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亜希の章 ツンデレな同居人
飛行機と恋人と……そして写真係
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機内が少しずつ静まり返り、エンジンの低い唸りが響き始める。
窓の外では機体がゆっくりと滑走路を走り出していた。
「……わ、動いてる……!」
亜希が窓に顔を近づけ、流れる景色をじっと見つめるその瞳は、期待と少しの不安で輝いていた。
その横顔を見ているだけで、僕の胸の奥がじんわりと温かくなる。
「ちょっと揺れるね……。怖かったら、また手握ってていいよ」
「うん……ありがとう、彼方」
僕たちはそっと手を握り合うと、そのぬくもりが緊張を少しずつ溶かしていく。
その瞬間、機体が一気に加速し、体がシートに押しつけられる!
重力がぐっとのしかかってくる感覚に、思わず息を呑んだ。
「あ……亜希……!大丈夫……っ!?」
「う……うん……!でも……少し怖いわ……」
亜希は目を閉じると僕の手をギュッと握りしめるのと同時に、ふわりと機体が浮き上がった。
地面が遠ざかっていく。
街並みがミニチュアみたいに小さくなって、雲の海が広がっていく。
「亜希、見てご覧……」
僕の言葉に亜希は恐る恐る目を開けると、窓から見える光景に目を輝かせる。
「……すごい。空って、こんなに広いんだね」
「うん。なんか、全部が遠くなっていく感じ……」
亜希は窓の外を見つめながら、静かに呟いた。
僕はその横顔を見ながら、少しだけ目を細める。
「見て、あの雲……ふわふわしてて、綿菓子みたい」
「……ほんとだ。亜希が言うと、なんか甘く見える」
「ふふっ、じゃあ食べてみる?」
「……それは無理かな」
そんなやりとりをしながら、僕はふと亜希の横顔を見つめる。
窓から差し込む光に照らされた彼女の表情は、どこか無邪気で、でも少しだけ大人びていて……なんだか、時間が止まってしまえばいいのにと思うほど、見入ってしまう顔だった。
でも、昨夜は興奮してほとんど寝れなかったせいか、まぶたが重くなってくる……。
「彼方、眠いの?」
「……ちょっとだけ」
「じゃあ、もたれていいよ。私、動かないから」
「……ありがとう」
僕はそっと亜希の右肩にもたれかかる。
彼女の体温が、ほんのりと伝わってくる。
そのぬくもりに包まれながら、僕は静かに目を閉じた。
~サイドストーリー~
──亜希──
私は自分の右肩にもたれかかり、静かな寝息を立てている彼方の顔を覗き込みながら小さな幸せを感じていた……。
最初の頃、素直になれなかった私は、彼方とうまく距離を縮められなかった。
同居を始めたばかりの頃も、ツンツンばかりしていた……。
しかも同居の初日に彼方に言い放った言葉が「御堂君と仲良くする気ははない……」。
できることなら、あの頃の私にこう言ってやりたい、「目の前にいるのが、将来の運命の相手なんだからねっ!」って。
でも、彼の優しさに心をほぐされ素直になれた私は、小学校の低学年の頃からずっと片思いをしていた彼方と恋人関係になれた。
「彼方……」
「ん……んぅぅ……」
左腕で彼方の頭をそっとなでると彼方は声を漏らす……。
それが可愛くてもう一度頭を撫でようとしたその時だった……。
「……二人の愛の重さで飛行機落ちない?」
「……っ!?」
「やっほ~、亜希」
いつの間にかいた柊さんと瀬玲奈に私はビクッと体を跳ねさせた……!
