断罪される未来を知る悪役令嬢ですが、冷徹なはずの婚約者に勘違いされて溺愛ルートに入りました

六角

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第53話:神の戯れと、人の尊厳

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「ゼノン様の、魔力を、贄に…ですって?」

私は、目の前の、信じがたい、現実を、理解できずに、呟いた。
邪神ゾハールの、目的。
それは、この世界への、完全な復活。
そして、そのための、生贄が、ゼノン様だという。

「その通りだ、人の娘よ」

邪神は、楽しそうに、答える。

「かつて、我は、この世界の、神々と、覇権を、争い、そして、敗れた。奴らは、我が、肉体を、滅ぼし、魂だけを、あの、忌々しい、魔石に、封じ込めたのだ」

「…まさか、古の、神話は、実話だったと、いうのか…」

アラン殿下が、呻くように、言った。
この国に、伝わる、創世神話。
そこには、光の神々が、闇の邪神を、打ち倒し、世界に、平和を、もたらした、と、記されている。
誰もが、おとぎ話だと、思っていた、その物語が、今、現実のものとして、私たちの前に、立ちはだかっていた。

「長い、長い、封印の、時だった。だが、我は、待ち続けた。我が、復活に、最も、ふさわしい、二つの、要素が、揃うのをな」

邪神は、続ける。

「一つは、聖女の、血を引く、清らかな、魂の、器。我が、邪気を、浄化し、魂を、安定させるための、揺りかごだ。それが、あの娘、リリアナだった」
「……」
「そして、もう一つが、神々に、匹敵するほどの、強大な、生命エネルギー。すなわち、魔力だ。滅びた、我が肉体を、再構築するための、材料。それが、シルヴァーグ公爵、お前だったというわけだ」

すべての、ピースが、はまった。
宰相の、野心も、リリアナの、暴走も、すべて、この、邪神の、復活劇の、ための、余興に過ぎなかった。

「おのれ…! 我らを、ずっと、弄んでいたのか!」

ゼノン様が、怒りに、震えながら、邪神を、睨みつける。
しかし、邪神は、全く、意に介さない。

「弄ぶ、などと、人聞きの悪い。我は、ただ、退屈を、凌いでいただけだ。お前たちの、愛憎劇は、なかなか、見応えがあったぞ? 特に、そこの、赤髪の娘」

邪神の、視線が、私に、注がれる。
ぞくり、と、背筋が、凍った。

「お前は、実に、面白かった。異世界からの、転生者、だったか? 自分の、知る、“シナリオ”とやらが、ことごとく、崩れていく様に、怯え、足掻く姿は、極上の、見世物だったぞ」

「……!」

「その、“乙女ゲーム”とやらを、作ったのは、我ではないが、お前のような、イレギュラーが、現れたことで、我が、脚本は、より、面白く、なった。礼を、言おう」

屈辱だった。
私の、人生を賭けた、必死の戦いが、ただの、娯楽だったなんて。

「ふざけるな…!」

ゼノン様が、叫んだ。

「人の、想いを、人生を、弄びおって…! 神だと、かなんだか、知らんが、絶対に、許さん!」

彼は、残された、魔力を、振り絞り、邪神へと、最大の、魔法を、放った。
青い、閃光が、空間を、引き裂き、邪神の、影を、直撃する。

しかし。

邪神は、その攻撃を、まるで、そよ風を、受けるかのように、平然と、受け止めた。
影は、微動だに、しない。

「…無駄だ、と言っているだろう?」

邪神は、心底、つまらなそうに、言った。

「お前たちの、力など、我にとっては、赤子の、戯れに、等しい。さあ、大人しく、我が、一部と、なるがいい、シルヴァーグ公爵」

邪神の、影から、無数の、黒い触手が、伸びてきて、ゼノン様へと、襲いかかった。
速い。
避ける、暇もない。

「ゼノン様!」

私は、思わず、彼の前に、飛び出していた。
もう、彼に、守られてばかりは、嫌だ。
私が、彼を…。

しかし、私の、小さな身体など、何の、盾にも、なりはしない。
黒い触手は、私ごと、彼を、貫こうと、迫ってくる。

その、瞬間だった。

私の、胸元の、ネックレスが、**カアアッ!**と、今までで、一番、強い光を、放った。
そして、私の、身体の前に、青い光の、半球状の、結界が、展開される。

ガギンッ!

黒い触手は、結界に、阻まれ、甲高い、金属音を、立てて、弾かれた。

「…ほう?」

邪神が、初めて、少し、驚いたような、声を、出した。

「その、首飾りか。シルヴァーグ公爵が、その魂の、半分を、削って、作った、守りの、お守り。なかなかの、代物だな。だが」

邪神は、嘲笑う。

「それも、いつまで、持つかな?」

再び、無数の、触手が、私たちに、襲いかかる。
結界は、その攻撃を、防ぐが、その度に、ミシミシと、嫌な音を立てて、ヒビが、入っていく。

人の、尊厳を、賭けた、最後の、抵抗。
しかし、神と、名乗る、圧倒的な、力の前に、それは、あまりにも、無力だった。
結界が、砕け散るのも、もはや、時間の、問題だった。
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