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ミルフィーユ争奪戦
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先生が答える間も与えず……
その女性は 黒崎先生の唇を奪った。
(…やらかしやがった…バカ女っ…ええぃっ…)
酔いに任せて開き直った先生は、その女性をしっかり抱きしめ 押し付けられた唇を吸い上げ 僅かな隙間に舌を差し込んだ。
(………ヤバい…止まんねえっ…)
宴会場の出口近くとはいえ 激しいディープキスと抱擁。
躰にフィットしたカクテルドレスからムチっとした白い脚が先生の脚にまとわりつく。
無意識に露出した太腿を撫で上げ 掴みきれないお尻の肉をムギュムギュ揉みしだく。
…(……おいっ クラリス …やりすぎだろ…いや…このまま離れ座敷でクラリスとヤっちまうか…あれっ⁈ そうなると… 俺は… 香川と〝穴兄弟〟! )
ブルブルッと身震いして 先生の〝アソコ〟はコソコソと元の鞘に戻り、サブイボが全身をめぐった。
ガバッと クラリスを突き放し
『ざけんなよっ!香川喰った口で 俺様にキスするんじゃねぇ!』
『何で わかるのよ?』
(…この手の女は、その時の気分次第で手当たり次第に男とSEXしやがるっ……俺は…女に何を求めてる?)
『お前ら 皆 SEXをスポーツくらいにしか考えてない …だろ?』
(……素人なら素人らしく好きな男以外とSEXするなっ!…)
「黒崎のパパ 激しいな…」
金髪女性と激しく抱き合ってエグいキスしている姿を娘に見せつけていいのか…多少の批判も込めてその娘に恐る恐る尋ねてみた
「…そう? あんなの 序の口よ…だって先生の〝運動〟だって 人間の生殖行動超えちゃってるし…」
ユキは 肘で 柊士の溝打ちを突いた。
………っで!…
(……ヒドイ…)
その光景にひどく傷つけられた女性も居た。 …………
「なっ!なんて 破廉恥なっ!」
………………
「おばあさまぁ っ」
有栖川家の主は 刺激が強すぎて その場で腰折れて座り込んでしまった。
支えきれない孫の有栖川温子も床に座り込んでしまう。
駆けつけたのは 遅れてやってきた香川タカシだった。
直ぐに脈を取る。
「大丈夫ですよ…ご心配いりません 少し休めば、直ぐに回復しますよ 今夜はお帰りになった方が……」
香川タカシは周りを見渡すが 皆飲酒していて 役に立ちそうな医師がいない。
「町田先生っ ちょっと…手伝ってくださいっ」
香川からかけられた声を直ぐに理解して
「運びましょうか? 先生…」
「いや、僕が運ぶので、頭を躰より少し下げて 支えいただければ…」
二人の連携で 有栖川家の主は 旅館の客室で休める事になった。
「ドクターっ【岬診療所】のナースです!私っ、行きます!」
ドンと立ちはだかったのは パッツンパッツンの派手な柄のミニ丈のワンピース、胸元が広くあき 今にも中身が飛び出しそうな〝下品〟な姿をした 女金太郎 と呼ばれた 雲母遥だった。
素早く町田柊士と交代した。
町田柊士は 思わずニヤついたが 香川タカシは至って真面目に、
「黒崎先生の所の 看護師さん?」
(……なんて素敵なドクター…それに…今をトキメク町田先生…
~あぁ…今日はミチコ先生に連れてきて貰って超ラッキー…)
一瞬、間が空き、香川タカシがキョトンと雲母遥を見た。
「あっあっっ!ハイッ 〝きららはるか〟と申す どこにでもいるナースですっ!」
(……キャーッ 話しちゃった!…)
町田柊士は 笑いを堪えるのに必死で、下を向いたままお腹を押さえて肩が激しく振動している。
(……町田…お前のど真ん中女だぞっ!…
娘か?きららか?…)
突き放され 〝スポーツか〟と言い放たれた クラリスは 唇を離した相手に
『ヒカルッ ごめん 口紅…着いちゃったよ』
