罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー

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柚葉の章 ロリっ子で不器用な生徒会長

ミレイの過去と胃薬と……

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 如月先輩が淹れてくれたお茶を飲みながらふと横を見ると、彼女は少し寂しげな表情で、自分のカップをじっと見つめていた。

「先輩……?どうしたんですか?」

「ん……?ああ……、御堂は家に両親がいるか?」

「ええ、まあ……、父さんはいますが、母さんは僕がまだ小さい頃に離婚して少し前まで父さんと2人暮らしでした」

「え……?そうなのか……?それは……ごめん……」

 如月先輩は視線を落とすと、しまったという表情で落ち込んでしまった。

「いえ、でも今は父さんが再婚して家が賑やかになったんですよ」

 真奈美さんに亜希、それに由奈ちゃん。
 最初は戸惑ったけど、慣れたら家の中がすごく明るくなった。

「そうなのか。ミレイは幼い頃……保育園の頃から両親と……パパとママとずっと離れていたんだ。二人とも忙しい人で今も世界のどこかを飛び回っている」

「先輩……」

 如月先輩は淋しげ笑みを浮かべお茶の入ったカップを握り染めた。

「パパとママがいなくなった頃、ミレイは毎日のように泣いてた。でも、誠司さんと志乃さんがずっとそばにいてくれて……。二人には子供ができなかったから、ミレイや律のことを本当の子供みたいに接してくれた。だから、ミレイにとってはもう一組のパパとママなんだ」

「そうだったんですね……」

 先輩は淋しげな表情から一転、優しげな笑みを浮かべるとお茶を一口飲む。

 昨日は誠司さんと志乃さんは大切な人だと言ってたけど、先輩にそんな過去があったなんて知らなかったな……。

「ミレイ様、そろそろ……」

「ん……?もうそんな時間か……」

 如月先輩の話にしんみりとしていると、志乃さんが静かに先輩の隣に立ち、小声で何かを告げる。
 先輩は少し驚いたように時計に目を向けた。

「如月先輩、何かこのあと用事があるんですか?」

「い……いや、そうい訳ではないのだが……」

「ふふ、ミレイ様はこれからお料理をなさるんですよ。もっとも、ミレイ様が厨房に立つのは滅多とございませんが」 

「こ……こら……!志乃さん余計なことはことは言わなくていいから……!そ……それより、手伝ってほしい……」

「はい、かしこまりました」

 先輩は顔を赤くしながらも頬を膨らませると、リビングを出ていく。
 それを見て志乃さんはクスッと笑みを浮かべると、先輩の後を追うように歩き出す。

(厨房って言ってたけど……、よく見ればリビングにキッチンってないんだな……)

 僕は改めてリビングを見渡すとキッチンがないことに今ごろ気がつく。

 と言うことは、別のところに厨房があるってこと……?
 やっぱりここはお金持ちの家なんだなと実感する。

(それはいいんだけど……)

 如月先輩が厨房の方に行ってしまったから暇になってしまった……。
 僕も厨房の方に行って先輩の様子を眺めてもいいのかもしれないけど、追い返されそうだな……。

(仕方ない、スマホでマンガでも見るか……)

 僕はズボンのポケットからスマホを取り出そうとすると、イオリがリビングにやって来た。

「イオリ……?」

「御堂か、姉さんは?」

「なんか志乃さんと厨房に行くって言ってたよ」

 イオリが僕の近くのソファに腰を下ろしたので、僕はスマホをしまった。

「そう言えば昨日姉さんが御堂に料理を振る舞うと言って張り切ってたな。だが、御堂覚悟しておけ……、僕は昨日、姉さんの料理を味見させられたんだが……本気で意識が飛びかけた。」

「……は?」

 イオリの言葉に僕は思わず聞き返す。

 意識が飛びそうになった……?
 え……?は……っ!?

「冗談だと思っているかもしれないが、本当だ。その姉さんの料理の腕を見兼ねて志乃さんが手伝うと言ってたから大丈夫だとは思うが……万が一の時はお前に任せる」

「ぅえっ!?」

 イオリの言葉に僕は思わず声を上げると、彼は少し笑みを浮かべる。

 ていうか、そんなに危険なら昨日の段階で止めてよっ!
 僕は、今さらながら本気で身の危険を感じ始めていた。

「まあ、姉さんが張り切ってるんだ、頑張ってくれ」

「そんな他人事みたいに……」

「しかし、あんなに嬉しそうな姉さんは久しぶりだ、いつもは生徒会長としての責任や、姉としての立場を意識して、僕の前でも気を張っているように見えるんだ」

「そうなんだ……」

 僕は頷くと、イオリの言葉を胸に刻んだ。

 確かに少なくとも生徒会長という立場は責任重大だろうから分からなくもない。

 まあ、姉云々と言うのは僕自身実の弟や妹がいないから何とも言えないけど……。

「それはそうと昨日も姉さんが世話になったみたいだな、嬉しそうなペアカップを抱きかかえて帰ってきていた」

「うん、丁度商店街で先輩を見かけたからね」

「しかし、ペアカップとは考えたな。昨日姉さんが誠司さんと志乃さんにプレゼントすると、二人はとても喜んでいた」

「お役に立てたのならよかったよ」

 僕はイオリの顔を見ると、なんだか嬉しそうな顔をしていた。

 たぶん、イオリは姉である先輩の事を大切に思ってるんだろうな……。

「そういう訳で御堂、姉さんの手料理は君に任せた。安心しろ、胃薬は用意しておく」

「え……っ!?ちょ……!」

 ……胃薬って、そんなに!?  

「ははははは……!」

 僕の様子を見てイオリは楽しそうに笑い声をあげていた。
 うう……、本当に他人事だと思って……!

 僕は、先輩が向かった厨房の方を見つめながら、一抹どころじゃない不安を抱えていた。
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