罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー

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二章 三者三様

穏やかではない昼休み

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 昼休み……四時限目の終了のチャイムを聞くと僕はグゥ~っと背伸びをすると机の横にかけているリュックから弁当箱を取り出す。

(弁当はどこで食べようかな……)

「おい彼方、メシ食おうぜ!」

 食べるところを考えていると悠人と高藤が声をかけてきた。
 二人とも手ぶらなのを見るとどうやら学食で食べるらしい。

「いいけど僕弁当だよ?」

「学食でも弁当食べてるやつもいるし問題ないだろう」

「そうだね」

 高藤の言葉に席を立とうとしたその時だった。

「あの……御堂君……!」

「風原さん……?」

 亜希が声をかけてきた。

「も……もしよかったらだけど……その……私とお弁当……食べない……?」

 亜希は顔を少し赤くしながら上目遣いで僕をみてくる。
 その様子に僕は思わずドキっとしてしまった。

「え……でも、悠人と高藤に誘われてる訳だし……」

「そう……分かったわ……」

 亜希は気落ちしながら視線を訪れる姿になぜか僕の胸が痛む……。

「……彼方、やっぱ俺たちだけで行ってくるわ」

「そうだな、学食は人が多い。弁当を持って学食に行くと変に睨まれたりするからな」

 悠人と高藤はそれだけを言うと、僕を置いて教室を出ていった。

 えっと……これって気を遣ってくれたってこと……なのかな……?

「とりあえず風原さん……一緒にお昼食べようか……」

「う……うん……!」

 僕の予定が無くなると亜希はどこか嬉しそうな笑みを浮かべていた。
 でも、昨日の夜も今朝も一緒にご飯を食べたというのに、亜希は僕と弁当を食べるのがそんなに嬉しいのかな……?

「とりあえず教室でいい?」

「教室はちょっと……出来れば静かなところがいいわ……」

 ふむ……静かなところか……。
 僕は顎に手を当てて少し考える……。

「じゃあ、中庭とかは……?」

「そこならいいわよ」

 僕は亜希と一緒に弁当を持って教室を出ようとすると、柊さんから声をかけられる。

「待って……、わたしも行く……。いいでしょ?御堂君……」

「えっと……、僕はいいけど風原さんは……」

「……ええ、私もいいわよ」

 亜希はいいとは言っていたもののどこか不機嫌そうな顔をしていたけど、僕は亜希と柊さんと共に学園の中庭へと向かった。


 ◆◆◆


 僕は亜希と柊さんと共に中庭にある日陰へと昼食を食べに来た……んだけど、なぜか重苦しい空気が辺りを包んでいた。
 それはなぜかと言うと、無言のまま弁当を食べている亜希と柊さんが関係している。

 二人は何も話すこともなくただ弁当を食べているのだけど時折お互いを見合ってはまるで火花を散らしているかのようなそんな感じすら覚える。

 そんな中に僕が口を挟めるはずもなく、ただ重苦しい空気を感じながら真奈美さんの作ってくれた弁当を食べていた。

(うう……なんか空気が重苦しいせいか料理の味がしないよ……。ここは早めに食べて退散したほうがいいかな……)

 僕は二人の様子を伺いながらそそくさと弁当を食べすすめる。

「あの……御堂君は確かいつも自分でお弁当つくってたよね……。今日も自分で作ってきたの……?」

 そんな僕の様子を見てか、柊さんが話しかけてきた。

「えっと……今日は父さんの再婚相手の真奈美さんって人が作ってくれたんだ」

「そう……、私は自分でお弁当作ってる。実はわたし、お母さんと二人暮らしであまりお母さんに負担をかけないよう自分で出来ることは出来るだけやってる……」

「え……?そうなんだ……、柊さんもお母さんと二人暮らしだったなんて知らなかった……」

「お父さんは何年か前に病気で亡くなったから……だから本屋でバイトしてるのもお母さんを助けるため……て、ごめん……ご飯中に重苦しい話をしちゃった……」

「い……いやそんなことないよ……!でもそっか……柊さんも大変だったんだね……、僕も少し前まで父さんと二人暮らしだったからその気持ちは分かるよ……。確か風原さんところもそうだったよね……?」

「え……?あ……う……うん……!私も本当に昨日までお母さんと妹と三人で暮らしてたから……」

 僕は亜希へと話を振ると、彼女は慌てて話を合わせてきた。

「そうだったのね……、でも御堂君ごめんね……、ご飯中にする話じゃなかった……。わたし……」

「い……いや、謝るようなことじゃないよ。誰にだって言いにくいことはあるからさ」

「うん、ありがとう御堂君……」

 柊さんはそう言って僕に微笑みかける。
 その笑顔は今まで見た彼女の表情の中で一番可愛く見えた。

「そうだ、御堂君……わたしいまお菓子作りを練習しているの、もしよかったら今度クッキーの味見をしてほしいんだけど……どうかな……?勿論御堂君の作ったものには劣ると思うけど……」

「そんなことないよ……!もしよかったらぜひ食べさせてもらえないかな?」

「ありがとう、御堂君……。作ったら学園に持ってくる……」

「ありがとう、楽しみにしてるよ」

 柊さんのクッキーか……なんか楽しみだな……。

「料理……だめ……、私には料理ができない……。どうする私……」

 そう思いながらふと亜希の方へと目をやるとどこか険しい表情をし、悔しそうに唇を噛み締めブツブツと何か言っていた。

「あ……亜希……?」

 僕は亜希へと声を掛けると彼女はハッとした様子で顔を上げた。

「えっと……その……そ……そうだ……!ね……ねえ御堂君!今度一緒に料理してみない……っ!?ほ……ほら、私ももっと料理上達してみたいしさ、も……勿論タダでとは言わないわ!今度御堂君の苦手な教科をみて上げるからど……どうかしら……?」

 僕は亜希の言葉に若干の違和感を覚えるもすぐにその意図を理解した。

 確か亜希は完璧女子で通してきたはず、だから料理が出来ないから教えてとは言えず敢えて上達したいという意味で言ってきたのかもしれない。

 それに、苦手は教科を見てもらえるというのも確かにありがたい。
 確か亜希は全教科高得点を取っているから亜希に勉強法とかを教えてもらえれば随分助かるかもしれない。

「うん、いいよ。もしよければ今日でも一緒に料理してみようか」

「いいの御堂君……?」

「ま……まあ……、同じ家に住んでるわけだし……」

「ありがとう、彼方っ!」

「わ……わあ……っ!?あ……亜希……っ!?」

 突然抱きついてきた亜希に僕は思わず亜希のことを下の名前で呼んでしまったのだった……。


 ~サイドストーリー~


 ──亜希──


 昼休みが終わった五時限目……、私は頭を抱えていた……。

(あの時最後の最後で彼方のことを名前呼びしてしまったのは迂闊だったわ……)

 今まで"御堂君"と読んで学園では線引きを行おうと思っていたのについ感情があふれて名前で呼んでしまった……。

 でも……考えようによっては柊さんへのいい牽制になったかもしれないわね……。
 昨日までは由奈さえ気をつけていればと思っていたけど、柊さんがあそこまで行動力があるとは思わなかったわ……。

 とんだダークホースだわ……。

 でも……負けない……負けるわけにはいかないわ……!
 最後に彼方の隣にいるのは……私なんだから……!

 私は授業の内容そっちのけで恋のライバルへの闘争心を燃やしていたのだった……。
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