そういうと ハンカチを黒崎先生に手渡した。
『お前といい ユキといい アメリカ人の節操の無さは困ったもんだな…傍迷惑な…』
図に乗った先生がアメリカ人のアイディンティティまで批判してくると、クラリスも腹が立ってきた。
(…何よっ 舌入れてきたのはヒカルなのに…)
『酷いのは あなたよ! 今迄 何人の女を泣かせてきたと思っているのよ!この女ったらしっ…ナオミもバーバラも! … アタシだって タカシに出会わなかったら 貴方をずっと思い続けてきたかも!』
(…俺が……… 知るかっ!…)
『あっ 酔っちまったかなぁ……♪』
〝The Star-Spangled Banner〟のメロディーが先生の頭の中に流れてきた。
※The Star-Spangled Banner:米国国歌🇺🇸
黒崎ユキの19回目の日本での 〝お誕生日会〟は最悪なエンディングを迎えた。
綾野カヲルは 二度と息子は呼ばないと決心し、有栖川温子は 黒崎ヒカルと新たなスタートが切れると予感したが粉々に砕かれ、当事者の黒崎ユキに至っては ぶち壊された
〝バースデーパーティー〟は、もう取り返せないと怒る。
それもこれも 始まる前から お酒を飲み出した 綾野黒崎の男達のせいだと 黒崎ユキは 母家で怒りが嘆きにかわり、手が付けられないほど泣き喚きだした。
『ダッドも タクヤも大大嫌い! アタシ アメリカに帰るっ!もう絶対日本に来ない。だいたい 余計な人達呼んだおばあちゃん!信じられないっから! 知らない人達から何で ユキの誕生日祝ってもらわなきゃいけないのよっ! あり得ないから!』
泣きながら 感情に任せて 英語で喚き散らす彼女を 綾野黒崎男性陣は 知らんぷりをして 相変わらず バトルゲームに熱中する奴から 寝てたのを叩き起こされた先生と綾野ツヨシはお笑い番組をイヤフォンで聴きながら 同じ波長で笑い転げ、 今夜泊まって行く予定の 香川タカシと町田柊士は チェスの勝負をしている。
幸い 黒崎ユキの罵詈雑言は 祖父母とタダシにはわからない。
それでも 優しい祖母 綾野カヲルは
居間の座卓の真ん中に 先生の好物のイチゴのミルフィーユをホール状態で出した。
「さぁ、ユキちゃん ご機嫌直して頂戴。おばあちゃん勘違いしちゃって、本当は 家族だけで祝ってほしかったのよね…ごめんなさい」
(……おばあちゃん…わかっちゃってたんだ…)
「ねぇ…ズルっ ミルフィーユ 美味しそう♪ …ツージュルジュル…ズルー」
散々泣き喚き鼻水も溜まりに溜まってズルズルと吸い込んでいるユキを見かねた 父親が 〝ほれっ〟と箱テッシュを放り投げる。
トンッと当たるも、文句も言わずに
「thanks!」と受け取ると 激しく鼻汁をかみまくる 19歳の娘。
「わーっ 美味そうやん! お義母さんっ 例の店のやんな! 確かミシュ○○○○に 載ったやつやんか!」
タダシはスイーツに目が無い。
「おばあちゃんっ とうとうアソコ掲載されたの? なかなか手に入らないって いつも愚痴ってたアレだね! 凄いね!」
タクヤは カヲルの苦労を労う天才。
タダシは台所から勝手に 皿とデザートフォークを持ってきた。
「そうなのよ、だから1か月前にパティシエさんに 美味しい宇治抹茶が手に入ったからって ウフフ お届けして、3か月待ちを ちょっとね…ウフフ」
(……おばあちゃん…ごめんね…ユキが帰ってきたから、無理させちゃったよね…)
「どれっ 味見♪」
黒崎先生が 長い綺麗すぎる人差し指で パイの層からはみ出たクリームを掬い取ろうとした瞬間 ユキが先生の手の甲を叩き、
「ダメっ ユキのだから!」
「はぁ? お前のじゃ無いよ、パパが好きなんだっ」
黒崎先生は 唯一 この店の、ミルフィーユだけは 気に入って食べる。
「えーっ 黒崎先生っ 先生が好きなんですあ?」
甘い物に興味の無い町田柊士が 過剰反応した。
綾野黒崎家で遠慮がちに、その、立派なガタイを隅っこに追いやっていたのに……
「アレ は美味いですよ!町田先生っ 」
三浦先生が帰宅前に風呂を借りていたが 出てきた途端に 満面の笑みで ミルフィーユに視線を落とした。
「三浦っ 今夜 泊まって行け…部屋ならいくらでもあるから、香川も泊まって行くから…」
「三浦先生、そうしましょうよ 町田先生の体調もあるし…」
香川タカシも三浦ハルヒを引き留める。
「そ、そうですか…では、お言葉に甘えて…」
若い頃から 高度救命センターで仕事をしてきた三浦ハルヒは、まだ先生の家が大学近くのタワーマンションだった頃 食事に招かれたり、勉強の為に先生の書庫を漁りに訪れていたが、泊まる事は出来なかった。幾度も機会はあったが その都度ON CALLに呼び出されて まともな睡眠も取れない体力勝負が続いていた。
懐かしい若い頃…目の前の香川タカシに嫉妬した時もあったが、今なら黒崎先生と一緒に仕事をした時間は 世界中探しても 自分が1番だと自負している。 公私共に黒崎先生と長い時間を共有し さまざまなな知識を頂戴した。
娘とジャレあっている黒崎先生を1番に尊敬しているのは 三浦ハルヒに違いない。
居間は 宴会場の地獄状態から一変 綾野黒崎一家の幸せなひと時が座卓のミルフィーユ争奪戦で実証された。
カヲルがわざわざパイナイフ迄用意したと言うのに、始めは 皆 行儀良く 皿に少しづつ取り分けて デザートフォークで口に運んだ。
一口で 〝モノが違う〟と分かった 町田柊士が もう一切れと…取り分け係りのタダシに もうしわけなさげに皿を差し出す。
(タダシ:鍋奉行ならぬスイーツ奉行)
「町田先生! 先生程のお口が肥えてはってもこれ 美味いでしょう? 先生っ 後で動画一緒にかめへんですか?」
写メからグレードアップしている。
「叔父さんっ 先生 困らせないで!…ダメに決まってるよ」
ユキが強引に パイナイフを取り上げ ガッツリ切り落としたミルフィーユを手づかみで先生の皿に盛った。
「あーっユキっ 何しやがるっ」
先生が 手でひとちぎりして 口に放り込んだ。
「ダッド! 汚いじゃないか! 」
タクヤも真似る。
「アホンダラかっ もう許さん!」
タダシが皿ごと回収し 台所で一人立ち食いを始めた。
…………
鎌倉の広い敷地のほとんどを竹に覆われた高級料理旅館
主は女主人 女主人の亭主は弁護士 一人息子は医者 孫は国際弁護士 孫娘は有名大学の医学生 孫娘の〝彼氏〟は世界的に有名な彫刻家 医者の息子の知人 友人もその世界では知らない人のいない実力者や成功者。
そんな 家族が 久々に集い 食べ物を奪い合うありふれた日常を送れる事が幸せだった。
「お母さん、今夜 俺自分の部屋で寝ます。離れは町田先生とユキに使って貰ってもいいでしょう?」
カヲルは二人が〝そう言う仲〟だと薄薄は気がついていたが、いきなりとは…と少し戸惑っていた。
「ヒカルさん アタシ達の時代なら兎も角…ユキは未だ成人していないし…」
※2022.4.1から成人年齢は18歳に引き下げられました。
「大丈夫ですよ アメリカ国籍のユキは18歳で成人してますからね… それに 町田柊士は、見かけによらず真面目な男ですから……
このまま 事情が変わらなければ、二人を婚約させようと思っています」
「あらー!まぁ! それは 嬉しい事だけど…ちょっと寂しくなるわね…」
余りに早い孫娘の独立… ふと寂しさがよぎる。
「大丈夫ですよ あいつら 日本に留まる可能性もありそうですよ……」
「えー?」
この年 中国の武漢で謎の発熱により死者が出始めていた。
まだ 日本にはそれ程のニュースとして入ってきてはいない。
……………
香川タカシと三浦ハルヒはそれぞれ旅館の客室が用意された。
