白衣の下 第一章 悪魔的破天荒な医者と超真面目な女子大生の愛情物語り。先生無茶振りはやめてください‼️

高野マキ

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アクシデント

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午後9時過ぎ ホテルに戻った。香川君が ‘部屋まで送る’ と言ってくれたが、今日の御礼を言って丁重に断った。
先生の事だから  “香川入れぇ”  ってことになるのは目に見えている。先生は、無断外泊をうやむやにするつもりに決まっている。無断で外泊した事について、私が今後は 絶対に許さない事を、しっかり自覚
してもらわないと困る。

( ただでさえ、自由すぎなんだからっ !)

スイートの豪奢な扉をそっと開ける。リビングに明かりはついているが、先生の姿は無い。


(…まさか もう 寝てる? )寝室の扉を開けてみた。

照明を全て消し、真っ暗闇のなかで扉の隙間から漏れるリビングの明かりで微かに浮かび上がるベッド上の人影…寝室の照度を少し上げてみた。  ベッド脇に近寄り裸のまま大の字で寝ている先生を見下ろす。 昨日…一晩中心配して眠れなかった私を よりによって香川君に預けて…自分はメルボルン!   仕事じゃ仕方ないと譲っても…連絡の一つも無いのは許せない。


(腹が立つぅっ)

無視したまま日本に帰ってやろうか…、一発お見舞いする?  穏やかな先生の寝顔が私を苛立たせる。



     〝 ドンッ!!!! 〟


先生のむきだしのお腹の上にダイブし
馬乗りになってポカスカ叩いてやった。


「ぐっぅ 」

「バカッ、バカー!くそオヤジぃ!無断外泊なんかしてぇー、もう離婚!、婚約破棄!   最低ぇっ!   バカオヤジッ!」




「痛っ、よせっ、わかった悪かったっ 、痛っ! いっつぅ!ゴメン! ゴメンっ、ミチルちゃ―ん 許してぇ―っ」


先生のふざけた声に怒りは沸点に達して…顔めがけて往復ビンタを力まかせにお見舞いした。さすがの往復ビンタに先生も辛抱できずに、私を捕まえる。左右の手首を掴まれた私は 先生の力に到底敵わない。手首を掴まれたまま、私は先生を睨んだ。


「絶対に 許さないからっ…!  一晩中眠れなかったんだよ!   いつもいつも、自己中で、勝手に物事決めて…私だけ置いてけぼりじゃん…」

ほぼ 涙目で文句を言っていた。先生はニヤニヤ厭らしく笑う。


「なーんだっ、ミチルちゃんは 俺がいなくて 淋しい 淋しいぃって 泣いてたんだぁ」

そう言うと、先生は私をギュッと抱きしめた。  先生の体臭が瞬く間に、私を覆い尽くした。  先生の匂いを胸一杯吸い込むと怒りが収まってくる。 この匂いは私を一番安心させてくれる。


「よ~し よし、いい子だなぁ」


いつものように大きな手の平で頭をすっぽり覆い、撫でまわしてくれる。

涙と鼻水を先生の 裸の胸に擦りつけた。先生だから、何でも酷い事が出来る。


「ぐわっ…ミチルコアラがマーキングしやがった… 」

汚い顔を上げてニンマリ笑う。

「っへんだ」



「っすっげえ~ ブスだぞ!鼻水が糸引いてんぞぉ」



先生は まずティッシュで私の顔の涙と鼻水を拭いてくれる。
なんだ かんだ言っても、優しい…そのあと自分の胸の私が付けた鼻水を拭き取りながら

「ん…」私の顔を覗き込み、


“  疲れなかったか?  楽しんだか? ”
と、質問しながら 脈を取り、額に手の平を当て最後に瞼をめくる。この瞬間は医師に戻って…何故連絡無しでメルボルンへ行ったのか
知りたい…


