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冬休 それぞれのクリスマス
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20階SW1003病室
数日前の修羅場も、世界的彫刻家シュウジ.マチダが日本滞在中は極秘中の最重要事案だった。万が一マスコミにかぎつけられでもすれば大騒ぎになるは確実。
〝世界に誇る日本出身彫刻家シュウジ.マチダの恋人は!〟
〝主治医の娘に手を出した世界的彫刻家〟
〝彫刻家シュウジ.マチダの20歳下の恋人の正体〟
ウワッ…!
香川タカシは世田谷の実家で思いっきり寝覚めの悪い悪夢にうなされた。
……なんだよな…町田…
あの時の町田柊士は カッコ良かった。香川タカシも認めざるおえない。
あの後 クロセンは 無抵抗だった。
(……黒崎先生っ貴方らしく無いじゃないですか!…どこの馬の骨ともわからない掴み所のない芸術家に、一人娘を取られて良いわけないでしょっ……)
この時 香川タカシは未だ 町田柊士の隠し子や、紙屑のように捨てた女の事を知らない…
東京の街はクリスマスウィークに入り一気に華やぎ出した。街の主立つ広場はニューヨークのロックフェラーセンター前の巨大なツリーを模して 眩いばかりのLED電球の光りに彩られたツリーが配され、夜ともなればクリスマス本番が待ちきれない人々でごった返している。
今年のクリスマスは週末とあって誰もがクリスマスを家族皆で計画したり、恋人達は特別な夜のシュチュエーションができる絶好の条件が揃っていた。
都会のラグジュアリーホテルのスウィートは全て満室。ナイトクルージング、ナイトフライト等 ロマンティックな企画を提供するエージェントもひくて数多の中、
伊豆の限界集落にある岬診療所の院長でありながら、ひょんな事から再び医療界にド派手な話題を提供し、現在は大学病院に入院中の有名彫刻家の主治医として〝暗躍〟する59歳になった医師がいた。
クリスマスには1人娘の19歳の誕生日会が 医師の実家の料理旅館で催される事になっていた。
神奈川県鎌倉市…手入れの行き届いた竹林の中の車一台がやっと通れる一本道を入ったどん詰きにその和風料理旅館があった。
女将の綾野カヲルが1人で切り盛りして、早くも三十数年。変わらず繁盛している老舗旅館。
綾野カヲルには孫が二人いるのだが 孫は、アメリカに住んでいる為滅多に会うことが叶わない。
しかし、今年は色々な偶然、が重なり、孫娘が帰国する事を一人息子、黒崎ヒカルから聴くや、孫の誕生日でもあるクリスマスは、早々に予約を取らず、旅館を臨時休業して準備を始めていた。
T大学附属病院…
ほぼ全ての検査を終えて、週明けから抗癌剤治療が始まる。
治療が始まると副作用による体調不良も予想されるので、香川タカシは、週末の外泊の許可を出した。
20階SW1003病室
「町田さん、来週から抗癌剤治療を始めます。今のところ、検査上での転移は認められてはいません。町田さんがNYCM病院で行ってきた薬物療法の継続で充分と考えていますが、実は、私の大学で免疫細胞療法の研究をされているファイン教授がIF製薬と共同開発した薬がアメリカの治験で好成績をあげています。恐らく、来年、癌治療薬として承認されるでしょう。町田さんにご了解頂けるなら直接ファイン先生に診察をお願いし、必要であればその薬を試してみたいのですが、お考え頂けますか?」
病室のソファに腰を下ろし、The Wall Street Journalを拡げて香川タカシの患者説明を無視している黒崎先生は、株式投資に執心してる。
( …今のうちにIF製薬の株買っとくか…)
「先生、ファイン先生は日本に来られる?」
町田柊士の素朴な疑問に
「通常は来ません‥が、しかし今回は来日される予定です。」
穏やかな香川タカシの表情から何を意味するのか全くわからない町田柊士は、
「まさか…俺のため…では無いですよね…?」
自惚れと、取られるのは本意では無いがわざわざ1人の人間の為に貴重なクリスマスバケーションを棒に振るアメリカ人はいない。
「残念ながら、世界的に有名な町田先生の治療であっても、休みを返上して患者の診察をするドクターはアメリカではほぼ居ません」
町田柊士に向かって首を二度とばかり横に振り、忌々し気に新聞を拡げている黒崎先生に視線を向けた。
町田柊士もそれに習って黒崎先生の方に視線を向ける。
香川タカシは黒崎先生のとぼけ方がどうにも我慢ならなかった。
「先生っ、いい加減にしてくださいよ…このプロジェクトは全て先生が差配してるくせに、先生が直接町田さんに説明される方が話が早い」
