【R18】温和はオトメをもっと上手に愛したい

鷹槻れん

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言えない言葉

お前の記憶は物凄く曖昧なんだ

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「――もしかして……温和はるまさも彼女のこと、昔から知ってた? 川越かわごえ先生は……温和はるまさの……?」

 どんなにように見えても、音芽おとめは自分の心の奥底深くに、何か引っかかっているものがあることを感じ始めているんだろう。必死に違和感の正体を探ろうとしてくる。

 俺の腕をギュッと掴んだ音芽の手指が、可哀想なぐらい震えているのを感じるから……俺は彼女のを、無理して思い出す必要はないんじゃないかと思ってしまった。

 音芽から、川越のことを〝初見じゃない気がする〟と言われた瞬間、俺は音芽の記憶のふたが開きかかっている気がして、正直気が気じゃなかったんだ。

 思わず、緊張で身体に力が入ってしまう程度には、俺は音芽がを思い出すのが怖い。

 もう二度と、音芽がのを、俺は見たくないんだ。

 音芽は、きっと俺のそんな感情の揺れ感じ取ったんだろう。

 俺を見上げる眼差しに、『温和はるまさは何か知ってるんだよね? 隠さず教えて?』という想いが宿っているのを感じて、情けないけれど、俺はこの場から逃げ出したいと思ってしまった。

温和はるまさ、お願い、教えて。私の不安な気持ち、少しでいいから温和あなたの言葉でやわらげて?」

 懇願こんがんするような眼差しとともに音芽から畳みかけられて、俺は半ば無意識。
「お前の記憶、やっぱり結構曖昧なんだな」
 って独言ひとりごちていた。

 現状でどこまで話すのが正解なんだろう?

 それを探りたくて、音芽の覚悟を推し量るように、じっと彼女の目を見つめると……慎重に言葉を選んで話を続けた。

川越かわごえ筑紫つくしは……俺と奏芽かなめの高校ん時の同級生だ。家の都合か何かで苗字が変わってたから、俺も最初はピンとこなかった。けど……下の名前見てもしかしてって思って……。校長から履歴書見せてもらったら……やっぱり俺の知ってる彼女やつだって確信した」

 それを知った時、俺は音芽おとめを川越と会わせたくないと……そればっかり考えて、音芽の前だったにも関わらず挙動不審な態度をとってしまった。

 ぽやんとしているように見えて、実は案外俺のことを見ている音芽が、そのことに気づかなかったはずがない。

 俺は音芽を守っているつもりで、彼女のことをどれだけ不安にさせていたんだろう?

 けど、正直な話、川越がただの同級生なら、あそこまで警戒する必要なんてなかったんだから、仕方がないじゃないか。

 当然のことながら今の説明では、音芽に、『川越は俺の元カノ』だという、音芽自身の推測の裏付けにだってなりかねないとも分かるから、俺は余計に腹立たしくてたまらないんだ。

 涙で潤んだ瞳で俺を不安気にじっと見上げてくる音芽に、俺は思わず吐息まじり。
「だからお前の記憶は物凄く曖昧なんだよ、音芽おとめ。あいつは……俺の元カノじゃない」
 と告げずにはいられなくて――。

 あんな女とそういう関係だっただなんて、例え髪の毛一本分ほども、俺は音芽には勘違いされたくない。
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