43 / 187
亜希の章 ツンデレな同居人
恋人の挑戦と甘さの代償
しおりを挟む
食べ始めてから20分……。
甘さの波に飲まれながら、僕たちは三段目に突入していた。
「うぷ……」
僕は口元を押さえると込み上げてきそうになったものをどうにか飲み込む……。
一段目と二段目を完食した僕と亜希だったけど、三段目のプリンとチーズケーキの層に苦戦を強いられていた……。
というのもただ単にお腹がいっぱいになってきているのだ。
「か……彼方大丈夫……?」
「ぼ……僕はもう限界寸前……。亜希は……?」
胃が重くて、スプーンを持つ手が震える。
「私も……かなりキツイわ……」
亜希も限界が近いのか、フォークを持つ手は止まり、顔はうんざりとした表情になっていた。
思った通り……いや、思った以上にこれはキツイ……。
"甘味の城"という異名は伊達じゃないのかもしれない……。
おまけにこの三段目を完食したとしても……四段目と五段目が待ち構えている……。
無理だ……、僕はそう判断した。
「あ……亜希……、僕はもう無理だ……。大人しくギブアップしよう……」
僕はスプーンを置き、深く息を吐いた。
胃の奥が重くて、甘さが喉にまとわりついてくる。
亜希もフォークを置き、静かに頷いた。
「……うん。私も、もう限界かも」
僕たちは顔を見合わせて、少しだけ笑った。
それは敗北じゃなくて、“一緒に頑張ったね”の笑みだった。
「すみません……ギブアップでお願いします」
店員さんにそう告げると、彼女はにこやかに頷いた。
「お疲れさまでした!それにしても大健闘でしたね、三段目の半分くらいまで食べ進めれた方も珍しいんですよ」
「えっ……そうなんですか?」
「ええ。多くの方が二段目の半ば、もしくは二段目を完食した時点でギブアップされます。ですからこれはかなりすごいです。SNSにも載せていいですか?」
「……あ、はい」
「では、お互い手をつないで……キスお願いしま~す!」
「ええぇぇぇぇーーー……っ!?」
「き……キス……っ!?」
突然の店員さんの言葉に、僕と亜希はほぼ同時に声を上げた。
「えっ……あの……それって……本当に必要なんですか……?」
「はいっ♪ カップル限定メニューの挑戦者には、記念ショットとして“手つなぎキス”をお願いしてるんです。もちろん、SNSには顔はぼかしますのでご安心を~!」
店員さんはスマホを構えたまま、にこにこしている。
「……ど、どうする……?」
僕は亜希の方を見る。
彼女は顔を真っ赤にして、視線をテーブルの上に落としていた。
「……手をつなぐだけじゃダメなのかしら?」
「うーん……本当はキスをお願いしているのですけど……、顔を近づけるだけでも十分甘いですから~!初々しいカップルさん、よくやってますよ~♪」
「……な、なんなのこの店!」
僕は思わず心の中で叫んだ。
でも、亜希の手がそっと僕の手に触れる。
「……彼方、ちょっとだけ……頑張って」
「……うん」
僕たちはそっと手をつなぎ、顔を少しだけ近づける。
距離は10センチ……いや、5センチ……。
「はい、いい感じです~!そのまま、チュッていっちゃいましゃう!」
(え……?)
え……と思った瞬間、亜希の唇が僕の唇にそっと触れた。
柔らかくて、甘くて、心臓が跳ねた。
店員さんの言葉に乗せられてしまった僕と亜希はキスをしてしまっていた。
そして、その直後シャッター音が鳴る。
「はい、いいキスシーン頂きましたっ!お疲れさまでした!SNSに載せる際は“甘味の城、恋人の試練”というタグをつけておきますね!あと、チャレンジ失敗ですので、1万3千円のお支払いですね~。あと、残ったスイーツはお持ち帰りできますがどうされますか?」
「……お持ち帰りで」
僕と亜希は顔を赤くしながら頷くと代金を払って店をあとにした。
◆◆◆
「亜希、思った以上に大変だったね……」
「……そうね、でも私は意外と楽しかったわ」
店を出ると、夕陽が街をオレンジ色に染めていた。
僕と亜希は手をつないで、静かに歩き出す。
空いている方の僕の手には食べ残したデカ盛りスイーツの袋が下げられている。
「それより、僕もうお腹いっぱいだよ……」
「私も……たぶん今日は夕飯入らないわ……」
「僕も……というか、作る気も起きないよ……」
いっそこの残ったスイーツを夕飯に出そうかと思わなくもない……。
でも、そうしたらみんな怒るかなぁ……。
しかし、夕飯を作る気力が湧かなかった僕はこのデカ盛りスイーツの残りを夕飯として出すと由奈ちゃんは「わーい!」と喜び、父さんは苦笑。
でも、真奈美さんは……激怒だった。
そして僕と亜希は、リビングで正座。
「ご飯前に変な買い食いはしないこと!」
真奈美さんの説教は、甘味の試練よりもずっと厳しかった……。
甘さの波に飲まれながら、僕たちは三段目に突入していた。
「うぷ……」
僕は口元を押さえると込み上げてきそうになったものをどうにか飲み込む……。
一段目と二段目を完食した僕と亜希だったけど、三段目のプリンとチーズケーキの層に苦戦を強いられていた……。
というのもただ単にお腹がいっぱいになってきているのだ。
「か……彼方大丈夫……?」
「ぼ……僕はもう限界寸前……。亜希は……?」
胃が重くて、スプーンを持つ手が震える。
「私も……かなりキツイわ……」
亜希も限界が近いのか、フォークを持つ手は止まり、顔はうんざりとした表情になっていた。
思った通り……いや、思った以上にこれはキツイ……。
"甘味の城"という異名は伊達じゃないのかもしれない……。