「いや、年寄りは後方支援に徹しないと若い芽を摘んでしまわないとも限らんからね…」
「何っ言ってるんですかっ!バカバカしいっ クラリスを名指しで呼びつけられるのは、世界中で先生だけですっ!そう僕に、言わせたかったんでしょっ!」
「香川先生っ…いやはや、クラリス.ファイン教授は先生の同僚じゃないですか?…アハハハ~ 俺のような引退寸前のポンコツが呼べるわけないでしょ~」
新聞で顔を隠したまま、黒崎先生は三文芝居を続ける。
…………
「あーあー、そうでしたね!引退されてましたっ!!」
普段冷静な香川タカシも意地になって黒崎先生に付き合う。
「御二方、仲がいい! まるで父親と息子だ…羨ましいなぁ…」
町田柊士はニヤニヤしながら二人の大人気ないやり取りを見ていた。
「無理です!あり得ないっ」
香川タカシは町田柊士の冗談に過剰な拒否反応を見せると、
「町田っ お前こそ何言ってんだっ! 香川が俺の身内になる事は地球が消滅しても〝無い〟 だが 、お前っ おまえは限りなく俺の息子になる可能性が高い。 それ相応の覚悟が無いと、俺の身内にはなれないぞっ! 今なら逃げられる! 〝辞めとけ〟…」
黒崎先生はソファから立ち上がり、新聞紙をくるくる巻くと、町田柊士に近づき、頭を2度新聞紙でこづいた。
「明日、鎌倉でユキの〝誕生日会〟するらしい、二人共来てやってくれっ」
そう言い残し病室を出て行った。
「何なんですか?今のは……」
「さぁ…〝あの人〟とは20年以上関わってるけど、未だに〝ナゾ〟僕にも分からない……IF製薬の株は購入しそうでしたが…」
「ウッ…クククク…ゥワッハハハハハハハハ~はっ、腹痛テェ~ッ!ハッハハッァハハハハ~」
町田柊士はその大きな躰をくの字に曲げる勢いで笑い転げた。
12月24日 土曜日
黒崎ユキは、明日で19歳になる。
彼女の誕生日の翌日は、彼女が知らない〝お母さん〟の19回目の命日でもあった。
小さな頃は、彼女の父、黒崎ヒカルが働いていた大学の職員の多くが暮らすシリコンバレーの家で 毎年彼女の誕生日会と亡くなったお母さん、〝黒崎ミチル〟を偲ぶ会が、クラリス.ファイン医師やバーバラ.ロス医師が開催してくれていた。
彼女の〝お母さん〟を知る香川タカシは、ユキの誕生日は辛く悲しい日と重なった。
その日を前に、
父親の体質を受け継ぎ、気性まで似てしまった黒崎ヒカル、ミチル夫妻の一粒種 黒崎ユキは 丈夫な躰と逞しい精神力を備えて成長した。
町田柊士と一緒に帰国した彼女は、鎌倉の祖母の家に滞在し、ほぼ毎日2時間かけて都内の病院まで通っている。
料理旅館の厨房の板前さんは、
「ユキ嬢ちゃん 毎日よく続いてますね、女将さん」
孫娘の誕生日会を初めてひらくとあって、朝から女将のカヲルは70歳を超えているとは思えない程 テキパキと動いていた。
「そりゃあ…好きな人に逢うんですものっ 時間なんて気にならないものよ…」
カヲルがリズム良くガラスコップの曇りが無いか確かめながらキュッキュッと拭いていく。
「毎朝、弁当まで作ってねぇ~ 余程その〝男〟に惚れてんですねぇ」
「有難うねっ 板さんにまで世話かけちゃって、お弁当のおかずの彩りに 毎朝何品か作ってくれて… 余分な仕事なのに…」
招待した人数分の食器の確認をお品書きを見ながら見て回るカヲルの姿に 板前さんも 余程嬉しいんだろう と女将の姿を微笑ましく眺めていた。
その日 1番に到着したのは、神戸の綾野家を継いだ
〝綾野タダシ〟 だった。
「ただいまー、誰かいませんかぁ?上がりますよ~」
勝手知ったる実家とばかり、母屋の玄関に荷物を置くと、づかづかと居間に続く廊下を進んでいく。
「何や、父ちゃんっ居るなら居るで出てくれよっ!気ぃ使うやんかっ」
父親のツヨシは 鼻毛を抜きながら横に寝転び、TVをみていた。
「 耳が遠くなったんちゃうん? TVのボリューム下げやな…」
TVのボリュームを下げにかかる息子に、
「今 いいところなんだから、余計な事するんじゃねぇ!」
「ちぇっ 相変わらずやな、 勝手にビール飲むで、あー土産!玄関に置きっぱなしやっ 〝お母さんは?〟」
「店の厨房違うか?」
タダシは 母屋から複雑に曲がりくねる廊下を進んで直接厨房に出た。
「お母さんっただいまー!」
「あら~っ! タダシちゃんっ! お帰りなさ~い♪」
カヲルにしたら、中学生の可愛い盛りで息子になったタダシは、ずっとあの時のままで 飛び付かんばかりに 義理の息子を抱きしめた。
「お母さん、相変わらず綺麗やなぁ…躰壊してへんか?無理したらあかんで~、…」
「タダシちゃんだけよっ そんな優しい事言ってくれるのは、ヒカルさんなんか、ちっとも家に寄り付かないし…」
タダシは70歳を過ぎた義理の母の小さな背中を撫でながら、
