霊和怪異譚 野花と野薔薇

野花マリオ

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野花怪異談集全100話

19話「思春鬼」

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「1」
    
    ーー「八木家」ーー

『あとはよろしくね。楓、気をつけてね』
「はい、わかりました叔母さま」
 週末の休日、受話器ごしに話しかける美少女こと私八木楓(3度目)。
 私が使用する固定電話はまだ黒電話が現役だった。
 私は叔母様といくつか一言二言電話した後、受話器を下ろした。
 私は叔母様の頼みである目的地を向かうためよそ行きの和服に着替えて外へ出かけた。

 ーー「石山県赤月市吉山町」ーー

 春の桜開花シーズン。
 住宅道路のはみでる桜の樹。
 そこに桜の樹から出る花びらを踏みつけて通過する白の自家用車。
 乗車内は男女2人組の壮年夫婦。
 夫らしき運転手は周辺を注意しながら、適度な速度で飛ばしてる。
 その妻は後部座席の真ん中に陣取り、時間を気にしながら、スマホをいじって『少し遅れるから』と友人にSNSアプリのチャットを打ち込み送信する。
 夫婦の目的地は妻の出身母校赤月高校の同窓会。今年で5回目になる。
 車内では妻はバッチリ化粧を決めて、中古のブランドのネックレスを首元にかけて服装は白のレディスーツに膝下は流行の紺のポーチ。夫は同窓会の付き添いだが世間体を気にした妻からのお願いで黒のネクタイと黒のスーツで決めている。
 校門前に来ると車は停車して、夫は車を止める駐車場を探すため先に妻を降ろす。妻は集合される教室に走って向かう。

 ーーその途中に学校内から出る見慣れない華やかな和服を着た白粉肌の少女楓とお互いすれ違い通過する。

 妻は横目をチラ見した程度で構わず校内に入って消えた。校内から入れ違いに出た楓は立ち止まり、校内の建物を振り向きざまに眺めていた。

「2」

 ーー「赤月高校3年A組クラス」ーー

 私は教室の引き戸を勢いよく開けると先についたクラスみんなは気づいたのか注目して集まる。
「あーー!!リオー♪少し遅かったわね」
 私の名前を呼んだ小柄なピンクのドレス着た妙齢な女性が窓際に手を振っていた。
 私は息を切らせて少しすると深呼吸する。
    ひー、ひー、ふー。ひー、ひー、ふー。
「ふー。友美、久しぶりね♪とりあえずギリギリ間に合ったかしら」
 私は少しかいた汗をハンカチで軽く拭いて、みんなに軽く一礼した後、窓際に座ってる友美の後ろ席についた。
「もうすぐ先生がこっちに来るから、いつもの予約した永木ホテルに向かうわよ。さー、今年も飲めや歌えや喰いまくるぞー♪」
 友美の浮かれように私はクスと笑う。
(あの小柄な身体の胃袋はどうなってるかしら?)
 と、急にゾクっと寒気を感じた私。
 賑やかな教室の中、私は周囲を見渡して確認する。
(あいつ、ここにきてないわよね?)
 あいつと言うのは私が思い出したくない相手の同じクラスメイト。今でも実生活に影響して苦しめられている。
 私は苦い青春時代を回想した。


 閑話休題。


 昼の学校チャイムが鳴ると同時に高岡先生が授業の終了の号令した。
「では、ここまでです。ここ期末テストに出ますのでみなさんもちゃんと復習するように」
 高岡先生が教室の外に出ると、みんなは深いため息を吐きながら、教材を片付けてお昼の準備した。
 高岡先生はクラスの男女から人気のある若い美人の女先生だけど、ほかの先生が出すテストよりも難問で固めるのがマイナス点である。
「リオー♪」
 私がカバンから弁当と水筒を取り出してる最中に同じクラス親友の友美が声をかけてきた。
「あ、友美一緒に食べる?」
 仔犬のようにキャンキャンと私に向かって吠える友美。
 どうやらOKの合図らしい。
 と、関係ないけどさっきから、ジロジロと視線を感じる。
「………」
 そいつはすぐ見つかった。
 私の方を目視して自分の弁当を食べる男子生徒。
 鬼村とかいう奴。
 彼はいつも1人で授業中や休憩中でも私の方を視てる。
「………(ニコ)」
 彼は私を見て笑いかける。
(なによ、あいつ!薄気味悪い)
「どうしたの?リオ」
 不思議がる友美に心配かけないよう言った。
「ううん、なんでもない。屋上いこ」
 私は昼食準備して友美を連れて屋上に向かう。
 一刻も早くあいつの目から離れたかった。
「……………」

「3」

 ーー「屋上」ーー

「ふー。春樹リオ特製愛妻弁当♪流石、私の嫁」
「誰が嫁よ!」
 私たちは半分冗談交じりながらいつものようにお互いの弁当交換しあいながら食事を終えて、水筒のお茶を取り出して一息ついてる。
「リオは本当に料理とか、いろいろ上手だよね♪うちの家にも欲しい。売ってないかな家電屋に」
「そんな一家に一台とか、私は便利家政婦ロボットじゃないの!ま、うちには育ち盛りの弟たちがいるからね」
 6人姉弟の長女で女の子は私1人。いつも家の中では戦争状態なのでそのおかげで家事スキルもあがるのは必然的である。
「私リオの子になろうかな」
「丁重にお断りします。食事の家計に響きそうだから」
「ひど!」
 私たちは談笑してると、ほかの女子生徒が声をかけてきた。
「ねえ。あなたが春樹さん?」
「は、はい。私ですけど……あの、何か?」
 声をかけてきたのは隣のクラス3年B組八木凪さん。
 彼女の家はなんかのしきたりで肌を白粉にして普段着も和服してるいいとこのお嬢さん。
 私は初めて彼女を見て少し驚いたけど、もうみんなは慣れっこだ。
 そんな彼女と接点なさそうな私に一体なんだろうか?
「……これをあなたに」
「……手紙?」
 凪さんから手渡されたのは丁寧きちんと小さな封筒に入れた手紙らしき物だった。
「ねー。ひょっとしてラブレター?きゃは。ついにリオに春がきたー♪」
 はしゃぐ友美を無視して封筒を開けて手紙の中身を読むことにした。
「えーと。なになに『愛する君へ、今日の放課後、校庭にある桜の樹で待ちます。鬼村アキラより』」
 それ読んでゾッと鳥肌が立った。
 よりによってあいつからだ。
「げっ!?こいつキモ村じゃん。きも~」
 友美だけでなくクラス全員から鬼村は嫌悪感を抱いていた。何を考えてるのかよく分からず1人で何かジロジロ見て気味悪がれていた。
「じゃあ、私はこれで」
「あっ……」
 凪さんは用件済んだのか、どこかへ行ってしまった。
(どうしよう。これ)
「……………(ニコ)」

 ーー「放課後」ーー

 放課後のチャイムが鳴った同時に鬼村は手紙を手渡したのが気分いいのか私の方をニヤついて見て教室へ出ていった。
 私はあいつにこれぽっち告白受けるか受けないようが全く会うつもりなかった。
 友美のアドバイス通りガン無視するつもりだ。
 あと私はこの手紙の処分を困っていた。捨てるところを誰も見られたくないし。変な噂立てられるのも困ると思っていた。
「はー。どうしよう」
 私は帰宅するため重い足取りで下駄箱に向かう。
 そんな時にゴミ出ししてる同じクラスの香苗に出会う。
 私はナイスタイミングと思い彼女に声をかける。
「あ、ねー」
「リオじゃん。どうしたの?」
「ちょっと失礼」と私はゴミ袋を開けてそのまま手紙を突っ込み閉めた。
「あ!?ちょっ?ちょっ!?リオ何?」
「ありがとう。また明日ね♪」
 私は手紙をスッキリ処分したのであとはあいつから出くわさないようにして帰宅した。
「…………(ギリッ!)」

「4」

 ーー「春樹自宅」ーー

 帰宅した同時に私は夕飯を作り弟たちと一緒に食事する。
 両親は共働きなので帰ってくるのはいつも遅い。
 そして食事を終えると私が洗い物して弟たちに風呂を沸かして入らせる。
 弟たちが風呂を入ってる間、私は自分の部屋に向かい机の引き出しからあるノートを取り出す。
 私の青春ノート。
 私だけの秘密のノートであり、友人や両親、弟たちも見せてない。
 内容は日記みたいなものであり。今日はラブレターからもらったことを空白の余白にノートに記す。
 そして、私は数ページを開いて過去の青春ノートを見る。
(あれ?友美が私とケンカしたこともあったけ?)
 青春ノートにはいろいろあり、思いがけない物ある。嘘偽りなく出来事を書いてるので鬼村の事も書いてる。
「おねーちゃん!お風呂空いたよ」
「はーい。今いく!」
 弟たちがお風呂から上がったので私はノートを元の場所に戻しお風呂へ向かった。
「…………(クスクス)」

