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第二章 ロルディアの影
第44話 水魔法の修行
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俺は深く息を吐き、湖の水面をじっと見つめた。
ヴァルディス・ノクターンとの対決を見据え、己の力を磨く必要がある。魔族の存在は未知の部分が多いが、対抗するには確実な戦力を身に着けなければならない。俺がこの世界で手ごたえを感じたのはエルフの森の試練で発動した水魔法だ。ならば、まずはこの力を極めることから始めよう。
湖のほとりに腰を下ろし、俺は心の中で呼びかけた。
「カイラン、聞こえるか? 水魔法を使いこなしたいんだが指南してくれないか?」
俺の意識の奥から眠たげな声が響く。
『水魔法か……私の記憶を頼れ……』
「いや、それじゃ分からないんだが……」
困惑する俺に対し、カイランはそれ以上の助言を寄こさなかった。彼の記憶が鍵になっていることは分かるが、具体的に何をどうすればいいのかが見えてこない。
(どうもピンとこないな……。何か根本的に分かっていないことがあるのか?)
モヤモヤした気持ちを抱えたまま、俺はエルンの元へ向かった。
エルンは森の中の小さな空き地で魔法陣を描く訓練をしていた。
「エルン、ちょっと相談があるんだが」
俺が話しかけると、エルンは手を止めて顔を上げた。
「どうしたの? なんだか浮かない顔してるわね」
「水魔法を勉強したいんだけど、どうもうまくいかなくて……」
俺はカイランの反応も含め、現状を説明した。エルンは腕を組み、少し考え込むと、優しく微笑みながら語り始めた。
「ふふっ、そうね。カイラン様は理論的に説明するのは苦手かもしれないわね」
「そういうことなのか?」
「ええ。じゃあ、代わりに私が教えてあげる」
エルンはスッと手を前に出し、指先に淡い青の魔力を灯した。
「魔法はこの世界『アルヴェント』に存在する精霊や場の力を借りて発動するの。だから、ただ魔力を流すだけじゃダメ。精霊や魔力の流れと呼応することが大事なのよ」
「そういえば、俺って普段から詠唱してない気がするんだけど……あれって必要なのか?」
俺がふと思った疑問を口にすると、エルンは呆れたようにため息をついた。
「当たり前でしょ? 魔法の本質は詠唱によって形作られるのよ。適当に発動しているのは、たまたま魔力の流れが噛み合っていたからに過ぎないわ」
「そんなものなのか……」
「いい? 魔法の詠唱には基本的な法則があるの。何の力を借りるか。何を代償とするか。どのように力を行使するか。魔法の名称。この順番で言葉にすることで、魔法は正しく形作られるのよ」
「たとえば?」
「たとえば、こんな感じね――」
エルンは手を掲げ、ゆっくりと詠唱を始めた。
「水精レヴィアよ! 我が魔力を代償としこの場に水を集めよ! 流転の雫!」
俺も同じ詠唱を試すが、水玉が形を保てず崩れてしまう。
「詠唱に気持ちがこもってないわ。言葉にした以上、力を明確に意識しないと精霊は反応しないの」
エルンの言葉を胸に刻み、俺は再度挑戦した。
「水精レヴィアよ! 我が魔力を代償としこの場に水を集めよ! 流転の雫!」
すると、今度は手のひらに青く輝く水玉が浮かんだ。
「やった! うまくいったぞ!」
詠唱のコツを掴んだ俺はさっそく次のステップへと進んだ。まずは生成した水玉を対象に向かって飛ばす練習だ。
俺は近くの木を標的に定め、水玉を放とうとする。だが、最初は思った方向に飛ばない。力を込めすぎると空中で砕け、緩めすぎるとボトッと足元に落ちてしまう。
「意識を水玉と一体化させる感じで……」
エルンの助言通り、魔力の流れを意識しながら放つと、ようやく狙った位置へ真っ直ぐに飛ぶようになった。
「よし、次は性質の変化だな」
敵の動きを封じるための技術として、俺は水に粘性を持たせようと試みる。しかし、イメージが固まらないのか、うまくいかずに水がすぐに弾けてしまう。
「うーん……もう少しまとまりを……」
再びエルンの助言を受け、魔力の流れを制御しながら調整を重ねる。何度か失敗した後、ようやく手のひらの上で蜂蜜のようにトロリとした水玉が揺らめいた。
「やった……!」
手応えを感じた俺はさらに実戦を想定した訓練に移る。魔力消費を抑えながら、水玉を連続で作り出す練習だ。
「くそっ、まだ難しいか……」
数発撃つとすぐに集中が切れ、制御が乱れてしまう。肩で息をする俺にエルンが近づき、優しく微笑んだ。
「焦らないで、カイン。魔力の流れをもっと意識してみて」
俺は深呼吸し、再度試みる。今度は三発、連続で放つことに成功した。
「上出来よ。でも、これはまだ基礎に過ぎないの」
エルンは優しく、しかし厳しい口調で指摘する。
「戦闘で使えるレベルにするには、もっと速く、もっと強くしないといけないわ」
「分かった」
俺は拳を握り、さらなる高みを目指す決意を固めた。
(次に戦いが起こるまで、どれだけ力をつけられるか……)
湖のほとりに立ち、俺は静かに誓った。
「俺はもっと強くなってみせる」
ヴァルディス・ノクターンとの対決を見据え、己の力を磨く必要がある。魔族の存在は未知の部分が多いが、対抗するには確実な戦力を身に着けなければならない。俺がこの世界で手ごたえを感じたのはエルフの森の試練で発動した水魔法だ。ならば、まずはこの力を極めることから始めよう。
湖のほとりに腰を下ろし、俺は心の中で呼びかけた。
「カイラン、聞こえるか? 水魔法を使いこなしたいんだが指南してくれないか?」
俺の意識の奥から眠たげな声が響く。
『水魔法か……私の記憶を頼れ……』
「いや、それじゃ分からないんだが……」
困惑する俺に対し、カイランはそれ以上の助言を寄こさなかった。彼の記憶が鍵になっていることは分かるが、具体的に何をどうすればいいのかが見えてこない。
(どうもピンとこないな……。何か根本的に分かっていないことがあるのか?)