「兄貴っ相変わらず元気なんやなっ こないだ えらいニュースになってたやんか! 何でもものすごい有名な画家やらの手術したとかで! 田舎に引きこもってる場合ちゃうん違うか?」
………
「誰が引きこもりだと⁈ えーっコラッ」
背後から近づきタダシを羽交締めにしたのは、義理の兄だった。
26歳差の兄弟…………
「あっ、兄貴ぃ!痛いって、わかったよ!わかったって!」
タダシは甘えた声で、父親程歳の離れた義理兄とじゃれ合う。
「タダシっ、仕事は順調なのか?」
先生はタダシが玄関に置きっぱなしにした保冷バッグに入った土産物を厨房まで持ってきてやり、義弟の仕事を気にかけてやる。
「まぁ ぼちぼち何とかなってんねんな」
ニヤニヤしながら久しぶりの義兄さんの顔をマジマジと穴が開くほど凝視して、
(………全く変わってへんやん…白髪増えたなぁ…)
「何だよっ ジロジロ見やがって…」
無精髭の生えた顎をもぞもぞと触る義兄に、
「この前さ、夕方のニュースで兄貴が出てたんで もう〝現場〟出えへん思てたさかい、ちょっとビックリしたわ…んで 飲み屋でな、
〝あれ 家の兄貴やねん〟ってゆうたって 誰も、信じよらんねんな …腹立つわ~」
すっかり建設現場の監督の風格が出てきたガテン系の体格を見ながら黒崎先生はヘラヘラ笑いだした。
「何がおかしいねん やらしいわっ」
タダシがむくれた顔すら、黒崎先生は〝可愛い奴〟と思ってしまう自分が可笑しかった。
「タダシは ちびすけの頃から全く変わってねえな…可愛いい奴」
先生に頭をゴシゴシ撫でつ付けられて タダシは恥ずかしいのと、懐きたい気持ちがごちゃ混ぜになる。
「兄貴もやん、ぜんぜん若いし、何も変わってへんわ、そや 難波で 55◯こうてきたさかい、皆で食べへんか?」
……………
※亡くなった妻ミチルの10歳下の弟、綾野タダシは中学、高校と神戸でも名の通った御坊ちゃま進学校に通っていたが、成績振るわず、高校卒業後地元の建設工事会社に就職し、現在は現場監督として建設工事に携わっている職人さん達に混ざって、唯一 黒崎綾野組セレブに属さない 一般ピーポーなのだ!
香川タカシは、クリスマスイヴのこの日、羽田空港国際線ターミナルで マイアミで休暇中に黒崎先生から呼び出され来日したPrf.クラリス.ファインを出迎えていた。
〝Hello!Takashi 〟
何泊するんだと思わせる巨大なスーツケース2個を乗せたカートをつきながらバッグパックをせおった小柄な金髪女性が目一杯背伸びして長い腕を真っ直ぐ真上に突き上げ手招きしている。
(…… ふっ 相変わらず…だな…)
香川タカシは歩みを早め、彼女が押すカートを代わってやる。
真横に来て さりげなくカートを代わる香川タカシのそつのない紳士ぶりに クラリスは横からハグし 背伸びしてもやっと届くか彼の頬に何度もキスする。
『クラリスっ 日本に移住するつもり?』
暗に荷物が多すぎると揶揄されても、
『マイアミから直行よっ 荷物を家に送る間もヒカルが許してくれなかったのよっ!』
『いちいち 先生の言いつけ通りに動かなくてもいいのに…』
ここにも1人、黒崎信者が存在すると、香川タカシは自分も含めて呆れるしかなかった。
二人はそのままタクシーに乗り込む。
香川タカシはそのまま鎌倉に向かうつもりでいた。
『タカシ、悪いけどホテルに先に寄ってシャワー浴びたいわ…』
後部座席の二人はやや離れて お互い左右の窓から都心のビル群を眺めている。
『オーケー』
十数年経つと、香川タカシもクラリス.ファインもお互いに成長した。
あのメルボルンでの日々は、口には出せない記憶としてそれぞれが忘れ去る事はできない。
香川タカシは失恋の痛手から逃れる為女の躰に溺れ、クラリス.ファインは日本人の研修医に恋をしていた。
タクシーの後部座席でお互い左右の窓から都心のビル群に視線を向ける2人の間の隙間十数センチがこの十数年間を物語っていた。
同じ大学に籍を置くが、職場が違うと先ず望まない限り会う事は少ない。
あのメルボルンでの日々、クラリスの躰に溺れ昼夜を分かたず求めた。クラリスは香川タカシも自分と同じ気持ちで求めてくれていると、恋に溺れていた。
目を覚まさせてくれたのは、留学先の指導者〝ナオミ.ホワイト博士〟
あれから暫くは 香川タカシが迎えに来てくれるのを待つ日々だった。やがてその熱い情熱も薄れて免疫学に没頭するようになっていた。
………
留学期間も終わり母校に戻ると、professor of medicine H.Krosakiのresearch associateとして彼が存在していた。
そして、彼の心の中は 黒崎ヒカルの妻……ミチルが独占している事を知った。
……アメリカ人のクラリスには考えられなかった。
