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柚葉の章 ロリっ子で不器用な生徒会長
キス未遂と名前のない感情
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──柚葉──
御堂が私の隣で意識を失い、椅子から崩れ落ちた。
その瞬間は、まるでスローモーションのように見えて——私はただ、椅子に座ったまま呆然としていた。
「御堂様!御堂様……!」
「しっかりしろ御堂……!」
志乃さんと誠司さん、それに律が慌てて御堂に駆け寄る。
私はただそれを見つめることしか出来なかった。
「ミレイ様!なぜ、あのようなものを勝手にお出しになったのですか!?ミレイ様が調理されたものはすべて私に見せるようお伝え致したはずですっ!」
「ご……ごめんなさい……ミレイは……ただ……自分の作ったものを御堂に食べてほしくて……」
気づけば、目元がじんわりと熱くなっていた、涙が静かにこぼれ落ちる。
まさかこんなことになるなんて……思っても見なかった。
(ミレイは……ミレイが作った料理を御堂に美味しいと食べてもらいたかっただけなのに……)
「兎に角その話はあとです!御堂様……!」
「う……あ……」
志乃さん必死に御堂に呼びかけていると彼の口からうめき声のようなものが聞こえてくる。
「志乃、御堂様は意識を失っておられるだけなようだ、今はどこか安静なところに休ませてこよう!」
「ええ!あなたお願い!」
誠司さんは御堂を抱きかかえると客間へと向かっていく。
私はその様子をただ呆然と眺めていた。
「ミレイ様……!」
私は志乃さんの声に体をビクっと震わせながら振り向くとそこには笑みを浮かべながらも、背後に黒いオーラをまとった志乃さんが立っていた。
「えっと……その……ご……ごめんなさい……」
私は涙目になりながら後ろへと後ずさろうとするも、足が震えて動かない。
「謝って済む問題ではございません……が、これはお仕置きが必要なようですね……」
「ひ……!」
逃げようとした瞬間、志乃さんにあっさり捕まり——次の瞬間、お尻にパチンと痛みが走った。
「志乃さん……!痛い……!痛い……っ!」
私のお尻は何度も叩かれ痛みが走る。
「いいえ!昨日も律様に同じようなことをなされ、今日は御堂様にまで……!今日という今日はもうお許し出来ません!……ミレイ様が誰かのために何かをしたい気持ちは、よく分かっております。ですが、それが相手を傷つける結果になっては本末転倒でございますっ!」
「痛い!志乃さんもう止めて……!痛いっ!」
私は涙目となって許しを請うも志乃さんは決して私のお尻を叩く手を止めてくれない。
「ではミレイ様誓っていただきます!金輪際お料理はなされないと……!」
「わかった……!誓う……!誓うからもう止めて……!うぇぇ~~ん……!」
私は涙をぽろぽろこぼしながら、もう料理はしないと誓わされた。
その瞬間、律は「愚かな……」と呟き、メガネをクイッと上げた。
──彼方──
「う……あ……」
どれくらい時間が経ったのだろう。
目を覚ますと、僕は見知らぬ部屋のベッドに横たわっていた。
(僕は確か……)
僕は体を起こすと、意識を失う寸前までの記憶を呼び起こす。
料理を食べていて——先輩が出したムースを口にしたあたりから、記憶が途切れている。
(料理で意識が飛ぶってどんだけなんだよ……)
「御堂……」
心の中でため息をついていると、僕を呼ぶ声が聞こえてくる。
僕は声のする方に顔を向けると、そこには目に涙をいっぱい溜めた如月先輩の姿があった。
「先輩……?」
「御堂……ごめんなさい……。ミレイは本当は料理ができないんだ……。でも……ミレイの作った料理を御堂に食べてほしかっただけなんだ……。でも……ごめんなさい……本当にごめんなさい……」
先輩はポロポロと涙をこぼしながら、何度も「ごめんなさい」と繰り返した。
肩を小さく震わせながら、彼女の目からは大粒の涙が次々とこぼれ落ちていた。
先輩の涙を見た僕は、そっと手を伸ばして彼女の手を握る。
その手は少し震えていて、冷たかった。
「……先輩。あのムースの味は……正直、衝撃的でした」
ミレイはびくっと肩を震わせる。
「でも……それでも、僕のために作ってくれたって、気持ちはちゃんと伝わってきましたから」
「……御堂」
「だから、そんなに謝らないでください。僕は、先輩の気持ちをちゃんと受け取ったつもりです」
先輩は目を見開いたまま、言葉を失っていた。
その瞳には、涙の粒がまだ残っていたけど——少しだけ、光が戻ってきたように見えた。
「……ミレイは、御堂に喜んでもらいたかっただけなんだ」
「はい。それはちゃんと届いてます」
僕は微笑むと、そっと先輩の手を握り直す。
彼女は小さく頷くと、ぽつりと呟いた。
「……でも、志乃さんには料理禁止令を出されてしまった」
「それは……まあ、命の危険があるから仕方ないかもですね」
僕が冗談めかして言うと、ミレイはくすっと笑った。
「御堂……」
先輩は目を閉じると、そっと顔を近づけてきた。
(ま、まさか……これって……キスの流れ……!?)
