罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー

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由奈の章 甘えたがりな義妹

3年C組にそびえる甘味の塔

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 体育館を出た僕と由奈はスタンプラリーの紙を眺めていた。

「彼方さん、次はどこに行く?」

「そうだね……」

 残るスタンプラリーは3箇所……。
 保健室と家庭科室、そして由奈のクラスである3年C組……。

 何が待っているかは分からない。でも、一筋縄ではいかない予感だけは確かだった。

 でも待てよ……、由奈のクラスなら由奈に聞けば何かわかるのでは……?
 そう思った僕は由奈に聞いてみることにする。

「由奈、3年C組ではこのスタンプラリーの課題は何があるの……?」

「えっとね……確か三段重ねのケーキを食べたらクリアって言ってたかな……」

 ふむ……ケーキか……。

「ちなみにどんなケーキ?」

「えっと……、確か生徒会の人と、学園祭の実行委員が決めてたから実はあたしはよく知らなくて……。あたしのシフト中にそれ頼んだ人もいなかったし……ごめんね、彼方さん。あんまり役に立てなくて……」

「気にしなくてもいいよ」

 僕は申し訳なさそうな顔をしている由奈の頭を優しく撫でる。

(つまり、行ってみないと分からないってことか……)

「それで……彼方さんウチのクラスの模擬店行ってみるの?」

「そうだね……、取り敢えず行ってみよう」

 まあ、たかがケーキ。
 高藤もそんなデタラメなことは考えないだろう……。

 その時はまだ軽い気持ちでしか思ってはいなかった……。


 ◆◆◆


 「おかえりなさいませ、ご主人様、お嬢様♪」

 僕は由奈と共に彼女のクラスである3年C組へとやって来ると、由奈のクラスメイトであるメイド姿の女の子に出迎えられる。

「あの、スタンプラリーのケーキを頼みたいのですが……」

「え……?」

 僕はその子にスタンプラリーの紙を見せると、彼女は固まった……。

 あ……あれ……?
 僕何かまずいこと言ったかな……?

「あの……本当にそれ頼むんですか……?」

「え……?う……うん……」

 真顔で聞き返してくる彼女に対して僕は戸惑いながらも頷く。

「かしこまりました、ではしばらくお待ち下さい」

 店員の女の子はそれだけを言うと僕と由奈から離れていく……。

 もしかすると、僕はとんでもないものを頼んでしまったのだろうか……?

 一抹の不安が僕の脳裏をよぎる……。


 そして待つことしばらく……。

「お待たせ致しました!スタンプラリー専用のメニュー、そびえ立つ甘味の城……フルーツパラダイス(ミニ)です!」

 店員の女の子が2人がかりで運んできた三段ケーキを見た瞬間、僕と由奈は言葉を失った。

 あれミニってサイズじゃないだろ……っ!?

「ゆ……由奈……?スタンプラリーのメニューって……あれなの……っ!?」

「し……知らない……あたし知らないよ……!」

 目の前に置かれたケーキは高さ30センチのまさにそびえ立つ甘味の塔……。

 内訳としては1番上、ケーキ&ホイップ。
 ふわふわカステラに生クリーム、そしてホイップが豪快に積み上げられた“甘味の山頂”。

 真ん中、ミニケーキ&チョコブラウニー軍団!
 ガトーショコラ、ショートケーキ、チーズケーキ等が所狭しと隙間なく並べられたケーキゾーン!

 そして一番下……ホイップ&チョコソース&フルーツ爆盛り!
 特濃ホイップクリーム&チョコソースが 、これでもか!というほどかけられる!
 さらに山盛りフルーツで鮮やかに!

 僕と由奈は予想をはるかに凌ぐスタンプラリー専用メニューに圧倒される……。

 果たして……僕達はこれを食べ切れるのだろうか……?

「えっと、あとこれを頼んだ方宛に考案者からのメッセージがあります」

「メッセージ……?」

 僕は店員へと聞き返す。

 考案者というからには高藤からなんだろうけど……なんであいつはこんなことには本当にマメなんだ……?

「では読み上げます……。『ふはははは……!このフルーツパラダイス(ミニ)に挑戦するとはその心意気やよしっ!このそびえ立つ高さ30センチの甘味の塔を完食した者にここのスタンプを授ける!制限時間は1時間だ!果たして完食できるかな……?一応言っておくが、完食出来ようが出来まいが代金は模擬店に払うように、以上!』……となっております」

 店員の女の子による、まるで高藤が憑依したかのような熱演に、僕は思わず引いてしまった。

「彼方さん、この子は将来声優志望なの」

「……そう」

 由奈の説明を受けどうでもいい豆知識がひとつ増えた。

「と……兎に角食べよう……!」

「うん……!」

 僕と由奈はフルーツパラダイス(ミニ)へと挑むのだった……!
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