142 / 198
俺の立ち位置
11
しおりを挟む
音芽は、そんな俺の思いなんて気付かないみたいに、にわかにソワソワし始めて。
昨日自分絡みで奏芽とトラブルのあった男が、その日のうちに事故に遭ったと言われたら、必然的に自分のことと絡めて考えてしまうんだろう。
何も言わなくても、音芽が「私たちのせい?」とか「酷い状態だったらどうしよう?」とか……あれこれ思い巡らせているのが、その不安そうな表情から手に取るように分かる。
オロオロと視線を揺らしながら、逢地先生のほうへ身を乗り出したまま固まってしまった音芽に、「大丈夫だ」と伝えてやりたくて、俺は音芽の手を軽く握ってやった。
そんなことにですら驚いたようにビクッと肩を揺らせる音芽が、愛しくてたまらない。
このちっこいのは、俺が守ってやらねぇと。
――ホント、鶴見のヤローは命には別状ねぇし、お前が気にすることは微塵も無いんだからな?
そんな気持ちを込めて、触れた手に優しくポンポンと触れると、音芽がやっと気が抜けたようにそろそろと席に座る。
「ショック……ですよね」
そんな音芽の様子に気付いた逢地先生が、気遣わしげな表情を向けるけれど、今の音芽にはきっとそれすら堪えるはずだ。
だが、鶴見のことで頭が一杯なんだろう。
ふるふると震えているように見える音芽の様子に気付かないまま、逢地先生が頬をほんのりと赤く染めて言葉を続ける。
「鶴見先生もね、混乱してらしたんだと思うんです。意識が戻られてすぐ、何故か私に電話を掛けていらして……。正直びっくりしてしまいました」
懸想している相手が、ライバル視していた音芽ではなく、逢地先生を真っ先に頼ってくれたと言うのは、確かに彼女にとってはデカいことなんだろう。
実際には朦朧とした意識の中、たまたま電話帳の五十音の並びで一番上に来ていた「逢地」先生に連絡が入ったと言うのが真相らしいが。
けどまぁ、例え音芽の苗字が「相原」とかで、鶴見のヤローが俺の音芽に真っ先に連絡を寄越してきていたとしても、俺が行かせなかったけどな。
鈍感な音芽は、逢地先生が頬を染めている理由にも、今の言葉で無意識に自分を牽制していることにも、きっと気付いていない。
音芽の、逢地先生を見つめる申し訳なさそうな、どこか泣きそうな表情から、俺はそう判断した。
きっと音芽のやつ、逢地先生も鶴見の怪我を知ってショックを受けたのを思い出して緊張のあまり紅潮してるとか思ってんだろうな。
ある意味、逢地先生からバシバシ伝わってくる鶴見への恋情に気付けないコイツ、すげぇなと思う。
俺、こんな鈍感娘をよく落とせたよな、とかどこか他人事のように思ってしまった。
昨日自分絡みで奏芽とトラブルのあった男が、その日のうちに事故に遭ったと言われたら、必然的に自分のことと絡めて考えてしまうんだろう。
何も言わなくても、音芽が「私たちのせい?」とか「酷い状態だったらどうしよう?」とか……あれこれ思い巡らせているのが、その不安そうな表情から手に取るように分かる。
オロオロと視線を揺らしながら、逢地先生のほうへ身を乗り出したまま固まってしまった音芽に、「大丈夫だ」と伝えてやりたくて、俺は音芽の手を軽く握ってやった。
そんなことにですら驚いたようにビクッと肩を揺らせる音芽が、愛しくてたまらない。
このちっこいのは、俺が守ってやらねぇと。
――ホント、鶴見のヤローは命には別状ねぇし、お前が気にすることは微塵も無いんだからな?
そんな気持ちを込めて、触れた手に優しくポンポンと触れると、音芽がやっと気が抜けたようにそろそろと席に座る。
「ショック……ですよね」
そんな音芽の様子に気付いた逢地先生が、気遣わしげな表情を向けるけれど、今の音芽にはきっとそれすら堪えるはずだ。
だが、鶴見のことで頭が一杯なんだろう。
ふるふると震えているように見える音芽の様子に気付かないまま、逢地先生が頬をほんのりと赤く染めて言葉を続ける。
「鶴見先生もね、混乱してらしたんだと思うんです。意識が戻られてすぐ、何故か私に電話を掛けていらして……。正直びっくりしてしまいました」
懸想している相手が、ライバル視していた音芽ではなく、逢地先生を真っ先に頼ってくれたと言うのは、確かに彼女にとってはデカいことなんだろう。
実際には朦朧とした意識の中、たまたま電話帳の五十音の並びで一番上に来ていた「逢地」先生に連絡が入ったと言うのが真相らしいが。
けどまぁ、例え音芽の苗字が「相原」とかで、鶴見のヤローが俺の音芽に真っ先に連絡を寄越してきていたとしても、俺が行かせなかったけどな。
鈍感な音芽は、逢地先生が頬を染めている理由にも、今の言葉で無意識に自分を牽制していることにも、きっと気付いていない。
音芽の、逢地先生を見つめる申し訳なさそうな、どこか泣きそうな表情から、俺はそう判断した。
きっと音芽のやつ、逢地先生も鶴見の怪我を知ってショックを受けたのを思い出して緊張のあまり紅潮してるとか思ってんだろうな。
ある意味、逢地先生からバシバシ伝わってくる鶴見への恋情に気付けないコイツ、すげぇなと思う。
俺、こんな鈍感娘をよく落とせたよな、とかどこか他人事のように思ってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる