191 / 198
言えない言葉
お前の記憶は物凄く曖昧なんだ
しおりを挟む
「――もしかして……温和も彼女のこと、昔から知ってた? 川越先生は……温和の……元カノ?」
どんなに忘れているように見えても、音芽は自分の心の奥底深くに、何か引っかかっているものがあることを感じ始めているんだろう。必死に違和感の正体を探ろうとしてくる。
俺の腕をギュッと掴んだ音芽の手指が、可哀想なぐらい震えているのを感じるから……俺は彼女の脳が意図的に封じた記憶を、無理して思い出す必要はないんじゃないかと思ってしまった。
音芽から、川越のことを〝初見じゃない気がする〟と言われた瞬間、俺は音芽の記憶の蓋が開きかかっている気がして、正直気が気じゃなかったんだ。
思わず、緊張で身体に力が入ってしまう程度には、俺は音芽があのことを思い出すのが怖い。
もう二度と、音芽があんな風になるのを、俺は見たくないんだ。
音芽は、きっと俺のそんな感情の揺れ感じ取ったんだろう。
俺を見上げる眼差しに、『温和は何か知ってるんだよね? 隠さず教えて?』という想いが宿っているのを感じて、情けないけれど、俺はこの場から逃げ出したいと思ってしまった。
「温和、お願い、教えて。私の不安な気持ち、少しでいいから温和の言葉で和らげて?」
懇願するような眼差しとともに音芽から畳みかけられて、俺は半ば無意識。
「お前の記憶、やっぱり結構曖昧なんだな」
って独言ていた。
現状でどこまで話すのが正解なんだろう?
それを探りたくて、音芽の覚悟を推し量るように、じっと彼女の目を見つめると……慎重に言葉を選んで話を続けた。
「川越筑紫は……俺と奏芽の高校ん時の同級生だ。家の都合か何かで苗字が変わってたから、俺も最初はピンとこなかった。けど……下の名前見てもしかしてって思って……。校長から履歴書見せてもらったら……やっぱり俺の知ってる彼女だって確信した」
それを知った時、俺は音芽を川越と会わせたくないと……そればっかり考えて、音芽の前だったにも関わらず挙動不審な態度をとってしまった。
ぽやんとしているように見えて、実は案外俺のことを見ている音芽が、そのことに気づかなかったはずがない。
俺は音芽を守っているつもりで、彼女のことをどれだけ不安にさせていたんだろう?
けど、正直な話、川越がただの同級生なら、あそこまで警戒する必要なんてなかったんだから、仕方がないじゃないか。
当然のことながら今の説明では、音芽に、『川越は俺の元カノ』だという、間違った音芽自身の推測の裏付けにだってなりかねないとも分かるから、俺は余計に腹立たしくてたまらないんだ。
涙で潤んだ瞳で俺を不安気にじっと見上げてくる音芽に、俺は思わず吐息まじり。
「だからお前の記憶は物凄く曖昧なんだよ、音芽。あいつは……俺の元カノじゃない」
と告げずにはいられなくて――。
あんな女とそういう関係だっただなんて、例え髪の毛一本分ほども、俺は音芽には勘違いされたくない。
どんなに忘れているように見えても、音芽は自分の心の奥底深くに、何か引っかかっているものがあることを感じ始めているんだろう。必死に違和感の正体を探ろうとしてくる。
俺の腕をギュッと掴んだ音芽の手指が、可哀想なぐらい震えているのを感じるから……俺は彼女の脳が意図的に封じた記憶を、無理して思い出す必要はないんじゃないかと思ってしまった。
音芽から、川越のことを〝初見じゃない気がする〟と言われた瞬間、俺は音芽の記憶の蓋が開きかかっている気がして、正直気が気じゃなかったんだ。
思わず、緊張で身体に力が入ってしまう程度には、俺は音芽があのことを思い出すのが怖い。
もう二度と、音芽があんな風になるのを、俺は見たくないんだ。
音芽は、きっと俺のそんな感情の揺れ感じ取ったんだろう。
俺を見上げる眼差しに、『温和は何か知ってるんだよね? 隠さず教えて?』という想いが宿っているのを感じて、情けないけれど、俺はこの場から逃げ出したいと思ってしまった。
「温和、お願い、教えて。私の不安な気持ち、少しでいいから温和の言葉で和らげて?」
懇願するような眼差しとともに音芽から畳みかけられて、俺は半ば無意識。
「お前の記憶、やっぱり結構曖昧なんだな」
って独言ていた。
現状でどこまで話すのが正解なんだろう?
それを探りたくて、音芽の覚悟を推し量るように、じっと彼女の目を見つめると……慎重に言葉を選んで話を続けた。
「川越筑紫は……俺と奏芽の高校ん時の同級生だ。家の都合か何かで苗字が変わってたから、俺も最初はピンとこなかった。けど……下の名前見てもしかしてって思って……。校長から履歴書見せてもらったら……やっぱり俺の知ってる彼女だって確信した」
それを知った時、俺は音芽を川越と会わせたくないと……そればっかり考えて、音芽の前だったにも関わらず挙動不審な態度をとってしまった。
ぽやんとしているように見えて、実は案外俺のことを見ている音芽が、そのことに気づかなかったはずがない。
俺は音芽を守っているつもりで、彼女のことをどれだけ不安にさせていたんだろう?
けど、正直な話、川越がただの同級生なら、あそこまで警戒する必要なんてなかったんだから、仕方がないじゃないか。
当然のことながら今の説明では、音芽に、『川越は俺の元カノ』だという、間違った音芽自身の推測の裏付けにだってなりかねないとも分かるから、俺は余計に腹立たしくてたまらないんだ。
涙で潤んだ瞳で俺を不安気にじっと見上げてくる音芽に、俺は思わず吐息まじり。
「だからお前の記憶は物凄く曖昧なんだよ、音芽。あいつは……俺の元カノじゃない」
と告げずにはいられなくて――。
あんな女とそういう関係だっただなんて、例え髪の毛一本分ほども、俺は音芽には勘違いされたくない。
0
あなたにおすすめの小説
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる