罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー

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亜希の章 ツンデレな同居人

修学旅行、はじめの一歩

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 中間テストが終わって10月に入った頃……。  
 僕たちはいつもの通学用のリュックとは別に、スーツケースを引いて学園の正門前に集合していた。  
 そう、今日から待ちに待った修学旅行だ。

「いよいよね、修学旅行」

 ピンク色のスーツケースを持った、亜希が笑顔で僕の隣に並ぶ。  
 これはバスの席順で、僕は亜希の隣の席に座ることになっている。

「うん。楽しみすぎて昨日は中々寝れなかったよ……」

 僕は苦笑しながらそう言うと、亜希はクスッと笑った。

「でも、隣が彼方でよかった。……ちょっと安心したわ」

 亜希は顔を少し赤くして、僕を見上げる。

「え?」

「だって、修学旅行って、班行動も多いし……。彼方と別の班だったら寂しくて全然楽しめないわ」

 亜希は顔を少し赤くして上目遣いでそう言うと、僕は少しだけ照れながら頷いた。

「僕も、亜希と一緒でよかったよ」

 その瞬間、後ろから澪の声が飛んできた。

「……二人とも朝からイチャついてる。バスに乗る前から酔いそう」

「ちょ……!柊さん……っ!?」

 僕が小声で抗議すると、柊さんはクスッと微笑を浮かべながらデジカメを構えた。

「この前、商店街の喫茶店のSNSに二人の写真が写ってた……。顔はスタンプで隠れてたけど多分あれは御堂君と風原さんで間違いない……。わたしはクラス委員として先生から思い出の写真を撮るように言われてる……。修学旅行前の思い出の一枚として二人のイチャイチャを撮っておく……」

 柊さんは無表情のまま淡々とデジカメのシャッターを切ると僕と亜希を写す。

「やめてよ……!」
「やめなさいよ……!」

「はーい!みなさんバスに乗りますよ!お互い隣の人がいることを確認してからバスに乗り込んでくださいっ!」


 僕と亜希が柊さんへとツッコミをいれると担任の渡辺先生の号令がかかり、僕たちは順番にバスへ乗り込み、席へと向かう。  
 車内はすでに旅行モードで、笑い声とおしゃべりがあちこちから聞こえてくる。
 窓際の席に座った亜希が僕の方を見て微笑んだ。

「彼方、こっちよ」

 僕はその隣に座りながら、心の中でそっと呟くといよいよバスが空港へと向けて出発する。

僕は亜希の隣に腰を下ろし、窓の外を見ながら心の中でそっと呟いた。

(……修学旅行、始まったんだな!)

 僕たちのワクワクを乗せてバスは街を走っていく……。


 ◆◆◆


 バスが高速道路に入ると、車内は少しずつ落ち着いてきた。  
 先生の注意事項も終わり、みんながそれぞれの席でくつろぎ始める。

「ねえ彼方、そろそろ……オヤツ食べない?」

 亜希が僕の隣で、リュックからお菓子の入った袋を取り出す。  
 袋の中には、イチゴ味の小粒の占いチョコ、動物クッキー、チョコチップクッキー、、小分けチョコ、チョコマシュマロ、ミニマドレーヌ、ラムネ菓子、パウチ系のフルーツゼリー、グミにポテチ、等々の様々なお菓子がぎっしり詰まっていた。

「えっ、そんなに持ってきたの?」

「だって、修学旅行だもの。オヤツは800円までって言われたけど……これは“家にあったやつ”だからセーフよ」

「それ、先生に見つかったらアウトじゃ……」

 て言うか、亜希は真奈美さんの目を盗んでそんなに持ってきてたのか……。
 後で真奈美さんに怒られなければいいけど……。

「しーっ。今は“彼方とシェアする時間”なの」

 亜希はいたずらっぽく笑いながら、僕の手にイチゴ味の小粒の占いチョコを一粒乗せる。

「はい、あ~ん」

「またそれ……」

 でも、僕は素直にチョコを受け取ると口へと入れると、ストロベリーチョコの甘さが口の中に広がる。

「あっ、見て彼方!“未来”が◎だって!これはもう、彼方と結ばれる運命ってことよね!」  

 亜希は目を輝かせながら、包み紙を僕に見せてくる。

「そ……そうなんだ……」

 亜希はチョコの占いの結果に目を輝かせていた。

 ……お菓子の占い一つで大げさだなぁ。

「えっと……、彼方のは……あ、健康が△だって……、彼方旅行先で風邪ひくんじゃないの……?」

 亜希は心配そうな顔をして僕の顔を覗き込む。

「……とりあえず気をつけるよ」

 何で女の子って占いとかが好きなんだろう……?
 僕にとっては永遠の謎だった。 

「ねえ、次は彼方の見せてよ。彼方はどんなの買ったの?」

「僕?僕はこれだよ」

 僕もリュックからオヤツの入った袋を取り出す。

 中には普通のチョコウエハースのバラエティパックに筒状の容器に入ったポテチ、チョコビスケット、それにうめえ棒とチョロイチョコが数個づつ。

「えっと……、彼方もしかしてきちんと800円で納めたの……っ!?」

「そりゃあ、そう決まってるからね……」

「ふむ、決められた事をきちんと守る男……。これは将来の旦那としてのポイントが高いわね……」

 亜希はブツブツ言いながら真剣な眼差しを僕へと向けてくる……。

 なんだよ、そのポイントって……。

「それより、亜希も僕のオヤツ何か食べる?」

「え?いいのっ!?じゃあ、うめえ棒が食べたいわ!」

「いいよ」

 僕は自分のオヤツの袋からうめえ棒(コンポタ味)を取り出し、包装を破る

「それじゃあ、いただくわね」

 亜希はそう言うとうめえ棒の半分くらいまでかぶりついた。

「どう?亜希」

「やっぱりうめえ棒はおいしいわね……。私はもういいわ」

「え……?でもまだ半分残ってるよ……?」

「私はもういいの、彼方ありがとうね」

「ふむ……」

 食べかけのうめえ棒を置いておく訳にもいかないし……、まあ食べてしまうか……。

 僕は残りを口へと運ぶとなぜか亜希がニヤニヤとした笑みを浮かべている。

「んふふ、彼方……間接キスね♡」

「んぐ……っ!?」

 亜希のその一言に、僕はうめえ棒を吹き出しそうになった。  
 なんとか飲み込んだものの、顔が熱くなるのを止められなかった。

 ま……まさか亜希はこれが狙いだったの……っ!?

 と、その時すぐ後ろの席から視線を感じた僕は振り向くと柊さんが見つめていた。

「……ここだけもう沖縄?アツアツな空気が漂ってる」

「ほっといてよ……!」
「ほっといてよ……!」

 柊さんの冷静なツッコミに、僕と亜希の声がほぼ同時に叫んだ。  

 僕たちのその様子を見ながら柊さんはデジカメで僕たちの写真を撮る。

「……これも旅の思い出」

 柊さんの職権乱用にも似た行動に僕たちはヤレヤレと肩をすくめながら前を向く。


 柊さんが引っ込んだ頃、亜希は僕の肩にそっと頭を預けてきた。  
 車内は少しずつ静かになってきていて、みんなそれぞれの時間を過ごし始めている。

 お菓子の袋を片付けながら、僕はふと窓の外に目を向けた。  
 高速道路の景色が流れていく。  
 遠くの線路を走る新幹線が僕たちの乗るバスを追い越していく……。

「……ねえ彼方」

「ん?」

「修学旅行って、ずっとこういう時間が続くのかな」

「どういう時間?」

「……彼方と一緒にいて、笑って、ちょっと照れて……。そういうの」

 亜希の声は、いつもより少しだけ小さくて、でも確かに僕の胸に届いた。

「……そうだね、続くと思うよ」

 そう答えると、亜希は小さく笑って、僕の手にそっと触れた。

 僕は窓の外を見ながら、そっと目を閉じると、隣にいる亜希のぬくもりを感じる。
 バスはそんな僕の気持ちを乗せて静かに走っていく。
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