十人十色の強制ダンジョン攻略生活

ほんのり雪達磨

文字の大きさ
214 / 296

鬼の首27

しおりを挟む

「さて」

 軽く、ご説明させていただきたく思います。
 そう言われて本上が竹中に話したのは、まさしくカルトの思想といったもの。
 『近く滅びが訪れる、その滅びを回避できるものを生み出していこう』
 というのが本当の目的であるらしい。
 『次の世代の』うんたらというのは表向きそれを伝えられない者たちへのものらしい。

「何故俺にと聞いてもいいですか」
「夢を見たのでしょう? 夢に告げられたものは、今まで100の確率で何かしらの『力』を覚醒させられるのです」
「そしてね、私たちは力を持っている人を増やしていきたいんですよ。少しだって『あの恐ろしいもの』を回避できる可能性は上げたいんだから」

 ふと、疑問が湧く。
 覚醒とは、夢の通り力を得ることなのであろうが、滅びとはなんだろうか。
 眉唾な話だ。具体的ではない。そんなもの、見たこともないくせに。
 そういう話のはずなのだが――蒲原はまるで見てきたように言っている。思い込みにしては――言っているその顔は青く血の気が引き、本当に怯えているように見えるのだ。本上も、それを知っている風であった。

「あぁ、別に直接見たってわけじゃないですよ。私も、本上さんもそうだけど、この組織の誰一人たりとも、それをしっかり見れるってわけでも見れたってわけでもない」
「……俺、そんなにわかりやすい顔してましたか?」

 思っただけのことに答えが返ってきて動揺してしまう。
 そんな竹中を見て、ふふ、と少し和んだように蒲原は笑った。

「同胞になろうとしている人をからかうものではありませんよ」
「いやぁ、なんか、反応が新鮮で――まぁあれですよ。私は、わかりやすく超能力って感じの力に覚醒してますよって話です」
「……心が読めるとか、そういう風なのですか?」

 竹中の発言に、照れたように蒲原は頭をかく。

「いや、そんなに強くないんですよ。まだ鍛えている最中でして。ようやく表層の感情の種類くらいはってところです。疑問や疑念の感情からの推測ってだけですね」
「……鍛えて上がるものなんですかね、その、超能力ってのは」
「上がるみたいですよ。私も最初の頃よりずっと精度が増してきましたし――いやまぁ、私も近く覚醒した口なのでまだまだ成長したというよりはようやっと馴染んでるって感じですけど。強いものなら今の私でも割と内容まで聞こえたりするんですけどね。なので嘘か本当か見てたのは私です。弱いので時間がかかりましてすみません」

 本心でその行為が悪いとは思っていないのだろう、本上に比べて蒲原の謝罪は特に心がこもっていないことが感情を読み取る能力などなくともわかるような謝罪である。
 能力が使える自分が誇らしく、自慢なのだろうなと竹中は感じた。
 恐らくは、そうでないものを見下してもいるのだろうと。

 なんとか、それに嫌悪感等を覚えないように努力するも、笑いが深まったところから読み取られているのだろうと思うと、イラッとするのは止められなかった。
 自分の意思で妖怪でいうサトリもどきの力を使って読んでますと悪びれずにいれるのはある種の才能だ、と別方向に皮肉気ではあるが感心する感情にスライドさせる。
 それで首を思わずといった調子で捻ったところから、本当に時間でもかけなければ表しか読めないのかもしれにない様子だ。

(心理学やらカウンセラーの知識でもありゃ、同じことできる人がいそうな程度の力って考えれば腹も立たないか)
「申し訳ありません。その、少し見覚醒の同胞の発見にはしゃいでしまっているようでして。変わって謝罪致します」
「……いえ」

 変わって本上は蒲原よりもわかりにくいままだ。
 にこやかで、今も苦笑するように、申し訳なさそうには見える。

「さて、ではもったいぶっていても仕方ありません。さっそく、覚醒なさりますか?」
「というより、そんな簡単にできるものなんですか? というか、契約書とか、料金とか」

 何か要求されるのは確定だろうと思っていた竹中としては、何も言われずに進もうとするのは逆に怪しさを覚える。
 タダより高い物はない。
 こんな怪しげなものなのだ、むしろタダとみせかけて何かしら不利益がある場合すらある。

「えぇ、夢で告げられた人間であることが確定していれば、それはもう引っ張り上げるだけの話ですので――あぁ、対価に何かをいただくということはありませんよ。もちろん、我々の仲間になっていただければうれしく思いますが」
「……何故です? それで、貴方たちになんの得? 俺が言うのも変な話ではありますけど」
「確かに。はたから見れば怪しいでしょう。我々は覚醒した人間を今は増やすことを目的としているのですよ。数はうたねば当たらない。そもそも当たる弾の用意があるかどうかもわからないんです。いちいち条件を指定してその可能性を潰すわけにはいかないのですよ。先ほどいったことに、何1つ嘘はないのです。我々は滅びを回避したい。その人間が我々の仲間でなくとも構わないんです」

 本上がじっと竹中を見る。
 そして、表情を消した。
 今までとのギャップなのか、それだけで空恐ろしく見える。
 しかし、仮面をはいだような状態であることは間違いない。
 素が見える。
 嘘ではないのだ、と伝えるように。

「私たちは勇者になりたいんじゃないんです。ただ、生き残りたい、その確率を高くしたいだけなんですよ。ぶっちゃけてしまえば誰が救ってもいい。無関係なところで救われましたで全然かまわない。もてはやしてでも、怖いものから逃げたいってだけなんです」

 その震えと顔色は先ほどの蒲原の再現のように。
 それはそれが演技ならもうどうしようもないというくらい、本当に怯え切っている景色だ。
 竹中は、いったい具体的には知らない、わからない様子なのにそこまで怖がるものとはいったい何なのだろうかとさすがに気になってくる。カルトの妄想というには少し大げさすぎるとも。
 怖がりたいのかというとそうではないが、本上のような大人と、図太そうな蒲原が同じように怖がる具体的でない何かというものが『滅び』という一言でまとめると陳腐なように思えてしまうからだった。

 怪しげな陰謀論を信じ込み、誰かれ構わず敵対して噛みつく類の人間にも思えなくて、冷静に狂ったことを言っているように見えるのだ。全部が本当だとは思えないし思いたくもないが、信じるのであれば、本気でこの団体というか集団というものは利益なくただ来るべき何かに対応しているだけということだ。具体的にはなにもわからないのに。
 意味が分からな過ぎる。価値観がわからない。

 感情とその行動が理解できなさすぎるから、もうサイコパスの集団のように思えてくるのだ。
 表向きを取り繕う理性があることが逆に危険団体めいていると感じる。今はそうだが、転べばなんでもするという雰囲気が。
 竹中も自分なりに結構な決断と心構えできたつもりではあったが、実際聞いて目にして、己がそのちぐはぐに見える一員になるのかもしれないと実感してしまうと、何か少し別の恐怖が増してくる。これと関わっていることで色々解決しても結果的に現実社会的に死ぬんじゃないかという。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...