罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー

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二章 三者三様

枕に抱いた恋心

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 放課後……僕は一人帰宅の途についていた。
 柊さんは本屋のバイトがあるとかで早々に教室を出ていき、亜希は先生に呼ばれて職員室へと連れて行かれた。

 なんでも5時限目に授業を聞いていなかった事が原因らしい……。

 悠人と高藤も何か用事があるとかで現在僕一人……まあ、こんな事もあるか……。

 僕はそんな事を思いながら家へと向かって歩いていた。

「ちょっと……!やめてください……っ!」

 とその時、聞き覚えのある声が聞こえてきたため声のする方へと向かってみるとそこには由奈ちゃんの姿があった。

 しかも2,3人の男に絡まれている!

「大変だ……!」

 僕は急いで由奈ちゃんの下へと走った。

「ねえ君可愛いね!どこの学校?俺たちこの辺り初めてでさちょっと道案内してよ」

「いや!離してください!」

 僕が由奈ちゃんのところへとたどり着く頃、男の一人が彼女の腕を掴み無理やり引っ張ろうとしていた!

「やめろ!その子を離して……!」

「あ……?なんだお前は……?」

「お兄ちゃん助けて……っ!」

 僕が男たちへと声を上げると三人は僕を睨み、由奈ちゃんはすがるような目で僕を見つめてくる。

「僕はその子の兄だ!妹を離せっ!」

「お兄ちゃんの登場ってか?悪いけど君の妹さん、俺たちが少しの間借りま~す!」

「つう訳で……すっこんでろ!」

 男のひとりが僕へと近付いてくると、声を荒らげながら拳を振りかぶり、僕へと殴りかかってきた……!

「お兄ちゃん危ない……!」

「ふ……!」

 由奈ちゃんの心配を他所に僕は殴りかかってきた男の腕を掴むと勢いそのままに背負い投げで男を投げ飛ばした!

「がは……!」

 受け身の取り方を知らないのか、男はそのまま地面へと倒れると投げられた痛みに顔を歪めていた。

「この野郎……!」

 別の男が僕へと勢いよく突っ込んでくる……!

 僕は男の胸元を掴むと相手の勢いをそのまま利用し今度は巴投げで男を投げ飛ばす!

「ぐは……!」

 2人目の男も受け身を知らないらしく、地面に叩きつけられ悶絶していた。

「最後にもう一度だけ言う……!妹を離せ!」

「く……くそ……!」

 由奈ちゃんの腕を掴んでいた3人目の男はそれだけを言い残すと由奈ちゃんの腕を離し走り去っていった。
 投げられた男二人もまた体を起こすと同じ方向へと走っていく。

「ふう~……由奈ちゃん、大丈夫?」

「お兄ちゃん……!」

 僕は少し乱れた服を整えたあと由奈ちゃんへと声を掛けると、彼女は僕へと抱きついてきた。

 由奈の体は少し震えており、いかに怖かったのかがうかがえる。

「由奈ちゃん、もう大丈夫だよ」

 僕は由奈ちゃんの肩を軽く抱き、頭を優しく撫でると彼女は肩を震わせて涙ぐんでいた。

「ありがとう、お兄ちゃん……。あたし……怖かった……。もしお兄ちゃんが来てくれなかったらあたし……あたし……うぐ……ひっく……」

「うん、怖かったね……。でももう安心だよ」

 しばらく僕の胸の中で嗚咽を漏らしていた由奈ちゃんだったけど、腕で涙を拭うと今度はぱあっと笑みを浮かべてみせた。

「それにしても、お兄ちゃんって強いんだねっ!男の人二人をあっという間に投げ出して……!」

「中学まで柔道習ってたからね……」

「そうなんだ、でもすっごくカッコよかった!」

「そ……そうかな……?」

 妹みたいな由奈ちゃんでも褒めてもらえると少し嬉しく感じる。

「あ……でもリュック潰れちゃったね……」

「まあ……リュックを降ろす暇もなかったからね……」

 由奈ちゃんに言われ、僕は潰れた背中のリュックへと目をやる……。
 リュックを背負ったまま投げちゃったけど、中身大丈夫かな……。
 弁当箱壊れてなければいいけど……。

「あ……あの、もし何か壊れてたらあたしが弁償するから……!」

「そんな事気にしなくていいよ、それより帰ろうか」

「……うんっ!」

 由奈ちゃんは僕の腕へと抱きつくと、僕と由奈ちゃんはそのまま家へと向かったのだった。


 ~サイドストーリー~


 ──由奈──


 家へと帰宅したあたしは自分の部屋へと戻るとカバンを机へと放り投げた後、水色のシーツが敷かれたベッドへとダイブすると男の人に掴まれていた腕を擦る……。

 心の中にはまだ男の人たちへの恐怖心が残っている……。

 でも、それ以上にあたしを助けてくれたお兄ちゃんのカッコよさが心に残っていた。

「あの時のお兄ちゃん本当にかっこよかった……」

 殴りかかろうとした男の人の腕を掴んだと思ったらそのまま投げ飛ばすんだもん。
 それにもう一人の男の人がお兄ちゃんに突っ込んでいって押し倒された時もうダメだと思ったけど、そのまま投げ飛ばしてたし……。

 お兄ちゃん……まるでスーパーマンみたい……。

 そう思うと胸の奥がトクン……と高鳴るのを感じた。

(なんだろう……この胸の高鳴り……?)

 その胸の高鳴りはお兄ちゃんの事を考えれば考えるほど大きくなり、やがてキュンキュンとしてはあたしの胸を締め付ける……。

 なんだろうこれ……あたしこんなの知らないよ……。

 と、その時朝お兄ちゃんの友達が言っていた、お兄ちゃんがお姉ちゃんに告白をしたということを不意に思い出した……。

(お兄ちゃんは……お姉ちゃんの事が好き……なのかな……?)

 告白したくらいだもん、きっとお兄ちゃんはお姉ちゃんの事が好きなんだよね……。

 お姉ちゃんはどうなんだろう……昨日お姉ちゃんはお兄ちゃんの事を想いながら枕を抱きしめてゴロゴロしてた……。

 と言うことはお姉ちゃんもお兄ちゃんの事が好き……?

 するとあたしの脳裏にお兄ちゃんとお姉ちゃんが仲良く歩いている姿が思い浮かぶと胸が痛いくらいに締め付けられる……。

「やだ……やだやだやだ……!お姉ちゃんにお兄ちゃんを取られたくない……!」

 なぜだか分からないけどそう思った。

 お兄ちゃんは誰にも渡したくない……、お兄ちゃんが笑ってくれるのはあたしだけでいい……、そうじゃなきゃイヤ……。

 あたしはベッドに置かれてある水色の枕を抱きしめるとそう思ったのだった……。
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