黒崎タクヤは小さい頃から使っている部屋で町田柊士が 帰国するまで日本に滞在する。
綾野タダシはお父さんと同室で カヲルは女将部屋に移動。
先生は医学雑誌の原稿など仕事が溜まってきたら実家の旅館の離れ家を常宿にしていたが今夜は娘に譲って母屋の自分の部屋で過ごす事にした。
その女性は 黒崎先生の唇を奪った。
(…やらかしやがった…バカ女っ…ええぃっ…)
酔いに任せて開き直った先生は、その女性をしっかり抱きしめ 押し付けられた唇を吸い上げ 僅かな隙間に舌を差し込んだ。
(………ヤバい…止まんねえっ…)
宴会場の出口近くとはいえ 激しいディープキスと抱擁。
躰にフィットしたカクテルドレスからムチっとした白い脚が先生の脚にまとわりつく。
無意識に露出した太腿を撫で上げ 掴みきれないお尻の肉をムギュムギュ揉みしだく。
…(……おいっ クラリス …やりすぎだろ…いや…このまま離れ座敷でクラリスとヤっちまうか…あれっ⁈ そうなると… 俺は… 香川と〝穴兄弟〟! )
ブルブルッと身震いして 先生の〝アソコ〟はコソコソと元の鞘に戻り、サブイボが全身をめぐった。
ガバッと クラリスを突き放し
『ざけんなよっ!香川喰った口で 俺様にキスするんじゃねぇ!』
『何で わかるのよ?』
(…この手の女は、その時の気分次第で手当たり次第に男とSEXしやがるっ……俺は…女に何を求めてる?)
『お前ら 皆 SEXをスポーツくらいにしか考えてない …だろ?』
(……素人なら素人らしく好きな男以外とSEXするなっ!…)
「黒崎のパパ 激しいな…」
金髪女性と激しく抱き合ってエグいキスしている姿を娘に見せつけていいのか…多少の批判も込めてその娘に恐る恐る尋ねてみた
「…そう? あんなの 序の口よ…だって先生の〝運動〟だって 人間の生殖行動超えちゃってるし…」
ユキは 肘で 柊士の溝打ちを突いた。
………っで!…
(……ヒドイ…)
その光景にひどく傷つけられた女性も居た。 …………
「なっ!なんて 破廉恥なっ!」
………………
「おばあさまぁ っ」
有栖川家の主は 刺激が強すぎて その場で腰折れて座り込んでしまった。
支えきれない孫の有栖川温子も床に座り込んでしまう。
駆けつけたのは 遅れてやってきた香川タカシだった。
直ぐに脈を取る。
「大丈夫ですよ…ご心配いりません 少し休めば、直ぐに回復しますよ 今夜はお帰りになった方が……」
香川タカシは周りを見渡すが 皆飲酒していて 役に立ちそうな医師がいない。
「町田先生っ ちょっと…手伝ってくださいっ」
香川からかけられた声を直ぐに理解して
「運びましょうか? 先生…」
「いや、僕が運ぶので、頭を躰より少し下げて 支えいただければ…」
二人の連携で 有栖川家の主は 旅館の客室で休める事になった。
「ドクターっ【岬診療所】のナースです!私っ、行きます!」
ドンと立ちはだかったのは パッツンパッツンの派手な柄のミニ丈のワンピース、胸元が広くあき 今にも中身が飛び出しそうな〝下品〟な姿をした 女金太郎 と呼ばれた 雲母遥だった。
素早く町田柊士と交代した。
町田柊士は 思わずニヤついたが 香川タカシは至って真面目に、
「黒崎先生の所の 看護師さん?」
(……なんて素敵なドクター…それに…今をトキメク町田先生…
~あぁ…今日はミチコ先生に連れてきて貰って超ラッキー…)
一瞬、間が空き、香川タカシがキョトンと雲母遥を見た。
「あっあっっ!ハイッ 〝きららはるか〟と申す どこにでもいるナースですっ!」
(……キャーッ 話しちゃった!…)
町田柊士は 笑いを堪えるのに必死で、下を向いたままお腹を押さえて肩が激しく振動している。
(……町田…お前のど真ん中女だぞっ!…
娘か?きららか?…)
突き放され 〝スポーツか〟と言い放たれた クラリスは 唇を離した相手に
『ヒカルッ ごめん 口紅…着いちゃったよ』