……奪う事もせず、ただヒカルの助手をしながらミチルの近くに寄り添うなんて!クレイジーッ…と怒りが込み上げていた。
しかし、 その時はミチルが死を目前にしているなど夢にも思わなかった。
黒崎先生は クラリスの為に予め、都心のホテルを予約してくれていた。このクリスマスシーズンにラグジュアリークラスの部屋を用意するなど流石、そつがない。
ホテルのフロントで宿泊者名簿を確認し、ホテルボーイが部屋迄案内してくれる。巨大なスーツケースもカートを使い難なく部屋の中まで運んでくれた。
眺めのいい部屋からの景色にも見向きすらせずに 香川タカシの前でも気にせず 衣服を脱ぎだすクラリスに、
『少しは 恥じらいを見せれば?』
視線を景色に移しながら 彼女に言えば、
『…タカシ…アタシがホテルに誘って 着いてきたって事でしょ?』
クラリスの言ってる意味は香川タカシにも理解できる。
タクシーの狭い車内で考えた事は昔の2人の事だった。
『…だよな…』
香川タカシもクラリスの前でカッターシャツのボタンを外し出した。
……………
着ているもの全てを脱ぎ捨てた彼女はそのまま香川タカシを抱きしめた。はだけたシャツのあいだの硬い胸板に柔らかな弾力ある肉の塊を押し付けシャープな顎を突き出し香川タカシの唇を捕らえる。
香川タカシも無抵抗ではいられない。目の前の小柄なアメリカ人の顔を手の平で左右から挟み ゆっくりしかし圧力をかけながら盗まれた唇から引き離すと、
『強引に襲うって こうするんだよっ』
クラリスの小柄な躰がフワッと宙に浮く。香川タカシはクラリスを抱いたまま 円形のジャグジーバスまで運ぶとバスタブの湯の中に彼女の躰を沈めた。浮力に任せて彼女の躰から両腕を離すと、躰は湯の中で自由気ままに浮遊する。
見事な肢体はジャグジーの細かい泡に見え隠れしながら香川タカシの視線を大胆に誘惑してくる。
白い大理石を思わせるマーブル模様の円形のバスタブ。都会の真ん中の高層ビル群のオフィスの窓が視界に広がって開放感あふれるスパ空間の演出。
…なんて大胆な設計…ミラーガラス張りの浴室…
クラリスは細かい気泡を裸の全身にまといながら まるで小さな子供がお風呂で泳ぎの真似事をするかのように 湯の中をクルクルと回ってみせる。
『とっても気持ちいいわー…真昼間から裸でオフィスビルに囲まれたホテルのラグジュアリーバスっだって♪ オフィスのしかめつらしいサラリーマンに見られてるかもっ 』
そう言うと 大胆なポージングをしだす彼女に
『ほらっ右側のオフィスの窓際で 休憩している男がこっちみてるぞっ』
香川タカシも着ている服を脱ぎ始めた。
クラリスはバスタブから飛び出し ガラスの向こうの休憩中のサラリーマンに向かって手を振ってみた。
ガラス窓につきそうなぐらい裸の躰を近づける。冬の午後の日差しは低くく弧を描き西に傾き クラリスの裸の躰をホテルのビルの外側から照らしていた。
シルエットだけで 背中、腰のくびれ 臀部の円みを帯びた双丘につながるムッチリと密着した太腿の肉感が簡単に想像できた。
※ 若い頃の彼女の肢体は瑞々しく 張りがあり 余計な贅肉のかけらもない完璧な躰だった。
四十を過ぎた〝女〟の躰は背後から見ても皮膚の張りは劣る。その代わりに 柔和で柔らかく確かな脂肪の乗る脇腹の膨らみ 溶け始めた円やかな躰に 香川タカシは性的な興奮を覚えていた。
……触りたい…
『サラリーマンはクレイジーな君に気づいてくれた?』
裸の背後を包み込む懐かしい男の匂い。部屋の外は土曜日で普段なら高層ビルに入るオフィスも休みなのだが、勤勉な日本のサラリーマンは休日を返上して年末ギリギリまで働いている。
『teaを飲んだら 仕事に戻ったみたい』
背中に熱を帯びた男の胸板が密着し、クラリスの躰はガラス窓に押し付けられた。
濡れて纏わりついた亜麻色の髪を 彼は指先で梳きなから露出したうなじに唇を落とし 冷んやりした白人特有の透ける様な白い皮膚を味わう。
『あっ … タカシ …』
唇を離し、バックハグしたまま クラリスの耳元で… …
『こんな …感じ …だ …った…?』
香川タカシの囁く息づかいにゾクゾクしながら
『素敵…よ… タカシ… … いいわぁ… もっと… ぁぁ……』
クラリスは瞼を閉じて彼の唇の動きだけに意識を集中する。
……今なら
傷つけ合うようなmake loveにはならない…お互い〝オトナ〟になったからね…クラリス…
数日前の修羅場も、世界的彫刻家シュウジ.マチダが日本滞在中は極秘中の最重要事案だった。万が一マスコミにかぎつけられでもすれば大騒ぎになるは確実。
〝世界に誇る日本出身彫刻家シュウジ.マチダの恋人は!〟
〝主治医の娘に手を出した世界的彫刻家〟
〝彫刻家シュウジ.マチダの20歳下の恋人の正体〟
ウワッ…!
