悪役令嬢まさかの『家出』

にとこん。

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11話

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「……あら?」

小高い丘の上、帝都の外れにある古道。  
紅葉の散る坂道を歩いていたルゥナ=フェリシェは、足元に転がっていた小石に気づかず、ツルリと滑った。

そのまま、ふわりと草むらに倒れ込む。

「まぁ……ちょっと足を踏み外してしまいましたわ」

彼女が転んだその数秒後――

ゴゴゴゴ……!!

背後の岩壁が鳴動し、大きな岩が崩れ落ちた。  
ちょうどそのとき、斜面の下には帝国騎士団の一団が隊列を組んでいた。

「落石ッ!? 全員退避――!」

その岩の進路には、まだ馬を下りたばかりの若い騎士がいた。

「間に合わない……!」

と、思われたその瞬間――

上から転がってきた“何か”が、その騎士を押し倒して崖の影へ転がし込んだ。

ズドォォン!!

岩は、真っ直ぐに地面を叩きつけて砕けた。  
土煙が晴れたとき、そこには草に埋もれて起き上がろうとするルゥナと、唖然とする若い騎士の姿が。

「ご無事で何よりですわ」

彼女は、何が起きたのか分からぬまま、きちんとスカートを整えて、そう告げた。

「……命を、救われた……?」

その場にいた全騎士が、目を見開いた。



「本日十六時、黒鉄丘にて“聖なる加護を持つ女”が騎士の命を救う!」

「詳細は!? 姿は!? 名は!?」

「優雅な令嬢風の姿。日傘を持ち、転んだ拍子に“奇跡”を起こしたとのこと!」

「なんだその情報は!?」



一方、ルゥナは村のベンチでお茶を楽しんでいた。

「……ふぅ、やっぱり地面の温度は秋が一番心地よいですわね」

そんな彼女のもとに、件の若い騎士が駆けつけ、深々と頭を下げる。

「救っていただいたお礼を……どうか、何なりと!」

「……え? いえ、わたくし、ただ転んだだけでしてよ?」

「いいえ! あれは意図ある行動です! あなたは我が命の恩人です!!」

「まあ……そう仰っていただけるのは、光栄ではございますけれど……」

困ったように笑うルゥナに、周囲の村人までもが拍手を贈る。

「あなたこそ、帝国の守り手に祝福を与えし乙女だ!」

「“落石の聖女”と呼ばせてください!」

「……落石……わたくし、そういう印象になっておりますの?」

また一つ、奇跡の逸話が帝都を駆け巡る。  
そして彼女は今日もまた、「少し滑っただけ」で人を救ってしまうのだった。
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