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第六章 ロルディアの動乱
第123話 黒き狂信者
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朝の空気は冷たく、廃村に立ちこめる霧が肌を刺すようだった。
焚き火の跡を囲みながら、俺たちは昨夜の出来事——マルヴェスとの対話を振り返っていた。
「……ネフィラ・ヴァレリオ」
俺はゆっくりとその名を口にした。昨夜マルヴェスが語った闇と精神の魔術を操る女。ヴィンドールに心酔し、彼の理想の実現を妨げる者を容赦なく排除する存在。
エルンが沈んだ声で補足する。
「精神干渉と闇の魔術……どちらも高次元の術式を要する分野よ。しかも彼女がエルフなら、精霊学にも通じている。闇の精霊との接続を確立しているなら、私たちにとって極めて危険な存在だわ」
「そんな人が……カインを狙ってたの?」
ルナの声がかすかに震えていた。
「ネフィラは俺を『この世界の異物』と認識している。そして……ヴィンドールの障害になりうる存在とも判断している。だから俺たちを襲わせていたんだ」
「でも……」
エルンが視線をこちらに向ける。
「それを証明できるの?」
俺は無言で首を振った。
「直接的な証拠はない。ただ……マルヴェスという男が現れて、ネフィラを排除するように言われた——それが唯一の事実だ」
沈黙が落ちる。
マルヴェス・ブラッドロック。存在そのものが世界の深淵を体現していたような男。その言葉をどこまで信じていいのか——誰にも判断できなかった。
「それって……敵なの? 味方なの?」
ルナが問う。
「分からない。けれど、少なくとも彼はネフィラの排除を俺に任せると言った。それはつまり、今は俺を利用価値のある存在だと見ているってことだ」
「利用されるままで、いいの?」
「利用されることを理解したうえで動くのと、操られるのは違う。俺たちが選び取った行動の中で、奴の思惑をかき乱すこともできる。……そう考えて動くつもりだ」
その時、後方から足音が響いた。
レオンハルト陣営からの使者だった青年が息を弾ませて俺に駆け寄ってくる。
「カイン殿……! 実は少し奇妙な報告がありまして……」
「奇妙?」
使者は戸惑いながらも口を開く。
「レストリア砦の南部で魔力障害に遭った偵察部隊が戻ってきました。話によると黒い影のような気配をまとった人物が前線に近づいた後、何も言わずに立ち去ったと……。目撃者の証言では吸血鬼のようだったと……」
俺とエルンは顔を見合わせた。
「マルヴェス……」
「……その件、私たちにも関係があるわ。詳しい報告をまとめて殿下に伝えて」
「はっ、はい!」
使者が去ったあと、俺は深く息を吐いた。
「……王子側でも動いてたか。あいつ、本気で戦争の調停を考えてるわけじゃない。舞台を整えてるんだ」
「でも、彼を敵にまわすのは得策じゃないわ」
エルンの言葉に俺はうなずく。
「ネフィラの件は俺に一任してもらう。奴に干渉できるのは今のところ俺たちだけだ。……だから動く」
「もちろん、ルナも行くよ!」
ルナが拳を握った。
「ええ、……ただし、突っ走るのは禁止よ」
「わかってるよ~……たぶん」
笑いながら言うルナを見て、俺は少しだけ気持ちを緩めた。
証拠はない。それでも事件の黒幕がネフィラであるという話は腑に落ちた。
目の前に脅威があるなら動かなければならない。
ネフィラ——狂信の魔術師。
その正体に迫るため、そして仲間と絆を守るために俺はこの一歩を踏み出す。
焚き火の跡を囲みながら、俺たちは昨夜の出来事——マルヴェスとの対話を振り返っていた。
「……ネフィラ・ヴァレリオ」
俺はゆっくりとその名を口にした。昨夜マルヴェスが語った闇と精神の魔術を操る女。ヴィンドールに心酔し、彼の理想の実現を妨げる者を容赦なく排除する存在。
エルンが沈んだ声で補足する。
「精神干渉と闇の魔術……どちらも高次元の術式を要する分野よ。しかも彼女がエルフなら、精霊学にも通じている。闇の精霊との接続を確立しているなら、私たちにとって極めて危険な存在だわ」
「そんな人が……カインを狙ってたの?」
ルナの声がかすかに震えていた。
「ネフィラは俺を『この世界の異物』と認識している。そして……ヴィンドールの障害になりうる存在とも判断している。だから俺たちを襲わせていたんだ」
「でも……」
エルンが視線をこちらに向ける。
「それを証明できるの?」
俺は無言で首を振った。
「直接的な証拠はない。ただ……マルヴェスという男が現れて、ネフィラを排除するように言われた——それが唯一の事実だ」
沈黙が落ちる。
マルヴェス・ブラッドロック。存在そのものが世界の深淵を体現していたような男。その言葉をどこまで信じていいのか——誰にも判断できなかった。
「それって……敵なの? 味方なの?」
ルナが問う。
「分からない。けれど、少なくとも彼はネフィラの排除を俺に任せると言った。それはつまり、今は俺を利用価値のある存在だと見ているってことだ」
「利用されるままで、いいの?」
「利用されることを理解したうえで動くのと、操られるのは違う。俺たちが選び取った行動の中で、奴の思惑をかき乱すこともできる。……そう考えて動くつもりだ」
その時、後方から足音が響いた。
レオンハルト陣営からの使者だった青年が息を弾ませて俺に駆け寄ってくる。
「カイン殿……! 実は少し奇妙な報告がありまして……」
「奇妙?」
使者は戸惑いながらも口を開く。
「レストリア砦の南部で魔力障害に遭った偵察部隊が戻ってきました。話によると黒い影のような気配をまとった人物が前線に近づいた後、何も言わずに立ち去ったと……。目撃者の証言では吸血鬼のようだったと……」
俺とエルンは顔を見合わせた。
「マルヴェス……」
「……その件、私たちにも関係があるわ。詳しい報告をまとめて殿下に伝えて」
「はっ、はい!」
使者が去ったあと、俺は深く息を吐いた。
「……王子側でも動いてたか。あいつ、本気で戦争の調停を考えてるわけじゃない。舞台を整えてるんだ」
「でも、彼を敵にまわすのは得策じゃないわ」
エルンの言葉に俺はうなずく。
「ネフィラの件は俺に一任してもらう。奴に干渉できるのは今のところ俺たちだけだ。……だから動く」
「もちろん、ルナも行くよ!」
ルナが拳を握った。
「ええ、……ただし、突っ走るのは禁止よ」
「わかってるよ~……たぶん」
笑いながら言うルナを見て、俺は少しだけ気持ちを緩めた。
証拠はない。それでも事件の黒幕がネフィラであるという話は腑に落ちた。
目の前に脅威があるなら動かなければならない。
ネフィラ——狂信の魔術師。
その正体に迫るため、そして仲間と絆を守るために俺はこの一歩を踏み出す。
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