十人十色の強制ダンジョン攻略生活

ほんのり雪達磨

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空晴れて、雲は見えず

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 快晴だった。
 あたたかな日光は、少年にとってはある種嬉しくもあり、そうでもないところもある複雑な感情を呼び起こすものだ。
 力は、無くなるわけではないのだが、やはり絡まった糸のように不安定。

 自在に形を紡ぐことはできず、日に日にストレスも増していく。
 変わらず続けているアルバイトでは行方不明者がでた。
 小さな友人と話すことが、現在における最大の楽しみであり、癒しであり、ストレスが消えてくれる瞬間である。

『へぇ、それで? 最初にそれを置きたいってわけかい?』
「そうとも。僕の考えはともかくとしても、絶対にあったほうがいいさ。だって、他の奴だって無意味になくなっていく光景がみたいってわけじゃないんだ。そうだろ? それくらい、僕にだってわかる」

 前は、楽しい事の中でも上位だった。
 しかし、気楽になれる会話というものを知ってしまった今となっては、多少なりともストレスが溜まるものとなった会話。

(小ささを見せられるよう)
『まぁ、そうだろうね。俺はそこまで注視してはいないけど』
「君はね。僕らの中でも変わり者じゃないか? 同類集めが好きなだけなんて」

 ほとんどお互い強い興味はない事を今少年は知っている。
 同類と呼ぶ同じような強大な力を持つ者たちは、それぞれにこだわりがあるということが長年の会話からわかっている。

 そして、それが1番の興味であり、大切なことであると。
 それに役に立つから、同類というもの同士で集まっているというものが多いことを、今はよく理解していた。
 仲良しサークルではない。

 もちろん、同類という、他の人間にはない親近感のようなものはどうしたってお互い感じてはいる。シンパシーじみたもがお互いあることだけは確かだ。確認しなくとも、それだけは。
 それでも――もし、お互いの1番目の事がかなわなければ、特に悩むことがなく『そうか、じゃあどっちか死ぬか』と簡単に相手を消すことを決めてしまえるような、冷たい関係であることも、また確かなことだった。

「ね? これって僕の我儘とだけはいえないでしょ」
『うん。最初は必要かなぁと思ったけど、確かに。俺から見ても有用かなと思うよ。あぁ、でも』
「わかってる。準備したがり共はどうしたって介入したがるよねぇ」

 バランスだ。
 バランスが必要だ。
 お互いがお互いの好きなことを邪魔しないようなバランスが。

 特に、少年にとって、今はそれが大事だ。
 力が自在に操れない今は。
 それを抜きにしたって、同類たちの中では現在下から数えたほうが早い力しかないのだからいつだって大事ではあったが、特に。

『いや、うーん。でもそこの辺は言いようかもしれないよ? 準備の前の下準備的な意味でいえば、意外と単純に納得してくれるかも? まぁ、それでもタッチしたがるのがいそうではあるけど……数は減らせるだろ?』
「あー。そうかな。確かにそうかも。頭が回らないから、助言は助かるよ――でも、珍しいね」
『何がだい』
「貴方は、同類を集めることが1番大事な人だけど、それは集めることだけじゃないか。『集めた後の人』である僕に、ここまで助言してくれるのは珍しくない?」
『あぁ――はは、それは勘違いだよ。確かに俺は同類を集めたいし、集めるのが楽しい。執着してると認めるさ。だけど、俺だってその後を気にしないわけじゃないよ。それが、お前にとって小さく見えるかもしれないが、それはお前のせいでもあったんだぜ』

 最近、前よりずっと饒舌に話すようになった集めるのが大好きという同胞――スカウトの言葉を疑問に思う。
 確かに、定期的に少年に話しかけに来ることが同類の中でも多い人物ではあった。でも、それはそれを含めた役割だと思っていたのだ。だって、最近になるまでは定期報告を事務的にして、ちょっと雑談が入れば珍しいというような会話ばかりだったのだから。

 それを少年は楽しみにしていたが、今となってはそれがどれだけ乾燥した会話だったのかもわかる。
 スカウトという存在は、同類ということ以上の興味を自分には向けていなかったはずなのだ。マイナスではないが、プラスではなかったはずなのだ。

『いや、勘違いをしているかもしれないけれど、俺は同類たちの仲じゃ結構真面目っていうか――まぁ、どいつもこいつもそうではあるんだけどさぁ……俺だってそうだから人の事は言えないけど、お前らって単純に話しにくいんだよね』
「は? え? そうなの?」
『そなの。こだわりが強すぎるってのもあって、まぁそれはわかるけど。気軽な雑談もできないレベルがまぁー多いこと多い事。お前だってそうだったってだけの話だよ。俺は、確かに同類を集めることに人生かけてるけど、だからって集めた同類と仲良くしたくないわけないんだから』

 正直な話、『嫌いでも同類なら集めそう』とは思ったが、口にはしなかった。
 前なら素直に言っていたかもしれないが、小さな友人と話すうちに、親しき中にも礼儀ありという事を少しではあるが学んだ成果だった。

『うん。今、君は俺に気を使っただろう? 他の奴だって、それをしないわけでもないんだけど……ずれてんだよなぁ。色々。だからまぁ、嫌ってわけじゃないけど、必要以上に話す気はなくなるわけで。雑談するにも最低限、俺は必要だと思うラインってやつがあるのさ。それが、お前にとっては無関心に見えたんだろうね』
「ん、ん? うん。なるほど?」
『あぁ、わかってないのに頷かないように。本当に、最近は人間っぽくなった』
「いや、もともと人間だけど? ん? 人間だよね……?」
『人から生まれたんだから人でいいでしょ。力を持っていてもね。そういうことじゃなくて――ああ、いいやメンドクサイ。ともかく、話すのがいやじゃなくなったってだけだよ。あれだ、少し友好度があがって距離が少し近くなったのさ。距離が近くなったから、お話ししやすくなった。それだけ』

 めんどくさいという割に続けられた説明を、やはり少年は詳しく理解をできなかったけれど、それでもなんだか嬉しい気分にはなった。
 最近は、楽しいことが多いと思った。
 ずっと張られていた薄い膜に気付くことができたような、そんな晴れやかな気分に近づいていけているような心地だった。

『ともかく。伝えておくけど、力の安定に今は努めておけよ。不安定だからってお前自身をどうこうできる奴はいないだろうが、一帯を吹っ飛ばすようなことをするのも馬鹿らしいだろうからな』
「そりゃあね、力がなくなったわけじゃないんだからどうこうされる事はないでしょ……ちょっと感知とか警戒する系は鈍ってるけどさ」
『財布盗まれてたもんなぁ……直接攻撃は平気でも間接攻撃は効果抜群だったな! 凹んでやんのな。ちょっとおもしろかった』
「わざわざ調べるのやめて……」
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