何か、手はないのか!?」

「…打開策は、ない…!」

ゼノン様も、結界を、維持するのに、全神経を、集中させており、攻撃に、転じる、余裕は、ないようだ。
その、彼の額にも、脂汗が、滲んでいる。

「はははっ! どうした、どうした! その程度か、人間ども!」

邪神は、高みの見物を、決め込んでいる。
まるで、猫が、鼠を、いたぶるように、じわじわと、私たちを、追い詰めていくのを楽しんでいるのだ。

「シルヴァーグ公爵! お前の、その、生命力、実に、素晴らしい! 早く、我がものに、したいぞ!」

邪神の、影が、さらに、大きく、膨れ上がる。
そして、今までとは、比べ物にならないほどの、巨大な、闇の、塊を、作り出した。

「終わりだ。その、玩具の、結界ごと、お前たちを、飲み込んでやろう」

闇の、塊が、私たちに、向かって、ゆっくりと、迫ってくる。
絶望的な、光景。
結界は、もう、持たない。
あれを、喰らえば、すべてが、終わる。

「ゼノン様…!」

「イザベラ…! 俺の、側から、離れるな…!」

彼は、私を、強く、抱きしめた。
彼の、腕の中で、最期を、迎えるのも、悪くはない、かもしれない。
そんな、諦めの、気持ちが、私の、心を、よぎった、その時だった。

「――させん!」

声の、主は、ゼノン様では、なかった。
床に、倒れていた、ロシュフォール宰相だった。
彼は、負傷した、身体を、引きずりながら、立ち上がると、私たちの前に、立ちはだかった。

「宰相!?」

「…すべては、私の、過ちから、始まったこと」

彼は、邪神を、まっすぐに、睨みつけて、言った。

「ならば、この、命に、代えても、せめてもの、償いを、させてもらう」

彼は、残された、魔力を、すべて、解放した。
その、老いた、身体から、放たれる、光は、ゼノン様ほど、強くは、ない。
しかし、そこには、国を憂い、道を誤った、一人の男の、最後の、矜持が、込められていた。

「愚かな、真似を」

宰相の、光の、障壁は、邪神の、闇の、塊の前に、一瞬で、飲み込まれて、消え去った。
そして、闇は、勢いを、殺すことなく、宰相自身をも、飲み込もうと、する。

「ぐっ…ああああっ!」

宰相の、悲痛な、叫び声。

「――お父様!」

その時、今まで、床に、倒れていた、リリアナの、魂が、叫んだ。
彼女の、半透明の、身体が、ふわり、と浮き上がると、父親の、元へと、飛んでいく。

「あなたを、一人では、行かせません…! わたくしも、共に…!」

彼女の、魂が、父親の、魂に、寄り添う。
二つの、魂が、一つとなり、淡い、しかし、温かい、光を、放ち始めた。

しかし、その、儚い光も、邪神の、巨大な、闇の前には、風の前の、灯火だった。
闇は、無慈悲に、二人の、魂ごと、すべてを、飲み込んでいく。

「…ゼノン様…イザベラ嬢…」

闇に、消えゆく、瞬間、宰相が、私たちに、最後の、言葉を、託した。

「どうか…この国を…頼む…」

それが、彼の、最後の、言葉だった。
ロシュフォール宰相と、リリアナは、闇の中に、完全に、消え去った。

「宰相…! リリアナ…!」

敵だったはずの、二人の、最期。
しかし、私の、胸には、悲しみだけが、残った。

「…さて、邪魔者は、消えたな」

邪神は、何事も、なかったかのように、言った。
二人の、自己犠牲も、彼にとっては、ほんの、わずかな、時間稼ぎにしか、ならなかった。

闇の、塊は、再び、私たちへと、迫ってくる。
ゼノン様の、結界も、もはや、限界だ。

絶対的な、力の差。
もはや、万策尽きた。
私たちは、ただ、迫りくる、終焉を、待つことしか、できないのだろうか。
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