そういうと ハンカチを黒崎先生に手渡した。
『お前といい ユキといい アメリカ人の節操の無さは困ったもんだな…傍迷惑な…』
図に乗った先生がアメリカ人のアイディンティティまで批判してくると、クラリスも腹が立ってきた。
(…何よっ 舌入れてきたのはヒカルなのに…)
『酷いのは あなたよ! 今迄 何人の女を泣かせてきたと思っているのよ!この女ったらしっ…ナオミもバーバラも! … アタシだって タカシに出会わなかったら 貴方をずっと思い続けてきたかも!』
(…俺が……… 知るかっ!…)
『あっ 酔っちまったかなぁ……♪』
〝The Star-Spangled Banner〟のメロディーが先生の頭の中に流れてきた。
※The Star-Spangled Banner:米国国歌🇺🇸
黒崎ユキの19回目の日本での 〝お誕生日会〟は最悪なエンディングを迎えた。
綾野カヲルは 二度と息子は呼ばないと決心し、有栖川温子は 黒崎ヒカルと新たなスタートが切れると予感したが粉々に砕かれ、当事者の黒崎ユキに至っては ぶち壊された
〝バースデーパーティー〟は、もう取り返せないと怒る。
それもこれも 始まる前から お酒を飲み出した 綾野黒崎の男達のせいだと 黒崎ユキは 母家で怒りが嘆きにかわり、手が付けられないほど泣き喚きだした。
『ダッドも タクヤも大大嫌い! アタシ アメリカに帰るっ!もう絶対日本に来ない。だいたい 余計な人達呼んだおばあちゃん!信じられないっから! 知らない人達から何で ユキの誕生日祝ってもらわなきゃいけないのよっ! あり得ないから!』
泣きながら 感情に任せて 英語で喚き散らす彼女を 綾野黒崎男性陣は 知らんぷりをして 相変わらず バトルゲームに熱中する奴から 寝てたのを叩き起こされた先生と綾野ツヨシはお笑い番組をイヤフォンで聴きながら 同じ波長で笑い転げ、 今夜泊まって行く予定の 香川タカシと町田柊士は チェスの勝負をしている。
幸い 黒崎ユキの罵詈雑言は 祖父母とタダシにはわからない。
それでも 優しい祖母 綾野カヲルは
居間の座卓の真ん中に 先生の好物のイチゴのミルフィーユをホール状態で出した。
「さぁ、ユキちゃん ご機嫌直して頂戴。おばあちゃん勘違いしちゃって、本当は 家族だけで祝ってほしかったのよね…ごめんなさい」
(……おばあちゃん…わかっちゃってたんだ…)
「ねぇ…ズルっ ミルフィーユ 美味しそう♪ …ツージュルジュル…ズルー」
散々泣き喚き鼻水も溜まりに溜まってズルズルと吸い込んでいるユキを見かねた 父親が 〝ほれっ〟と箱テッシュを放り投げる。
トンッと当たるも、文句も言わずに
「thanks!」と受け取ると 激しく鼻汁をかみまくる 19歳の娘。
「わーっ 美味そうやん! お義母さんっ 例の店のやんな! 確かミシュ○○○○に 載ったやつやんか!」
タダシはスイーツに目が無い。
「おばあちゃんっ とうとうアソコ掲載されたの? なかなか手に入らないって いつも愚痴ってたアレだね! 凄いね!」
タクヤは カヲルの苦労を労う天才。
タダシは台所から勝手に 皿とデザートフォークを持ってきた。
「そうなのよ、だから1か月前にパティシエさんに 美味しい宇治抹茶が手に入ったからって ウフフ お届けして、3か月待ちを ちょっとね…ウフフ」
(……おばあちゃん…ごめんね…ユキが帰ってきたから、無理させちゃったよね…)
「どれっ 味見♪」
黒崎先生が 長い綺麗すぎる人差し指で パイの層からはみ出たクリームを掬い取ろうとした瞬間 ユキが先生の手の甲を叩き、
「ダメっ ユキのだから!」
「はぁ? お前のじゃ無いよ、パパが好きなんだっ」
黒崎先生は 唯一 この店の、ミルフィーユだけは 気に入って食べる。
「えーっ 黒崎先生っ 先生が好きなんですあ?」