香川タカシは世田谷の実家で思いっきり寝覚めの悪い悪夢にうなされた。
……なんだよな…町田…
あの時の町田柊士は カッコ良かった。香川タカシも認めざるおえない。
あの後 クロセンは 無抵抗だった。
(……黒崎先生っ貴方らしく無いじゃないですか!…どこの馬の骨ともわからない掴み所のない芸術家に、一人娘を取られて良いわけないでしょっ……)
この時 香川タカシは未だ 町田柊士の隠し子や、紙屑のように捨てた女の事を知らない…
東京の街はクリスマスウィークに入り一気に華やぎ出した。街の主立つ広場はニューヨークのロックフェラーセンター前の巨大なツリーを模して 眩いばかりのLED電球の光りに彩られたツリーが配され、夜ともなればクリスマス本番が待ちきれない人々でごった返している。
今年のクリスマスは週末とあって誰もがクリスマスを家族皆で計画したり、恋人達は特別な夜のシュチュエーションができる絶好の条件が揃っていた。
都会のラグジュアリーホテルのスウィートは全て満室。ナイトクルージング、ナイトフライト等 ロマンティックな企画を提供するエージェントもひくて数多の中、
伊豆の限界集落にある岬診療所の院長でありながら、ひょんな事から再び医療界にド派手な話題を提供し、現在は大学病院に入院中の有名彫刻家の主治医として〝暗躍〟する59歳になった医師がいた。
クリスマスには1人娘の19歳の誕生日会が 医師の実家の料理旅館で催される事になっていた。
神奈川県鎌倉市…手入れの行き届いた竹林の中の車一台がやっと通れる一本道を入ったどん詰きにその和風料理旅館があった。
女将の綾野カヲルが1人で切り盛りして、早くも三十数年。変わらず繁盛している老舗旅館。
綾野カヲルには孫が二人いるのだが 孫は、アメリカに住んでいる為滅多に会うことが叶わない。
しかし、今年は色々な偶然、が重なり、孫娘が帰国する事を一人息子、黒崎ヒカルから聴くや、孫の誕生日でもあるクリスマスは、早々に予約を取らず、旅館を臨時休業して準備を始めていた。
T大学附属病院…
ほぼ全ての検査を終えて、週明けから抗癌剤治療が始まる。
治療が始まると副作用による体調不良も予想されるので、香川タカシは、週末の外泊の許可を出した。
20階SW1003病室
「町田さん、来週から抗癌剤治療を始めます。今のところ、検査上での転移は認められてはいません。町田さんがNYCM病院で行ってきた薬物療法の継続で充分と考えていますが、実は、私の大学で免疫細胞療法の研究をされているファイン教授がIF製薬と共同開発した薬がアメリカの治験で好成績をあげています。恐らく、来年、癌治療薬として承認されるでしょう。町田さんにご了解頂けるなら直接ファイン先生に診察をお願いし、必要であればその薬を試してみたいのですが、お考え頂けますか?」
病室のソファに腰を下ろし、The Wall Street Journalを拡げて香川タカシの患者説明を無視している黒崎先生は、株式投資に執心してる。
( …今のうちにIF製薬の株買っとくか…)
「先生、ファイン先生は日本に来られる?」
町田柊士の素朴な疑問に
「通常は来ません‥が、しかし今回は来日される予定です。」
穏やかな香川タカシの表情から何を意味するのか全くわからない町田柊士は、
「まさか…俺のため…では無いですよね…?」
自惚れと、取られるのは本意では無いがわざわざ1人の人間の為に貴重なクリスマスバケーションを棒に振るアメリカ人はいない。
「残念ながら、世界的に有名な町田先生の治療であっても、休みを返上して患者の診察をするドクターはアメリカではほぼ居ません」
町田柊士に向かって首を二度とばかり横に振り、忌々し気に新聞を拡げている黒崎先生に視線を向けた。
町田柊士もそれに習って黒崎先生の方に視線を向ける。
香川タカシは黒崎先生のとぼけ方がどうにも我慢ならなかった。
「先生っ、いい加減にしてくださいよ…このプロジェクトは全て先生が差配してるくせに、先生が直接町田さんに説明される方が話が早い」
「いや、年寄りは後方支援に徹しないと若い芽を摘んでしまわないとも限らんからね…」
「何っ言ってるんですかっ!バカバカしいっ クラリスを名指しで呼びつけられるのは、世界中で先生だけですっ!そう僕に、言わせたかったんでしょっ!」
「香川先生っ…いやはや、クラリス.ファイン教授は先生の同僚じゃないですか?…アハハハ~ 俺のような引退寸前のポンコツが呼べるわけないでしょ~」