「香川と何処に行った?」

先生は私の体調に変わりない事を確認すると今日の出来事を聞かせろと言う。

「先生のメルボルンはどうだった?」

私は先生が急にメルボルンに連絡も無く行った事が気になる。

「連絡忘れてた ハハハァ…」


「 …? 」

「おまえの事 、気が付いたのは空港の搭乗口でさ…」


「え――っ、信じらんない…うちのお父さんといっしょじゃん」

検察官の父親も重大案件で切羽詰まってくると家族事は そっちのけになる。先生は私をベッドの中に誘い

「服 脱いじゃえっ」 
と、言いながらワンピースのスカートを捲り上げにかかる。万歳をした私の身体からシフォンのワンピースがスルリと抜き取られポイ捨てされる。

「その時 、何故 私に直接連絡くれなかったのよ」

裸になった肩に優しく唇を落とす先生に聞く。


「おまえ 携帯持って来てないだろっ? ホテル通してじゃややこしくなるから 香川に頼んだんだ」

先生は 私の体にまとわり付き頭を支えながら頬から 顎 首筋にかけてゆっくりと唇でなぞっていく。

( ふぅ…ん)くすぐったい。



先生の右手が 私の脇腹から胸のしたまでせり上がる寸前手首を掴みその動きを止める。


「ダメッ まだ 聞きたい事があるの…」



「 何だっ  早く言えよ」


「メルボルンへは 何の用事? 仕事はわかってるけど…」


先生はいきなり 私の唇をふさぎ長い舌で私の口腔を犯す。


「 ふぅん ん ん 」

鼻から呼吸しつつ侵入する先生の舌を受け止め先生のリズムに合わせる。唾液の交換と吸引する力の強弱が体の芯をとろけさせる。



 ( ああ…熱い もうやだぁ 頭がくらくらする  )
メルボルンの件も、どうでもよくなってくる。


“………はぁ…ぁ   ”  口が塞がれ 快感の吐息すら出せない。



先生は、息が上がりそうな私から 唇を離すと、
「今日 香川と何した?」

ふんと横を向きしらばっくれる私に



「さあ…香川と何して楽しんだ?」

真下に組み敷いた私を見下ろして質問する。


「知らないっ!」と、横を向く。


「教えろよ…仕置きして欲しい?」

組み敷かれた私は 逃げ場をうしない


「言うっ 。言うからちょっとストップ!」

下から先生の厚い胸板を押し上げる。先生の手も 私のショーツから離れた。


「じゃぁ  言ってみろ」


態勢は組敷かれたまま先生はジロジロと真下の私を見る。


「ねぇ …先生ぇ ひょっとして、妬いてない?」
…  

先生はニンマリしたまま顔色は変えない。


「つべこべ言わず、何処に行ったんだ言ってみろ!」


エッチする雰囲気はとうに失せ…先生にキュランダでの出来事を話す。


「おまえとコアラの写真は?見せろよ」


「えぇー!そんなの在るわけないじやん…」

先生がサイドテーブルの携帯電話に手を伸ばす。



(…香川君に電話するつもりだっ )

私は 先生の手から携帯電話を取り上げる。 携帯電話を抱きしめ 返さない。

「なんだっ、香川が持ってるんだろっ?あいつ おまえに惚れてるから不細工な写真でも欲しかったんじゃないのか!」


私はげんこつで先生の頭を打つ。


「痛っえ‼︎ 」



「香川君がそんな真似するはずないでしょ! ‘ブツ’ は …私が持ってるわ」


  〝  むっか!〟


「なら 見せろよ 」

先生がベッドの上に座り込み手を出す。


「先生っ シャワーしたい!」


先生が私を解放した隙に 先生を置き去りにしてバスルームへ逃げた。

(あんなの見せたら……何言われるかっ !自分勝手に香川君をこき使っておいて 今度は妬きもち…⁉︎ 全く…今さらだけどどこまで自己中なのよっ )


バスタブに湯を張りゆっくり浸かる。身体を一通り見回す。眼の届く範囲でも紫斑はほとんどない。宗方先生とリノ先生の的確な処置のおかげ…。明日の午後にケアンズを発つ。

(楽しかったなぁ~  人生で一番幸福だったかも……………)


一抹の不安は 帰国した後 、そのまま入院生活に戻る事だった。


(家に帰りたいな…)


覗きに来るはずとたがを括っていた肝心の先生が来ない…よほど拗ねたのか寝てしまったのか、無断外泊の余波は私の不安を煽る。バスタブの縁に手をかけて、そっと立ち上がる。  軽くふらつく。長湯が良くない事は、わかっていてもついつい長くなる。ふらつきが収まるのを待って、ローブに包まりバスルームを出た。




ベッドルームの照度が上がって部屋が明るい。ベッドの上の乱れたシーツやブランケットはそのままなのに先生がいない。隣のリビングにも居ない。


(先生っ?…ええぇ!   消えちゃったよぉ…エッチしなかったから本格的に怒ったのっ?)


私はリビングのソファーへぺしゃんと座り込む…。時間を確かめる。
午後11時…しんと静まったホテルスイートで響くのは私の心臓の音だけ…。空調が適温を保っているはずなのにゾクッと背筋に悪寒が走る…。


 (何か変…)




先生が一瞬の隙に消えた事で 不安の闇に突き落とされた気分になる。何かあれば香川君が連絡をくれるはずと…電話の前で固まる。気持ちは乱れ、先生は昨夜と同じ手は使わないはずと…悪戯かと、勘繰ってみたり、先生自身に突発的な事が起こったかもしれない…悪い成り行きが脳裏を掠める。

( いったい何処へ行った…のよ)

30分近く経っても事態は変わらない。  私は恐る恐るフロントに電話してみる。呼び出し音は鳴っているが出ない。


(…なんで?)   ホテルのフロントが客の電話に出ないはずがない。

(なにかあったんだ)  パジャマに着替えその上からカーディガンを羽織って廊下を覗いてみた。この時はまだ異変に気がつかなかった。




もう一度フロントに電話してみた。


------------------------!


「Hello」



『はいフロントでございます。』


『あの― スイート……………の…Mr.クロサキの行き先 聞いてませんか?』



『…申し訳ございません、クロサキ様のお出かけ先の方はお伺いしておりませんが…………………先程から当ホテル周辺で事故がございまして…ご宿泊のお客様にご迷惑おかけいたしております 、まだ事故の方が…  』

受話器からサイレンと怒号が遠く聞こえる…。

〝……ガッツ  〟受話器を落とす。



   (じこ? )全身総毛立つ。




(えっ 、えっ )


隙間無く閉ざされた豪奢な遮光カーテンを引っ張る。







「  えっー   っ   なっ!!!」



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