「5」

 ーー次の日ーー

「リオーー♪おはよう」
「おはよう。友美」
 私はあいつから無事帰宅できた。
「あら?何かしら」
 教室が何やら騒がしい。
 一体なんだろう?と私たちは教室の戸を開けた。
「えっ?……なにこれ」
 私は思わず言葉を失った。

 ーー教室全体の地面に埋め尽くされる手紙。

 クラスいる生徒たちは踏み場のない手紙を読んでひそひそと青ざめている。
 友美はふと一枚の手紙を拾って読んだ。
「愛するリオへ、君に愛を応えられなくて残念だよ。だから諦めない僕のすべてを受け止めてほしい。愛する君よりーー!?」
 手紙読んだ友美は口を抑えながらどこかへ走って去っていた。
 私は立ったまま呆然としていた。
 その後、学校内は騒然となり先生達は緊急職員会議を開いた。そして鬼村アキラはこの事件後姿を消した。そして私の元に手紙が毎日届くようになった。

 ーー「十八年後」ーー

「そんなことあったわねー。今考えれば鳥肌立つわ~」
 友美は肩を震わせながら、苦笑していた。
「そうねー。あの後、私しばらく学校休んじゃったわ」
 リオはケラケラと楽しく会話してる。
「で………さ。あ………の」
「えっ本当!?あんたもやるわね」
「ね…………………………」
 リオは問題なく彼女達の声は聞こえる。
「あ、香苗久しぶりじゃん。あのね」
「……………………………」
 だがリオの声に彼女達には届かない。
「あははは。それそれ」
「……………………………」
 誰もいない薄暗い教室でリオは1人会話していた。

「6」

 ーー「赤月高校校庭前」ーー

「あら?鬼村さん。お久しぶりです」
「こんにちは。八木さん」
 私は鬼村さんにお辞儀した。
 鬼村さんは去年の野花小学校同窓会で偶然出会った顔見知りである。娘星華さんとは私の同級生でもあったから。
 鬼村さんは奥様を先に学校内送った後、今から学校に入る予定だ。
「彼女も元気そうにしてるかな?」
 鬼村さんは照れ臭そうに言った。
「ええ。元気に走りながら、学校内へ行きましたよ」
「そっか……。彼女もあっちへ戻らないのか……まさか子供残して夫婦共々行ってしまうなんて…世の中わからないな」
「そう言えば、鬼村さんは春樹さんと同じクラスでしたね。たしか叔母がうっかりラブレター渡す相手を間違えた初恋の方でしたね」
「あはは……そうだったね。まさかちょっとした三角関係になるなんて思わなかったよ。僕は先生が好きで春樹は僕の事が好きになり、先生は春樹が好きになって、もう恋愛関係めちゃくちゃだよ。そしてあのラブレター大量事件起きた後僕は先生に告白して恋人なり駆け落ちして、春樹から冷たい目で見られたし。ま、今でも文通してるけどね」
 私はクスクスと微笑んだ。
 鬼村さんは校内をしばらくして眺めた後、涙を堪える。
「この学校はもう取り壊すらしいですね」
 私が言うと、鬼村さんはふと瞼を閉じた。
「……そうみたいだね。同窓会にいるクラスも僕と春樹だけになってしまった……もうみんなとは会えなくなるな」
 私はそれを聞いて優しくさとした。
「大丈夫ですよ。いつかみんなと会えますよ。あちらの國へ……」
「……ありがとう」
 鬼村さんは笑った。
『あなたー!』
『鬼村ー!』
 どこからか、女性達の呼んでる声が聞こえた。
 私たちは声がする校内を振り向く。
 3階の教室の窓から制服姿の学生達が身を乗りだし手を振って笑顔で呼んでいる。
「じゃあ。僕はみんなが呼んでるのでそっちに行くよ」
 鬼村さんは軽く一礼して学校の中に向かう。
「……いってらっしゃいませ。どうかお気をつけて」
 私はそっと鬼村さんを見送ると、校内から離れて立ち去った。

 ーー「とある教室」ーー

「じゃあ。始めようか

「うん。

 閑散とした男女2人しかいない教室の机に開いたノートが置かれていた。
 その見開きページに書かれた内容には
『私、鬼村リオは春樹アキラに文通を初めてみた』
 と書かれていた。
 そして突如、何もない風が入りパラパラとページめくり最後は閉じた。

 お互い男女2人は名前を交換して文通を始めた。


 思春鬼   完
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