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第二章 ロルディアの影
第43話 フェルシアの里
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俺たちは深い森を抜け、ようやくフェルシアの里へとたどり着いた。
森の奥深くに位置するこの里は、自然の景観を生かした木造の住居が点在し、中央には神聖な雰囲気を漂わせる巨大な樹がそびえ立っていた。その根元には小さな泉があり、透き通る水が静かに湛えられている。
里全体を包むように展開された魔法の結界が外部からの侵入を阻んでいるのだという。
俺は結界を通る際に微かな抵抗を感じたが、エルンが同行しているおかげか、すんなりと中へ入ることができた。
俺たちは夜の闇に紛れ、まるで泥棒みたいに里へと侵入した。
翌朝、エルンの先導で里の集会所へ向かった。
住民たちは突然の来訪者に驚きながらも、エルンの顔を見ると次第に表情を和らげていった。
久しぶりの帰還に、特に年配のエルフたちは歓喜の声を上げ、若いエルフたちも興味深そうに俺たちを見つめていた。
「エルン! 無事だったのね!」
その声とともに、一人のエルフの女性が駆け寄ってきた。腰まで届く銀色の髪、透き通るような青い瞳を持ち、動きに気品が漂う。エルンの親友、リゼリアだった。
「リゼリア……!」
エルンは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに笑顔になり、互いに腕を取り合った。
「どうして、ここへ……? まさか、また何かあったの?」
リゼリアはエルンの表情を見て直感的に察したようだった。
「実は……」
エルンは俺と共に経験した出来事、エルフが何者かに誘拐されていること、その背後に黒幕がいる可能性が高いことを説明した。リゼリアは真剣な表情で耳を傾け、時折うなずきながら話を聞いていた。
「そんなことが……。誘拐されたエルフたちは無事なの?」
「わからない。でも、これ以上犠牲者を増やさないために俺たちは動いている」
俺が力強くそう答えると、リゼリアは深く息を吐き、静かに決意を固めるように目を閉じた。
「……わかった。私も協力するわ。あなたたちがここまでしている以上、私たちも何もしないわけにはいかない」
「ありがとう、リゼリア」
リゼリアはうなずき、さらに重要な情報を共有してくれた。
「実は最近この里にも不穏な噂が流れているの。闇に紛れて何者かが森の奥を徘徊しているって。おそらく、その黒幕……ヴァルディス・ノクターンという魔族が関わっているかもしれない」
「ヴァルディス……」
俺はその名を口にすると、手に汗を握った。魔族という危険な存在。もし魔族が直接関与しているのであれば、事態はさらに深刻だ。
「私からもエルフェンリートの森にいる戦士たちへ援軍を要請するわ。カインを『真の賢者』と慕う者たちがいるの。エルフェンリートの森での試練を経て、あなたが十分に賢者としての資質を示していたと認めるエルフたちもいるのよ」
「……俺を?」
俺は少し戸惑ったが、リゼリアは真剣な眼差しでうなずいた。
「……頼もしいな」
俺は小さく笑い、決意を新たにした。
「ただ、援軍が到着するまでには時間がかかるわ。それまでの間、どうするつもり?」
「……俺の戦う力がもっと必要だな」
ルナがふさふさの尾を揺らしながら、不満げに口を開いた。
「戦う、ばかり……ダメ、カインあぶない」
ルナは耳をぴくりと動かしながら、慎重に言葉を選んで話した。ルナの発音はたどたどしいが、真剣さが伝わるものだった。
俺はルナの指摘に一瞬考え込み、エルンを見た。エルンは軽くうなずきながら続けた。
「そうね、戦うだけが解決策ではないのも事実ね。でも、戦う力をつけるのは逃げ道を作るためでもあるの。無理に正面からぶつかる必要はないけれど、戦える力を持っていることで選択肢が広がるわ」
ルナは尻尾をゆっくりと振り、少し不満そうにしながらも、納得したようにため息をついた。
「むちゃ、ダメ……ぜったい」
俺は苦笑しつつ、ルナのふわふわの毛並みを撫でながら、軽く肩をすくめた。
「ルナがいるなら、そんなに無茶はしないさ」
ルナは満足したように耳をぴくぴく動かし、得意げに胸を張った。
「戦う準備をする。俺はもっと強くならないといけない」
その言葉にエルンとリゼリアはうなずいた。
「それなら、魔法の練習をしたらどう?」
エルンの提案に俺は考えるように顎に手を当てた。
これまでカイランの体で剣技に慣れるように意識してきたが、魔法の使い方はまだ十分に理解できていない。敵が強大な力を持つのならば、魔法を駆使して戦う術を身につける必要がある。