新聞で顔を隠したまま、黒崎先生は三文芝居を続ける。
…………
「あーあー、そうでしたね!引退されてましたっ!!」
普段冷静な香川タカシも意地になって黒崎先生に付き合う。
「御二方、仲がいい! まるで父親と息子だ…羨ましいなぁ…」
町田柊士はニヤニヤしながら二人の大人気ないやり取りを見ていた。
「無理です!あり得ないっ」
香川タカシは町田柊士の冗談に過剰な拒否反応を見せると、
「町田っ お前こそ何言ってんだっ! 香川が俺の身内になる事は地球が消滅しても〝無い〟 だが 、お前っ おまえは限りなく俺の息子になる可能性が高い。 それ相応の覚悟が無いと、俺の身内にはなれないぞっ! 今なら逃げられる! 〝辞めとけ〟…」
黒崎先生はソファから立ち上がり、新聞紙をくるくる巻くと、町田柊士に近づき、頭を2度新聞紙でこづいた。
「明日、鎌倉でユキの〝誕生日会〟するらしい、二人共来てやってくれっ」
そう言い残し病室を出て行った。
「何なんですか?今のは……」
「さぁ…〝あの人〟とは20年以上関わってるけど、未だに〝ナゾ〟僕にも分からない……IF製薬の株は購入しそうでしたが…」
「ウッ…クククク…ゥワッハハハハハハハハ~はっ、腹痛テェ~ッ!ハッハハッァハハハハ~」
町田柊士はその大きな躰をくの字に曲げる勢いで笑い転げた。
12月24日 土曜日
黒崎ユキは、明日で19歳になる。
彼女の誕生日の翌日は、彼女が知らない〝お母さん〟の19回目の命日でもあった。
小さな頃は、彼女の父、黒崎ヒカルが働いていた大学の職員の多くが暮らすシリコンバレーの家で 毎年彼女の誕生日会と亡くなったお母さん、〝黒崎ミチル〟を偲ぶ会が、クラリス.ファイン医師やバーバラ.ロス医師が開催してくれていた。
彼女の〝お母さん〟を知る香川タカシは、ユキの誕生日は辛く悲しい日と重なった。
その日を前に、
父親の体質を受け継ぎ、気性まで似てしまった黒崎ヒカル、ミチル夫妻の一粒種 黒崎ユキは 丈夫な躰と逞しい精神力を備えて成長した。
町田柊士と一緒に帰国した彼女は、鎌倉の祖母の家に滞在し、ほぼ毎日2時間かけて都内の病院まで通っている。
料理旅館の厨房の板前さんは、
「ユキ嬢ちゃん 毎日よく続いてますね、女将さん」
孫娘の誕生日会を初めてひらくとあって、朝から女将のカヲルは70歳を超えているとは思えない程 テキパキと動いていた。
「そりゃあ…好きな人に逢うんですものっ 時間なんて気にならないものよ…」
カヲルがリズム良くガラスコップの曇りが無いか確かめながらキュッキュッと拭いていく。
「毎朝、弁当まで作ってねぇ~ 余程その〝男〟に惚れてんですねぇ」
「有難うねっ 板さんにまで世話かけちゃって、お弁当のおかずの彩りに 毎朝何品か作ってくれて… 余分な仕事なのに…」
招待した人数分の食器の確認をお品書きを見ながら見て回るカヲルの姿に 板前さんも 余程嬉しいんだろう と女将の姿を微笑ましく眺めていた。
その日 1番に到着したのは、神戸の綾野家を継いだ
〝綾野タダシ〟 だった。
「ただいまー、誰かいませんかぁ?上がりますよ~」
勝手知ったる実家とばかり、母屋の玄関に荷物を置くと、づかづかと居間に続く廊下を進んでいく。
「何や、父ちゃんっ居るなら居るで出てくれよっ!気ぃ使うやんかっ」
父親のツヨシは 鼻毛を抜きながら横に寝転び、TVをみていた。
「 耳が遠くなったんちゃうん? TVのボリューム下げやな…」
TVのボリュームを下げにかかる息子に、
「今 いいところなんだから、余計な事するんじゃねぇ!」
「ちぇっ 相変わらずやな、 勝手にビール飲むで、あー土産!玄関に置きっぱなしやっ 〝お母さんは?〟」
「店の厨房違うか?」
タダシは 母屋から複雑に曲がりくねる廊下を進んで直接厨房に出た。
「お母さんっただいまー!」
「あら~っ! タダシちゃんっ! お帰りなさ~い♪」
カヲルにしたら、中学生の可愛い盛りで息子になったタダシは、ずっとあの時のままで 飛び付かんばかりに 義理の息子を抱きしめた。
「お母さん、相変わらず綺麗やなぁ…躰壊してへんか?無理したらあかんで~、…」
「タダシちゃんだけよっ そんな優しい事言ってくれるのは、ヒカルさんなんか、ちっとも家に寄り付かないし…」
タダシは70歳を過ぎた義理の母の小さな背中を撫でながら、
「兄貴っ相変わらず元気なんやなっ こないだ えらいニュースになってたやんか! 何でもものすごい有名な画家やらの手術したとかで! 田舎に引きこもってる場合ちゃうん違うか?」
