罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー

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澪の章 寡黙なクラス委員長

開幕した学園祭と澪の危機!

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 学園祭が始まると、学生やその保護者など多くの人たちが僕たちの模擬店へとやって来る。
 売ってるものがアクセサリーなだけあってそのほとんどが女性たちだった。

 高藤が改装した教室のおかげなのか、それとも僕たちが着ている衣装のおかげなのか……それとも両方なのか、予想以上に模擬店は盛況で次々と人が訪れていた。

「彼方くん……わたしたちが作ったアクセサリーが売れてる……嬉しい……」

「うん……!頑張って作って良かったよ」

 澪が少しだけ頬を緩める。
 その表情を見ているだけで、僕の胸もじんわりと温かくなる。

「すみません、そのあなたがつけてるブレスレットってありますか?」

 一人の女性客が僕の手首につけているブレスレットを指さす。

 えっと……?これと同じものは……。
 僕は手首につけているものと同じ物を探すけどなぜかない……。

「ごめんなさい……それ非売品……。わたしが彼氏のために作った世界に一つだけのものだから……」

 在庫を探していると、澪が先ほどの女性客へと答える。
 それを聞いて僕は少し驚いた。

(え……?これ一つだけなの……?)

「あ、そうなんですね。でも彼氏のために作ったたった一つのものだなんて素敵~!彼氏さんは彼女さんを大事にしてくださいね♪」

 女性客から少し茶化されるように言われると、僕も澪も少し顔が赤くなる……。

「は……はい……勿論……!」

「それじゃあ別のください」

 女性は僕の返事に満足すると、笑顔で別のアクセサリーを買っていった。


 学園祭が始まって少し時間が経った頃……僕は突然尿意を催してきた。

「澪ごめん……、僕トイレに行ってくる」

「うん……分かった……」

 僕は急いで教室を出るとトイレへと向かう。
 でも——このあと澪の身に、思いもよらない事態が迫っているなんて、僕はまだ知らなかった。

 トイレからを済ませた僕は教室へと向かっているとなぜか教室の前が騒然としていた。

(何かあったのかな……?)

「やめて……!」

 そう思っていると澪の声が聞こえ、僕は急いで教室へと向かう!

 僕が教室へと戻ると3人程の男子が澪の手を引っ張っていた!
 しかもよく見ると3人とも3年の先輩で、腕には「生徒会」と書かれた腕章までしている。

 クラスメイトたちはどうすればいいのか分からず戸惑いながらもその様子を眺めていた。

「澪を離してくださいっ!」

 僕は先輩たちの前へと立つとそう言い放った!

「あん?誰だお前は?」

「僕は澪の彼氏ですっ!澪を離してくださいっ!」

 僕は少し脚を震わせながらも毅然として先輩たちの前へと立つ。
 怖くないと言えば嘘になる……、でも澪は僕が守るんだ……!

「うるせえんだよ……!」

 先輩の一人が歩いて来ると僕の頬を殴る!

「ぐ……!」

「彼方くん……!」

 頬に痛みが走り澪の心配する聞こえる。
 怯む訳には行かない……!

「先輩……!澪を離してくださいっ!彼女嫌がってます!」

「黙れってんだよ!」

「うあ……!」

 残りの2人が容赦なく僕を蹴りつけ、僕は床に倒れ込んだ。

「彼方くん……お願い、もうやめて……!彼方くんを傷つけないで……!」

 澪が悲痛な声を上げる……。
 すると先輩たちはニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら澪を見ていた。

「なら君が俺たちと一緒に来てくれたらやめてやるよ」

「そういう訳で、彼女さんしばらく俺たちがお借りしま~す!」

 澪が連れて行かれる……!
 諦める訳には行かない……!

「待て……!澪を離せ……!」

 僕は痛む体に耐えながら立ち上がると先輩たちを睨む。

「なんだその目は……っ!」

 先輩の一人が僕へと殴りかかる……!

「は……!」

 僕はその手を掴むとそのまま背負投で投げ飛ばす。
 先輩の体が宙を舞い、床に激しく叩きつけられた。

「がは……!」

 先輩は受け身の取り方を知らないのか、もろに背中を床へと叩きつけられる。

「この……!2年のくせに……っ!」

 もう一人の先輩が僕へと向かってくる……!

「おいお前たちそこで何をやっているっ!」

 僕は柔道の構えをとると、騒ぎを聞きつけたのか生徒指導の男性教師が駆けつける。

 助かった……そう思っていたのだけど……。

「先生!この2年が突然俺たちを投げ飛ばしてきたんです!」

「な……!」

 なんだって……っ!?

 先輩たちは、何食わぬ顔で僕に責任を押しつけてきた。  
その厚顔さに、僕の胸の奥が煮えたぎる。

「おい御堂!どういう事だ!」

「違います……!彼方くんはわたしを助けようとしたんです……!先輩たちがわたしを連れて行こうとするのを助けようとしていたんです……!」

 澪が僕を擁護するべく声を上げる。

「先生は俺たち生徒会のメンバーを疑うんですかっ!?」

 先輩の言葉に先生は腕組みをしながら難しい顔をして俯かせている……。

(この先輩たち……!生徒会という傘を盾によくそんな事を……!)

 僕の腹の中は煮えくり返っていた。
 と、その時……。

「少しよろしいでしょうか……?」

 その声とともに、場の空気が一変する。
 現れたのは——高藤だった。
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