モヤモヤした気持ちを抱えたまま、俺はエルンの元へ向かった。
エルンは森の中の小さな空き地で魔法陣を描く訓練をしていた。
「エルン、ちょっと相談があるんだが」
俺が話しかけると、エルンは手を止めて顔を上げた。
「どうしたの? なんだか浮かない顔してるわね」
「水魔法を勉強したいんだけど、どうもうまくいかなくて……」
俺はカイランの反応も含め、現状を説明した。エルンは腕を組み、少し考え込むと、優しく微笑みながら語り始めた。
「ふふっ、そうね。カイラン様は理論的に説明するのは苦手かもしれないわね」
「そういうことなのか?」
「ええ。じゃあ、代わりに私が教えてあげる」
エルンはスッと手を前に出し、指先に淡い青の魔力を灯した。
「魔法はこの世界『アルヴェント』に存在する精霊や場の力を借りて発動するの。だから、ただ魔力を流すだけじゃダメ。精霊や魔力の流れと呼応することが大事なのよ」
「そういえば、俺って普段から詠唱してない気がするんだけど……あれって必要なのか?」
俺がふと思った疑問を口にすると、エルンは呆れたようにため息をついた。
「当たり前でしょ? 魔法の本質は詠唱によって形作られるのよ。適当に発動しているのは、たまたま魔力の流れが噛み合っていたからに過ぎないわ」
「そんなものなのか……」
「いい? 魔法の詠唱には基本的な法則があるの。何の力を借りるか。何を代償とするか。どのように力を行使するか。魔法の名称。この順番で言葉にすることで、魔法は正しく形作られるのよ」
「たとえば?」
「たとえば、こんな感じね――」
エルンは手を掲げ、ゆっくりと詠唱を始めた。
「水精レヴィアよ! 我が魔力を代償としこの場に水を集めよ! 流転の雫!」
俺も同じ詠唱を試すが、水玉が形を保てず崩れてしまう。
「詠唱に気持ちがこもってないわ。言葉にした以上、力を明確に意識しないと精霊は反応しないの」
エルンの言葉を胸に刻み、俺は再度挑戦した。
「水精レヴィアよ! 我が魔力を代償としこの場に水を集めよ! 流転の雫!」
すると、今度は手のひらに青く輝く水玉が浮かんだ。
「やった! うまくいったぞ!」
詠唱のコツを掴んだ俺はさっそく次のステップへと進んだ。まずは生成した水玉を対象に向かって飛ばす練習だ。
俺は近くの木を標的に定め、水玉を放とうとする。だが、最初は思った方向に飛ばない。力を込めすぎると空中で砕け、緩めすぎるとボトッと足元に落ちてしまう。
「意識を水玉と一体化させる感じで……」
エルンの助言通り、魔力の流れを意識しながら放つと、ようやく狙った位置へ真っ直ぐに飛ぶようになった。
「よし、次は性質の変化だな」
敵の動きを封じるための技術として、俺は水に粘性を持たせようと試みる。しかし、イメージが固まらないのか、うまくいかずに水がすぐに弾けてしまう。
「うーん……もう少しまとまりを……」
再びエルンの助言を受け、魔力の流れを制御しながら調整を重ねる。何度か失敗した後、ようやく手のひらの上で蜂蜜のようにトロリとした水玉が揺らめいた。
「やった……!」
手応えを感じた俺はさらに実戦を想定した訓練に移る。魔力消費を抑えながら、水玉を連続で作り出す練習だ。
「くそっ、まだ難しいか……」
数発撃つとすぐに集中が切れ、制御が乱れてしまう。肩で息をする俺にエルンが近づき、優しく微笑んだ。
「焦らないで、カイン。魔力の流れをもっと意識してみて」
俺は深呼吸し、再度試みる。今度は三発、連続で放つことに成功した。
「上出来よ。でも、これはまだ基礎に過ぎないの」
エルンは優しく、しかし厳しい口調で指摘する。
「戦闘で使えるレベルにするには、もっと速く、もっと強くしないといけないわ」
「分かった」
俺は拳を握り、さらなる高みを目指す決意を固めた。
(次に戦いが起こるまで、どれだけ力をつけられるか……)
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