………
「誰が引きこもりだと⁈ えーっコラッ」
背後から近づきタダシを羽交締めにしたのは、義理の兄だった。
26歳差の兄弟…………
「あっ、兄貴ぃ!痛いって、わかったよ!わかったって!」
タダシは甘えた声で、父親程歳の離れた義理兄とじゃれ合う。
「タダシっ、仕事は順調なのか?」
先生はタダシが玄関に置きっぱなしにした保冷バッグに入った土産物を厨房まで持ってきてやり、義弟の仕事を気にかけてやる。
「まぁ ぼちぼち何とかなってんねんな」
ニヤニヤしながら久しぶりの義兄さんの顔をマジマジと穴が開くほど凝視して、
(………全く変わってへんやん…白髪増えたなぁ…)
「何だよっ ジロジロ見やがって…」
無精髭の生えた顎をもぞもぞと触る義兄に、
「この前さ、夕方のニュースで兄貴が出てたんで もう〝現場〟出えへん思てたさかい、ちょっとビックリしたわ…んで 飲み屋でな、
〝あれ 家の兄貴やねん〟ってゆうたって 誰も、信じよらんねんな …腹立つわ~」
すっかり建設現場の監督の風格が出てきたガテン系の体格を見ながら黒崎先生はヘラヘラ笑いだした。
「何がおかしいねん やらしいわっ」
タダシがむくれた顔すら、黒崎先生は〝可愛い奴〟と思ってしまう自分が可笑しかった。
「タダシは ちびすけの頃から全く変わってねえな…可愛いい奴」
先生に頭をゴシゴシ撫でつ付けられて タダシは恥ずかしいのと、懐きたい気持ちがごちゃ混ぜになる。
「兄貴もやん、ぜんぜん若いし、何も変わってへんわ、そや 難波で 55◯こうてきたさかい、皆で食べへんか?」
……………
※亡くなった妻ミチルの10歳下の弟、綾野タダシは中学、高校と神戸でも名の通った御坊ちゃま進学校に通っていたが、成績振るわず、高校卒業後地元の建設工事会社に就職し、現在は現場監督として建設工事に携わっている職人さん達に混ざって、唯一 黒崎綾野組セレブに属さない 一般ピーポーなのだ!
香川タカシは、クリスマスイヴのこの日、羽田空港国際線ターミナルで マイアミで休暇中に黒崎先生から呼び出され来日したPrf.クラリス.ファインを出迎えていた。
〝Hello!Takashi 〟
何泊するんだと思わせる巨大なスーツケース2個を乗せたカートをつきながらバッグパックをせおった小柄な金髪女性が目一杯背伸びして長い腕を真っ直ぐ真上に突き上げ手招きしている。
(…… ふっ 相変わらず…だな…)
香川タカシは歩みを早め、彼女が押すカートを代わってやる。
真横に来て さりげなくカートを代わる香川タカシのそつのない紳士ぶりに クラリスは横からハグし 背伸びしてもやっと届くか彼の頬に何度もキスする。
『クラリスっ 日本に移住するつもり?』
暗に荷物が多すぎると揶揄されても、
『マイアミから直行よっ 荷物を家に送る間もヒカルが許してくれなかったのよっ!』
『いちいち 先生の言いつけ通りに動かなくてもいいのに…』
ここにも1人、黒崎信者が存在すると、香川タカシは自分も含めて呆れるしかなかった。
二人はそのままタクシーに乗り込む。
香川タカシはそのまま鎌倉に向かうつもりでいた。
『タカシ、悪いけどホテルに先に寄ってシャワー浴びたいわ…』
後部座席の二人はやや離れて お互い左右の窓から都心のビル群を眺めている。
『オーケー』
十数年経つと、香川タカシもクラリス.ファインもお互いに成長した。
あのメルボルンでの日々は、口には出せない記憶としてそれぞれが忘れ去る事はできない。
香川タカシは失恋の痛手から逃れる為女の躰に溺れ、クラリス.ファインは日本人の研修医に恋をしていた。
タクシーの後部座席でお互い左右の窓から都心のビル群に視線を向ける2人の間の隙間十数センチがこの十数年間を物語っていた。
同じ大学に籍を置くが、職場が違うと先ず望まない限り会う事は少ない。
あのメルボルンでの日々、クラリスの躰に溺れ昼夜を分かたず求めた。クラリスは香川タカシも自分と同じ気持ちで求めてくれていると、恋に溺れていた。
目を覚まさせてくれたのは、留学先の指導者〝ナオミ.ホワイト博士〟
あれから暫くは 香川タカシが迎えに来てくれるのを待つ日々だった。やがてその熱い情熱も薄れて免疫学に没頭するようになっていた。
………
留学期間も終わり母校に戻ると、professor of medicine H.Krosakiのresearch associateとして彼が存在していた。
そして、彼の心の中は 黒崎ヒカルの妻……ミチルが独占している事を知った。
