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柚葉の章 ロリっ子で不器用な生徒会長
安心からのまさかの急降下
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イオリと雑談をしていると、どこからともなく美味しそうな匂いが漂ってきた。どうやら料理が出来上がったらしい。
「どうやら料理が出来上がったみたいだな」
イオリはニヤリと笑い、グッドラックのジェスチャーで親指を立ててみせた。
(くそ……!イオリめ……絶対楽しんでるな……!)
僕は心の中イオリに悪態をついていると、如月先輩と志乃さんがそれぞれ料理を乗せたテーブルワゴンを押してやって来る。
それはいいのだけど、驚いたのは、その量だった。まだ昼だというのに、まるでディナーコースのような豪華さだ。
(お金持ちの人ってみんなこうなのかな……?)
僕はその価値観の違いというものに驚かされる。
「あれ……?志乃さん、今日の昼食はいつもよりおおいですね……」
しかし、その量の多さになぜかイオリも目を丸くしていた。
もしかしたらいつもはここまで多くはないのかもしれない。
「ええ、ミレイ様が御堂様のために料理の腕を振るいたいと仰りましたもので……」
「そ……そう……」
イオリはメガネをクイッの上げると、露骨に顔を背ける。
そして小声で僕は「あとは任せた」と小声で呟いた。
(こ……こいつ逃げる気だな……っ!?)
そんな僕の気持ちを察することもなく、先輩はどこか誇らしげに料理を並べていく。
「さあ御堂!食べてくれっ!」
如月先輩が僕へと笑顔を向ける。
それがまるで僕には死刑宣告に見えなくもない……。
そんな僕の気持ちを察したのか、志乃さんが僕とイオリの傍へとやって来る。
「ミレイ様のお料理は、すべて私が手直ししておりますので、ご安心くださいませ」
志乃さんが小声で話しかけてくると僕はホッとすると、イオリもまた安堵したのか、大きく息を吐いていた。
「御堂、危機は去った」
イオリは小声で僕へとそう告げるとソファから立ち上がり、テーブル席に向かうと、僕もまたイオリに続いてテーブル席へと向かった。
テーブルの上には白身の魚のカルパッチョ、ビーフシチュー、彩り豊かなサラダ、塩ゆでパスタを添えたハンバーグ、ふわとろのオムライス——まるでフルコースのような豪華な昼食が並んでいた。
あとはご飯の代わりにパンが置かれている。
(……こんなに食べきれるかな?)
別の意味で胃薬が必要だ、そう思った僕は心の中で苦笑する。
「御堂!ここに座ってくれ!」
僕は先輩に勧められた席へと座る。
テーブルは8人ほどが座れそうな大きなもので、僕の隣にはなぜか先輩が座る。
そして、イオリは僕の真向かいと、テーブルの大きさの割には座る人は少なかった。
「御堂様、こちらをお使いください」
志乃さんが僕の前にナイフとフォーク、それにスプーンを置くと後ろへと下がる。
どうやら志乃さん達は一緒には食べないらしい。
「それでは御堂!食べてみてくれ!」
僕は先輩に促される形でゴクリと息を呑むとまずはビーフシチューを口に入れる。
ほんの少し焦げた風味が残っている気もするけど、それでも驚くほど美味しい。
たぶん先輩が焦がしたビーフシチューを、志乃さんがリメイクしたのかもしれない。
さらに他の料理も口に運ぶと、志乃さんの腕がいいのかどれもとても美味しかった。
「ふふ、御堂そんなにがっつかなくても料理は逃げないぞ」
どの料理も美味しそうに食べる僕を見て先輩は目を細めて眺めていた。
(如月先輩の料理の腕はどのくらいか知らないけど、志乃さんの料理はどれも美味しい……!)
僕は志乃さんの料理に舌鼓を打っていた。
これを毎日食べれるなんて先輩もイオも羨ましいよ!
僕は完全に油断をしていた、先輩がまだ隠し球を持っているとは知らずに……。
「み……御堂、これも食べてみてくれないか……?」
先輩はワゴンの下からムースを取り出す。
見た目は少し黒っぽいけど、チョコレートムースかな?
これも志乃さんが作ったものなんだろう、僕は何も疑うことなく先輩の出したムースをスプーンで掬うと口に運ぶ。
……そのとき、志乃さんが何か言いかけたような気がしたけれど、僕は気づかなかった。
僕はムースを口に入れた瞬間、甘さ、苦さ、酸味、そして……なぜか塩気。味覚の四方八方から一斉に殴りかかってくるような衝撃だった。
味覚が混乱し、脳が処理を拒否する。
スプーンが手から滑り落ちる。椅子にもたれかかった僕の視界は、ゆっくりと暗転していった——。
「どうやら料理が出来上がったみたいだな」
イオリはニヤリと笑い、グッドラックのジェスチャーで親指を立ててみせた。
(くそ……!イオリめ……絶対楽しんでるな……!)