甘い物に興味の無い町田柊士が 過剰反応した。
綾野黒崎家で遠慮がちに、その、立派なガタイを隅っこに追いやっていたのに……
「アレ は美味いですよ!町田先生っ 」
三浦先生が帰宅前に風呂を借りていたが 出てきた途端に 満面の笑みで ミルフィーユに視線を落とした。
「三浦っ 今夜 泊まって行け…部屋ならいくらでもあるから、香川も泊まって行くから…」
「三浦先生、そうしましょうよ 町田先生の体調もあるし…」
香川タカシも三浦ハルヒを引き留める。
「そ、そうですか…では、お言葉に甘えて…」
若い頃から 高度救命センターで仕事をしてきた三浦ハルヒは、まだ先生の家が大学近くのタワーマンションだった頃 食事に招かれたり、勉強の為に先生の書庫を漁りに訪れていたが、泊まる事は出来なかった。幾度も機会はあったが その都度ON CALLに呼び出されて まともな睡眠も取れない体力勝負が続いていた。
懐かしい若い頃…目の前の香川タカシに嫉妬した時もあったが、今なら黒崎先生と一緒に仕事をした時間は 世界中探しても 自分が1番だと自負している。 公私共に黒崎先生と長い時間を共有し さまざまなな知識を頂戴した。
娘とジャレあっている黒崎先生を1番に尊敬しているのは 三浦ハルヒに違いない。
居間は 宴会場の地獄状態から一変 綾野黒崎一家の幸せなひと時が座卓のミルフィーユ争奪戦で実証された。
カヲルがわざわざパイナイフ迄用意したと言うのに、始めは 皆 行儀良く 皿に少しづつ取り分けて デザートフォークで口に運んだ。
一口で 〝モノが違う〟と分かった 町田柊士が もう一切れと…取り分け係りのタダシに もうしわけなさげに皿を差し出す。
(タダシ:鍋奉行ならぬスイーツ奉行)
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写メからグレードアップしている。
「叔父さんっ 先生 困らせないで!…ダメに決まってるよ」
ユキが強引に パイナイフを取り上げ ガッツリ切り落としたミルフィーユを手づかみで先生の皿に盛った。
「あーっユキっ 何しやがるっ」
先生が 手でひとちぎりして 口に放り込んだ。
「ダッド! 汚いじゃないか! 」
タクヤも真似る。
「アホンダラかっ もう許さん!」
タダシが皿ごと回収し 台所で一人立ち食いを始めた。
…………
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カヲルは二人が〝そう言う仲〟だと薄薄は気がついていたが、いきなりとは…と少し戸惑っていた。
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※2022.4.1から成人年齢は18歳に引き下げられました。
「大丈夫ですよ アメリカ国籍のユキは18歳で成人してますからね… それに 町田柊士は、見かけによらず真面目な男ですから……
このまま 事情が変わらなければ、二人を婚約させようと思っています」
「あらー!まぁ! それは 嬉しい事だけど…ちょっと寂しくなるわね…」
余りに早い孫娘の独立… ふと寂しさがよぎる。
「大丈夫ですよ あいつら 日本に留まる可能性もありそうですよ……」
「えー?」
この年 中国の武漢で謎の発熱により死者が出始めていた。
まだ 日本にはそれ程のニュースとして入ってきてはいない。
……………
香川タカシと三浦ハルヒはそれぞれ旅館の客室が用意された。
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そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
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