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ひどい男に徹する覚悟
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「やだーっ! 無理、無理! 痛いってば! 温和っ、やめてっ!」
涙目の音芽を尻目に作業に集中しすぎていた俺は、彼女がばたつかせた足に思いっきり手を蹴り飛ばされてしまった。
結構しっかり握っていたつもりだったんだが、不意の蹴り上げは予想外だったからだろうか。
俺の手をすっぽ抜けたシャワーヘッドが、放物線を描いて宙を舞って、俺も音芽もびしょ濡れになってしまった。
「――っ、冷たっ!!」
という音芽の声に、ハッと我に返る。
俺に怒られると思っているんだろう。怯えた目の音芽が、「ごっ、ごめんなさっ」と慌てて謝罪してきて。
俺は音芽の反撃を予測できなかった自分の不甲斐なさに腹が立って、思わずその苛立ちのままに彼女を見上げてしまい、音芽をビクッとさせてしまった。
すまん、音芽。俺、お前に怒ってるわけじゃないんだ。
そう言ってやれたらいいんだろうが、あいにく俺はそういうのが得意じゃない。
それに――。
自分の髪の毛が水滴を滴らせるほどに濡れてしまったことや、シャツが身体に張り付くぐらいずぶ濡れになってしまったことよりも、音芽が同じように濡れそぼっていることをマズイ、と思った。
そもそも……何でそんな状態のお前が、俺のほうを見て赤くなるんだよっ。
顔、伏せたいのは俺のほうだろーがっ。
――音芽、頼むから前を隠してくれないか。
思うけれど、それすらすぐには口に出来ないヘタレな俺。
幼い頃は、奏芽も交えて三人で一緒に風呂に入っていた。
でも……小学生になってからは俺、音芽とは風呂、入ってねぇんだよ。同級生の奏芽とは大きくなってからも割と入る機会はあったが、まぁアイツは同性だからこの際、関係ない。
音芽は4年生を越えた辺りから、どんどん身体つきが女らしくなっていたし、俺もさすがに一緒に入ろうと誘ったりはしなかった。
当然だが、大人になった今は言うまでもなく、音芽のそれはまろやかな女性のライン以外の何ものでもないわけで。
とにかく……何ていうか、今の音芽の姿は直視できなくて参る。
が、どうやらそう思ったのは俺だけではなかったようで――。
「は、ハル兄、お願いっ。――ちょっと目のやり場に困るから……申し訳ないけど向こう行って?」
冷水を被って寒いんだろう。
唇を震わせながら告げられた言葉に、俺は逆に驚かされた。
何を照れているのか、上気した頬で俺から不自然に視線を逸らす音芽の仕草が妙に艶っぽくて、こっちの方があてられそうなんだけど。
「目に毒なのはお前もだ……」
俺は音芽に「下着が透けて見えてるぞ」と指摘してやることも出来なくて、歯切れの悪い物言いでそう伝えるのがやっとだった。
俺の言葉にきょとんとした顔をして、自分の姿に目を落とした音芽が、直後前のめりに縮こまるのが可愛すぎて悶えそうだ。
おかげさまというべきか。俺は、冷水を被った寒さとか実際余り感じていなかったんだ。
「やだーっ! 無理、無理! 痛いってば! 温和っ、やめてっ!」
涙目の音芽を尻目に作業に集中しすぎていた俺は、彼女がばたつかせた足に思いっきり手を蹴り飛ばされてしまった。
結構しっかり握っていたつもりだったんだが、不意の蹴り上げは予想外だったからだろうか。
俺の手をすっぽ抜けたシャワーヘッドが、放物線を描いて宙を舞って、俺も音芽もびしょ濡れになってしまった。
「――っ、冷たっ!!」
という音芽の声に、ハッと我に返る。
俺に怒られると思っているんだろう。怯えた目の音芽が、「ごっ、ごめんなさっ」と慌てて謝罪してきて。
俺は音芽の反撃を予測できなかった自分の不甲斐なさに腹が立って、思わずその苛立ちのままに彼女を見上げてしまい、音芽をビクッとさせてしまった。
すまん、音芽。俺、お前に怒ってるわけじゃないんだ。
そう言ってやれたらいいんだろうが、あいにく俺はそういうのが得意じゃない。
それに――。
自分の髪の毛が水滴を滴らせるほどに濡れてしまったことや、シャツが身体に張り付くぐらいずぶ濡れになってしまったことよりも、音芽が同じように濡れそぼっていることをマズイ、と思った。
そもそも……何でそんな状態のお前が、俺のほうを見て赤くなるんだよっ。
顔、伏せたいのは俺のほうだろーがっ。
――音芽、頼むから前を隠してくれないか。
思うけれど、それすらすぐには口に出来ないヘタレな俺。
幼い頃は、奏芽も交えて三人で一緒に風呂に入っていた。
でも……小学生になってからは俺、音芽とは風呂、入ってねぇんだよ。同級生の奏芽とは大きくなってからも割と入る機会はあったが、まぁアイツは同性だからこの際、関係ない。
音芽は4年生を越えた辺りから、どんどん身体つきが女らしくなっていたし、俺もさすがに一緒に入ろうと誘ったりはしなかった。
当然だが、大人になった今は言うまでもなく、音芽のそれはまろやかな女性のライン以外の何ものでもないわけで。
とにかく……何ていうか、今の音芽の姿は直視できなくて参る。
が、どうやらそう思ったのは俺だけではなかったようで――。
「は、ハル兄、お願いっ。――ちょっと目のやり場に困るから……申し訳ないけど向こう行って?」
冷水を被って寒いんだろう。
唇を震わせながら告げられた言葉に、俺は逆に驚かされた。
何を照れているのか、上気した頬で俺から不自然に視線を逸らす音芽の仕草が妙に艶っぽくて、こっちの方があてられそうなんだけど。
「目に毒なのはお前もだ……」
俺は音芽に「下着が透けて見えてるぞ」と指摘してやることも出来なくて、歯切れの悪い物言いでそう伝えるのがやっとだった。
俺の言葉にきょとんとした顔をして、自分の姿に目を落とした音芽が、直後前のめりに縮こまるのが可愛すぎて悶えそうだ。
おかげさまというべきか。俺は、冷水を被った寒さとか実際余り感じていなかったんだ。
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