僕は息を呑むと、先輩の肩に手を伸ばそうとしたその瞬間——
「御堂、入るぞ……調子は……」
ドアが開き、イオリの顔を覗かせると、僕とイオリの目が合う。
あまりの突然さに、僕は言葉を失って固まってしまった。
「……邪魔したな」
(イオリーーーー……っ!)
僕は心の中で絶叫するも、イオリはそれだけを言い残し、静かにドアを閉めて去っていった。
こんな空気の中でキスなんかできるはずもなく、結局この日は、“未遂”のまま終わった。
胸の奥にほんのりとした熱を残したまま、僕は帰路についた。
~サイドストーリー~
──柚葉──
彼方が帰ったあと、私は自分の部屋に戻った。
ベッドに放り出してあった枕を乱暴に投げつけながら、律に悪態をつく。
「まったく律のやつめ……!なんであのタイミングで入ってくるんだ……!」
もうすこしでその……御堂とき……キスができたというのに……!
それにしても……冷静に考えたら、なんで私は“キスできなかった”ことにこんなにイライラしてるんだろう……?
投げた枕を拾い上げた私はベッドに座る。
「そもそも、ミレイは御堂のこと、どう思っているんだ……?」
ただの後輩?それとも生徒会の仮メンバー?
「どれもなんか違う気がする……」
腕組みをして考えるも自分でもよくわからない。
(それに、何でミレイは御堂を家に呼ぼうと思ったんだ?)
昨日のお礼?
それは確かにある。
でも、それなら昨日の帰り際にお茶でもご馳走すればよかった筈だ。
「御堂彼方……」
私は御堂の名前をつぶやく……。
すると、私の胸がドキドキと高鳴る。
なぜ高鳴るのか……自分のことなのに、自分の事が全く分からない。
でも、御堂のことを考えると胸が少し苦しく感じる。
「なんなんだこの気持ちは……!」
私は再び枕を力任せに投げ飛ばす。
枕は壁に当たってふわりと床に落ちた。
その音が、やけに大きく響いた気がした。
こんなの教科書には書いてないっ!
「御堂!お前はミレイに何をしたんだ……!」
私は頭から布団を被り、御堂の文句を言うもこの気持ちは晴れるどころか、さらに胸がドキドキと高鳴る。
御堂の顔が、どうしても頭から離れない。
それが、今の私にとって——いちばん厄介な問題だった。
御堂が私の隣で意識を失い、椅子から崩れ落ちた。
その瞬間は、まるでスローモーションのように見えて——私はただ、椅子に座ったまま呆然としていた。
「御堂様!御堂様……!」
「しっかりしろ御堂……!」
志乃さんと誠司さん、それに律が慌てて御堂に駆け寄る。
私はただそれを見つめることしか出来なかった。
「ミレイ様!なぜ、あのようなものを勝手にお出しになったのですか!?ミレイ様が調理されたものはすべて私に見せるようお伝え致したはずですっ!」
「ご……ごめんなさい……ミレイは……ただ……自分の作ったものを御堂に食べてほしくて……」
気づけば、目元がじんわりと熱くなっていた、涙が静かにこぼれ落ちる。
まさかこんなことになるなんて……思っても見なかった。
(ミレイは……ミレイが作った料理を御堂に美味しいと食べてもらいたかっただけなのに……)
「兎に角その話はあとです!御堂様……!」
「う……あ……」
志乃さん必死に御堂に呼びかけていると彼の口からうめき声のようなものが聞こえてくる。
「志乃、御堂様は意識を失っておられるだけなようだ、今はどこか安静なところに休ませてこよう!」
「ええ!あなたお願い!」
誠司さんは御堂を抱きかかえると客間へと向かっていく。
私はその様子をただ呆然と眺めていた。
「ミレイ様……!」
私は志乃さんの声に体をビクっと震わせながら振り向くとそこには笑みを浮かべながらも、背後に黒いオーラをまとった志乃さんが立っていた。
「えっと……その……ご……ごめんなさい……」
私は涙目になりながら後ろへと後ずさろうとするも、足が震えて動かない。
「謝って済む問題ではございません……が、これはお仕置きが必要なようですね……」
「ひ……!」
逃げようとした瞬間、志乃さんにあっさり捕まり——次の瞬間、お尻にパチンと痛みが走った。
「志乃さん……!痛い……!痛い……っ!」
私のお尻は何度も叩かれ痛みが走る。
「いいえ!昨日も律様に同じようなことをなされ、今日は御堂様にまで……!今日という今日はもうお許し出来ません!……ミレイ様が誰かのために何かをしたい気持ちは、よく分かっております。ですが、それが相手を傷つける結果になっては本末転倒でございますっ!」
「痛い!志乃さんもう止めて……!痛いっ!」
私は涙目となって許しを請うも志乃さんは決して私のお尻を叩く手を止めてくれない。
「ではミレイ様誓っていただきます!金輪際お料理はなされないと……!」
