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12話
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「……その指の動き、見覚えがあると思ったら、やっぱりあんただったのね」
乾いた声とともに、薬草の束を抱えた女性が草原の先に立っていた。
琥珀色の髪を後ろで束ね、厳しい目元に眼鏡をかけたその姿――
「まあまあ。エルミナさんではありませんの。お元気そうで何よりですわ」
「元気なわけあるか。あんたが牢屋からいなくなってから、黒鉄の塔の中、三日は混乱してたわよ」
かつて黒鉄の塔で隣の牢に入っていた毒舌薬師、エルミナ=ローゼ。
囚人でありながら毒草の知識に秀で、看守たちからも一目置かれていた彼女と、ルゥナは不思議とウマが合った。
「でも、今はもう自由の身なのですの?」
「恩赦ね。っていうか、あんたのせいで看守長が職務怠慢で処分されかけて、ついでに私も放免されたってだけ」
「まあ、善行が巡り巡ったのですわね。良きことですわ」
「どの口が言うか!」
*
再会を果たしたふたりは、帝都郊外の薬草群生地へと足を伸ばすことに。
「……で、あんたにお願い。これ、うちの仕事で必要な薬草。できるだけ柔らかい葉を摘んでちょうだい」
「ええ、お任せあそばせ」
ルゥナは籠を手に、花畑の中へ。
その五分後――
「ちょっと、そっちは……って、うそでしょ!? それ猛毒!!」
「あら? でもとても瑞々しい葉ですわよ? つややかで、風に揺れる姿もお美しいですの」
「外見で選ばないで!!」
ルゥナの籠には、見事に毒草と薬草が半々ずつ詰まっていた。
中には帝都でも流通規制されている超高濃度の毒草まで混じっており、エルミナは頭を抱える。
「よく素手で触って平気ね……普通なら皮膚ただれるわよ」
「まあ……でもこの葉、触れると少し冷たくて気持ち良いのですのよ?」
「この無自覚耐性……もう怖い……」
*
最終的に、ルゥナが摘んできた草花の中から、エルミナが役立つものだけを分別し、残りは焼却処分に。
「……本当に、どこかの神の使いじゃないの? いや、草の精霊の類かも」
「まあ、草の声はまだ聞こえませんけれど、花が笑ってる気はしますの」
「そういうのを“ヤバい”って言うのよ……」
そうぼやきながらも、エルミナは笑っていた。
彼女にとって、久々に心が休まる時間だったのだ。
「また手伝ってくれるなら、今度は毒の見分け方を教えてあげるわ」
「はい、それでは今度は“ふかふかしていない草”を選ぶようにいたしますわ」
「そこじゃない!!」
毒舌薬師と天然令嬢。
奇妙な再会は、またひとつの騒動の予兆を含んだまま、穏やかに過ぎていった。
乾いた声とともに、薬草の束を抱えた女性が草原の先に立っていた。
琥珀色の髪を後ろで束ね、厳しい目元に眼鏡をかけたその姿――
「まあまあ。エルミナさんではありませんの。お元気そうで何よりですわ」
「元気なわけあるか。あんたが牢屋からいなくなってから、黒鉄の塔の中、三日は混乱してたわよ」
かつて黒鉄の塔で隣の牢に入っていた毒舌薬師、エルミナ=ローゼ。
囚人でありながら毒草の知識に秀で、看守たちからも一目置かれていた彼女と、ルゥナは不思議とウマが合った。
「でも、今はもう自由の身なのですの?」
「恩赦ね。っていうか、あんたのせいで看守長が職務怠慢で処分されかけて、ついでに私も放免されたってだけ」
「まあ、善行が巡り巡ったのですわね。良きことですわ」
「どの口が言うか!」
*
再会を果たしたふたりは、帝都郊外の薬草群生地へと足を伸ばすことに。
「……で、あんたにお願い。これ、うちの仕事で必要な薬草。できるだけ柔らかい葉を摘んでちょうだい」
「ええ、お任せあそばせ」
ルゥナは籠を手に、花畑の中へ。
その五分後――
「ちょっと、そっちは……って、うそでしょ!? それ猛毒!!」
「あら? でもとても瑞々しい葉ですわよ? つややかで、風に揺れる姿もお美しいですの」
「外見で選ばないで!!」
ルゥナの籠には、見事に毒草と薬草が半々ずつ詰まっていた。
中には帝都でも流通規制されている超高濃度の毒草まで混じっており、エルミナは頭を抱える。
「よく素手で触って平気ね……普通なら皮膚ただれるわよ」
「まあ……でもこの葉、触れると少し冷たくて気持ち良いのですのよ?」
「この無自覚耐性……もう怖い……」
*
最終的に、ルゥナが摘んできた草花の中から、エルミナが役立つものだけを分別し、残りは焼却処分に。
「……本当に、どこかの神の使いじゃないの? いや、草の精霊の類かも」
「まあ、草の声はまだ聞こえませんけれど、花が笑ってる気はしますの」
「そういうのを“ヤバい”って言うのよ……」
そうぼやきながらも、エルミナは笑っていた。
彼女にとって、久々に心が休まる時間だったのだ。
「また手伝ってくれるなら、今度は毒の見分け方を教えてあげるわ」
「はい、それでは今度は“ふかふかしていない草”を選ぶようにいたしますわ」
「そこじゃない!!」
毒舌薬師と天然令嬢。
奇妙な再会は、またひとつの騒動の予兆を含んだまま、穏やかに過ぎていった。
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