僕は心の中イオリに悪態をついていると、如月先輩と志乃さんがそれぞれ料理を乗せたテーブルワゴンを押してやって来る。
それはいいのだけど、驚いたのは、その量だった。まだ昼だというのに、まるでディナーコースのような豪華さだ。
(お金持ちの人ってみんなこうなのかな……?)
僕はその価値観の違いというものに驚かされる。
「あれ……?志乃さん、今日の昼食はいつもよりおおいですね……」
しかし、その量の多さになぜかイオリも目を丸くしていた。
もしかしたらいつもはここまで多くはないのかもしれない。
「ええ、ミレイ様が御堂様のために料理の腕を振るいたいと仰りましたもので……」
「そ……そう……」
イオリはメガネをクイッの上げると、露骨に顔を背ける。
そして小声で僕は「あとは任せた」と小声で呟いた。
(こ……こいつ逃げる気だな……っ!?)
そんな僕の気持ちを察することもなく、先輩はどこか誇らしげに料理を並べていく。
「さあ御堂!食べてくれっ!」
如月先輩が僕へと笑顔を向ける。
それがまるで僕には死刑宣告に見えなくもない……。
そんな僕の気持ちを察したのか、志乃さんが僕とイオリの傍へとやって来る。
「ミレイ様のお料理は、すべて私が手直ししておりますので、ご安心くださいませ」
志乃さんが小声で話しかけてくると僕はホッとすると、イオリもまた安堵したのか、大きく息を吐いていた。
「御堂、危機は去った」
イオリは小声で僕へとそう告げるとソファから立ち上がり、テーブル席に向かうと、僕もまたイオリに続いてテーブル席へと向かった。
テーブルの上には白身の魚のカルパッチョ、ビーフシチュー、彩り豊かなサラダ、塩ゆでパスタを添えたハンバーグ、ふわとろのオムライス——まるでフルコースのような豪華な昼食が並んでいた。
あとはご飯の代わりにパンが置かれている。
(……こんなに食べきれるかな?)
別の意味で胃薬が必要だ、そう思った僕は心の中で苦笑する。
「御堂!ここに座ってくれ!」
僕は先輩に勧められた席へと座る。
テーブルは8人ほどが座れそうな大きなもので、僕の隣にはなぜか先輩が座る。
そして、イオリは僕の真向かいと、テーブルの大きさの割には座る人は少なかった。
「御堂様、こちらをお使いください」
志乃さんが僕の前にナイフとフォーク、それにスプーンを置くと後ろへと下がる。
どうやら志乃さん達は一緒には食べないらしい。
「それでは御堂!食べてみてくれ!」
僕は先輩に促される形でゴクリと息を呑むとまずはビーフシチューを口に入れる。
ほんの少し焦げた風味が残っている気もするけど、それでも驚くほど美味しい。
たぶん先輩が焦がしたビーフシチューを、志乃さんがリメイクしたのかもしれない。
さらに他の料理も口に運ぶと、志乃さんの腕がいいのかどれもとても美味しかった。
「ふふ、御堂そんなにがっつかなくても料理は逃げないぞ」
どの料理も美味しそうに食べる僕を見て先輩は目を細めて眺めていた。
(如月先輩の料理の腕はどのくらいか知らないけど、志乃さんの料理はどれも美味しい……!)
僕は志乃さんの料理に舌鼓を打っていた。
これを毎日食べれるなんて先輩もイオも羨ましいよ!
僕は完全に油断をしていた、先輩がまだ隠し球を持っているとは知らずに……。
「み……御堂、これも食べてみてくれないか……?」
先輩はワゴンの下からムースを取り出す。
見た目は少し黒っぽいけど、チョコレートムースかな?
これも志乃さんが作ったものなんだろう、僕は何も疑うことなく先輩の出したムースをスプーンで掬うと口に運ぶ。
……そのとき、志乃さんが何か言いかけたような気がしたけれど、僕は気づかなかった。
僕はムースを口に入れた瞬間、甘さ、苦さ、酸味、そして……なぜか塩気。味覚の四方八方から一斉に殴りかかってくるような衝撃だった。
味覚が混乱し、脳が処理を拒否する。
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