……アメリカ人のクラリスには考えられなかった。
……奪う事もせず、ただヒカルの助手をしながらミチルの近くに寄り添うなんて!クレイジーッ…と怒りが込み上げていた。
しかし、 その時はミチルが死を目前にしているなど夢にも思わなかった。
黒崎先生は クラリスの為に予め、都心のホテルを予約してくれていた。このクリスマスシーズンにラグジュアリークラスの部屋を用意するなど流石、そつがない。
ホテルのフロントで宿泊者名簿を確認し、ホテルボーイが部屋迄案内してくれる。巨大なスーツケースもカートを使い難なく部屋の中まで運んでくれた。
眺めのいい部屋からの景色にも見向きすらせずに 香川タカシの前でも気にせず 衣服を脱ぎだすクラリスに、
『少しは 恥じらいを見せれば?』
視線を景色に移しながら 彼女に言えば、
『…タカシ…アタシがホテルに誘って 着いてきたって事でしょ?』
クラリスの言ってる意味は香川タカシにも理解できる。
タクシーの狭い車内で考えた事は昔の2人の事だった。
『…だよな…』
香川タカシもクラリスの前でカッターシャツのボタンを外し出した。
……………
着ているもの全てを脱ぎ捨てた彼女はそのまま香川タカシを抱きしめた。はだけたシャツのあいだの硬い胸板に柔らかな弾力ある肉の塊を押し付けシャープな顎を突き出し香川タカシの唇を捕らえる。
香川タカシも無抵抗ではいられない。目の前の小柄なアメリカ人の顔を手の平で左右から挟み ゆっくりしかし圧力をかけながら盗まれた唇から引き離すと、
『強引に襲うって こうするんだよっ』
クラリスの小柄な躰がフワッと宙に浮く。香川タカシはクラリスを抱いたまま 円形のジャグジーバスまで運ぶとバスタブの湯の中に彼女の躰を沈めた。浮力に任せて彼女の躰から両腕を離すと、躰は湯の中で自由気ままに浮遊する。
見事な肢体はジャグジーの細かい泡に見え隠れしながら香川タカシの視線を大胆に誘惑してくる。
白い大理石を思わせるマーブル模様の円形のバスタブ。都会の真ん中の高層ビル群のオフィスの窓が視界に広がって開放感あふれるスパ空間の演出。
…なんて大胆な設計…ミラーガラス張りの浴室…
クラリスは細かい気泡を裸の全身にまといながら まるで小さな子供がお風呂で泳ぎの真似事をするかのように 湯の中をクルクルと回ってみせる。
『とっても気持ちいいわー…真昼間から裸でオフィスビルに囲まれたホテルのラグジュアリーバスっだって♪ オフィスのしかめつらしいサラリーマンに見られてるかもっ 』
そう言うと 大胆なポージングをしだす彼女に
『ほらっ右側のオフィスの窓際で 休憩している男がこっちみてるぞっ』
香川タカシも着ている服を脱ぎ始めた。
クラリスはバスタブから飛び出し ガラスの向こうの休憩中のサラリーマンに向かって手を振ってみた。
ガラス窓につきそうなぐらい裸の躰を近づける。冬の午後の日差しは低くく弧を描き西に傾き クラリスの裸の躰をホテルのビルの外側から照らしていた。
シルエットだけで 背中、腰のくびれ 臀部の円みを帯びた双丘につながるムッチリと密着した太腿の肉感が簡単に想像できた。
※ 若い頃の彼女の肢体は瑞々しく 張りがあり 余計な贅肉のかけらもない完璧な躰だった。
四十を過ぎた〝女〟の躰は背後から見ても皮膚の張りは劣る。その代わりに 柔和で柔らかく確かな脂肪の乗る脇腹の膨らみ 溶け始めた円やかな躰に 香川タカシは性的な興奮を覚えていた。
……触りたい…
『サラリーマンはクレイジーな君に気づいてくれた?』
裸の背後を包み込む懐かしい男の匂い。部屋の外は土曜日で普段なら高層ビルに入るオフィスも休みなのだが、勤勉な日本のサラリーマンは休日を返上して年末ギリギリまで働いている。
『teaを飲んだら 仕事に戻ったみたい』
背中に熱を帯びた男の胸板が密着し、クラリスの躰はガラス窓に押し付けられた。
濡れて纏わりついた亜麻色の髪を 彼は指先で梳きなから露出したうなじに唇を落とし 冷んやりした白人特有の透ける様な白い皮膚を味わう。
『あっ … タカシ …』
唇を離し、バックハグしたまま クラリスの耳元で… …
『こんな …感じ …だ …った…?』
香川タカシの囁く息づかいにゾクゾクしながら
『素敵…よ… タカシ… … いいわぁ… もっと… ぁぁ……』
クラリスは瞼を閉じて彼の唇の動きだけに意識を集中する。
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