私はハッとして彼方を見ると頭が落ちていないことにホッとする。
「なんで二人がここにいるのよ……!」
「なんでって……ほら」
何でここに二人ががと思ったら、シートベルトのマークが解除されているようで自由に機内を歩けるらしい。
「だからって別に私のところに来なくても……!」
「ここだけ愛の特異点が発生していた……。それに、わたしは写真係……」
柊さんはデジカメを構えると私と彼方を写真に撮る。
「ちょっと……、撮らないでよ……」
「……確かにあまり二人を撮りすぎると愛の重さで容量をかなりくいそう」
「……もう、ほんとにやめてよ」
私は顔を赤くしながら、彼方の頭をそっと押し戻す。
でも彼は寝ぼけたまま、ふにゃっとした声を漏らすと、今度は、彼方の頭が私の太ももにぽすんと落ちてくると、私は声にならない悲鳴を喉の奥で押し殺した。
「――っ!?」
思わず口に出してしまいそうになったその瞬間、瀬玲奈がニヤリと笑う。
「亜希の太ももゲットだぜ~っ!」
瀬玲奈が勝手に彼方のセリフを代弁する。
「ちょ……!瀬玲奈なに言ってるのよ……!」
「ウチは御堂君の言葉を代弁しただけだし~!」
「……シャッターチャンス!」
私が瀬玲奈へとツッコミをいれると、瀬玲奈はニヤニヤとした笑みを浮かべ、柊さんは再びデジカメのシャッターを切る。
「やめてってばぁ……!」
「……記録は残る。否定しても、表情は証拠になる」
柊さんは淡々と、でも確実に私の羞恥をカメラに収めていく。
私は顔を覆いながら小さくうずくまるも、彼方の寝息が太ももにかかるたびに、くすぐったさを感じながらも胸の奥がふわっと温かくなる。
「……でもさ、亜希」
瀬玲奈が少しだけ真面目な声で言った。
「今の亜希すごく幸せそうだよね。たまに二人を見てるとイラッてする時もあるけど……。ね、ウチに御堂君ちょうだい!」
「だ……ダメよ……!彼方は私のよ……!」
瀬玲奈の言葉に私は彼方の頭を抱きかかえると瀬玲奈をキッと睨む。
「冗談だって、友達の彼氏を奪うほどウチ落ちぶれてないし。でも……いいと思う。素直になった亜希、すごくいい」
「……彼方が、変えてくれたの。私の全部を」
瀬玲奈の言葉に、私はそっと彼方の髪を撫でながら答えると、その言葉に、二人は何も言わず、ただ微笑んでくれた。
「……なら、素直になった風原さんにお願いがある。御堂君とのキスシーンの写真をわたしにも撮らせて」
「は……っ!?」
柊さんの思いも寄らない言葉に私は思わず声を上げる。
「それいいね、みおっち!亜希キース!キース……!」
瀬玲奈は私を茶化すと柊さんがデジカメを構える。
「だからしないってば……!」
「風原さん!静かにしなさいっ!」
渡辺先生の声が響いた瞬間、私の肩はビクッと跳ねる。
それと同時に瀬玲奈と柊さんは申し訳なさそうに笑いながら無言で謝ってきた。
(……もう!)
私は心の中で不満を漏らす。
静かになった機内で 時間がゆっくりと流れていた。
私たちの修学旅行は、まだ始まったばかりだった。
窓の外では機体がゆっくりと滑走路を走り出していた。
「……わ、動いてる……!」
亜希が窓に顔を近づけ、流れる景色をじっと見つめるその瞳は、期待と少しの不安で輝いていた。
その横顔を見ているだけで、僕の胸の奥がじんわりと温かくなる。
「ちょっと揺れるね……。怖かったら、また手握ってていいよ」
「うん……ありがとう、彼方」
僕たちはそっと手を握り合うと、そのぬくもりが緊張を少しずつ溶かしていく。
その瞬間、機体が一気に加速し、体がシートに押しつけられる!
重力がぐっとのしかかってくる感覚に、思わず息を呑んだ。
「あ……亜希……!大丈夫……っ!?」
「う……うん……!でも……少し怖いわ……」
亜希は目を閉じると僕の手をギュッと握りしめるのと同時に、ふわりと機体が浮き上がった。
地面が遠ざかっていく。
街並みがミニチュアみたいに小さくなって、雲の海が広がっていく。
「亜希、見てご覧……」
僕の言葉に亜希は恐る恐る目を開けると、窓から見える光景に目を輝かせる。
「……すごい。空って、こんなに広いんだね」
「うん。なんか、全部が遠くなっていく感じ……」
亜希は窓の外を見つめながら、静かに呟いた。
僕はその横顔を見ながら、少しだけ目を細める。
「見て、あの雲……ふわふわしてて、綿菓子みたい」
「……ほんとだ。亜希が言うと、なんか甘く見える」
「ふふっ、じゃあ食べてみる?」
「……それは無理かな」
そんなやりとりをしながら、僕はふと亜希の横顔を見つめる。
窓から差し込む光に照らされた彼女の表情は、どこか無邪気で、でも少しだけ大人びていて……なんだか、時間が止まってしまえばいいのにと思うほど、見入ってしまう顔だった。
でも、昨夜は興奮してほとんど寝れなかったせいか、まぶたが重くなってくる……。
「彼方、眠いの?」
「……ちょっとだけ」
「じゃあ、もたれていいよ。私、動かないから」
「……ありがとう」
僕はそっと亜希の右肩にもたれかかる。
彼女の体温が、ほんのりと伝わってくる。
そのぬくもりに包まれながら、僕は静かに目を閉じた。
~サイドストーリー~
──亜希──
私は自分の右肩にもたれかかり、静かな寝息を立てている彼方の顔を覗き込みながら小さな幸せを感じていた……。
最初の頃、素直になれなかった私は、彼方とうまく距離を縮められなかった。
同居を始めたばかりの頃も、ツンツンばかりしていた……。
しかも同居の初日に彼方に言い放った言葉が「御堂君と仲良くする気ははない……」。
できることなら、あの頃の私にこう言ってやりたい、「目の前にいるのが、将来の運命の相手なんだからねっ!」って。
でも、彼の優しさに心をほぐされ素直になれた私は、小学校の低学年の頃からずっと片思いをしていた彼方と恋人関係になれた。
「彼方……」
「ん……んぅぅ……」
左腕で彼方の頭をそっとなでると彼方は声を漏らす……。
それが可愛くてもう一度頭を撫でようとしたその時だった……。
「……二人の愛の重さで飛行機落ちない?」
「……っ!?」
「やっほ~、亜希」
いつの間にかいた柊さんと瀬玲奈に私はビクッと体を跳ねさせた……!