「わかった……!誓う……!誓うからもう止めて……!うぇぇ~~ん……!」
私は涙をぽろぽろこぼしながら、もう料理はしないと誓わされた。
その瞬間、律は「愚かな……」と呟き、メガネをクイッと上げた。
──彼方──
「う……あ……」
どれくらい時間が経ったのだろう。
目を覚ますと、僕は見知らぬ部屋のベッドに横たわっていた。
(僕は確か……)
僕は体を起こすと、意識を失う寸前までの記憶を呼び起こす。
料理を食べていて——先輩が出したムースを口にしたあたりから、記憶が途切れている。
(料理で意識が飛ぶってどんだけなんだよ……)
「御堂……」
心の中でため息をついていると、僕を呼ぶ声が聞こえてくる。
僕は声のする方に顔を向けると、そこには目に涙をいっぱい溜めた如月先輩の姿があった。
「先輩……?」
「御堂……ごめんなさい……。ミレイは本当は料理ができないんだ……。でも……ミレイの作った料理を御堂に食べてほしかっただけなんだ……。でも……ごめんなさい……本当にごめんなさい……」
先輩はポロポロと涙をこぼしながら、何度も「ごめんなさい」と繰り返した。
肩を小さく震わせながら、彼女の目からは大粒の涙が次々とこぼれ落ちていた。
先輩の涙を見た僕は、そっと手を伸ばして彼女の手を握る。
その手は少し震えていて、冷たかった。
「……先輩。あのムースの味は……正直、衝撃的でした」
ミレイはびくっと肩を震わせる。
「でも……それでも、僕のために作ってくれたって、気持ちはちゃんと伝わってきましたから」
「……御堂」
「だから、そんなに謝らないでください。僕は、先輩の気持ちをちゃんと受け取ったつもりです」
先輩は目を見開いたまま、言葉を失っていた。
その瞳には、涙の粒がまだ残っていたけど——少しだけ、光が戻ってきたように見えた。
「……ミレイは、御堂に喜んでもらいたかっただけなんだ」
「はい。それはちゃんと届いてます」
僕は微笑むと、そっと先輩の手を握り直す。
彼女は小さく頷くと、ぽつりと呟いた。
「……でも、志乃さんには料理禁止令を出されてしまった」
「それは……まあ、命の危険があるから仕方ないかもですね」
僕が冗談めかして言うと、ミレイはくすっと笑った。
「御堂……」
先輩は目を閉じると、そっと顔を近づけてきた。
(ま、まさか……これって……キスの流れ……!?)
僕は息を呑むと、先輩の肩に手を伸ばそうとしたその瞬間——
「御堂、入るぞ……調子は……」
ドアが開き、イオリの顔を覗かせると、僕とイオリの目が合う。
あまりの突然さに、僕は言葉を失って固まってしまった。
「……邪魔したな」
(イオリーーーー……っ!)
僕は心の中で絶叫するも、イオリはそれだけを言い残し、静かにドアを閉めて去っていった。
こんな空気の中でキスなんかできるはずもなく、結局この日は、“未遂”のまま終わった。
胸の奥にほんのりとした熱を残したまま、僕は帰路についた。
~サイドストーリー~
──柚葉──
彼方が帰ったあと、私は自分の部屋に戻った。
ベッドに放り出してあった枕を乱暴に投げつけながら、律に悪態をつく。
「まったく律のやつめ……!なんであのタイミングで入ってくるんだ……!」
もうすこしでその……御堂とき……キスができたというのに……!
それにしても……冷静に考えたら、なんで私は“キスできなかった”ことにこんなにイライラしてるんだろう……?
投げた枕を拾い上げた私はベッドに座る。
「そもそも、ミレイは御堂のこと、どう思っているんだ……?」
ただの後輩?それとも生徒会の仮メンバー?
「どれもなんか違う気がする……」
腕組みをして考えるも自分でもよくわからない。
(それに、何でミレイは御堂を家に呼ぼうと思ったんだ?)
昨日のお礼?
それは確かにある。
でも、それなら昨日の帰り際にお茶でもご馳走すればよかった筈だ。
「御堂彼方……」
私は御堂の名前をつぶやく……。
すると、私の胸がドキドキと高鳴る。
なぜ高鳴るのか……自分のことなのに、自分の事が全く分からない。
でも、御堂のことを考えると胸が少し苦しく感じる。
「なんなんだこの気持ちは……!」
私は再び枕を力任せに投げ飛ばす。
枕は壁に当たってふわりと床に落ちた。
その音が、やけに大きく響いた気がした。
こんなの教科書には書いてないっ!
「御堂!お前はミレイに何をしたんだ……!」
私は頭から布団を被り、御堂の文句を言うもこの気持ちは晴れるどころか、さらに胸がドキドキと高鳴る。
御堂の顔が、どうしても頭から離れない。
それが、今の私にとって——いちばん厄介な問題だった。
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