おまけにこの三段目を完食したとしても……四段目と五段目が待ち構えている……。
無理だ……、僕はそう判断した。
「あ……亜希……、僕はもう無理だ……。大人しくギブアップしよう……」
僕はスプーンを置き、深く息を吐いた。
胃の奥が重くて、甘さが喉にまとわりついてくる。
亜希もフォークを置き、静かに頷いた。
「……うん。私も、もう限界かも」
僕たちは顔を見合わせて、少しだけ笑った。
それは敗北じゃなくて、“一緒に頑張ったね”の笑みだった。
「すみません……ギブアップでお願いします」
店員さんにそう告げると、彼女はにこやかに頷いた。
「お疲れさまでした!それにしても大健闘でしたね、三段目の半分くらいまで食べ進めれた方も珍しいんですよ」
「えっ……そうなんですか?」
「ええ。多くの方が二段目の半ば、もしくは二段目を完食した時点でギブアップされます。ですからこれはかなりすごいです。SNSにも載せていいですか?」
「……あ、はい」
「では、お互い手をつないで……キスお願いしま~す!」
「ええぇぇぇぇーーー……っ!?」
「き……キス……っ!?」
突然の店員さんの言葉に、僕と亜希はほぼ同時に声を上げた。
「えっ……あの……それって……本当に必要なんですか……?」
「はいっ♪ カップル限定メニューの挑戦者には、記念ショットとして“手つなぎキス”をお願いしてるんです。もちろん、SNSには顔はぼかしますのでご安心を~!」
店員さんはスマホを構えたまま、にこにこしている。
「……ど、どうする……?」
僕は亜希の方を見る。
彼女は顔を真っ赤にして、視線をテーブルの上に落としていた。
「……手をつなぐだけじゃダメなのかしら?」
「うーん……本当はキスをお願いしているのですけど……、顔を近づけるだけでも十分甘いですから~!初々しいカップルさん、よくやってますよ~♪」
「……な、なんなのこの店!」
僕は思わず心の中で叫んだ。
でも、亜希の手がそっと僕の手に触れる。
「……彼方、ちょっとだけ……頑張って」
「……うん」
僕たちはそっと手をつなぎ、顔を少しだけ近づける。
距離は10センチ……いや、5センチ……。
「はい、いい感じです~!そのまま、チュッていっちゃいましゃう!」
(え……?)
え……と思った瞬間、亜希の唇が僕の唇にそっと触れた。
柔らかくて、甘くて、心臓が跳ねた。
店員さんの言葉に乗せられてしまった僕と亜希はキスをしてしまっていた。
そして、その直後シャッター音が鳴る。
「はい、いいキスシーン頂きましたっ!お疲れさまでした!SNSに載せる際は“甘味の城、恋人の試練”というタグをつけておきますね!あと、チャレンジ失敗ですので、1万3千円のお支払いですね~。あと、残ったスイーツはお持ち帰りできますがどうされますか?」
「……お持ち帰りで」
僕と亜希は顔を赤くしながら頷くと代金を払って店をあとにした。
◆◆◆
「亜希、思った以上に大変だったね……」
「……そうね、でも私は意外と楽しかったわ」
店を出ると、夕陽が街をオレンジ色に染めていた。
僕と亜希は手をつないで、静かに歩き出す。
空いている方の僕の手には食べ残したデカ盛りスイーツの袋が下げられている。
「それより、僕もうお腹いっぱいだよ……」
「私も……たぶん今日は夕飯入らないわ……」
「僕も……というか、作る気も起きないよ……」
いっそこの残ったスイーツを夕飯に出そうかと思わなくもない……。
でも、そうしたらみんな怒るかなぁ……。
しかし、夕飯を作る気力が湧かなかった僕はこのデカ盛りスイーツの残りを夕飯として出すと由奈ちゃんは「わーい!」と喜び、父さんは苦笑。
でも、真奈美さんは……激怒だった。
そして僕と亜希は、リビングで正座。
「ご飯前に変な買い食いはしないこと!」
真奈美さんの説教は、甘味の試練よりもずっと厳しかった……。
20
あなたにおすすめの小説
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
女子ばっかりの中で孤軍奮闘のユウトくん
菊宮える
恋愛
高校生ユウトが始めたバイト、そこは女子ばかりの一見ハーレム?な店だったが、その中身は男子の思い描くモノとはぜ~んぜん違っていた?? その違いは読んで頂ければ、だんだん判ってきちゃうかもですよ~(*^-^*)
向日葵と隣同士で咲き誇る。~ツンツンしているクラスメイトの美少女が、可愛い笑顔を僕に見せてくれることが段々と多くなっていく件~
桜庭かなめ
恋愛
高校2年生の加瀬桔梗のクラスには、宝来向日葵という女子生徒がいる。向日葵は男子生徒中心に人気が高く、学校一の美少女と言われることも。
しかし、桔梗はなぜか向日葵に1年生の秋頃から何度も舌打ちされたり、睨まれたりしていた。それでも、桔梗は自分のように花の名前である向日葵にちょっと興味を抱いていた。
ゴールデンウィーク目前のある日。桔梗はバイト中に男達にしつこく絡まれている向日葵を助ける。このことをきっかけに、桔梗は向日葵との関わりが増え、彼女との距離が少しずつ縮まっていく。そんな中で、向日葵は桔梗に可愛らしい笑顔を段々と見せていくように。
桔梗と向日葵。花の名を持つ男女2人が織りなす、温もりと甘味が少しずつ増してゆく学園ラブコメディ!
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしています。
マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる