罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー

文字の大きさ
133 / 187
澪の章 寡黙なクラス委員長

目覚めたフードファイター

しおりを挟む
 湯上がりの余韻をまといながら、僕たちはジャージ姿でレストランホールへ向かった。
 広間には班ごとに席がよういされていて、僕たち六人は一つのテーブルに腰を下ろす。

 澪は無表情のまま、まだ少し濡れたロングヘアを手早くポニーテールにまとめる。 
 その隣で亜希と早乙女さんの視線は明らかに悠人へと向けられていた。

「……友達から聞いたんだけど、真壁君、男湯覗いたんだって?」

「あはは……そんな趣味があったなんてウチ知らなかったよ……」

「それは誤解だぁぁぁーーーっ!」

 例の札流石にもう首から外されているようだけど、亜希の冷ややかな目と早乙女さんからの苦笑を受け、悠人は正座していたとき以上に縮こまりながら涙目となっていた。

「そんなことよりお腹すいた……わたし料理をとってくる……」

 澪は悠人の言葉をスルーするように席を立つ。
 ここの食事はビュッフェ形式のようで、好きな料理を好きなだけ食べれるようだ。

「……なあ、最近柊さんって俺に対して冷たくないか?」

「さ……さあ、そんなことはないと思うけど……」

 ……たぶん。
 心の中でそう付け加えながら悠人に苦笑すると僕もまた席を立って料理を取りに行く。


 料理を持ってきた僕は真向かいに座る澪を見て驚いた。
 澪のお皿には蟹やイカのバター焼き、ホタテのバター醤油焼き、ザンギ、ジンギスカン、そしてご飯は海鮮丼と豚丼のふたつが並べられていた。

(フードファイター澪復活っ!?)

 僕は心の中で衝撃を受ける。
 亜希や悠人たちも同じなのか、澪のお皿を見て唖然としていた。

 澪がこんなに食べるのは学園祭の時が最後だったはず……、僕と付き合いだしてからはフードファイターは鳴りを潜めていたのに……。

「あの……澪その量は一体……」

 僕は息を呑みながら澪のお皿を指さす。

「彼方くん……、今日のわたしはリミッターを解除する……!」

「え……?ちょ……!澪大丈夫……っ!?」

「大丈夫……!」

 僕が彼女に声を掛けると、澪は親指を立てて黙々と料理に向き合い始めた。
 その集中ぶりは、まるで試合中のアスリートのようだった。

「……ミオっちがこんなに食べるなんてウチ知らなかったし」

 その様子を早乙女さんは目を丸かくくして驚いていた。

 しかし、僕は澪が美味しそうに食べる姿を見て胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じる。

(澪が美味しそうに食べてるだけで、こんなに嬉しくなるなんて——幸せって、案外こういうことなのかもしれない)

 澪が食べるたびに、僕の視線は自然と彼女に吸い寄せられていた。


 澪が食べ始めること十数分……お皿が空になると再び彼女は立ち上がる。

「おかわり持ってくる……」

「え……?ちょ……!柊さん大丈夫っ!?」

「ふむ……今の柊はまさにフードファイターだな……」

 おかわりを取りに行く澪に亜希と高藤はただただ驚いていた。

 そして澪が戻って来ると、お皿には生ハムメロン、生チョコタルト、チーズタルト、生クリームプリン、ハスカップゼリーなどのスイーツがお皿いっぱいに盛られていた。

(……流石に多すぎじゃないのかなぁ)

「あの……澪そんなに食べて大丈夫……?」

「まだ行ける……、彼方くんはわたしを信じて……」

 澪は再び親指を上げるとスイーツを食べ始める。

(いや……何を信じろと……?)

 僕は苦笑しながらも、美味しそうに澪が食べる様子を眺めていると、胸の奥が温かくなってくるのを感じる。
 僕はそんなちょっとした幸せを感じながら自分の料理に箸を伸ばした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

体育館倉庫での秘密の恋

狭山雪菜
恋愛
真城香苗は、23歳の新入の国語教諭。 赴任した高校で、生活指導もやっている体育教師の坂下夏樹先生と、恋仲になって… こちらの作品は「小説家になろう」にも掲載されてます。

女子ばっかりの中で孤軍奮闘のユウトくん

菊宮える
恋愛
高校生ユウトが始めたバイト、そこは女子ばかりの一見ハーレム?な店だったが、その中身は男子の思い描くモノとはぜ~んぜん違っていた?? その違いは読んで頂ければ、だんだん判ってきちゃうかもですよ~(*^-^*)

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

処理中です...