罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー

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由奈の章 甘えたがりな義妹

家庭科室での二人羽織

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 由奈のクラスの模擬店でしばらく休んだ僕は、スタンプをもらった後、教室を出て次のスタンプラリーを目指すが、まだお腹の中に大量のケーキが残っていてかなり苦しい……。

「彼方さん、大丈夫……?」

「だ……大丈夫だよ……!」

 由奈が心配そうな顔で僕を見るが、作り笑いとから元気でなんとか誤魔化す。

(それより後は家庭科室と保健室か……)

 何をやらされるんだろう……また大食いチャレンジみたいなのじゃなければいいけど……。

 次も大食いチャレンジだと今度こそ死ぬ……というか、お腹がもたない!

「彼方さん、次は家庭科室と保健室だね」

 僕が見ていたスタンプラリーの紙を由奈が覗き込むと、由奈の髪からふわりと甘い香りが漂ってきて、僕の心臓が跳ねた。

「そ……そうだね……どっちに行こうか……」

 僕は顔を紅くしながら由奈へと問う。

「えっとね……家庭科室は確か料理部が模擬店やってたと思うよ」

「……また何か食べるやつ?」

 由奈の言葉に僕の不安が現実味を帯びてくる……。

「あは……あはは……、ど……どうだろうね……」

「次も本当に食べるやつだったら僕はもう無理だよ……」

「その時はあたしがガンバる……!」

 由奈の笑顔のガッツポーズで心を癒やされた僕は家庭科室へと向かう。


 ◆◆◆


 家庭科室へ向かうと、何か美味しそうな匂いが漂ってくる。

「彼方さん、家庭科室からおいしいそうな匂いがしてくるよ。でも……大量のケーキを食べた後だと少しキツイね……」

「……うん」

 料理部の部員たちが何か作ってるのだろうけど……今の僕にはこの匂いがキツイ……。
 由奈のそうなのか、苦笑しながら笑みを浮かべていた。

 この先に何が待ち受けているのか……少なくとも食べる系じゃなければいいなと思いながら家庭科室のドアを開ける。

 「ようこそ料理部へ!」

 家庭科室へと入ると、そこには多くの部員たちたちのすがたがあった。
 女子だけなのかと思いきや、意外と男子の姿もあり頭には料理男子という言葉が浮かぶ。

 最近では料理をする男子というのが多いみたいだ。

(尤も僕もそうなんだけど……)

「料理部ではカレーを提供しています!ビーフにチキン、ポークにシーフード、様々なカレーがありますよ!」

 僕がそんな事を考えていると料理部の一人がカレーを勧めてくる。
 まさか本当にここのスタンプラリーは食べる系なのか……っ!?

「あの……あたし達はスタンプラリーで来たんだけど……」

 僕が冷や汗を流していると、それに気がついたのか、由奈がスタンプラリーの紙を部員へと見せる。

「あ、スタンプラリーの方ですか。ではコチラへ」

 僕と由奈は部員の男子に促され家庭科室の奥へと案内される。
 そして椅子へと座ると、目の前にポータブルDVDプレイヤーが置かれた。

 なんだコレ……?

 部員の男子がポータブルDVDプレイヤーの再生ボタンを押すと、なんと画面に高藤の姿が映し出された!

『ようこそ家庭科室へ……!』

 高藤はそう言い画面の向こうでソファへと座りなにやら葡萄ジュースのようなものを飲んでいた。

(なんか少しイラってくるな……)

『さて……ここでのチャレンジは二人羽織で飲み物を飲んでもらうっ!果たしてうまく飲むことができるかな……?俺からの説明は以上だ!』

 高藤はそう言うとDVDの再生が終わった。
 何ていうか……本当にノリノリだな……。

 それにしても飲み物か……。
 食べる訳じゃないので少しはホッとするけど、一体何を飲ませようと言うんだ……?

「それでは、二人羽織ですので、どちらが前でどちらが後ろになりますか?」

「……僕が前に行くよ」

 何が出るのかわからないけど、由奈に変なものを飲ませるわけには行かない……。
 そう思った僕は自ら前になることを名乗り出る。

「では、後ろの方はできるだけ前の方に引っ付いてくださいね」

「こ……こう……?」

 料理部の男子に言われ、由奈が僕の背中へと密着する。
 すると柔らかな二つの膨らみが僕の背中へと押し付けられる……!

(こ……これは……!)

 背中に当たる二つの柔らかな感触に僕の鼓動が跳ね上がる……!
 これって……由奈のおっぱ……じゃなくて胸だよね……?
 高藤め……中々粋なことをする……!

 この時の僕は高藤に感謝すらしていた。

「えっと……大丈夫……?彼方さん……」

 背後から由奈の声が聞こえる。
 彼女の息が首筋へと当たるたび少しくすぐったさをおぼえる。

「だ……大丈夫だよ……」

 慌てて返事をするが、声が裏返ってしまった。
 なんだかすごく恥ずかしい……。

「それでは始めますね!後ろの方はこのジャージを着てください」

「あ、は~い」

 由奈は言われた通りジャージに手を通すと、頭に布をかぶせられる。

 僕の前に由奈の手が伸びているためなんだが不思議な気分だ……。

「それでは飲んでいただくものはコチラですっ!この中から一つ選んでください!」

 料理部の男子が札のようなものを取り出す。
 そこにはお茶、炭酸水、苦瓜ジュース、リンゴジュースといったものが書かれていた。

 つまり、この中から選べと言うことだろう。

 でも……誰が選ぶの……?

「さあ、後ろの方は手を伸ばして札を1枚選んでください。その札に書かれているものを前の方が飲みます」

 な……なんだってーーーっ!?

 前が見えない由奈にこの中から選ばせるだなんて……!
 お茶やリンゴジュースならまだしも苦瓜ジュース何てものを引いてしまったら僕はどうなるんだ……っ!?

「え~……?どれ……?」

 由奈は必死に手を動かして札を掴もうとする……。
 しかも、よく見れば由奈の手は苦瓜ジュースの近くにあった!

「ゆ……」

 由奈……それは……!
 僕は思わず叫びそうになるのを料理部の男子に止められる。

「はい、前の方はお静かにお願いします」

 く……!
 高藤め……!絶対に面白がってるな……っ!?
 先程から一転、僕は高藤にたいして苛立ちを覚えていた。

 しかし、僕がそう思っている間にも由奈の手が苦瓜ジュースへと伸びる。

(由奈……!そこじゃない……!左……!もっと左だ……!)

 正面には苦瓜ジュースだけど、左にはリンゴジュースがある。
 僕はまるで由奈にテレパシーを送るかのように心の中で叫ぶ……!

「あ……!彼方さんあたし何かつかんだよ……!じゃあ……これ!」

 由奈は1枚の札を手に取る……。
 よりにもよって、それは——苦瓜ジュースだった……!

 僕の願いは彼女には届かなかったようだ……。
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