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憂鬱な朝
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早くやすめとか言ったくせに、昨夜は結局あれっきり奏芽からの連絡はなくて――。
(奏芽のやつ、音芽に電話してくれたのかよ)
布団に入ってみたものの、スマホを握り締めたまま悶々として朝を迎えてしまった。
(やべぇ。完璧に寝不足だ……)
今日から一週間が始まるというのに。
わたくしごとで眠れませんでした、とか……社会人としてあるまじき失態だ。
これはアレだ。
せめて朝一でモヤモヤと胸中にわだかまった気持ちを整理しておかねぇと、仕事に支障をきたしちまう。
俺の仕事は児童らの命を預かる仕事だ。生半な気持ちでやっていいもんじゃない。
そう思った俺は、身支度をきちんと整えて救急箱を手に取ると、音芽の部屋へ向かった。
***
時計を見るとまだ六時過ぎだが、中からはちゃんと物音が聞こえている。
音芽が起きているのは確かだ。
隣室の前に立って『TORIKAI』と書かれたドアプレートを見つめてから一度深呼吸をすると、チャイムに手を伸ばした。
気合いを入れてそれを押してから、不審者ではないと音芽に分からせるためにカメラにしっかり顔を向けて立つ。
そうしてみたものの、どういう顔をしたらいいのか分からなくて、自然ぶっきらぼうな表情になってしまった。
まぁ、こんなのいつものことだし、音芽だって気にしやしないだろう。
いや、寧ろ――。
昨日の今日でへらへらしてる方が問題あるか。
チャイムを押してそこそこ時間が経つんだが、中でゴトッという音がしてから以後、不自然なくらいシーンと静まり返っている。
が、耳を済ませてみればテレビの音は漏れ聞こえてきているし、部屋の電気だってついているのが分かる。
何よりこんな早朝からどこにも行ったりしてねぇだろーが、音芽。
こんな風に待たされていたら、またとりとめもなく昨夜あったお前とのこと、考えちまうから早いところその扉、開けてくんねぇか?
そんなことを考えていたら、ややしてゆっくりと扉が開かれた。
開いた隙間から、着替えを済ませたらしく、部屋着姿ではない音芽が顔を覗かせる。
今すぐにでも外出できそうな音芽の服装を見て、俺が貸したスウェットはどうなったんだろう、とふと思った。
「――お、おはよー」
俺も探り探りな気分だが、音芽のほうもそうみたいで。
昨夜みたいに全身から拒絶オーラこそ出てはいないものの、俺がどう出るかが気になって仕方ないという雰囲気全開の挨拶だった。
音芽のその様子を見て逆に、だったらこっちはいつも通りに接する形で過日のこと、深く追及しないようにしてしまうか?などとズルイことを考える。
いや、でもそれは男としてダメだろ。
音芽の挨拶に「ああ」と気のない返事をしてから、
「――手当て。昨日……ちゃんと最後まで出来てねぇから……」
と、自分でもあきれるぐらい即行で建前としての本題に入った。
手にした救急箱を軽く持ち上げて音芽に見せると、
「入るぞ」
部屋の主の返事も待たずに、上がりこむ。
とりあえず締め出されたら話ができなくなっちまう。何事も先手必勝だ。
(奏芽のやつ、音芽に電話してくれたのかよ)
布団に入ってみたものの、スマホを握り締めたまま悶々として朝を迎えてしまった。
(やべぇ。完璧に寝不足だ……)
今日から一週間が始まるというのに。
わたくしごとで眠れませんでした、とか……社会人としてあるまじき失態だ。
これはアレだ。
せめて朝一でモヤモヤと胸中にわだかまった気持ちを整理しておかねぇと、仕事に支障をきたしちまう。
俺の仕事は児童らの命を預かる仕事だ。生半な気持ちでやっていいもんじゃない。
そう思った俺は、身支度をきちんと整えて救急箱を手に取ると、音芽の部屋へ向かった。
***
時計を見るとまだ六時過ぎだが、中からはちゃんと物音が聞こえている。
音芽が起きているのは確かだ。
隣室の前に立って『TORIKAI』と書かれたドアプレートを見つめてから一度深呼吸をすると、チャイムに手を伸ばした。
気合いを入れてそれを押してから、不審者ではないと音芽に分からせるためにカメラにしっかり顔を向けて立つ。
そうしてみたものの、どういう顔をしたらいいのか分からなくて、自然ぶっきらぼうな表情になってしまった。
まぁ、こんなのいつものことだし、音芽だって気にしやしないだろう。
いや、寧ろ――。
昨日の今日でへらへらしてる方が問題あるか。
チャイムを押してそこそこ時間が経つんだが、中でゴトッという音がしてから以後、不自然なくらいシーンと静まり返っている。
が、耳を済ませてみればテレビの音は漏れ聞こえてきているし、部屋の電気だってついているのが分かる。
何よりこんな早朝からどこにも行ったりしてねぇだろーが、音芽。
こんな風に待たされていたら、またとりとめもなく昨夜あったお前とのこと、考えちまうから早いところその扉、開けてくんねぇか?
そんなことを考えていたら、ややしてゆっくりと扉が開かれた。
開いた隙間から、着替えを済ませたらしく、部屋着姿ではない音芽が顔を覗かせる。
今すぐにでも外出できそうな音芽の服装を見て、俺が貸したスウェットはどうなったんだろう、とふと思った。
「――お、おはよー」
俺も探り探りな気分だが、音芽のほうもそうみたいで。
昨夜みたいに全身から拒絶オーラこそ出てはいないものの、俺がどう出るかが気になって仕方ないという雰囲気全開の挨拶だった。
音芽のその様子を見て逆に、だったらこっちはいつも通りに接する形で過日のこと、深く追及しないようにしてしまうか?などとズルイことを考える。
いや、でもそれは男としてダメだろ。
音芽の挨拶に「ああ」と気のない返事をしてから、
「――手当て。昨日……ちゃんと最後まで出来てねぇから……」
と、自分でもあきれるぐらい即行で建前としての本題に入った。
手にした救急箱を軽く持ち上げて音芽に見せると、
「入るぞ」
部屋の主の返事も待たずに、上がりこむ。
とりあえず締め出されたら話ができなくなっちまう。何事も先手必勝だ。
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