罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー

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澪の章 寡黙なクラス委員長

開幕!手作りアクセサリーショップ!

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 ──彼方──


 翌日——ついに学園祭当日がやってきた。

 僕は分かれ道のあたりで立ち止まる。
 澪が来るかどうかはわからない。
 それでも僕は、分かれ道に立ち続けていた。

 僕としては出来れば澪と一緒に学園に向かいたい……そう思いながら付属中学の方へと目を向けていると、澪の姿が見えてきた。

「澪……!」

 僕は笑顔を浮かべながら澪へと向かって走る!

「彼方くん……、おはよう……」

「おはよう澪!一緒に学園に行こう」

「……うん」

 僕は笑顔で澪の手を取るも彼女の顔はどこか曇っていた。
 笑顔の奥に、不安が滲んでいるように見える。

「どうしたの澪……?」

「彼方くん……今日の学園祭……わたしのお母さんが来るかも……」

「そうなの?」

 まあ……、土曜日だし家族が来ても不思議じゃないと思うけど……。
 でも、なんで澪が浮かない顔をしてるんだろう……?

「お母さんに彼方くんのことを話したら……今日見に来るって……」

「見に来るって……僕を……?」

「うん……、それでもし……お母さんにダメって言われたら……わたし……彼方くんと別れることになるかも……」

 澪の肩が小さく震え、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。
 僕はそんな彼女の肩を抱くとそっと抱きしめた。

「澪……」

「わたし……彼方くんと別れたくない……!わたし……本当に彼方くんが好きなのに……」

「澪……僕、ちゃんと向き合うよ。澪のお母さんに、僕の気持ちをしっかり伝える」

「彼方くん……」

 澪が泣き止むまで、僕は何度もその頭を優しく撫で続けた。
 その時間が、ふたりの絆を少しだけ強くしてくれた気がした。


 ◆◆◆


 僕は澪と一緒に教室へと入ると中の様子に驚愕した……!

「な……なんだこれーーー……っ!?」

 なんと教室の中は、まるでファンタジーの世界から飛び出してきたような魔法雑貨店のようになっていた!

 クラスメイトたちも同じように驚いていたのか、教室は一気にざわめきに包まれた。

「教室が変わってる……ビックリ……」

 そんな中、澪は目を丸くして、言葉もなくその場に立ち尽くしていた。

「はーっははははは……っ!」

 どこからともなく高笑いが聞こえてくる……!
 この声……、そしてこんな事をする奴は一人しかいない……!

「高藤……っ!」

 僕が高藤の名を呼んだ瞬間、まるで待っていたかのように彼が姿を現した。

「諸君!突然の事で驚いているだろうがこの教室はこの俺の手により完全に改装させてもらったっ!」

「高藤!お前何勝手なことやってんだよっ!」

 悠人が高藤へと掴みかかろうとすると高藤は懐から1枚の紙を取り出した。

「落ち着け真壁……、これは正規の手続きを踏んで行ったものだ!柊、これを確認してもらおう」

 高藤は真壁をスルーすると手に持っていた紙を澪へと手渡す。

「これは……本物の書類……」

 僕は澪の横からその書類を覗き見るとそこには、生徒会長と学園長の直筆サインがしっかりと記されていた。

「ふふふ……、つまりこれは正規の改装!俺の手にかかればこのような魔改造など朝飯前だ!そして……諸君らの衣装も勿論準備してあるっ!」

 高藤はどこからともなく取り出した袋の中から次々と衣装を取り出し、クラスメイトたちに手際よく配っていく。

 ていうかその袋どこから出したんだっ!?

 相変わらず謎の多いやつだ……。

 クラスメイトたちは、高藤から渡された衣装に次々と着替えていった。
 衣装の種類はバラバラで、商人風のベスト姿もいれば、なぜか魔術師や吟遊詩人のような格好まで混ざっている。

 僕の衣装は、商人風のベストにターバン、そして極めつけは立派な付け髭——なんでこんなチョイスなんだよ……。

「なんなんだよこれ……」

 僕はぼやきながら制服の上からベストを着るとターバンをかぶる。
 付け髭は……なくてもいいよね……?

「彼方くん……見て……」

 衣装を着終えた僕は澪に呼ばれ振り向くとそこにいたのは、深い紺色のローブをまとった澪がまるで本物の魔術師みたいに、静かに立っていた。

 なんで魔術師……?
 いや……、そんなことより……。

「澪、暑くない……?」

「教室のエアコンが効いてるから大丈夫……」

 澪は無表情のまま、なぜかピースサインを差し出してきた。
 そのギャップに、思わず吹き出しそうになる。

「……そう」

 僕は苦笑しながらそう答えた。
 こうして、異世界風アクセサリーショップは、静かに——でも確かに幕を開けた。
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