「わかった。魔法の練習を始めよう」
こうして、援軍が到着するまでの間、俺は魔法の修行をすることに決めた。
森の奥深くに位置するこの里は、自然の景観を生かした木造の住居が点在し、中央には神聖な雰囲気を漂わせる巨大な樹がそびえ立っていた。その根元には小さな泉があり、透き通る水が静かに湛えられている。
里全体を包むように展開された魔法の結界が外部からの侵入を阻んでいるのだという。
俺は結界を通る際に微かな抵抗を感じたが、エルンが同行しているおかげか、すんなりと中へ入ることができた。
俺たちは夜の闇に紛れ、まるで泥棒みたいに里へと侵入した。
翌朝、エルンの先導で里の集会所へ向かった。
住民たちは突然の来訪者に驚きながらも、エルンの顔を見ると次第に表情を和らげていった。
久しぶりの帰還に、特に年配のエルフたちは歓喜の声を上げ、若いエルフたちも興味深そうに俺たちを見つめていた。
「エルン! 無事だったのね!」
その声とともに、一人のエルフの女性が駆け寄ってきた。腰まで届く銀色の髪、透き通るような青い瞳を持ち、動きに気品が漂う。エルンの親友、リゼリアだった。
「リゼリア……!」
エルンは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに笑顔になり、互いに腕を取り合った。
「どうして、ここへ……? まさか、また何かあったの?」
リゼリアはエルンの表情を見て直感的に察したようだった。
「実は……」
エルンは俺と共に経験した出来事、エルフが何者かに誘拐されていること、その背後に黒幕がいる可能性が高いことを説明した。リゼリアは真剣な表情で耳を傾け、時折うなずきながら話を聞いていた。
「そんなことが……。誘拐されたエルフたちは無事なの?」
「わからない。でも、これ以上犠牲者を増やさないために俺たちは動いている」
俺が力強くそう答えると、リゼリアは深く息を吐き、静かに決意を固めるように目を閉じた。
「……わかった。私も協力するわ。あなたたちがここまでしている以上、私たちも何もしないわけにはいかない」
「ありがとう、リゼリア」
リゼリアはうなずき、さらに重要な情報を共有してくれた。
「実は最近この里にも不穏な噂が流れているの。闇に紛れて何者かが森の奥を徘徊しているって。おそらく、その黒幕……ヴァルディス・ノクターンという魔族が関わっているかもしれない」
「ヴァルディス……」
俺はその名を口にすると、手に汗を握った。魔族という危険な存在。もし魔族が直接関与しているのであれば、事態はさらに深刻だ。
「私からもエルフェンリートの森にいる戦士たちへ援軍を要請するわ。カインを『真の賢者』と慕う者たちがいるの。エルフェンリートの森での試練を経て、あなたが十分に賢者としての資質を示していたと認めるエルフたちもいるのよ」
「……俺を?」
俺は少し戸惑ったが、リゼリアは真剣な眼差しでうなずいた。
「……頼もしいな」
俺は小さく笑い、決意を新たにした。
「ただ、援軍が到着するまでには時間がかかるわ。それまでの間、どうするつもり?」
「……俺の戦う力がもっと必要だな」
ルナがふさふさの尾を揺らしながら、不満げに口を開いた。
「戦う、ばかり……ダメ、カインあぶない」
ルナは耳をぴくりと動かしながら、慎重に言葉を選んで話した。ルナの発音はたどたどしいが、真剣さが伝わるものだった。
俺はルナの指摘に一瞬考え込み、エルンを見た。エルンは軽くうなずきながら続けた。
「そうね、戦うだけが解決策ではないのも事実ね。でも、戦う力をつけるのは逃げ道を作るためでもあるの。無理に正面からぶつかる必要はないけれど、戦える力を持っていることで選択肢が広がるわ」
ルナは尻尾をゆっくりと振り、少し不満そうにしながらも、納得したようにため息をついた。
「むちゃ、ダメ……ぜったい」
俺は苦笑しつつ、ルナのふわふわの毛並みを撫でながら、軽く肩をすくめた。
「ルナがいるなら、そんなに無茶はしないさ」
ルナは満足したように耳をぴくぴく動かし、得意げに胸を張った。
「戦う準備をする。俺はもっと強くならないといけない」
その言葉にエルンとリゼリアはうなずいた。
「それなら、魔法の練習をしたらどう?」
エルンの提案に俺は考えるように顎に手を当てた。
これまでカイランの体で剣技に慣れるように意識してきたが、魔法の使い方はまだ十分に理解できていない。敵が強大な力を持つのならば、魔法を駆使して戦う術を身につける必要がある。
「わかった。魔法の練習を始めよう」
こうして、援軍が到着するまでの間、俺は魔法の修行をすることに決めた。
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