十人十色の強制ダンジョン攻略生活

ほんのり雪達磨

文字の大きさ
216 / 296

鬼の首29

しおりを挟む

 息を整えつつ、目をそらす意味でも自分の中での変化にも目を向けていく。
 弱弱しい身体能力は変わっていない。
 空っぽの中身が埋まったわけでもない。

 それでも確かに得たものがある。
 啓一郎や夢の奴が関わっている部分以外でも、干渉の力を前より明確に感じ取ることができ、更に弱めることが己の力である程度はじくこともできるようになっている。
 そして、随分と身をもって体感したり、目てなんとなく察したりしていた異常な力。それと同分類になるのだろう力を己が使うことができる事も知る。新しく生えた手足よろしく、使い方はなんとなく直感的に理解していた。
 それは、ありふれた普通以下の人間が、そのまま異常を手に入れた証明だった。

「残念ながら、貴方たちが望むような力ではないみたいですよ、俺は。鍛えても多分、そういうものにはならないんじゃないかと」

 ふぅ、といったん息をつきながらそういって、いつの間にか用意されていた茶を飲む。
 竹中の言葉に、本上は少しはやはり期待してはいたのか落胆がかけら程度は見受けられた。蒲原は明らかにがっかり! といった表情をしていたがこちらはあまり目を向けないことにした。

「それは確かに残念ですが、何が功を奏するのかはわかりませんからね。お仲間が増えたのは喜ばしい事ですよ」
「言っても仕方ないとわかってて八つ当たりしますけど、言っててほしかったです、これ」

 そうですね。
 と本上は竹中の言葉を怒るでもなく受け止めた。

「……でも、これ凄くないですか? いや、力がってことじゃあなくて、本上さんの。これ、力を覚醒させる? みたいな事でしょ? 手当たり次第にやれば増やせるんじゃあないんです?」

 今、身をもってその力に誘導されて力を得たとはっきりわかっている。
 あれを見て、おびえている身からすれば、そんな力があるのならばできそうなものを見つけるためにある程度強引にでもそうしていてもおかしくないのではないかと思ったのだ。
 その言葉に、本上は困り顔をする。

「そこまで便利ではないのですよ。なんというか、半端といえば私も半端ものなのです。私の力は、使えば確実にその人を覚醒させることができるといったものではないのです。覚醒するものを持っていたとしても、できない場合すらある……そんなものをおいそれと使っていては、悪そうな人たちに便利扱いできるのだと勘違いして捕まったり狙われたりしてしまう、ということもあります。単体では、私は何の変哲もないただ平均レベルの身体能力を持った人でしかありませんから」

 確かに。
 確実でもないが増やせるのだということがばれたら厄介なことになるのは竹中にも言われて理解できた。
 利用したい側以外にも、下手なばれ方をすれば事の元凶扱いされてしまうようなリスクもある。それを大衆が信じている、信じていないはそれほど問題にはならないのだ。怪しかろうがなんだろうが、悪かろう怪しかろう派叩いていい、叩くべきだと考える存在も、ストレス解消、事故承認欲求かメサイアコンプレックスでも拗らせたのかという人間が勘違いしたような暴力的正義感を振るって、叩けるものは遠慮なく叩きに来る人間というのは一定数いる。ようは、叩いていい存在だと思われた時点で身動きがとり辛くはなってしまう。

「ある程度信じてもらえて、力の通りをよくするか、軽くもう目覚めてしまっているか――夢で誰かにあってくるように言われたから来たという人で、それが真実だった場合は今のところ全員疑われても成功していますが、引っ張り上げるには手を掴んでいただかなければ難しくありまして」
「伸ばされた手をがしっ! と掴んだらちゃんと引っ張り上げてくれるんですけどねぇ、本上さんは。払いのけられたり、掴まれてもそこに居座ろうとしている人にはどうしてもムリって事ですねぇ。本上さんは見た目通り能力も筋力がないみたいです」

 目覚めさえすれば、それをできる人間を邪魔しようと思うものはきっと少ない。
 あれを見て、解決できる可能性を少しでも減らしてしまう行動をするのは不可能に近いと竹中は思う。
 竹中がこうすんなりと通ったのは、その夢のなんちゃらという胡散臭いそれが一番信頼され実績があるというおかしな現実があるのと、それを本当かどうか判定できる能力を持った人間がいたからだろう。
 そうでなければ、もっと慎重に重ねる段階があったのではないだろうかと雰囲気からある程度察することができる。

「……何ができる、ってのは、話したほうがいいことなんですかね?」
「無理やりに話していただこうという気持ちはありませんよ。敵対はしないのが1番ですので。ただ、話していただいたほうがありがたくはあります。何かしら協力できることも、協力していただきたいことも今後出てくる可能性もありますし。それとは関係なく、能力関係で人間関係にトラブルが起きそうだ、という時はいつでも相談には乗りますのでその時は遠慮なくどうぞ」

 ばれた時等、困ったときに助けてもらえるのは大きいかもしれないと思う。
 もらうものだけもらって、自分はなにもせずに帰るというのが心情的にどういかということも。
 少し考えたが、結局いっても問題になるとは思えないし、どういう感想を持つのか聞いてみたくもあったので実践してみることに決めた。
 ポケットに突っ込んでいたペンを取り出す。

「このペンを見ててください」
「……? はい」

 2人が言った通りペンに目を向けたのを確認した後、竹中は自分の中のトリガーを引く。

「……?」
「っ」

 2人が不審そうな顔をし、竹中は想定外の反動だったか苦しむ羽目になる。
 無理やり傷口に指をえぐりこまれたような痛みに、言葉もなくあえぐ。

「え? あの。いきなりどうしたんですか? 具合が? 大丈夫ですか? ……ん? いや、なんかおかしいですね。なんだ……?」
「あれ? なんか見てませんでしたっけ? 私たち」

 痛みの中、2人から戸惑うような言葉が届けられる。
 そうか、と少しだけ竹中は理性的に理解する。
 ぐっと、痛みが治まるまではそれでも待ってもらい、再び汗をかきながら息を整えていった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...