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14話
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「まぁ、あちらの方、とてもお洒落ですわね……」
帝都の夕暮れ時、ルゥナ=フェリシェは、人の流れに乗って歩いていた。
地図はない。目的もない。ただ目についた素敵なドレスの婦人の後ろを、なんとなく追いかけていただけ。
「ついて行けばきっと、美味しいお茶のお店にでも辿り着けますわよね」
そう思っていた。心から、そう思っていたのだ。
だが、婦人が入っていったのは――
「ご招待状を……はい、どうぞ」
煌びやかな衣装の人々が出入りする、大理石の階段の先。王宮主催、帝国貴族限定の夜会。
それを理解しないまま、ルゥナもそのまま扉の中へ。
「まあ、綺麗な会場ですわね。天井が高くて、壁が光って……あ、ケーキがございますわ」
入場を止められなかった理由はただ一つ。
ルゥナの佇まいが、あまりにも優雅で自然だったからだ。
「……あれは、どこの家のご令嬢だ?」
「聞いたことがない……が、あの雰囲気、只者ではないぞ」
「“帝都の貴婦人”では……?」
「いや、貴婦人というより……女神?」
噂がささやかれ始めた頃、当の令嬢はすでにケーキコーナーに立っていた。
「これは……ベリーのタルトですわね。ミントの香りも混ざっていて……まぁ、おかわりできますかしら?」
侍従が慌てて差し出す皿を受け取り、紅茶とともに席へ。
その様子を見ていた周囲の貴族たちは、勝手に解釈を始める。
「あれほど自然にケーキを手に取る姿……!」
「甘味の配置から外交的意図を読み取っているのでは……?」
「座る姿さえも、詩になる……!」
そのうち、名家の若者たちが順に挨拶に来始めた。
「本日は、どちらのご縁で……?」
「まあ、わたくし、ちょっと後ろを歩いておりましたら」
「……なるほど。謎めいたご登場、まさに運命」
「お席を共に……」
「いいえ、今ちょうどケーキが佳境ですの」
すべての誘いを、笑顔でケーキの一言で断る。
それがまた、“他を寄せ付けぬ高貴さ”と勘違いされる。
*
夜会の終盤、ルゥナは食後のデザート皿を見つめていた。
「……あと一口、ですわね。おかわり……は、やはり三皿目はご無礼かしら」
その思考をしている間にも、噂は急拡大。
「正体不明の美しき貴婦人が夜会に現れた」
「彼女が視線を送った男爵令息は、翌日に昇進したらしい」
「“帝都の貴婦人”――新たな伝説が始まったのだ」
帰り際、案内係が慌てて訪ねた。
「お嬢様……どちらにご案内を?」
「ええと、南の甘味処に……いえ、風が西を向いておりますので、やはり左ですわね」
その一言をもって、彼女は去っていった。
夜会に迷い込んだ令嬢は、ケーキだけを手に、誰よりも印象を残して。
帝都の夕暮れ時、ルゥナ=フェリシェは、人の流れに乗って歩いていた。
地図はない。目的もない。ただ目についた素敵なドレスの婦人の後ろを、なんとなく追いかけていただけ。
「ついて行けばきっと、美味しいお茶のお店にでも辿り着けますわよね」
そう思っていた。心から、そう思っていたのだ。
だが、婦人が入っていったのは――
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「……あれは、どこの家のご令嬢だ?」
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「“帝都の貴婦人”では……?」
「いや、貴婦人というより……女神?」
噂がささやかれ始めた頃、当の令嬢はすでにケーキコーナーに立っていた。
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「本日は、どちらのご縁で……?」
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「……なるほど。謎めいたご登場、まさに運命」
「お席を共に……」
「いいえ、今ちょうどケーキが佳境ですの」
すべての誘いを、笑顔でケーキの一言で断る。
それがまた、“他を寄せ付けぬ高貴さ”と勘違いされる。
*
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「……あと一口、ですわね。おかわり……は、やはり三皿目はご無礼かしら」
その思考をしている間にも、噂は急拡大。
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帰り際、案内係が慌てて訪ねた。
「お嬢様……どちらにご案内を?」
「ええと、南の甘味処に……いえ、風が西を向いておりますので、やはり左ですわね」
その一言をもって、彼女は去っていった。
夜会に迷い込んだ令嬢は、ケーキだけを手に、誰よりも印象を残して。
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