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兄たちの制裁
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「何にせよ、だ。俺、音芽が俺たち以外にいいようにされんのはどうも腹の虫が収まらねぇんだわ」
奏芽がポツンとつぶやいて、俺はその言葉に意識を過去から連れ戻される。
「もしも音芽が怖い目に遭ってたりしたら俺、ちょっと本気出しちゃうかも。まずいと思ったらハル、止めてくれるか?」
高校生の頃の逆、な。
ニヤリと笑って奏芽が言う。
あの時は俺が歯止めが利かなくなって、奏芽に抑えてもらったんだ。
「――分かった」
言いはしたものの、奏芽は案外俺より冷静で、思慮深いところがある。
恐らく止めに入らなきゃいけないほどの暴走はしないだろう――。
何だかんだ言って妹が大好きなんだよな、こいつ、とか思ってしまって、複雑な心境がしたのは言うまでもない。
***
「――来たんじゃね?」
奏芽の声を合図にしたように、モスグリーンのプレマシーが駐車場に姿を現した。
確かに鶴見の車だ。
助手席に隠れるようにしてあちらの車内に目を凝らしたら、音芽が怯えたような顔をして助手席に座っているように見えて――。
俺は思わず腰を浮かせて身を乗り出した。
「ハル?」
寝そべっていて俺ほどあちらの様子が把握できていないんだろう。奏芽が俺の動きに怪訝そうに声をかけてくる。
「まずそうなのか?」
奏芽が聞いてくるのへ答えるのも忘れて俺は音芽の様子を注視する。
と、車を停めた鶴見が音芽の方へ身を乗り出しているように見えて――。
「あの野郎っ」
どう見ても音芽を無理矢理抱きしめているようにしか見えない。
明らかに音芽が泣きそうになっていると判断した俺は、奏芽に「行くぞ」と声を掛ける。
奏芽は何のことだか分からなくて一瞬反応が遅れたようだ。
***
俺は奏芽を待たずに鶴見の車に近付くと、コンコン、と助手席側の窓ガラスを叩いた。
その音に涙に泣き濡れて怯えた顔をした音芽がこちらを見て、心臓がドクン、と嫌な疼き方で痛む。
その瞬間、ドアの鍵が開いているかどうかなんて考えるゆとりもないままに助手席側のドアハンドルに手をかけて思い切り引いていた。
開いていなかったら窓ガラスを石か何かで叩き割ってやろうかと思う程度には、頭に血が昇っていたと思う。
幸いドアは施錠されていなくて、すんなり開いて、それと同時に音芽が金縛りが解けたみたいに
「大我さんっ、お願い、離してっ!」
と叫んだ。
きっと怖くて声すら出せなかったんだろう。
そんな音芽の気持ちを想うと、切なくなるぐらい愛しくて、すぐにでも腕の中に包み込んで守ってやりたい、と思ってしまった。
いつもならついつい何もかもを押し除ける勢いで頭角を現してしまう素直じゃない俺も、今回ばかりはすっかり鳴りを潜めてだんまりだ。
今までなすがままにされていたはずの音芽が、急に大声を出したことで、鶴見が明らかに怯んだのが分かった。
俺はすかさず音芽の腕を掴むと、鶴見から引き離すように自分の方へ引き寄せた。
奏芽がポツンとつぶやいて、俺はその言葉に意識を過去から連れ戻される。
「もしも音芽が怖い目に遭ってたりしたら俺、ちょっと本気出しちゃうかも。まずいと思ったらハル、止めてくれるか?」
高校生の頃の逆、な。
ニヤリと笑って奏芽が言う。
あの時は俺が歯止めが利かなくなって、奏芽に抑えてもらったんだ。
「――分かった」
言いはしたものの、奏芽は案外俺より冷静で、思慮深いところがある。
恐らく止めに入らなきゃいけないほどの暴走はしないだろう――。
何だかんだ言って妹が大好きなんだよな、こいつ、とか思ってしまって、複雑な心境がしたのは言うまでもない。
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「――来たんじゃね?」
奏芽の声を合図にしたように、モスグリーンのプレマシーが駐車場に姿を現した。
確かに鶴見の車だ。
助手席に隠れるようにしてあちらの車内に目を凝らしたら、音芽が怯えたような顔をして助手席に座っているように見えて――。
俺は思わず腰を浮かせて身を乗り出した。
「ハル?」
寝そべっていて俺ほどあちらの様子が把握できていないんだろう。奏芽が俺の動きに怪訝そうに声をかけてくる。
「まずそうなのか?」
奏芽が聞いてくるのへ答えるのも忘れて俺は音芽の様子を注視する。
と、車を停めた鶴見が音芽の方へ身を乗り出しているように見えて――。
「あの野郎っ」
どう見ても音芽を無理矢理抱きしめているようにしか見えない。
明らかに音芽が泣きそうになっていると判断した俺は、奏芽に「行くぞ」と声を掛ける。
奏芽は何のことだか分からなくて一瞬反応が遅れたようだ。
***
俺は奏芽を待たずに鶴見の車に近付くと、コンコン、と助手席側の窓ガラスを叩いた。
その音に涙に泣き濡れて怯えた顔をした音芽がこちらを見て、心臓がドクン、と嫌な疼き方で痛む。
その瞬間、ドアの鍵が開いているかどうかなんて考えるゆとりもないままに助手席側のドアハンドルに手をかけて思い切り引いていた。
開いていなかったら窓ガラスを石か何かで叩き割ってやろうかと思う程度には、頭に血が昇っていたと思う。
幸いドアは施錠されていなくて、すんなり開いて、それと同時に音芽が金縛りが解けたみたいに
「大我さんっ、お願い、離してっ!」
と叫んだ。
きっと怖くて声すら出せなかったんだろう。
そんな音芽の気持ちを想うと、切なくなるぐらい愛しくて、すぐにでも腕の中に包み込んで守ってやりたい、と思ってしまった。
いつもならついつい何もかもを押し除ける勢いで頭角を現してしまう素直じゃない俺も、今回ばかりはすっかり鳴りを潜めてだんまりだ。
今までなすがままにされていたはずの音芽が、急に大声を出したことで、鶴見が明らかに怯んだのが分かった。
俺はすかさず音芽の腕を掴むと、鶴見から引き離すように自分の方へ引き寄せた。
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