私はハッとして彼方を見ると頭が落ちていないことにホッとする。
「なんで二人がここにいるのよ……!」
「なんでって……ほら」
何でここに二人ががと思ったら、シートベルトのマークが解除されているようで自由に機内を歩けるらしい。
「だからって別に私のところに来なくても……!」
「ここだけ愛の特異点が発生していた……。それに、わたしは写真係……」
柊さんはデジカメを構えると私と彼方を写真に撮る。
「ちょっと……、撮らないでよ……」
「……確かにあまり二人を撮りすぎると愛の重さで容量をかなりくいそう」
「……もう、ほんとにやめてよ」
私は顔を赤くしながら、彼方の頭をそっと押し戻す。
でも彼は寝ぼけたまま、ふにゃっとした声を漏らすと、今度は、彼方の頭が私の太ももにぽすんと落ちてくると、私は声にならない悲鳴を喉の奥で押し殺した。
「――っ!?」
思わず口に出してしまいそうになったその瞬間、瀬玲奈がニヤリと笑う。
「亜希の太ももゲットだぜ~っ!」
瀬玲奈が勝手に彼方のセリフを代弁する。
「ちょ……!瀬玲奈なに言ってるのよ……!」
「ウチは御堂君の言葉を代弁しただけだし~!」
「……シャッターチャンス!」
私が瀬玲奈へとツッコミをいれると、瀬玲奈はニヤニヤとした笑みを浮かべ、柊さんは再びデジカメのシャッターを切る。
「やめてってばぁ……!」
「……記録は残る。否定しても、表情は証拠になる」
柊さんは淡々と、でも確実に私の羞恥をカメラに収めていく。
私は顔を覆いながら小さくうずくまるも、彼方の寝息が太ももにかかるたびに、くすぐったさを感じながらも胸の奥がふわっと温かくなる。
「……でもさ、亜希」
瀬玲奈が少しだけ真面目な声で言った。
「今の亜希すごく幸せそうだよね。たまに二人を見てるとイラッてする時もあるけど……。ね、ウチに御堂君ちょうだい!」
「だ……ダメよ……!彼方は私のよ……!」
瀬玲奈の言葉に私は彼方の頭を抱きかかえると瀬玲奈をキッと睨む。
「冗談だって、友達の彼氏を奪うほどウチ落ちぶれてないし。でも……いいと思う。素直になった亜希、すごくいい」
「……彼方が、変えてくれたの。私の全部を」
瀬玲奈の言葉に、私はそっと彼方の髪を撫でながら答えると、その言葉に、二人は何も言わず、ただ微笑んでくれた。
「……なら、素直になった風原さんにお願いがある。御堂君とのキスシーンの写真をわたしにも撮らせて」
「は……っ!?」
柊さんの思いも寄らない言葉に私は思わず声を上げる。
「それいいね、みおっち!亜希キース!キース……!」
瀬玲奈は私を茶化すと柊さんがデジカメを構える。
「だからしないってば……!」
「風原さん!静かにしなさいっ!」
渡辺先生の声が響いた瞬間、私の肩はビクッと跳ねる。
それと同時に瀬玲奈と柊さんは申し訳なさそうに笑いながら無言で謝ってきた。
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